著者
植田 睦之 神山 和夫
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.F33-F36, 2014

気候変動に対する鳥類の反応をモニタリングするために2005年に開始した参加型調査「季節前線ウォッチ」により収集したデータである.モズ(高鳴き),ヒバリ,ウグイス,メジロの初鳴き日,ホトトギス,カッコウ,アオバズク,ツバメ,オオヨシキリ,ツグミ,ジョウビタキの初認日,ヒヨドリの秋の渡り開始日,カルガモのヒナの初認情報も収集した.これらのデータを集計することで,どの種も年により初認時期が違うこと,温暖な地域ほど初認時期が早く,寒冷な地域ほど遅いという地理的な差があり,その差は1-2月にさえずりはじめるヒバリやウグイスでは大きく,3-4月に渡来するツバメやオオヨシキリは中くらいで,5月に渡来するホトトギスやカッコウでは小さいことなどがわかった.今後,情報を蓄積していくことで,気候変動の鳥類への影響などを解析することができると思われる.
著者
肥山 詠美子 木野 康志 上村 正康
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.27-35, 2006-01-05
被引用文献数
2

物理学には, 数値計算上「少数粒子系のシュレーディンガー方程式を精密に解くこと」に帰着する課題が多い.これにより新しい物理的知見が得られる場合もある.この目的に役立つであろう方法の1つとして, 筆者らが提唱し発展させてきたガウス関数展開法を解説する.すべてのヤコビ座標のセットを用い, 各座標のガウス関数の積を基底関数(等比数列レンジ)として全系のハミルトニアンを対角化し固有関数を得る.これにより, 関数空間を十分広く取ることができ, 種々の物理的状況に精度よく対応できる.得られた固有関数を活用して, 散乱状態をも解くことができる.普遍性の高い解法であり, 原子分子からクオーク系の計算にまで適用されてきた.個々の技法の中には, 他の課題にも利用できるものもあろう.
著者
中村 亮一
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,これまでの手術ナビゲーション・デバイス・ロボット研究の成果を踏まえ,胎児内視鏡下手術および等張液充填式腹腔鏡下手術(WaFLES)の確立を目指し,統合的ナビゲーション内視鏡外科システムの基盤形成を図る研究を実施した.具体的には①100ms以下の誘導情報更新速度を有する術中3次元リアルタイム超音波ナビゲーション,②腹腔内で大型化する把持鉗子・超音波陰影のない弾性リトラクタ等の水腔内臓器操作用高機能「変形駆動式」手術器具,③距離マップによる安全制御を導入したナビゲーション誘導下レーザ治療システムを通じた,統合的ナビゲーション内視鏡外科システムの基盤形成を図る研究を実施した.
著者
中村 亮一 五十嵐 辰男 川平 洋
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,治療部位への精密誘導治療を行う「軟組織に対応したリアルタイムナビゲーション技術」と,外科的手技における組織臓器へのダメージを低減する革新的な内視鏡下手術「水中手術 “WaFLES”」の技術を統合的に研究開発し,「効用の最大化と副作用の最小化」を実現した次世代の超低侵襲精密外科医療技術を開発した.具体的には①術前CT画像と術中3D超音波画像の術中レジストレーション法の開発とナビゲーションへの実装,②内視鏡画像処理による臓器運動計測・補償を用いた精密レーザ照射システム,③治療工程分析技術による手術環境・技能評価法と臨床教育手法の開発を達成した.
著者
中村 亮一
出版者
千葉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

今年度は計算解剖学モデルと術具ナビゲーションログ情報を用いた手術工程・技能分析アルゴリズムの検討として,①手術技能を定量的に評価する術者スキルレベルの推定と,②手術工程評価のための手術プロセスモデルの構築と評価について研究を実施した.今年度も内視鏡下手術で最も一般的である胆嚢摘出術を基本対象とし,ファントムと内視鏡トレーニングボックスを用いた模擬的腹腔鏡下胆嚢摘出術25例のデータを用いて研究を実施した.昨年度までに開発した術具位置ログと工程分析用臓器モデルとの干渉解析により手術作業のステージを同定し,各ステージでの鉗子作業の定量解析指標(各工程の作業時間,作業進捗度,術具先端移動速度,ログ分布近似楕円面積,ログ分布近似楕円重畳率,ログデータの分布密度)を自動抽出するアルゴリズムをベースに,以下の開発評価を行った.①技能評価:上記の定量解析指標を用い,重回帰分析を利用して各作業工程の作業特性に応じて各解析指標が技能レベルに与える影響度を算出した.その結果を用いて各解析指標からその影響度を加味して最終的な定量的技能レベル値を算出する回帰モデルを開発した.②工程評価:手術ワークフロー解析の基礎として手術プロセスモデルを構築・比較する手法を構築した.手術ナビゲーション情報から取得した術具先端の通過領域 a,作業進捗度 p,術具先端速度 v,術具種類 i のパラメータを用いて手術中の一連のアクティビティの配列となる手術プロセスモデルを定義し,配列アラインメントを応用して手術プロセスモデルを整列・比較した.その結果.手術プロセスモデルは作業工程中の作業動向を忠実に表していることが示唆された.
著者
小松崎 俊彦
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,騒音の存在する自由音場において,高指向性スピーカを利用して局所的に騒音を低減し,無指向型スピーカでの場合のように,周辺空間に余分な音の増大を招くことなく静音化を実現する能動騒音制御システムの開発を目的とする.本年度は,前年度に検討したパラメトリックスピーカの指向性,および干渉音場の実験結果を踏まえて,それらを数値的に予測する理論モデルを構築し,さらに,必要な空間だけを局所的に静音化する能動騒音制御システムの実証実験を行った.まず,数値的検討については,パラメトリックアレイに関する理論モデルに基づき,波動方程式による数値計算モデルを構築した.生成される音圧の空間分布および騒音源との干渉音場特性について数値的に予測し,実験結果との定性的な一致を得た.本モデルによって,音波の高指向性をある程度再現可能であることが示されたが,実測値ほどの高指向性の再現は困難であった.これは計算過程を簡略化するための近似が主な要因であると考えられる。さらに,以上の結果を踏まえて,騒音源を模した無指向型スピーカから制御対象音を出力し,パラメトリックスピーカを制御音源として,目標点に設置したマイクロホンにおける音圧値を最小にするように制御音を生成可能なシステムを構築した.パラメトリックスピーカの再生音が非線形効果によるものであることを考慮して,非線形特性を同定可能なニューラルネットワークを採用した.周期的騒音の発生を想定した制御実験を行い,干渉音場計測により周辺音場への影響などについて調べた.制御音源として無指向型スピーカを用いた場合と比較して,目標点周辺への影響が少ない制御が可能であることが実験的に示された.
著者
大津 隆行 的場 啓子 菊地 茂行 平尾 一郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.368-371, 1955-04-25 (Released:2010-02-19)
参考文献数
8
被引用文献数
3

Polyvinylpyrrolidone, used as the substitute plasma, is said to be effective when the molecular weight is around 30, 000 to 50, 000, and the inclusion of lower or higher molecules is thought to give adverse effect as a substitute plasma. The polymer obtained by the polymerization of vinylpyrrolidone with hydrogen peroxide and ammonia catalyst was extracted with acetone at a room temperature and fractionated by reprecipitaton from aqueous solution with acetone, obtaining a distribution curve for molecular weights.On the other hand, distribution curve of molecular weights was also obtained by the same method from the polyvinylpyrrolidone marketed by the German Bayer and the two curves were found to be very similar. These results show that the extraction of low molecular polymers with a solvent like acetone is effective in obtaining polyvinylpyrrolidone of high homogeneity. Polyvinylpyrrolidone is known to take a coiled form in a solution that its viscositic characteristics in dilute aqueous solution were also examined and it was observed that the Huggins' viscosity constant, k', markedly changes with the degree of polymerization.
著者
四宮 陽子 夛名賀 友子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】一般的に嚥下困難者の食事は、外観、味共に好ましくない料理が多く、「えん下困難者用食品」の市販品も少ない。高齢化が進行する社会的なニーズからも嚥下困難者の食事をおいしく調製することは大きな課題となっている。消費者庁の定める「えん下困難者用食品」許可基準3は、やわらかいペースト状又はゼリー寄せのように複数の食材や不均質の物を含んでも良い。そこでこの基準に該当するおいしい食事を調製することを目的とし、公開されている流動食のレシピを調査して調製法を検討、食事つくりとテクスチャー測定を行った。 【方法】調査はインターネットや文献、またホテルメトロポリタンエドモンドのフレンチレストラン「フォーグレイン」で流動食フルコースを体験した。これらを基に鮭のムース(以下Aとする)、パンのムース(以下Bとする)、比較としてヨーグルトナチュレ恵(日本ミルクコミュニティ(株)以下Cとする)を調製した。テクスチャーはクリープメーター(RE2-3305B、(株)山電)、テクスチャー解析Ver.1.3で消費者庁の基準に準じて測定し、消費者庁の「えん下困難者用食品」許可基準3、嚥下食ピラミッド、ユニバーサルデザインフード(以下UDFとする)と比較検討した。 【結果】好まれる流動食は色が美しく、色の混濁を避けるため食材は単一でミキサーにかけてピューレにする、食材の味、旨味、風味を引き出す為にじっくり煮込む、食感をなめらかにするためにミキサーで粉砕、裏ごすなどを行っていた。この結果を参考にAは主材料の鮭、はんぺん、豆腐にコンソメスープを加えミキサーで粉砕、Bはパンのクラムと牛乳を煮詰め、蜂蜜を加えミキサーで粉砕を繰り返した。Cはヨーグルトに砂糖を加え攪拌した。テクスチャーは許可基準3の範囲に入り、嚥下食ピラミッドではL2~L3、UDFかたさ区分では3~4の範囲であった。
著者
加藤 内藏進 東 伸彦
出版者
岡山大学教師教育開発センター
雑誌
岡山大学教師教育開発センター紀要 (ISSN:21861323)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.17-26, 2013-03-08

梅雨は,アジアモンスーンの影響を顕著に受けた現象の一つである。本研究では,豪雨の起こり方に注目した日降水量データの分析活動や気象衛星画像の観察など通して梅雨について学ぶ学習プランを開発した。これは中学校理科での「日本の四季の天気」に関する探究的要素も含めた授業提案であるが,高等学校の『地学基礎』,『地学』,『地理』における活用も視野に置いた。研究科教員による附属学校園への相互乗り入れ授業の一環として,岡山大学附属中学校1年生を対象に授業実践を行い,結果について検討した。西日本では,東日本と違い,『大雨日』が頻繁に出現することを反映して,気候学的に総降水量が大変多くなる。授業では,そのような特徴の一端を九州の長崎と関東の東京の6〜7月における1971〜1998 年の日降水量の表から読み解く作業・考察を,中心的活動の一つに据えた。
著者
小林 一樹 船越 孝太郎 小松 孝徳 山田 誠二 中野 幹生
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.604-612, 2015-07-01 (Released:2015-05-21)
参考文献数
30
被引用文献数
2

In this paper, we describe an investigation into users' experiences of a simple talking robot with back-channel feedbacks that is designed based on an artificial subtle expression (ASE). In the experiments with participants, they are divided into six conditions based on an expression factor (three levels; human-like speech, blinking light, and beeping sound) and a timing decision method factor (two levels; a linguistic method and an acoustic method) for investigating participants' impressions on the dialogue experience. We developed an electric pedestal to show the blinking expression, on which a simple cubic robot was fixed. Participants engaged in a task of explaining a cooking procedure with a spoken dialogue system coupled with the robot on the pedestal. The robots responded to them by making the back-channel feedbacks in accordance with the expression factor. The results of questionnaire analyses suggested that the ASE-based expressions of back-channel feedback provide positive experiences for users.
著者
三枝 晋 大井 正貴 今岡 裕基 志村 匡信 井上 靖浩 楠 正人
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.1320-1323, 2014 (Released:2014-11-29)
参考文献数
11

症例は50歳,男性.貧血精査のため,カプセル内視鏡(CE)目的に当院紹介となった.CEの回盲部への到達は確認出来なかったが,観察範囲に多発小腸潰瘍を認めた.5カ月後,貧血の再発を認めたため,再紹介となった.再診時,腹部症状は認めなかった.腹部X線写真・単純CT上,骨盤腔内小腸にCE滞留を認めた.1週間後の腹部X線写真においても,同部位でのCE滞留を認めたため,腹腔鏡下手術を施行した.CEおよび病変部位は,腹腔鏡下に容易に同定可能であった.回腸末端より約50cmの回腸にCEおよびfat wrapping signを伴う狭窄を認めた.その他の小腸に異常は認めなかった.狭窄部を含む約30cmの小腸を切除し,機能的端々吻合を行った.病理学的所見は,非特異性単純潰瘍であった.術後経過は良好であり,貧血の進行を認めていない.回腸狭窄によるCE滞留例に対し,腹腔鏡下手術を施行したので報告する.
著者
Kanae OYAKE Yui KOBATAKE Sanae SHIBATA Hiroki SAKAI Miyoko SAITO Osamu YAMATO Kazuya KUSHIDA Sadatoshi MAEDA Hiroaki KAMISHINA
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.15-0521, (Released:2016-04-24)
被引用文献数
1 14

Canine degenerative myelopathy (DM) is characterized by progressive degeneration of the spinal cord. Although atrophic changes in the intercostal muscles were previously reported in the late stage of DM in Pembroke Welsh Corgis (PWCs), changes in respiratory function have not yet been examined. In the present study, we performed an arterial blood gas analysis and measured respiratory movements over progressive disease stages to document changes in respiratory function in DM-affected PWCs. We found that respiratory dysfunction progressed during the later stages of DM and correlated with a change in respiratory movement to the abdominal breathing pattern. These results suggested that hypoventilation occurred due to dysfunctional changes in the intercostal muscles and resulted in hypoxemia in the later stages of DM.