著者
大竹 孝昌 徳丸 正孝 村中 徳明 今西 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.697, pp.19-24, 2003-02-28
被引用文献数
3

本論文では,カオスニューラルネットワーク(CNN)を用いた自動作曲システムを構築する第1段階として,メロディのコーディング方法についての検討を行った.CNNには,幾つかのパターンを記憶パターンとしてホップフィールド型ニューラルネットワークに埋め込み,記憶パターンと異なるパターンを初期値として与えると,様々なパターンを次々と想起するという特徴がある.また,想起過程において,複数の記憶パターンの特徴を併せ持つパターンや,記憶パターンと印象が近い新たなパターンなど,数々の興味深いパターンを想起するという興味深いふるまいを示す.本研究では,このようなCNNの特徴を利用した自動作曲システムの構築を試みる.本論文では,システム構築の第1段階として,メロディのコーディング方法についての検討を行っている.CNNに記憶させるパターンは,パターンを構成するニューロンの発火・非発火状態のバランスを考慮する必要がある.そこで,幾つかのコーディング方法を提案し,それらの方法を用いてメロディの作成実験を行った.また,作曲されたメロディの試聴比較評価を行い,コーディング方法の有効性について検証した.
著者
Ryo Iizuka Takashi Funatsu
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
Biophysics and Physicobiology (ISSN:21894779)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.63-69, 2016 (Released:2016-04-22)
参考文献数
63
被引用文献数
1 9

The Escherichia coli chaperonin GroEL is an essential molecular chaperone that mediates protein folding in association with its cofactor, GroES. It is widely accepted that GroEL alternates the GroES-sealed folding-active rings during the reaction cycle. In other words, an asymmetric GroEL–GroES complex is formed during the cycle, whereas a symmetric GroEL–(GroES)2 complex is not formed. However, this conventional view has been challenged by the recent reports indicating that such symmetric complexes can be formed in the GroEL–GroES reaction cycle. In this review, we discuss the studies of the symmetric GroEL–(GroES)2 complex, focusing on the molecular mechanism underlying its formation. We also suggest that GroEL can be involved in two types of reaction cycles (asymmetric or symmetric) and the type of cycle used depends on the concentration of non-native substrate proteins.
著者
Akira R. Kinjo
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
Biophysics and Physicobiology (ISSN:21894779)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.45-62, 2016 (Released:2016-04-22)
参考文献数
33
被引用文献数
9

The multiple sequence alignment (MSA) of a protein family provides a wealth of information in terms of the conservation pattern of amino acid residues not only at each alignment site but also between distant sites. In order to statistically model the MSA incorporating both short-range and long-range correlations as well as insertions, I have derived a lattice gas model of the MSA based on the principle of maximum entropy. The partition function, obtained by the transfer matrix method with a mean-field approximation, accounts for all possible alignments with all possible sequences. The model parameters for short-range and long-range interactions were determined by a self-consistent condition and by a Gaussian approximation, respectively. Using this model with and without long-range interactions, I analyzed the globin and V-set domains by increasing the “temperature” and by “mutating” a site. The correlations between residue conservation and various measures of the system’s stability indicate that the long-range interactions make the conservation pattern more specific to the structure, and increasingly stabilize better conserved residues.
著者
吉松 軍平 坂田 直昭 山内 聡 赤石 敏 藤田 基生 久志本 成樹 海野 倫明
出版者
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 = Journal of abdominal emergency medicine (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.989-992, 2012-07-31

70歳代,男性。35%過酸化水素水100mLを誤飲し,頻回の嘔吐と腹部膨満が出現。30分後,当院に搬送。右下腹部の圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった。腹部CT検査で胃結腸間膜内と肝内門脈に気腫像を認め,上部消化管内視鏡検査で下部食道から胃大弯側全体に著明な発赤腫脹とびらんを認めた。過酸化水素水誤飲による上部消化管粘膜障害と門脈ガス血症が考えられたが,腹膜炎の所見はなく,意識障害や神経症状などの脳塞栓の症状を疑わせる所見も認めなかったため,絶飲食下で,プロトンポンプインヒビターとアルギン酸ナトリウムの投与を行った。腹部症状は速やかに改善し,誤飲24時間後のCTで門脈ガスは消失していた。水分/食事摂取を開始したが症状悪化はなく,入院後5日目に退院となった。過酸化水素水誤飲による門脈ガス血症は消化管穿孔を認めなければ保存的治療が可能であるが,脳塞栓などの塞栓症の前段階であり十分に注意して観察する必要がある。
著者
立川 和美
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.101-107, 2011-11

1 0 0 0 OA 『名人伝』論

著者
山下 真史
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.11-19, 1994-12-10

中島敦の『名人伝』は、名人を純粋さの体現者とする通念に対して、名人を突き詰めれば木偶に至るということ、そしてその名人を偶像化することの滑稽さを描いた作品である。川端康成の『名人』などと比較しながら、同時代の文学状況にこの作品を置いてみると、中島が太平洋戦争下の日本の<純粋さ>を徒に崇める風潮への批判、陶酔を拒否して醒めた認識を持ち続けることをモチーフとしてこの作品を書いたことが分かる。
著者
大野 誠司 一井 麻理子 間宮 勝 大田 建久 一ノ瀬 琢美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.81-90, 1996-03-25
参考文献数
10
被引用文献数
4

光メモリとしての応用が可能な双安定光スイッチングは光情報処理システムに不可欠な技術である. また偏光スイッチングは入力に対する反転出力と非反転出力を同時に得ることができる. これをふまえ本論文では双安定性を示すモードホッピングを有する半導体レーザ(マスタレーザ)を光源とし, 発振しきい値電流付近で定バイアス電流駆動とした別の半導体レーザ(スレーブレーザ)に対してTM偏光波注入を行う. これら二つのレーザからなる系を一つのシステムと見なしたとき, システムへの電流入力とシステムからの出力光の偏光状態の間に双安定な偏光スイッチングが実現できることを提案し, それを実験において確認した. まずこのスイッチングの原理として半導体レーザ増幅器の増幅率の注入光波長依存性, TM波注入による偏光出力の制御, モードホッピング等に関して説明し, 次いでこの原理に基づいた実験とシミュレーション結果をもとに双安定特性に関して検討した. この双安定偏光スイッチングの利点としてマスタレーザとスレーブレーザの特性に応じてON/OFF出力の差, 双安定ループの回転方向が設定可能であることを理論的, 実験的に示した. 更にスレーブレーザの多段接続が可能であることを推察した.
著者
村上 龍一 花田 良子 村中 徳明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.377, pp.91-96, 2014-01-04

近年,日本における伝統文化の1つとして,アニメ,マンガ,イラストなどの芸術分野が世界的に注目されるようになってきた.その影響により,絵を描く人々,通称"絵師"を目指す若者が,ここ数年で急増してきている.しかし,描画スキルを独学で身に付けることは,際限のない時間と努力を必要とすることもあり,非常に難しい.また,描画教室や専門学校等に通う方法もあるが,この場合は時間と努力に加え,多額の資金が必要となる.そこで著者らは,以上のような悩みを解決するため,初心者を対象とし,人物キャラクターをモチーフとした独学型の描画支援システムを構築した.また,本システムにおける有効性を検証するため,実描画実験,及び本システムを評価するためのアンケート調査を行った.
著者
佐々木 猛智 小倉 知美 渡部 裕美 藤倉 克則
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1-2, pp.1-17, 2016-04-13 (Released:2016-04-15)
参考文献数
31

Provanna Dall, 1918ハイカブリニナ属は深海の化学合成生物群集に広く生息し多産するグループである。日本の近海では,ハイカブリニナ属にはP. glabra Okutani, Tsuchida & Fujikura, 1992サガミハイカブリニナ,P. abyssalis Okutani & Fujikura, 2002カイコウハイカブリニナ,P. shinkaiae Okutani & Fujikura, 2002シンカイハイカブリニナの3既知種が分布しており,種によって深度分布と底質が異なる。本研究では南西諸島海域から新たに発見された新種について報告する。貝殻の比較形態学的解析および分子系統解析の結果から,4新種の存在が明らかになった。(1)P. subglabra n. sp.ニヨリハイカブリニナ(似寄灰被蜷:和名新称)は膨らみのある平滑な貝殻で特徴づけられ,沖縄トラフの熱水噴出域では最も多産する。種小名と和名は,本種がかつてP. glabraサガミハイカブリニナに同定されていたことに由来する。(2) P. clathrata n. sp.コウシハイカブリニナ(格子灰被蜷:和名新称)は粗い格子状の彫刻を持ち,沖縄トラフ南部の熱水噴出域に生息する。(3) P. lucida n. sp.ミガキハイカブリニナ(磨灰被蜷:和名新称)の殻は平滑で縫合が深く,今のところ沖縄トラフ北部の南奄西海丘にのみ出現する。(4)P. kuroshimensis n. sp.クロシマハイカブリニナ(黒島灰被蜷:和名新称)の殻は平滑でオリーブ色の殻皮を持ち,黒島海丘に固有である。一方,歯舌の形態は4種の間で明確な差は見られなかった。この発見により,ハイカブリニナ属は南西諸島の狭い範囲で多様化していることが明らかになったが,その要因としては南西諸島海域の化学合成生態系形成域が多様な環境にあることが関係していると考えられる。