著者
Noriyuki MIZUTANI Yuko GOTO-KOSHINO Masashi TAKAHASHI Kazuyuki UCHIDA Hajime TSUJIMOTO
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.15-0688, (Released:2016-04-21)
被引用文献数
1 33

Clinical and histopathological characteristics of 16 dogs with nodal paracortical (T-zone) lymphoma (TZL) were evaluated. At initial examination, generalized lymphadenopathy was found in all dogs, and peripheral lymphocytosis was found in 10 of the 16 dogs. At initial diagnosis or during the disease course, 8 dogs (50%) were affected with demodicosis. Immunohistochemical analysis for CD3, CD20 and CD25 was performed for 6 dogs with TZL; the tumor cells were positive for CD3 and CD25 and negative for CD20. Median overall survival time was 938 days. A watchful waiting approach was adopted for 6 cases (38%), and 5 of the 6 dogs were still alive at the end of follow-up. The clinical course of TZL in dogs is generally indolent; however, many cases develop a variety of infectious and other neoplastic diseases after the diagnosis of TZL.
著者
Slater David FULCO FLAVIA
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-11-09

Dr. Fulco’s research was meaningful for the progress of the project“Voices of Tohoku”. Her interdisciplinary approach between humanities and social sciences was particularly successful in emphasizing the importance of individual and collective memory to build more resilient communities.She established her fieldwork in Minamisanriku (Miyagi) to follow the activities of a group of kataribe (storytellers of the disaster), and analyze the connection that they have with their community. She conducted one-to-one interviews with kataribe practitioners and other people involved in the recovery process to collect background data.Through participant observation and interviews, she attempted a classification of who they are, how they assume this role in their community and which are their preferred audiences. Analyzing the practice of kataribe identified which and whose are the stories they tell during the tours. To diffuse the partial results of her research during the fellowship she participated in several international conferences both abroad and in Japan. She was invited to conduct three lectures in Japan. She is currently working on three journal articles and one book chapter that will be soon ready for peer-review. She also started a project to explore and promote cultural practices in post-disaster areas involving photography. As part of this project she organized an exhibition at the Italian Institute of Culture in Osaka.
著者
塚原 伸治
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

(商店街の展開期に関する研究) おもに、昭和戦前期までの時期について、千葉県香取市と福岡県柳川市の中心市街地における商業がどのような事情にあったのかについて分析をおこなった。『柳川新報』(明治36(1903)年発刊)、『さはらタイムス』(明治41(1908)年発刊)という2つの地元紙を中心に、適宜各商家の所有する史料を参照しながら、商店街の「展開」期における具体的な経緯や、背景などを理解した。国が戦争へと向かう時期における商店街の対応や反応について理解が進んだが、反面、戦時中という事情から、公刊された資料のみで状況を理解することの困難さが浮き彫りとなった。また、戦中戦後期においては、旧藩主家が大きな変化を被り、市内の実業家として定着していった時期でもあるため、立花家の動向についてもより注視して理解していく必要があることが明らかになった。(商店街の現在に関する研究) 予定通りに長期調査を実施することができなかったが、インフォーマントが関東に来訪するタイミング等を利用して調査を進めた。フィールドの外部でおこなわれる商人たちの活動に予定外に立ち会うことになったことで、「シャッター商店街」言説の裏で必ずしもローカルな文脈にとらわれない商売が展開されていることが明らかになった。(成果公開) 前年度の研究成果である論文が、「商店街前夜―買い物空間の創出と商店主たちの連帯―」として、『江戸-明治連続する歴史(別冊環23)』(藤原書店、2018)に掲載された。
著者
三浦 敦 寺戸 淳子
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度に引き続き、海外共同研究者の協力を得て、次の調査を行った。・カンボジアに海外ボランティアに行った学生について、ボランティア期間中およびボランティア期間終了後のその学生のSNS利用(特にLINE)と、彼らがとってLINEに載せた写真、およびLINE上の文字や画像による会話について、データ収集を行った(三浦)。そのデータについては現在、解析中である。・介護ボランティア活動を行う北海道の施設において、その活動の状況について参与観察調査を行った(寺戸)。この研究では、まだ彼らのSNS利用についての調査までには至っていないが、基礎的なデータはほぼ集まりつつある。・介護実習を行う大学生に関して、その学生の介護実習への関わりとSNS(LINE、インスタグラム、フェイスブックなど)利用の状況について、参与観察及びインタビュー調査を行った(デュテイユ=緒方)。また、埼玉大学および早稲田大学において、運動部(ダンス部および柔道部)に所属する学生たち、およびスポーツ実習に参加する学生を対象に、スポーツ活動とSNS利用およびSNS上の写真投稿の関連性について、参与観察調査およびインタビュー調査を行った(デュテイユ=緒方)。あわせて、早稲田大学スポーツ科学部のスポーツ人類学研究室において意見交換を行った。以上の諸研究については、現在、データをまとめているところであり、理論的考察も含めて、次年度においてその成果を、国際会議および国際ジャーナル上において公表する予定である。
著者
吉田 早悠里
出版者
南山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、2017年8月6日~9月5日にかけての約1ヶ月間、エチオピア・オロミア州ジンマ県ゲラ郡に位置するムスリム聖者が暮らす一集落で現地調査を実施した。具体的には、主に以下の3点について調査を実施した。(1) 集落内外の個人・集団間関係:2016年度に調査を行った対象集落の住民74世帯に加えて、近隣集落に居住するムスリムとキリスト教徒、およびオロモ、アムハラ、カファといった民族にも調査対象拡大して世帯調査を実施した。これにより、調査対象集落の住民74世帯が、集落内外でどのような個人・集団間関係を構築し、生活しているのかを具体的に明らかにすることができた。(2) 集落における研究代表者の立場:研究代表者が同集落における重要なアクターとして位置づけられるようになった要因を明らかにするべく、研究代表者の存在がどのように集落の住民にとらえられているのかについて聞き取り、観察を行った。また、集落を拓いた聖者アルファキー・アフマド・ウマルはさまざまな予言を残しており、そのなかには「外国人」に関する予言もある。集落の住民がこうした予言をどのように解釈し、「外国人」と研究代表者をどのように関連づけているのかについても検討した。(3) 集落が置かれた現代的状況:調査対象の集落は、1940年代に宗教的実践を重視する集落として形成、維持されてきたが、特に1991年以降のEPRDF政権のもとで、さまざまな変化を経験している。そのひとつとして、外国政府やNGOによる援助がある。同集落が位置する郡では、JICAが2003年から参加型森林管理計画プロジェクトを実施してきた。こうしたプロジェクトが、集落にどのような影響を与えたのかについても検討し、コラムとして発表した。
著者
磯本 宏紀
出版者
徳島県立博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、近現代の移住漁民集団の移動と定住について、アワ船団、遠洋カツオ・マグロ船団,潜水器漁民集団、一本釣り漁民集団の4つの漁民集団に属する漁民に着目して、その実態を明らかにし、それぞれの漁民集団の比較研究を行うことを目的としている。平成29年度には、次のとおり現地調査及びアンケート調査を行い、調査データを得た。①4月から6月にかけて、以西底曳網漁業の船員経験者に対するアンケート調査を長崎市及び福岡市において実施した。28年度に計画していたものであるが、29年度に実施することができた。あわせて、データの集計、分析についても行った。②5月には福岡市において以西底曳網漁業(アワ船団)の経験者を対象に聞き取り調査を実施した。また、以西底曳網漁船の漁労長による漁撈日誌に関する調査も行った。③12月には以西底曳網漁業を行っていた福岡市の水産加工会社において、社史編さん事業等に使用された以西底曳網漁業に関する文献調査を行った。④12月には以西底曳網漁業の関係者が同郷者集団として実施している長崎市における阿波踊りに関する聞き取り調査を実施した。唐津市では一本釣り漁民等として鳴門市堂浦から移住した漁民を対象として聞き取り調査を実施した。なお、本研究の成果について、『生活文化研究』(大韓民国国立民俗学博物館)『徳島地域文化研究』(徳島地域文化研究会)誌上に論文等2本を執筆し、9月にソウル市で、10月に徳島市で、3月に佐倉市で口頭発表等3回行った。
著者
會田 理人
出版者
北海道博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、明治期から昭和戦前期の北海道利尻島・礼文島、松前小島における海女の活動に焦点を当てて、海女出稼ぎ漁の歴史、および海女の道具・技術、さらには海女が採取した海産物の流通・利用、資源保全の実態などを、歴史学・民俗学の双方向から調査・分析を行う。その上で、北海道における海女出稼ぎ漁の歴史を明らかにするとともに、磯まわり資源の保全を取り巻く様々な環境の変化と、こうした状況への対応を考察することを目的としている。平成29年度は、研究代表者が勤務する北海道博物館において、同館所蔵の磯まわり漁具の再調査を実施して、それぞれの資料が有する特徴などの整理を行った。また、明治期から大正期の『小樽新聞』、『樺太日々新聞』掲載のコンブやアワビ、テングサなどの磯まわり資源に関する記事を収集・整理するとともに、記事内容のデータベース化を行った。新聞資料調査から、明治期から大正期の北海道日本海沿岸地域、樺太亜庭湾沿岸地域における採取物の種類・採取期ごとの漁況や、採取物の加工商品の流通・販売、道内外の商況など、海女出稼ぎ漁を取り巻く環境を再検討する作業を進めることができた。『小樽新聞』の調査は、主に小樽・積丹半島を中心とする地域の磯まわり漁や海産物の加工・販売、商況、北海道利尻島・礼文島の海女出稼ぎ漁に関する情報を収集するためのものである。『樺太日々新聞』の調査は、樺太亜庭湾沿岸地域の磯まわり漁などに関する情報を収集するためのものである。今後も引き続き新聞資料調査を継続して、海女出稼ぎ漁に関する記事の収集を続ける必要がある。
著者
高木 史人 矢野 敬一 立石 展大 蔦尾 和宏 伊藤 利明 生野 金三 浮田 真弓
出版者
関西福祉科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は当該研究の2年目として、平成28年度に行ったシンポジウムの成果を活かして、さらなる研究の深化を期した。具体的には国語科の文部科学省検定済教科用図書及びその教師用指導書に徴して、「伝統文化」教材の扱われ方と指導書における指導法への言及の分析を進めた。なお、平成29年告示の『小学校学習指導要領』では、従来の学習指導要領における国語科の「3領域及び1事項」という区分が見直された。従来の1事項が〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕であったものが、今次の学習指導要領では大きく〔知識及び技能〕〔思考力、判断力、表現力等〕〔学びに向かう力、人間性等〕の3本の柱が立てられ、その中の〔知識及び技能〕が「(1)言葉の特徴や使い方に関する事項」「(2)情報の扱い方に関する事項」「(3)我が国の言語文化に関する事項」に分かたれ、その(3)が従来の〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の前半「伝統的な言語文化」部分に相当するものと見られる。この間の学習指導要領の推移、変化の分析に多くの努力を行った。これらは生野金三・香田健児・湯川雅紀・高木史人編『幼稚園・小学校教育の理論と指導法』(平成30年2月、鼎書房刊、206ページ)にまとめられた。また、高木は「社会的・共=競演的でひろい悟り」へのアプローチ―小学校教育史、国語科教育史との係わりから―」(『口承文芸研究』第41号、平成30年3月、日本口承文芸学会刊)において平成29年12月に行った科研費メンバーによるシンポジウムの概略を紹介しつつ、現行の伝統文化教育の根拠となっている平成18年改教育基本法第2条第5項の淵源が、昭和16年3月改正の小学校令第1条第3項にあることに触れて、日本の長い教育史の中ではこれは伝統的でなったことと結論づけた。伝統という語じたいが昭和初期の流行りであった。
著者
川添 裕子 金 振晩 金 宰郁
出版者
松蔭大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は,日韓の美容整形の展開を政治経済の文脈に位置づけ,日本の「普通」感覚・理想美の変化,及び90年代以降の韓国における美容整形展開の経緯を明らかにすることを目的としている.29年度,日本では,明治以前にさかのぼって医療史,美の変遷を概観し,文献,関係者への聞き取りから医療行政の面について考察を行った.医療観光のコンテンツとしては,消極的なクリニックの方が多いと考えられる.整形経験者には,極めて限られた人数ではあるが,継続して聞き取り調査をしている.90年代末には,美容整形のブレーキでもあった「普通」文化は,既に,反転して美容整形促進に向いているように思われる.歴史と突き合わせると,儒教規範は,近代的身体観と伝統的規範の橋渡しという役割と終えたと見ることはできるが,相変わらず日本の整形経験者の秘匿意識は高いので,さらなる考察が必要である.韓国については,関係学会への聞き取りから,日本同様の形成外科とそれ以外の医師による組織的な対立が顕在化しつつあるのが明らかになった.また美容整形をテーマにしている研究者と意見交換を行った.29年度から加わってもらった研究分担者を介して,韓国の美容整形クリニック院長への聞き取りを行った.韓国,日本,中国の患者の差異については,30年度に外科医及び経験者の聞き取りを加えて分析する.韓国における医療観光政策は,同じく29年度から加わってもらった研究分担者に協力を依頼している.30年度に,共同で聞き取り調査を実施して,まとめに入る予定である.なお,英国Palgrave Macmillan社の「Palgrave Studies in Fashion and the Body」シリーズ刊行を目標とする国際共同研究に加入した.成果の英文発表,ネット公開の着手を始めた.
著者
岩田 重則
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2017年度の本研究は、前年度2016年度に行なった調査・研究を継続し、本研究のために3地域でフィールドワークを行ない、また、研究成果を発信するための単著の執筆と国際会議での発表を行なった。フィールドワークについて。三重県における両墓制と火葬墓制、また、三重県に隣接する滋賀県における両墓制と火葬墓制の調査・研究を行ない、遺体埋葬の両墓制と遺体火葬の火葬墓制との間の同質性を抽出するための作業を行なった。また、滋賀県から北側に隣接する福井県では、その越前地方では火葬墓制が、その若狭地方では両墓制が顕著であるので、福井県でもその同一県内での両墓制と火葬墓制の調査・研究を行なった。これらによって、両墓制と火葬墓制ともに、仏教民俗としての性格が色濃い墓制であることが確認できた。従来の研究では、両墓制は仏教的性格のない「固有信仰」とされてきたが、そのような従来の通説とは異なる調査・研究を行なうことができた。単著の執筆について。2017年度は、上記の調査・研究の成果として、単著の執筆を行なった。『日本鎮魂考―歴史と民俗の現場から』(2018年4月刊行、青土社。四六版上製363頁)、および、『火葬と両墓制の仏教民俗学』(仮題。2018年6月刊行予定、勉誠出版。A4版上製330頁予定)の2冊を執筆した。学会発表としては、2017年11月9日―10日国際会議、The Death of Funeral Rites in Est Asia(韓国、The Academy of Korean Studies) で″The Tomb of the Tenno in Modean Japan″を行なった。
著者
俵木 悟
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は、一般理論研究に関しては、前年度に収集した論文等を読み込んだ。とくにアメリカ民俗学における個の創造性への着目に対して、ヨーロッパの民俗学に集合的創造(collective creation)に関する議論の展開があることがわかった(ヴァルディマル・ハフステイン、レギナ・ベンディックス等)。実証的調査研究に関しては、岡山県の備中神楽に関して成果があった。若い神楽太夫たちが行っている稀少演目の復活上演や神楽を広めるための活動は、電子メディア上でのやりとりも含む共同的創造の様相として捉えることが可能であり、その一端について他の研究課題のテーマとも関連させて一編の論考を著し、来年度に刊行される予定である。また必ずしも本研究課題の期間中の調査に基づくものではないが、以前の調査成果を本研究課題のテーマに沿った問題設定も踏まえて新たに論じた2本の論文が刊行された(業績①②)。さらに本研究課題の着想にいたる背景の一つであった国際的な無形文化遺産保護の取り組みについてこれまで論じてきた論考をまとめた単著を刊行した(業績③)。さらに、前年度に行った本研究課題の中心的テーマであるアートの民俗学的理解に関しての座談会の記録も刊行された(業績④)。総じて今年度は、本研究課題に関連してこれまで行ってきた業績の刊行という面で成果が多かった。業績 ①「伝承の「舞台裏」─神楽の舞の構造に見る、演技を生み出す力とその伝えられ方」飯田卓編『文化遺産と生きる』(臨川書店、2017) ②「「正しい神楽」を求めて―備中神楽の内省的な伝承活動に関する考察―」『日本常民文化紀要』33(2018) ③『文化財/文化遺産としての民俗芸能―無形文化遺産時代の研究と保護』(勉誠出版、2018) ④小長谷英代・原聖・俵木悟・松本彰「特集討論「アート」:社会実践と文化政策」『文化人類学研究』18(2017)
著者
石本 敏也 及川 高 渡部 圭一
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、民俗文化を当事者に種々の負担を強いるコストとして把握し、そのコストとモチベーションという観点から実態を捉え直すと共に、その調整過程を明らかにしようとするものである。対象地域は、東北、関東、中部、近畿と広く設定し、その事例も民俗文化財や世界遺産として登録された内容をも含み、民俗学・宗教学・歴史学の知見を生かし横断的な解明を試みる。継承された民俗文化の再評価については、文化資源や観光の文脈で注目されてきた視角であるが、それが時に当事者にとっては重い負担となることは従来重視されてきたとは言いがたい。本研究は、まずは民俗文化が当事者においてこうした重いコストであり得ることを改めて強調し、その上でコストを引き受けることの有意性を明らかにし、民俗文化の再評価における新たな知見を加えようとするものである。本年度は二回の打ち合わせ会議、研究会を開催し、設定した対象地域内における民俗文化の実態とそのコストについての意見交換を行うと共に、コストを核に据えた研究方法の深化と課題について討論した。また、メンバー各自の調査地域における調査研究を遂行し、関連する資料の発掘・蓄積を行うと共に、日本民俗学会における発表を通し個々の研究成果を公表した。加えて、年末に行った研究報告会において個々の成果を共有した。本年度の成果として、共著における民俗継承に関する研究論文を寄稿し、新たな知見を学会に提供することができた。
著者
谷部 真吾
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は、本研究において事例として取り上げる3つのけんか祭りの現状を把握するために、富山県高岡市の伏木曳山祭を5月14日~16日に、兵庫県尼崎市の築地だんじり祭り9月15日~19日、静岡県周智郡森町の森の祭り11月3日~6日に、それぞれ参与観察を行った。その結果、各祭礼が現在「穏やかに」運営されていることを確認した。また、伏木曳山祭が脱「暴力」化していった過程を明らかにするための聞き取り調査および新聞記事収集を、9月4日~11日に実施した。これによって、当祭礼が高度経済成長期に変容していったプロセスをより詳細に明らかにすることができた。また、戦後の日本の社会的・文化的状況や、その当時の地域社会の実態を理解するために、関連文献の収集・精読を行った。この作業を通して、各地のけんか祭りが似たような時期に脱「暴力」化していった理由を分析する際に必要となる、基礎知識を獲得することができた。さらに、最先端の研究動向を把握するために、日本文化人類学会第51回研究大会(5月27日~28日)ならびに日本民俗学会第69回年会(10月14日~15日)に参加した。なお、日本民俗学会では、研究発表も行った(発表タイトル:「批判されるけんか祭り ―高度経済成長期の伏木曳山祭(高岡市)を事例として―」)。加えて、祭礼研究を精力的に進めている江戸川大学の阿南透教授や、長野大学の中里亮平講師などと研究会を行ったり(4月29日、10月13日)、祭礼をテーマとした各種研究会、具体的には、第148回歴史地理研究部会(5月20日)、遠州常民談話会(9月30日)、第4回山鉾屋台研究会(10月13日)、現代民俗学会第40回研究会(12月17日)にも参加したりし、本研究のさらなる深化に努めた。こうした研究成果の一部を、論文「伏木曳山祭 ―熱狂と信仰と―」(阿南透(他・編)、『富山の祭り』、桂書房、2018年3月、pp.79-94)にまとめた。
著者
和田 健
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、戦時体制下にさしかかる1930年代後半を中心に、生活習俗に関わる改善指導が、どのような文脈のもとで策定されていたかを検討するものである。特に農山漁村経済更生運動における更生計画書に与えた生活改善事項記述の影響を考察することを中心に行った。そのため、生活改善同盟会が刊行した指導書について、分析を行っている。本年度は昨年度に引き続き、通俗教育の官製運動である生活改善運動のなかで刊行された『生活改善の栞』および『農村生活改善指針』に記載された衛生および衣食住に関わる生活改善指導の記述について考察を行った。『生活改善の栞』はおもに、都市部に居住する中産階層を対象とした生活のあり方を示したものであり、例えば衣食住に関わる記述において、特に婦人服、児童服の奨励と指導、また食に関しては、例えば食べきれない食事の提供をやめることを提唱、住環境については、下水関係のあり方と間取りについて詳細に改善事項を提案している。『農村生活改善指針』でも、そのような衣食住の生活改善について記されているが、特に衛生面での記述に紙幅を割いている。例えば寄生虫が堆肥を経由して野菜などの収穫物により蔓延しないよう、堆肥のあり方と便所の改善(内務省式改良便所)については詳細に記している。いわゆる不衛生から来る病気(回虫、トラホームなど)の予防のあり方について詳細に記している。本年度は、両指導書に見られる「衛生」に関わる記述を中心に比較して、人々の日常生活に「衛生思想」が埋め込まれる感覚について、および「衛生的」とされることばの受容について、あわせて考察を行った。また生活改善同盟会設立の趣旨の中に「国民の覚醒を促し思想を善導する」と記されているが、「思想を善導」することと、旧来より人々が行ってきたさまざまな民俗慣行との関わりについて衛生思想の観点から分析を行った。
著者
山田 慎也 金 セッピョル 朽木 量 土居 浩 谷川 章雄 村上 興匡 瓜生 大輔 鈴木 岩弓 小谷 みどり 森 謙二
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

現代の葬儀の変遷については、整理を進めている国立歴史民俗博物館蔵の表現文化社旧蔵の葬儀写真を順調にデジタル化を進め、約35000のポジフィルムをデジタル化をおこなった。昨年度、さらに追加の資料が発見寄贈されたので、デジタル化を進めるための情報整理を行っている。また近親者のいない人の生前契約制度等の調査は、それを実施している横須賀市の具体的な調査を行った。一定の所得水準以下の人だけを対象としていたが、それ以上の人々も希望があり、死としては対応を迫られていることがわかった。また相模原市や千葉市などでも行政による対応がなされ、千葉市の場合は民間業者との連携が行われていることがわかった。また京都や大阪での葬送儀礼や墓の変容については、その歴史的展開の相違から東京という政治的中心とは異なる対応をとってきていることが調査によって判明した。そこでその研究成果について、民間の文化団体と協力して「上方で考える葬儀と墓~近現代を中心に」というテーマで、大阪天王寺区の應典院を会場にでシンポジウムを開催した。当日は人々の関心も高く、約150名ほどが集まり会場は立ち見が出るほど盛況であった。また3月には、葬儀の近代化によって湯灌などの葬儀技術や情報が東アジアに影響をおよぼし、生者と死者の共同性に影響を与えていることを踏まえ、東南アジアの多民族国家における葬儀と日本の影響を把握するため、マレーシアの葬祭業者や墓園業者などの調査を行い、またマレーシア死生学協会と共催で国際研究集会「葬送文化の変容に関する国際比較―日本とマレーシアを中心に―」を開催し、両国のおける死の概念や葬儀産業の役割、専門家教育などについて検討を行った。
著者
横川 忠晴 谷 月峰 崔 傳勇 小泉 裕 藤岡 順三 原田 広史 福田 正 三橋 章
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.221-225, 2010 (Released:2010-03-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

New kinds of cast and wrought (C & W) Ni-Co base superalloys (TMW alloys) have been developed based on the innovative concept of combining two kinds of γ-γ′ two-phase alloys, Ni-base and Co-base alloys, for the applications of turbine disks and high-pressure compressor blades. The results based on testing 20 kg ingots indicate that TMW alloys show excellent high temperature strength and formability, may provide 50°C temperature advantage in 630 MPa/100 h creep performance over C & W alloy U720Li.    In this paper, we report our new results on the full-scale pancakes manufactured through the C & W process for real components. The results indicate that TMW alloys had good process-ability in the ingot making and forging into disk pancakes. Pancake disks with fine grain size of about 10 μm were successfully obtained for TMW alloys. TMW alloys provide 58°C to 76°C temperature advantages in 0.2% creep strain life under the 630 MPa condition, over alloy U720Li.