著者
門田 淳一
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.284-287, 2012-12-28 (Released:2016-04-25)
参考文献数
18

2011年わが国において策定された医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドラインでは高齢者医療の倫理的側面を含んだ治療区分という分類が導入され,抗菌薬を選択する際の基準となっている.しかし,本ガイドラインの基になった米国の医療ケア関連肺炎において「耐性菌のリスクを有するので広域抗菌薬で治療する」ことと生命予後とは関連しないことが示され,わが国においてもNHCAPを含む高齢者肺炎の予後不良因子は誤嚥性肺炎であり,抗菌薬による治療の失敗とは関連がないことが明らかとなった.すなわちこれらのガイドラインに沿った抗菌薬療法が予後改善に直結するかどうかは疑問であり,特にわが国の超高齢社会においては予防を含めた包括的な戦略が重要である.今後はNHCAP・誤嚥性肺炎に対する抗菌薬療法や胃瘻を含めた経管栄養の是非などについて,終末期医療としての側面を考えながらわが国独自のエビデンスを構築する必要がある.
著者
吉田 倫子
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

助産師の経験知の中に、乳腺炎を起こす予兆として乳児が授乳を拒否する行動があり、その理由の1つには母乳の味の変化があると言われている。そこで本研究は、第1に、乳児が示す授乳拒否と乳房トラブルとの関係を明らかにすることを目的に母乳育児の経験を持つ母親に対してアンケート調査を行った。その結果、乳児の授乳拒否と乳房トラブルには関連があり、授乳拒否は乳房トラブル発症の予知として重要であることが明らかとなった。第2に、味覚センサによる母乳の味分析により、母乳の味の基本情報と、乳腺炎に関連した母乳の味の変化、乳児が示す授乳拒否に関連する母乳の味の変化を検討した。その結果、母乳の味の基本情報として、乳房トラブルのない正常な母乳において、左右の母乳の味は相関していること、母乳の味は初乳から成乳となる過程で、苦味が増加し、塩味と旨味は低下するが、成乳となった後は味の変化はみられないことが明らかとなった。乳腺炎時の母乳では、塩味や旨味の増加、酸味や苦味、渋味の低下があった。乳児が授乳拒否を示す母乳の味は、授乳拒否を示さない母乳に比べて、旨味が増加し、苦味や渋味が減少する傾向が認められた。本研究により乳腺炎に関連した母乳の味の変化が示唆された。今回の研究で乳腺炎群の8割の児に授乳を拒否する行動が観察され、児は鋭敏にこのような味の変化を認知していると推定される。
著者
Brill Henry Jaffe Jerome H.
出版者
The Japanese Society of Clinical Pharmacology and Therapeutics
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.445-460, 1978
被引用文献数
1

米国での医薬品の乱用 (探索的および娯楽的使用) は1960年代に急激な増加を示し, 1970年代の初期にはすでにかなりの高レベルに達した.それ以来そのレベルは高いままにとどまっている.このことは調査結果から明らかであるが, 1972年以前にはこのような薬物の有害な影響を系統的に調査する体制は確立されていなかったのでそれ以前に関して確かなことはいえない.<BR>若年成人男子を中心とする数百数千の人達は, 過去に種々の医薬品を乱用した経験があり, あるいは現在乱用中である.最も広く用いられている医薬品はbarbiturates, amphetamine類およびbenzodiazepine系の抗不安薬である.この他にも合成鎮痛薬や全身麻酔薬などいろいろな医薬品が使われている.これらの薬物はalcoholやタバコと交互にあるいは同時に使われ, また医薬品以外のcocaineやheroin, 大麻, LSDおよびphencyclidineなどとも一緒に使われている.薬物摂取の初期体験は12ないし13歳という早い時期に始まり, 年齢を経るにしたがって使用頻度は増加する.その過程において最初害の少ない薬物から次第に害の大きな薬物に移行していく傾向がある.たとえば大麻の使用からamphetamine類やbarbituratesあるいは幻覚発現薬などの使用に移行している.Cocaineとheroinの乱用は最も常軌を逸したものとされている.またこれらの薬物を乱用している人たちは大抵amphetamine類, barbituratesあるいはもう少し程度のよい薬物などを一緒に用いている.<BR>米国社会では医薬品の乱用問題はalcoholや大麻問題の背後に隠れ, あまり注目されていないが, 要処法薬の乱用が薬物乱用問題に関する一般大衆の受けとめ方を悪化させていることは事実である.このように薬物乱用は広まっているにもかかわらず, 治療を必要とするような問題を起こす者は若年者の中ごく限られた少数であるという事実は注目に値する.いずれにしても最近はこのような治療を必要とする人々のための治療施設が全国的に設置されるに至った.治療を必要とする人達はしばしば薬物を大量かつ種々用い, また薬物乱用, alcohol乱用, 精神疾患, および社会的問題などが種々雑多にからみ合った複雑な状態にあるので施設はこれらの問題に対処しなければならない.<BR>薬物乱用問題が全国的な広がりを示した結果, 一般大衆のほとんどが大麻などを試みに使用することについてある程度許容するようになってきた.しかしこれらの人々も大麻を常用することを認めているわけではなく, またheroinその他の静脈内摂取薬物の乱用には強く反対している.<BR>成人の間の医薬品による依存に関しては, 伝統的な医療体系のもとに治療が行われている.政府は医薬品乱用の対策の一つとして短時間持続性のbarbituratesを医薬品市場から完全に一掃し, またamphetamineの医療適用を厳重に制限することを検討中である.これらの薬物が医師を通じて入手されているかどうか明らかではないが, 医薬品乱用全体のうちで短時間持続性のbarbituratesやamphetamine類の乱用が際立って多いことは認めざるを得ない.<BR>本席では, 公衆衛生上の配慮の妥当性という観点からこのような厳しい規制が立案されるもととなっている各種の問題点や根拠を紹介し, ますます厳しくなる政府の規制に対する反対意見の論旨を概括し, さらにまた, 米国における薬物乱用問題の対処の仕方がいかに米国社会特有の伝統的および政治的な体質に根ざしているかを明らかにしたい.
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.708, pp.46-49, 2014-10-27

続いて、さまざまなアプリでできる自動化設定について、個別に見ていこう。 アプリの中でも、Webブラウザーにはさまざまな自動化の手段がある。特に、米グーグルの「Chrome」や米モジラ財団の「Firefox」は、無料の「拡張機能」(アドオン)による自動化が可能…
著者
越智 啓太
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、主に大学生カップルにおける、デートバイオレンス、デートハラスメントを対象にしてその予測と対処策についての研究を行った。まず、学生相談所などの機関の調査を行い、現在の大学生においてデートバイオレンス、デートハラスメントが大きな問題となっていることを明らかにした。つぎに、これらの行動を測定するための尺度を構成した。三番目にこれらの行動を引き起こす加害者の属性、性格、交際の特徴について明らかにし、これらのデータからデートバイオレンス・ハラスメントを予測するための式を構成した。最後にそれぞれのデートバイオレンス・ハラスメント行為における適切な対処方略を明らかにした。
著者
永塚 規衣 木元 幸一 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.99, 2004 (Released:2004-09-09)

【目的】昨年の調理科学会大会において、煮こごり調製時、特に煮汁に溶出したコラーゲンの可溶化と調味料との関係に注目し、各種調製条件の違いが煮こごりの物性に及ぼす影響について報告した。今回はコラーゲンの可溶化と加熱時間及び加熱温度との関係に注目し、煮こごりの物性変化を微視的に追跡・検討を行った。【方法】試料の鶏手羽先を約1cm角切りにし、50gに全面が水に浸る水量30gを加え600Wの電熱器で加熱、沸騰後火力を300Wに調節して、10分から120分までの定時間加熱した後、各試料をろ過し、煮汁が30mlとなるように調製した(100℃加熱試料)。同様に加熱温度を90℃に保持しながら加熱した試料を調製した(90℃加熱試料)。各試料ゾルの動的粘弾性、17O-NMRによる緩和時間(T1)、動的光散乱による粒度分布、GPC及び電気泳動による分子量分布を測定した。次いで各試料を内径32mm、高さ15mmのペトリ皿に分注し、冷蔵庫で24時間保存してゲル化させ、破断特性を比較した。【結果】鶏手羽先は加熱を続けるほど動的弾性率が増加し、硬いゲルを形成した。緩和時間も加熱時間の経過と共に短くなる傾向がみられ、水分子の活動が抑制されていることが推測された。また、動的光散乱、電気泳動結果より、加熱時間と共に粒径及び分子量が小さくなる傾向がみられた。肉中のコラーゲンは加熱すると熱変性しゼラチンとなるが、溶出された成分のうち、α成分が特異的にゲル形成能が高い傾向にあると示唆されており、本GPC結果から加熱時間の経過と共にα成分が増加している傾向が認められた。また、100℃加熱ゲルが90℃加熱ゲルよりもゲル強度の高いゲルを形成していた。
著者
三崎 拓郎 岩 喬 関 雅博 飯田 茂穂 向井 恵一 相沢 義房 小渡 輝雄 岩 亨
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.975-980, 1989

教室で外科治療を行った非虚血性心室性頻拍32例の内,3例は薬物療法に強く抵抗し遠隔地よりヘリコプターおよび航空機で搬送され緊急手術を行った.緊急手術の特殊性として,手術部位決定のための術前,術中の電気生理検査を十分行いえない点があげられた.すなわち術前電気生理検査の際に容易に心室細動となるため,心内膜カテーテルマッピングを行いえないこと,逆に術中心表面マッピングでは,術前長期あるいは蘇生に際して大量に使用された抗不整脈剤の影響のためもあって,患者の持っている全ての頻拍が誘発されるとは限らないことである.対策としてあらかじめ心電図所見などから予想される心内膜部位に予防的に広範な冷凍凝固を行うことが重要である.
著者
長谷川園吉 編
出版者
長谷川園吉
巻号頁・発行日
1885
著者
稲垣 克彦 小林 尚登
出版者
日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.13, no.8, pp.1122-1129, 1995-11-15 (Released:2010-08-10)
参考文献数
9

Autonomous walking machines are generally required in dangerous situation in which humankind cannot step. Thus, walking machines have to return to the base position by themselves, even if a leg is injured by some accidents. In such a case, hexapod walking machine has advantages, because it can keep walking by remained five legs. This paper proposes a new gait rule named injury-adaptive wave gait. The new gait is available for not only normal hexapod walking, but also injured hexapod walking. Additionally, to apply the new gait rule smoothly, we propose a new control strategy for leg motion control. The strategy uses a notion of distributed control to realize synchronized motion among six legs. By combination of the gait rule and the control strategy, walking machine can realize suitable gait for its walking condition.
著者
山本 修一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.468, pp.49-54, 2011-03-03
被引用文献数
1

複数のシステム間における情報連携を容易化することは,個別システムの機能を越えた非機能要求である.本稿では,非機能要求シナリオに基づくアーキテクチャ分析手法を情報連携性に適用することにより,情報連携アーキテクチャを分析できることを明らかにする.
著者
安川 雄一郎
出版者
Kyoto University
巻号頁・発行日
1997-03-24

新制・課程博士
著者
安川 雄一郎
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1997

理博第1835号
著者
川崎 良孝 吉田 右子 小林 卓 三浦 太郎 呑海 沙織 安里 のり子 久野 和子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は19世紀中葉から21世紀にいたる図書館の歴史的展開を、新たな視点で解明している。「サービスの提供」という基本的価値に、1960年代から「資料や情報へのアクセスの保障」と「図書館記録の秘密性の保護」という価値が加わり、これらの3つの価値は思想的、実践的に20世紀末に向けて深められていった。しかし21世紀に入り、「アクセスの保障」と「秘密性の保護」という価値は、社会や技術の変化を受けて揺らぐとともに、それらを意識した図書館の理論や実践が生まれている。本研究は広範な一次資料の発掘や実践の研究を通じて、こうした歴史的展開を実証的に解明し、一般図式を提供した。
著者
岩崎 千晶 村上 正行 山田 嘉徳 山本 良太
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究課題①「正課と学習支援の連環によるディープラーニングを促すデザイン要件の提示」に関しては、日本語ライティングにおいてライティングセンターを活用した学習者の個別傾向を分析し、リピーターへとつなげるための学習支援の手立てを検討した。また学習の深化を目指し、ICTを活用したライティング指導の実践研究を行った。学習支援には、個別指導に加えて、自主学習用の教材開発も含まれるため、英語・日本語ライティング教材を開発し、正課と学習支援の連環による学びの深化に取り組んでいる。「研究課題②多様なアクターが関わるラーニング・コモンズにおける学びのプロセスモデルの提示」では、各大学がどのように学習者の学びを評価しているのかについて調査を行った。具体的にはCiNiiを活用し、ラーニング・コモンズの評価を扱う論文66件を分析した。調査の結果、質問紙調査、観察調査、インタビュー調査の順で調査法が採用され、量的な調査が75%を占めた。今後、学びのプロセスや成果を明らかにするためには、質的な調査やラーニング・コモンズにおける理念(育むべき学習者像)に関する議論の重要性を示した。特に学習成果に関しては汎用的な能力が評価指標となっていたため、本研究で指摘した学習者にとっての学習概念の更新を促す「照射」の概念を取り入れる必要性を確認した。「研究課題③学習支援を提供する組織における学生スタッフを含めた教職員を対象としたSD・FD研修プログラム・eラーニングの開発と評価」では、教育の質保証、授業設計、評価方法、ICT活用、学習環境をテーマに研修プログラムを開発し、運営・評価をした。またライティング研修の中から、ライティングの理念・学習支援の歴史等のプログラムをeラーニング教材として提供するための資料教材を完成させた。またライティングの学習支援に関する指導モデルを提供するため、eラーニング教材を開発した。