著者
佐藤 美幸 米山 実 伊藤 則博
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.31-36, 1992-03-31

現在,日本の肥満の子どもたちは増加傾向にあり,子供の肥満は小児成人病の危険因子を持つとされ予防対策と早期治療が求められている。しかし学校における肥満児は身体の健康問題だけでなく心の健康にも問題を持ち,心身相互に作用して形成された悪循環の中にある。筆者は肥満児の心の問題を探るため内面へのアプローチを試み,道内における肥満児療育センターとして機能している道立有珠優健学園を研究のフィールドとし,自己像に関する調査を実施した。その結果,(1)肥満児は普通児に比べて自己に否定的で情動不安定,敏感性が強く意欲・強靭性に欠けるなど多くの因子において普通児との相違が見られた。(2)同じ肥満児でも性差がみられ,特に普通学級に在籍している肥満女子が極めてネガティブな自己を示した。これに対し(3)療育途中にある肥満児は情動不安定を残すものの他の因子において普通児との間に有意差が認められなかった。彼らには,(4)SCTの記述により意欲・強靭性の高まりや自己肯定への兆候がみられた。道立有珠優健学園における肥満児のための食事療法,運動療法をはじめとする環境設定のあり方や精神面でのケアを重視した子ども主体の自治会活動など多面的な実践が彼らに自己意識の変容をもたらし,理想自己に向けて成長する現実対処的な自己の形成^<1)>を促したと思われる。肥満児に対してはこのような全人格的指導が重要であり,今後は地域・学校保健の場においてこのようなアプローチが試みられることが望まれる。
著者
薬袋 秀樹
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会研究大会発表論文集
巻号頁・発行日
pp.91-94, 2016-11

「公立図書館の設置及び運営に関する基準」(1992)は、大臣告示されなかったが、都道府県教育委員会に通知された。本研究の目的は、この基準に関する議論の特徴を明らかにすることである。関係文献を収集・分析した結果、取り上げている雑誌や論者は限られること、図書館問題研究会は検討の途中から積極面を評価する方針に転換したこと、同時に、これまでの文部省の図書館行政をほぼ全面的に否定していること等が明らかになった。
著者
ファロン トーマス J. ベイカー マシュー
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 言語・文化篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; LANGUAGE and CULTURE (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.63-68, 2016-10-31

This research considers the use of Visual Narrative Grammar(VNG) as a means to aid in improving the fluency, accuracy, and complexity of dialogue written by ESL students at Japanese universities. VNG, such as the sequential images found in the panels of comic books, appeal to a non-verbal linguistic ability of the human mind (Gernsbacher, 1983; Cohn, 2013). If that be the case, then it could be hypothesized that VNG should have benefits in aiding language acquisition. This research seeks to explore the benefit of VNG on ESL students’ written production of English dialogue. In addition to a review of current literature pertaining to VNG, a proposed methodology of research to come has been outlined in this essay.
著者
島村 恭則
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.763-790, 2001-03-30

これまでの民俗学において,〈在日朝鮮人〉についての調査研究が行なわれたことは皆無であった。この要因は,民俗学(日本民俗学)が,その研究対象を,少なくとも日本列島上をフィールドとする場合には〈日本国民〉〈日本人〉であるとして,その自明性を疑わなかったところにある。そして,その背景には,日本民俗学が,国民国家イデオロギーと密接な関係を持っていたという経緯が存在していると考えられる。しかし,近代国民国家形成と関わる日本民俗学のイデオロギー性が明らかにされ,また批判されている今日,民俗学がその対象を〈日本国民〉〈日本人〉に限定し,それ以外の,〈在日朝鮮人〉をはじめとするさまざまな人々を研究対象から除外する論理的な根拠は存在しない。本稿では,このことを前提とした上で,民俗学の立場から,〈在日朝鮮人〉の生活文化について,これまで他の学問分野においても扱われることの少なかった事象を中心に,民俗誌的記述を試みた。ここで検討した生活文化は,いずれも現代日本社会におけるピジン・クレオール文化として展開されてきたものであり,また〈在日朝鮮人〉が日本社会で生活してゆくための工夫が随所に凝らされたものとなっていた。この場合,その工夫とは,マイノリティにおける「生きていく方法」「生存の技法」といいうるものである。さらにまた,ここで記述した生活文化は,マジョリティとしての国民文化との関係性を有しながらも,それに完全に同化しているわけではなく,相対的な自律性をもって展開され,かつ日本列島上に確実に根をおろしたものとなっていた。本稿は,多文化主義による民俗学研究の必要性を,こうした具体的生活文化の記述を通して主張しようとしたものである。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.226, pp.52-55, 2003-07

やまだ・のぶふさ●1963年12月愛知県生まれ、39歳。86年に愛知学院大学を卒業後、テレビ制作会社勤務を経て、94年、結婚式の二次会をコーディネートするモックを創業。その後、企業の宴会ビジネスにも進出。2003年4月、東証マザーズに上場した。【本社所在地】愛知県名古屋市中区錦2-3-9 1052(222)6211東京・銀座にある「i-MOCサロン」。
著者
石原 良美 杉田 大峰 佐久間 翔 北見 秀明 高野 二郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.335-338, 2016-06-05 (Released:2016-07-07)
参考文献数
10

This paper describes a simple analytical method for the determination of L-theanine, a major free amino acid in green tea, by high-performance liquid chromatography (HPLC) with ultraviolet detection (UV). This method provides high linearity of the working curve for calibration as well as repeatability. The correlation coefficient of the working curve for calibration was estimated to be to 0.9991 for L-theanine in the concentration range from 1 mg L−1 to 100 mg L−1. The limit of detection (LOD) was calculated on 3σ at 1 mg L−1 as 0.210 mg L−1 using a standard solution for L-theanine. The limit of quantification (LOQ) was calculated on 10σ at 1 mg L−1 as 0.704 mg L−1 using a standard solution for L-theanine. In addition, the recoveries of spiked the bottled green-tea drinks at concentration levels from 10 to 75 mg L−1 were estimated to be 91.1–99.3%, and the relative standard deviations were 1.04–2.51%. This method could be successfully applied to the determination of the L-theanine in bottled green-tea drinks.
著者
塩田 昌弘
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.139-174, 2011

朝日新聞を創刊し、日本を代表する新聞社に育て上げた村山龍平(1850〜1933)は、阪神間(神戸市東灘区御影町)にある香雪美術館の美術作品のコレクターとして知る人ぞ知る人物である。一方、村山龍平の生まれた伊勢国田丸(現在の三重県度会郡玉城町田丸)には、村山龍平の功績を顕彰した村山龍平記念館が建っている。村山龍平とはどの様なことを成し、なぜ現代にもその影響を与えている人物なのか。村山龍平は幕末に生をうけ、田丸藩の士族として活躍、明治維新後、大阪に移り住み、明治・大正・昭和のわが国の激動期を逞しく生き抜き、世界の朝日(新聞)を創り上げ、文化に多大の功績を残した人物である。まさに、新聞界の英傑の名に相応しい。この小論では、村山龍平の人となりと当時の社会の動き、村山龍平記念館の活動と建築について考察しようと思う。さらに、香雪美術館の所有する旧村山家住宅(国重要文化財)を併せて紹介しようと思う。小論により、近代日本の黎明期を生き抜き、実業界のみならず文化・美術の方面にもその才能の華を咲かせた村山龍平の成そうとした志のもつ今日的な意義を考察したい。
出版者
独立行政法人 海上技術安全研究所
雑誌
船と海のサイエンス : 船と海の総合誌
巻号頁・発行日
vol.1, no.2002, pp.60-63, 2002-08-20

世はあげてスピード時代、船舶の世界でも「より早く、より強く、より安全」な船造りが要請されている。創業以来、これをモットーに掲げて成長を遂げてきたのが、今回ご紹介する墨田川造船株式会社である。高速船艇の建造にかけては、わが国屈指の永い伝統と技術を誇る同造船所に石渡博社長を訪ね、高度な建造技術の実績を支えてきた努力や信念、また新たな時代への展望と抱負を語っていただいた。
著者
空海 書
出版者
平凡社
巻号頁・発行日
vol.第4帖, 1935
著者
庄司 潤一郎
出版者
財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.139, pp.125-143,L14, 2004-11-29 (Released:2010-09-01)
参考文献数
66

In a Japan that was becoming increasingly isolated as a result of the Manchurian Incident and its withdrawal from the League of Nations, two noteworthy positions were unfolding, with the goal of seeking a new diplomacy in the mid-1930s. These consisted of the “argument of colonial readjustment”, which was directed at the global community, and the “controversy concerning the propriety of unifying China”, which was directed at China.The “argument of colonial readjustment” reflected the state of global politics at a time when Germany had rearmed itself and occupied the Rhineland while Italy had invaded Ethiopia, and was primarily advocated by the likes of E. House and other politicians and intellectuals in have-nations. This was later submitted by S. Hoare, the British foreign minister, to the League of Nations in 1936 and translated into reality through the establishment of the League of Nations' Committee for the Study of the Problem of Raw Materials in 1937.Thus, this thesis aims to identify the unique elements of the Japanese position relative to those of the West by sifting through the “argument of colonial readjustment” as it had been embraced in the West and analyzing the given position as it had taken root in Japan, where the influence of the argument had been felt. In this connection, the Japanese position was distinct from the positions of Germany and Italy, as well as those of various other western countries, in that the fundamental rule of freedom of commerce was maintained, a new world order was pursued, and the principle behind independence from colonialism was respected. Advocates who had taken up this position in Japan included Fumimaro Konoe, Kiyoshi Kiyosawa, Masamichi Royama, and Tadao Yanaihara.The fact that Japan sought various breakthroughs after withdrawing from the League of Nations has been revealed in recent research findings. This research also takes that position and will analysis the contents of the reconfiguration of the international order according to the “argument of colonial readjustment”.
著者
Imai T. SAKAI Seiichi
出版者
東北大学
雑誌
Tohoku journal of agricultural research (ISSN:00408719)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.125-171, 1961-08-30
被引用文献数
4
著者
吉田 千文 山田 雅子 伊藤 隆子 雨宮 有子 亀井 縁
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ソフトシステム方法論に基づくアクションリサーチ(内山2007)を用いて、人々が最期まで望む地域で安心して暮らし続けられるための新しい看護管理学の中核概念を探索し記述した。中核概念は以下の5つ。看護すること:自身や他者を気遣い世話すること。人は皆元来看護する力を有する。地域:人々の重層的関係が存在する複雑な場。元来看護する力が備わる。看護専門職:人々や地域への信頼を基に其々の世界間を行き来でき、状況に合わせて柔軟に役割を変化させて支え続ける存在。専門職連携:目的ではなくより良い実践の結果。地域包括的視点に基づく看護管理:統制ではなく看護力発揮にむけ人々を力づけ共に学習しその仕組みを創ること。

1 0 0 0 OA 警視提要

出版者
警視庁
巻号頁・発行日
vol.明治22年, 1889
著者
佐々木 克友 間 竜太郎 仁木 智哉 山口 博康 鳴海 貴子 西島 隆明 林 依子 龍頭 啓充 福西 暢尚 阿部 知子 大坪 憲弘
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.0614, 2008 (Released:2008-12-18)

我々は「新形質花き」の作出を目指し、トレニアを用いて重イオンビーム照射による変異導入を行っている。その中に、第2ウォールが萼化した表現型を示すトレニアmutantが2系統見出された。花器官形成のABCモデルから、これらmutantの表現型はクラスB遺伝子機能の欠損に原因があると予想された。本研究は、変異が導入された遺伝子の特定と、トレニアの花器官形成に関わる情報の収集を目的とする。トレニアのクラスB遺伝子であるTfGLOおよびTfDEFの発現を、野生型および上記mutantを用いRT-PCRにて解析した結果、2種のmutantではTfDEFは発現していたがTfGLOの発現が全く認められなかった。野生型および2種のmutantについてTfGLOゲノム領域を単離し配列を決定した結果、TfGLO遺伝子発現の欠失に直接の要因と推測される変異は見られなかった。このことから、2種のmutantにおけるTfGLO遺伝子の欠損は、上流の発現調節因子の変異に起因すると推察された。すでにシロイヌナズナ等でクラスB遺伝子の発現調節因子として報告されているAPETALA1、LEAFYおよびUFOの発現をRT-PCRで解析した結果、UFO特異的にmRNA量の減少が認められたので報告する。なお、本研究は、「農林水産研究高度化事業」によるものである。