著者
岐部智 恵子 平野 真理
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.29.1.3, (Released:2020-04-03)
参考文献数
8
被引用文献数
4

This study developed the Japanese version of the Highly Sensitive Child Scale for Childhood (HSCS-C) and tested its validity and reliability. Data were collected from 400 dyads of primary school children (third to sixth grades: Mage = 9.75 years, SD = 1.22; male = 48.5%) and their mothers (Mage = 41.00 years, SD = 5.05). Two factors were found: the first was the conjunction of Ease of Excitation and Low Sensory Threshold, and the second was Aesthetic Sensitivity. A bivariate correlation analysis indicated that children’s sensory processing sensitivity, measured with HSCS-C, was associated with self-reported empathy and mother-reported temperaments, with both forms being distinct. The internal consistency was found to be satisfactory.
著者
伴 弘司 北沢 祥一 小林 聖
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.25-32, 2013-06-01 (Released:2013-09-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

様々な機器を無線で接続して自動化やシステムの効率化を進める機器間通信 (Machine-to-Machine,M2M) 技術が広がりを見せている.この技術を狭小な機器内空間に適用して機器内の部品間の通信用配線を無線化しようとするのがワイヤレスハーネスである.我々はこれまでにICT機器内の通信用ハーネスに着目し,その無線化の要素技術の確立と効果について検証を進めてきた.今年度からは対象を車両に向け,燃費向上や省エネ化を進める車載ハーネスの無線化技術の研究を開始したところである.ワイヤレスハーネスを特徴付けるものは,部品が多く金属に囲まれた狭小な空間内という伝搬環境と,低システム遅延や多元接続性などの通信要求仕様である.ただし,後者については適用シーンによって様々な考え方がある.ワイヤレスハーネスは軽量化をテコとする省資源・省エネに効果があるだけでなく,作業性向上などの様々なメリットがあるが,実用化例はまだ多くない.コストとともに信頼性や厳しいシステム要件がハードルになっているように思われる.そこで,我々のこれまでの研究成果を振り返るとともにワイヤレスハーネスについて内外の動向を紹介し,そのユニークさや有用性,課題などについて論じる.
著者
相沢 直樹
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 人文科学 = Bulletin of Yamagata University. Humanities
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.1(118)-31(88), 2008-02-15

The goal of this paper is to present research of the “Gondola Song” (Gondora-no Uta : words by Isamu Yoshii, music by Shinpei Nakayama), which was one of the most popular songs in the Taisho era and continues to be one of the most well-loved songs even today. The “Gondola Song” is famous for its strikingly simple and straightforward opening message : ”Life is so short. Do love, young girl!” It was originally written for the 1915 performance of Turgenev's “On the Eve” by Art Theater (Geijutsu-za) in Tokyo and was sung on the stage by the famous actress Sumako Matsui. In this paper, we shall examine the following points: 1) To confirm the text of the Song and restore the original text in the stage scenario if necessary. 2) To compare Yoshii's text with that of Ogai Mori's translation of “Venetian Song” , which is inserted into H. C. Andersen's “Improvisator”. 3) To investigate the background of Yoshii's writing of the Song (including the fact of his borrowing from Ogai's “Improvisator” ). 4) To reveal the rhetoric and technique of Yoshii's text as a verse. 5) To examine in what way and to what extent the introduction of the Song into the drama depends on Turgenev's original novel and its translation by Gyofu Soma. 6) To describe specific features of Nakayama's melody from a viewpoint of Japanese and European music while referring to Japanese culture of the Taisho era. Yoshii's now almost unknown open letter to Matsui is also introduced and examined in detail in this paper. Finally, some reflections of the “Gondola Song” in the area of so-called subcultures, such as animations and computer games, in the Heisei era are introduced proving both the longevity of the Song and the magical power of its words .
著者
須永 和博
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.57-69, 2016 (Released:2020-01-13)

2011年に出版されたThe Tourist Gaze 3.0は、従来の観光のまなざし論に対して投げかけられた様々な批判への応答という性格をもっている。その1つが、観光のまなざしの変容可能性に関する議論である。従来の観光のまなざし論では、観光者のまなざしはマスメディア等を通じて形成され、観光者はこうした事前に作られた枠組みで対象を見るとされてきた。その結果、観光者は制度的に構築されたまなざしを無批判に受容する受動的な存在として位置づけられてきた。こうしたアーリの観光のまなざし論の決定論的な側面については、しばしば批判的検討が加えられてきたが、The Tourist Gaze 3.0では、アーリ自身も実際の観光現場で生起する様々なパフォーマンスや偶発的経験等によって、固定的なまなざしが変容していく可能性について指摘している。 以上の視点を踏まえ、本論文では、大阪・釜ヶ崎で行われている「釜ヶ崎のまちスタディ・ツアー」(以下、スタディ・ツアー)の考察を行う。具体的には、スタディ・ツアーへの参加によって、釜ヶ崎の人々を異質な存在として他者化するようなまなざしが融解し、<地続き>の存在として釜ヶ崎を見る新たなまなざしが立ち現れてくる過程を明らかにする。
著者
坂本 裕
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1962, no.19, pp.115-117, 1962-11-15 (Released:2009-07-31)
参考文献数
2

サザンカおよびツバキのポリフェノールのクロマトグラムから考えて,茶葉のポリフェノールの特徴であるカテキン類のうち,共通に存在するのはl-エピカテキンおよび没食子酸のみであって,その他のカテキン類,特にエステル型の存在は認められない,さらにサザンカとッバキのポリフェノールの構成はきわめて似ているものの,茶葉のそれとはかなり異なっている。フラボ'ノイドはサザンカについてのみ同定を行なったが,茶葉とほぼ似た構成をもっていることが判明した。またカフェインは従来は茶のみに存在していて,'ツバキ,サザンカには存在しないように考えられていたが,今回の研究で両者ともにカフェインが存在することを確認した。
著者
垣花 真一郎 安藤 寿康 小山 麻紀 飯高 晶子 菅原 いづみ
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.295-308, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
37
被引用文献数
16 7

3-4歳児55名を対象に, かな識字能力の4つの側面の認知的規定因を検討した。識字能力として, 文字音知識, 特殊表記(拗音, 長音, 促音)の読み, 長音単語の表記知識, 読みの流暢性を対象とし, 関わりを検討する認知的要因として, (1)モーラ意識, (2)数唱, (3)非単語復唱, (4)語彙, (5)視知覚技能を対象とした。文字音知識の上位群は, (1)-(5)すべてで下位群を有意に上回っていた。ただし, 文字音知識の群を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果, 独立した寄与をしていたのは, モーラ意識のみであった。特殊表記に関しては, 長音の読みの上位群は下位群に比べ, 非単語復唱の成績が高かったが, 促音, 拗音については関係性が見出せた認知的要因はなかった。長音単語の表記知識は, 語彙との間で相関がみられ, 長音部の表記違い(e.g., さとお)も正答とみなした場合, モーラ意識, 非単語復唱, 視知覚技能との相関が見出された。読みの流暢性に関しては, 数唱, 非単語復唱のほか, 長音単語の表記知識との相関が見出された。本研究の結果は, かな識字に対する各認知的要因の相対的重要性は, 識字の発達に伴い変化することを示唆している。
著者
内山 三郎
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.1-7, 2014-03-10

ヒトの生まれ月(誕生月)については、特に季節による変動は無いと考えられる。これは、厚生労働省による人口動態統計の月別出生数の比較により裏付けられる。しかしながら、運動成績成功者としての職業スポーツ選手の生まれ月分布に偏りがあることは、特に若者に人気のあるサッカー競技では国内・国外において良く知られた事実である。即ち、日本のJ リーグ・サッカー選手では、早生まれ(1月から3月生まれ)の選手が少なく、代わりに遅生まれ(4月から6月生まれ)の選手が多い。これに類似した現象は、オランダとイギリスのプロ・サッカー選手でも報告されている。日本のプロ野球選手においても、同様に早生まれが少ないことが報告されている。野球・サッカー等のプロ球技スポーツにおいて早生まれが少ないという現象は、幼少期における早生まれの体力的劣勢の影響と考えられる。幼少時の体力格差は月齢に比例しており、同学年の4月生まれと3月生まれの間には体力格差として約12 ヵ月の開きがある。学校教育は学年で輪切りにされた状態で行われており、学校スポーツが早生まれ・遅生まれ等体力格差の存在する児童群の中で競争が行われる結果、早生まれの者が正選手に選抜される割合は少なくなると考えられる。学校教育では、それが各学年で繰り返されることとなる。成人ではこの体力格差は解消しているが、幼少時の体力格差によって形成された成功体験が累積的に影響を及ぼし、その結果として幼少時の体力格差が成人後にまで影響すると考えられる。日本サッカー協会も、ヨーロッパサッカー連盟の早生まれの影響に対する取り組みに倣い、選手の育成と発掘において早生まれの影響を認識した対応をする重要性を報告している。 それでは、幼少時体力的に劣勢である早生まれは、学習成績にどのような影響を及ぼすのであろうか。早生まれが学習成績にも影響を及ぼすのであれば、入学試験を行う学校においては学生の生まれ月分布の偏りとなって現れてくることが考えられる。学習時間の持続や学習意欲においては体格・体力の充実が関与することが考えられ、その影響が大きければ幼少時の体力格差は運動成績と同様に学習成績にも影響を与え、成人後までその影響が残ることは充分に考えられることである。学習成績に対する生まれ月の影響については、早生まれによる影響が見られるという報告がある一方、調査の対象によって影響が見られないという報告もある。本研究では、小学校・高等学校・大学における入学者の生まれ月を調査し、早生まれの影響が現れる状況を検討した。次いで、早生まれと学習成績の関係について、親や教育関係者に求められる理解と対応についての考察を行った。
著者
榎本 祐嗣
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.582-585, 1995-08-20 (Released:2008-04-17)
参考文献数
10
著者
河野 真理江
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.73-94, 2020

<p>本論文は、日本における「メロドラマ」の概念を探求する。「メロドラマ」は、"melodrama"の旧来からの翻訳語であるが、フィルム・スタディーズにおけるメロドラマ概念の浸透によって、現在その意味は曖昧になっている。そもそも"melodrama"がいつ日本語文脈に受容されたのかは明らかになっていない。メロドラマ映画にかんする先行研究を踏まえつつ、この「メロドラマ」の実態を明らかにすることが本論文の目的である。</p><p>"melodrama"の日本語文脈への導入は、1870年代の翻訳辞典に始まり、当初はしばしば「歌舞伎」と訳されていた。1880年代には洋行者たちが「メロドラマ」の観劇体験を報告するようになり、1910年代にその知識は演劇関連の学術書に応用された。1920年代、メロドラマの言説は、映画にかんするものに集中していき、この言葉の意味は地域言語的なものへと変容していく。1930年代には、「メロドラマ」は通俗的、感傷的な劇を指す言葉となり、女性映画を含む日本映画のジャンルの一つとしても理解されていった。</p><p>主な論点は以下の二点である。</p><p>1. メロドラマと日本文化との出会いは、19世紀後半に位置する。</p><p>2. 日本における「メロドラマ」はその固有性ばかりでなく、メロドラマ概念の普遍性を実証する。</p>
著者
土屋 信行
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.11-34, 2012-12-01 (Released:2017-07-12)
参考文献数
23

The formation of the part of Tokyo East Lowland(below sea level area)and the uncertainties of flood hazards there: Tokyo East Lowland is characterized by the gather of mouths of the Tone,the Arakawa and the Sumida rivers in a narrow area. Therefore, Edogawa city at their down streams always fears flood disasters, which is the low land less than zero mean sea level. The heavy inundation will happen in the drainage area even pumping up water, in the coastal area by high tide and at any local areas with guerrilla rainfall. Tokyo East Lowland including Edogawa city is on the deep as the maximum of 40m alluvium soil layers, which are composed from loose sands and soft clays. The ground water used to be significantly pumped up for the industry and to obtain methane gas. The significant ground settlement by the dewatering made the land to be below the sea level. If the river dykes were collapsed by the earthquake, the 70% of Edogawa city would be flooded. As Japan is also located just on the course of the typhoons,the huger ones than ever might possibly attack Tokyo. Therefore, in this study the worse cases of the Kathleen typhoon in 1947 were assumed and several typhoon patterns were simulated in Kanto area for the uncertainties of flood hazards. Finally, it was found that the design flood at Yattajima of the Tone river might be exceeded in the case of shifting the course of Kathleen in 1947 by only 50km to the northwest. Therefore, the author has concluded that flood prevention works must be conducted for the such worse situations. It is concluded that Tokyo and Edogawa city are always feared by huge flood disasters never experienced and their dykes will be the key of life line for Tokyo and Japan.