著者
上西園 武良 小柳 孝治
出版者
新潟国際情報大学情報文化学部
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:24238465)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.96-102, 2016-04-01

缶入りコーンポタージュスープは、冬場の缶入りスープとして定着しており、幅広い年代の人に飲用されている。しかし、飲用後に缶内に粒コーンが残留し、粒コーンを全て飲み干すことができない、というユーザビリティ上の問題ある。この問題に対して、缶形状の改良やスープ粘度の調整などが提案されている。しかし、これら従来の研究では、本来注目すべき飲用時におけるユーザ動作に関して十分な解析がなされていない。そこで本研究では、飲用時におけるユーザ動作の人間工学的な解析を行い、飲用後の粒コーンの残留要因を明らかにした。まず、飲用時のユーザ動作の特徴と残留コーン数の関係を29 名の被験者実験によって明らかにした。この結果、残留コーン数は、種々のユーザ動作の特徴の中で、ユーザが何回に分けてスープを飲用するかの回数(以下では「飲む回数」)と強い相関(相関係数R=0.82)があることを見出した。さらに、この「飲む回数」とそのときの「缶の傾斜角度」を用いて模擬的な動作パターンを作成し、これを用いることで、被験者実験を行うことなく、残留コーン数に対するユーザ挙動を再現できることを示した。次に、缶内の粒コーンの挙動を観察するため、可視化を行った。金属缶は透明樹脂により透明化し、スープに関しては、ほぼ同一の粘性・密度を持つ透明液で置き換えた。これによって、飲用時における粒コーンの動きを観察可能にした。最後に、上記の模擬的な動作パターンを可視化した缶・スープで実行することにより、飲用時に粒コーンが残留する主要因は、飲み口の段差に粒コーンが引っかかってしまうことであることを実験的に明らかにした。製品設計 / ユ-ザビリティ / 飲料缶 / 人間工学
著者
山科 健一郎
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.79-91, 2000
被引用文献数
2

In order to find a practical method to assess forthcoming activity of aftershocks, an attempt was made to predict a plausible range of the number of major aftershocks of the 1999 Chi-Chi, Taiwan earthquake of September 20 (UTC;Ms=7.7). Although a method of predicting the probability of aftershocks had been proposed, assuming that parameters in the modified Omori formula would not change during the period of prediction, such an assumption might sometimes be invalid at the time of the especially large aftershocks. For this reason, a range of the number of aftershocks was experimentally discussed between September 22 and November 21 based on the 5-95% or the 0-90% points of the Poisson distribution. As a result, 11 cases were successful among 13 trials, suggesting that a prediction of the range of the number of aftershocks will be available for practical use, at least to some extent.1999年9月20日(世界時)に発生した台湾集集地震について,想定した期間にある大きさ以上の余震が何回起こるか,試験的な予測を試みた.予測が当たる確率を上げるためには適当な幅を考える必要があるが,ここでは90%くらいの確度を想定して,ポアソン分布の5%および95%点を予測数の上下限の幅として考えた.ただし,下限値が0に減少したときには,ポアソン分布の0~90%点をとれば十分かもしれない.また,期待値が5以下のときはその1/2~2倍くらい,期待値が20~30のときはその1/1.5~1.5倍くらいの範囲をとると,ある程度近似できる(その際,下限値を求めるときは小数点以下を切り捨てる).観測された余震のデータを改良大森公式にあてはめてその係数を定めれば,任意の期間に起こる余震数の期待値を求めることができる.これをもとに予測回数の幅を推測するが,期待値に誤差が見込まれるときは,それに応じて予測の幅を広げる必要が生じる.今回の台湾の余震活動では, 9月22日~11月21日までの2ヵ月間,初めは1日ごと,その後は1週間ごとにマグニチュード5.0以上の余震数を予測した.合計13回の予測の結果をみると, 11回が予測幅の範囲内に収まり, 2回が予測幅をそれぞれ一つ超過した.地震発生直後に入手できる地震データは不完全な場合が多く,具体的に予測の作業を行うときは,それによる不確かさも考慮しなければならない.このような難しさもあるが,今回の試行では, 85%程度の成功率を得た.どのくらい活発な余震活動がこれから先に見込まれるか,本稿のような方法によってある程度の目安が得られれば,それなりに役に立つのではないかと思われる.なお,期待値が与えられたときに,ポアソン分布の5~95%幅が具体的にどのような値をとるかを表の形で表し,また,参考までにその値を算出する近似式を示した.
著者
成瀬 昂 有本 梓 渡井 いずみ 村嶋 幸代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.402-410, 2009 (Released:2014-06-13)
参考文献数
21
被引用文献数
1

目的 少子化の進む日本では,健やか親子21などの政策により父親の育児参加が推奨されている。父親の育児参加に関する研究では仕事の影響を考慮する必要があるが,仕事と家庭における役割の関係性(スピルオーバー)が父親の育児参加にどのように影響するのかは,明確にされていない。本研究では,父親の育児参加を育児支援行動と定義して,その関連要因を検討し,父親の育児支援行動と役割間のポジティブスピルオーバーとの関連を明らかにすることを目的とした。方法 A 市内の公立保育園17園と私立保育園14園に通う,1,2 歳児クラスの父親880人を対象に,無記名自記式質問紙による留め置き・郵送調査を行った。父親・家庭・多重役割に関する変数を独立変数とし,「母親への情緒的支援行動」,「育児家事行動」を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。父親に関する要因,母親の職業を独立変数として投入した後(モデル 1),さらに仕事と家庭の両役割間のポジティブスピルオーバーを追加投入(モデル 2)した。結果 189人の有効回答を得た(有効回答率21.4%)。重回帰分析の結果,母親への情緒的支援行動の実施にはポジティブスピルオーバーの高さ,平等主義的性役割態度の高さが有意に関連していた。育児家事行動の実施にはポジティブスピルオーバーの高さ,母親が会社員・公務員であることが有意に関連していた。結論 父親の育児支援行動は,父親の持つ特性や経験などの背景要因よりも,仕事と家庭の両立におけるポジティブスピルオーバーとの関連性が強かった。また,ポジティブスピルオーバーが高いほど母親への情緒的支援行動,育児家事行動を行っていた。父親の育児支援行動を促進するための働きかけや政策を検討するためには,父親が仕事と家庭をどのように両立しているか,それによる影響を本人がどう捉えているかを考慮する必要性が示された。
著者
西藤 栄子 中川 早苗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.743-751, 2004-09-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15

中高年女性の服装に対するおしゃれ意識とその根底に流れる規範意識を, 近畿圏在住の 50 歳代から 70 歳代の女性, 302 名を対象にして, 質問紙調査と服装写真提示実験によって調べた.得られた結果は, 次のようであった.1. 1) 質問紙調査の結果から, 中高年女性のおしゃれ意識と規範意識はともに高いことがわかった.1. 2) おしゃれ意識は, 年齢や外出頻度, 余暇活動の有無によって差のあることがわかった.1. 3) 規範意識については, どのような属性の中高年女性であっても高かった. とりわけ年齢が高くなるにしたがって, その意識は高くなった.1. 4) 服装の機能性や審美性に対する期待を問う服装観については, 年齢に関係なく機能性とともに「自分らしさを表現する」ことを重視しており, 中高年女性のおしゃれ意識の高まりを確認した.1. 5) その一方で, おしゃれ意識の高い人でも, 規範に応じた服装を心がけるなど, 服装規範から逸脱しない範囲で, おしゃれに積極的であることも認めた.2. 1) 服装写真提示実験によって, 質問紙調査で得られた服装規範意識の検証を試みた. その結果, 提示された服装のふさわしさに対する個人的評価は, いずれの服装でも社会的評価よりも低かった. このことから, 「世間の人は, 私以上にこの服装で良いと考えていると思うが, 私自身は, 世間の人ほどふさわしいとは思わない」という意見をもっている実態を確認した.2. 2) 各場面における服装のふさわしさに対する社会的評価と個人的評価との評定平均値の差は, 規範意識の低い人ほど大きかった. つまりこの差が大きいほど, 「世間の人はこの服装でよいと考えていると思うが, 私自身はそうとは思わない」という意識の強いことを表していることになり, この傾向は, 年齢が低いほど, 中都市よりも大都市に住む人で, 大きかった.したがって, これらの人ほど, 服装規範への同調性が弱くなっていることが確かめられた.
著者
島村 宣男
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.113, pp.21-51, 2008

アメリカ映画のジャンルの一つに「西部劇」(westerns)がある。アメリカは19世紀末の西部辺境(frontiers)を舞台に展開する人間ドラマは、さしずめこの国の時代劇は江戸期の「股旅もの」に匹敵するだろう。東に一宿一飯の旅鴉がいれば、西には流れ者のガンマン(gunslingers)がいて、編み笠にはカーボーイ・ハット、腰に差した長刀差には腰に吊るした拳銃、寒風吹きすさぶ河原での出入りには砂塵舞う大平原でのガンファイトといった好対照、物語りのプロットは共通して「勧善懲悪」、端から一般大衆の嗜好に見事に適っている。この国の時代劇についても然り、半世紀前にはかの国の西部劇にも John Wayne, Gary Cooper, Burt Lancaster, Kirk Douglas といった大スターがスクリーン狭しと暴れまくり、映画ファンの血をたぎらせたものである。ところがどうだろう、昨今ではその隆盛の面影すらない。本稿は、2007年度に全米で公開されて高い評価を得た西部劇(日本未公開)で、James Mangold 監督作品の 3: 10 to Yuma のなかで描かれた主要なキャラクターの人間性の在り処を検証する試論である。この作品で興味深いのは、主人公の一人を聖書の読者に仕立て、旧約は「箴言」(Proverbs)の聖句を再三引かせていることである。西部劇における聖書の引用は特に珍しいわけではなく、これまでにも、Pale Rider(1985年度作品、監督・主演 Clint Eastwood)や Tombstone(1998年度作品、監督 George P. Cosmatos、主演 Kurt Russell, Val Kilmer)では、ともに新約は「ヨハネの黙示録」(The Revelation)を典拠とする引喩・引用がある。もとより本稿は、映画評論の域を超えるものとして、ことばを中核に据えて見えてくるはずの、アメリカ文化論の構築を企図する筆者の一連の作業に属する。
著者
中山 一義
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.187-217, 1971-03

秘事矛盾史書哀歓観阿庭訓世阿伝書元雅悲運禅竹拾玉役々習道元能聞書悲傷未練鳥跡不朽秘伝書奥書識語抜書秘伝書年表This thesis is the history of the latter half of Zeami's life, and the tragic story of his secret papers, with which he initiated his successors into the secret. The tragical events, in succession, have come from the conflicts among three elements as follows, (1) the personal patronage of three persons of the Ashikaga Shognate, Yoshimitsu, Yoshimochi and Yoshinori, (2) Zeami's individual authority on the No-drama, (3) the tradition of initiating sons and pupils into the secret. In his last years, his second son entered the priesthood, the eldest son died early death in his thirties, his grand son was left as a child, his company nearly collapsed, and he himself, at the age of seventy-two, was exiled on the northern solitary island, Sado-gashima. In the latter half of his life, however, Zeami had left secret papers, about twenty volumes in number, which were what you would call his will. These secret papers have kept alive to this day during six hundred years since his death.
著者
荻野 勝正
出版者
渋沢栄一記念財団
雑誌
青淵 (ISSN:09123210)
巻号頁・発行日
no.807, pp.36-39, 2016-06
著者
梁瀬 健
出版者
渋沢栄一記念財団
雑誌
青淵 (ISSN:09123210)
巻号頁・発行日
no.807, pp.30-32, 2016-06
著者
髙崎 智彦
出版者
渋沢栄一記念財団
雑誌
青淵 (ISSN:09123210)
巻号頁・発行日
no.807, pp.16-18, 2016-06