著者
横瀬 宏美 鈴木 正泰 金野 倫子 高橋 栄 石原 金由 土井 由利子 内山 真
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.310-321, 2015

背景:月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:以下PMDD)は,黄体期後期に抑うつ症状が出現し,仕事や学業,対人関係などにおける生活上の問題をきたす病態である.PMDDは月経のある女性の3〜8%にみられ,様々な研究が行われてきたが詳細な病態生理学的機序については不明な点が多い.方法:一女子大学において,ある年度に心理学の講義を履修した学生に研究参加を呼びかけ,833名(有効回答率93%)からデータを得た.調査は自記式で行い,調査用紙には 1)月経前不快気分障害診断に関する項目,2)生活習慣,睡眠習慣,朝型・夜型の時間特性などに関する要因,3)月経の状態,婦人科受診歴などの婦人科的要因,4)精神科受診歴および家族歴,性格特性,季節性特徴などの精神医学的要因,5)最近1年間のライフイベント,ストレス対処行動などストレス関連要因,という内容を含めた.PMDDの診断は,精神疾患の診断・統計マニュアル新訂版(DSM-IV-TR)に基づいて行い,PMDDと個々の要因との関連について統計学的に検討した.結果:PMDDは833名中45名(5.4%)にみられた.PMDDの有無を従属変数とし,合計30の要因との間で単変量ロジスティック回帰分析を行ったところ,合計16の有意な関連要因がみいだされた.これら有意な関連要因間の交絡関係を調整するため多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ,神経質,身体的不調への過敏,家族との問題,ストレス対処行動としての飲酒がPMDDと有意な正の関連を示した.結語:今回の調査で得られたPMDDの有病率は5.4%と,先行研究における有病率とほぼ同等であった.本研究の結果から,PMDDにはうつ病と共通する性格素因や心理的ストレスなど,精神医学的および心理的要因が強く関与していることが示唆された.
著者
香坂 雅子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.33-40, 2015-02

女性の健康(Women's Health)では,疾患の性差の把握はもちろんのこと,女性特有のQOL,心理社会的背景やライフステージを考慮した予防やヘルスプロモーション,治療が求められる.ここでは,ライフステージをふまえながら,女性の睡眠ならびに特有な睡眠障害について概説する.睡眠時間についての大規模な調査が行われ,女性の多くの年代で男性よりも睡眠時間が短く,年々その傾向は際立っている.女性の睡眠は,性ホルモンの影響を受け,月経周期とともに変動し,睡眠の質が不良となる,徐波成分や睡眠紡錘波の周波数が変化する,などの報告がある.また,黄体後期では,体温リズムの振幅が低下する,などの特徴が認められる.睡眠構築についても性差があり,加齢とともに徐波睡眠は減少するものの男性に較べて女性では比較的保たれ,レム睡眠の分断が少ない. 睡眠障害についてみると,アジア,欧米圏で行われた疫学調査のメタ解析では,女性における慢性不眠の報告が多い.日本の全国調査でもDoiらは男性173. %,女性の215%. と,同様の傾向を示した.慢性不眠の背景となるような身体的,心理社会的要因としては,更年期に特徴的な血管運動神経症状を呈する更年期障害,介護を担う家族の一員としての心理社会的要因による不眠,レストレスレッグズ症候群などがある.睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は日中の眠気を訴える疾患であるが,発病率に性差があり,女性では不眠を訴えることが多い.OSASが重症になると女性では男性に較べて糖尿病や,虚血性心疾患の合併率が増すとの報告もある.女性においては,睡眠時間と高血圧の発症との間に相関があり,5年後の追跡調査では5時間以下の睡眠をとる女性は,7時間睡眠に較べて19. 4倍の発症率を示した.睡眠の剥奪は女性にとって有害な心血管疾患をもたらすと警告している. 女性が,それぞれのライフステージにおいて健康を保つための知識を確保できるようにするとともに,教育や啓発活動を受けることのできる行政のシステムづくりが必要と考える.
著者
"宮脇 修" "ミヤワキ オサム" Osamu" "MlYAWAKI
雑誌
名古屋女子大学紀要 = Journal of the Nagoya Women's College
巻号頁・発行日
vol.31, pp.121-131, 1985-03-01

"PF-STUDY,CCPのデーターをもとにして,Low sociometric status groupをHigh sociometric status groupに対比して,その人格的・行動的特性をまとめると,次の三つに要約される. 1.L groupはH groupに比べ,一般的にフラストレーション耐性が低く,H groupがフラストレーション事態でも,その問題解決に当たって内省的努力の構えで対するのに,L groupはフラストレーションを惹きおこした事物・人物に向けて単なる不平不満の感情で終始する傾向がある. 2.L group は,H group に比べ,母親に対して情緒的接触の薄さを感じ,全体的に受容的母親像を持ちにくい傾向がみられる. 3.また,父親像に関しても,H group では子どもの依存性を排除し独立への希求を持つ親として把えられているのに対し,L groupではその点が弱い傾向にある.尚,この研究を通して,フラストレーション耐性と,子どもの養育をめぐる親子関係との間に深いかかわりのあることに気づいた.今後の課題として,このかかわりの面に注目し, L,H両群の比較研究をすすめていきたい."
著者
得丸 公明
出版者
一般社団法人 日本写真測量学会
雑誌
写真測量とリモートセンシング (ISSN:02855844)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.269-273, 2015 (Released:2016-01-01)
参考文献数
9

To date, there has been not a single hypothesis for the birth of Moon. The author got an idea of the Kalahari Impact Hypothesis for the birth of Moon in January 2014. According to the hypothesis, after the Morokweng Meteorite Impact of 145ma (million years ago), the Moon was discharged as magmatic jet plume ejection from the Kalahari. In the following, he explains how it was conceived and how it developed during the year, so that the following researchers can correct and go beyond it. The hypothesis refutes so-called the Plate Theory, and supports the Goodness of Human Nature, as both the Moon and the Human were born at the same impact site.
著者
長津 美代子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.949-959, 1991-11-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
20

The purpose of this study is to explore gaps between attitudes toward gender roles of male and female students, by using such criteria as attitudes toward role relationships between male and female, the double standard of sexual morals, men's leadership in dating, and energy allocation to occupation and homemaking after marriage. The survey was conducted in January, 1990 to 735 university students in Tokyo and its outskirts. The major findings are as follows :(1) ISRO (The Index of Sex-Role Orientation, E.A. Dreyer et al.) scores on attitudes toward role relationships between male and female point out that 45% of the female students are innovative type, but about the half of the male students are traditional one.(2) Compared with female students, male students tend to accept the double standard of sexual morals.(3) Female students expect that males play leadership roles when they go out together more than male students themselves intend to.(4) Male students wish to allocate less energy to occupation than their fathers do, and female students hope to allocate less energy to homemaking than their mothers. As a result, the present tendency to give too much attachment to occupation for males and homemaking for females will be relieved in their married life.
著者
三原 實
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.35-50, 2003-06-30
被引用文献数
4

ゴキブリ目は,石炭紀後期(約3億年前)地層より化石が発見され,国内でも2億3千年前の翅の化石が山口県美祢市で出土している歴史の旧い昆虫である.地球上のゴキブリは現在まで約3,500種が知られ,日本では9科25属52種が纏められている(朝比奈,1991).ゴキブリは熱帯・亜熱帯が主な生息域であり,国内における分布状況も南西諸島に多くその種数は45,九州23,四国11,本州17,北海道3,小笠原8種である.自然界におけるゴキブリの生活場所は森林や草原の地表で,林内では落葉内,石の下,倒木下,浅い土中,樹木根際,樹木では樹葉上,樹皮下,樹洞内,朽木内,その他草原や叢中などに生息し,植物の腐食有機物,動物,昆虫などの屍骸,樹液,朽木などを食餌としている.
著者
近藤 伸彦 Nobuhiko KONDO
出版者
大手前大学CELL教育研究所
雑誌
大手前大学CELL教育論集 = Otemae University CELL journal of educational studies (ISSN:21894027)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.11-18, 2016-03-31

近年のICTの発展により、教育におけるビッグデータは現実的なものとして顕在化し、その活用により教育改善をおこなう試みが大きな注目を集めている。海外ではいち早く教育ビッグデータに対するアナリティクスの研究と実践が行われ、国内においてもその必要性が急速に認識されつつある。本稿では、大学における教育ビッグデータの活用について整理するため、種々のアナリティクスと教学IRに着目して、発展の経緯や、分野間の関係性などについてまとめる。さらに、大手前大学におけるアナリティクスや教学IRの現状と展望について述べる。
著者
兼城 千波 岸本 享太
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMD, 機構デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.96, pp.61-64, 2013-06-14

本報告では,弾性を持ったマイクロスプリングアレイ(薄膜アレイ)をLSI配線技術として適用するために,スプリングプローブの作製におけるプローブの弾性を制御する方法について実験・検討した結果について述べる.成膜時におけるスパッタガス圧をコントロールすることにより,金属膜内の弾性応力に変化を持たせ,スプリングワイヤとすることができる.本報告では,スプリングプローブアレイを構成する膜の作製条件として,スパッタガス圧の変化条件および膜厚について検討した結果について述べる.スパッタ成膜時における膜中の応力分布は,スパッタガス圧と膜厚に依存している.スプリングプローブアレイを作製するためには,成膜時における内部応力差を上層部と下層部で大きくする必要がある.この応力差を利用することで,プローブの曲率を変えることができる.スプリングアレイの曲率を任意に調整できるようになれば,LSI実装用の配線技術として応用可能である.
著者
小野 和彦 岩田 靖
出版者
信州大学
雑誌
教育実践研究 : 信州大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 (ISSN:13458868)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.77-86, 2002-07-31

The purpose of this paper is to report the lesson of "net-type(especially dual-type)" game practiced in elementary school. The reason that net-type game is selected to physical education curriculum depends on the theory of "tactical games approach". In this lesson, decision making process in the game context was emphasized as learning objective. Learning outcome was considered from the viewpoint of formative class evaluation scored by learners.