著者
小野 一穂 杉本 岳大 濱崎 公男
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.329-339, 2012-04-01 (Released:2012-04-01)
参考文献数
11

音声信号のデジタル化,マルチチャンネル化に伴い,音波を電気信号に変換するマイクロホンに対する要求も高度かつ多様化している.放送においても実際に収音を行う現場では,収音する対象や環境に応じて多種多様なマイクロホンを使い分ける.そこで本解説は,収音条件の観点からどのようにマイクロホンが選ばれ使われるかについて,近年の研究成果の紹介も交えて解説を行う.
著者
中根 一朗
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集B編 (ISSN:18848346)
巻号頁・発行日
vol.78, no.790, pp.1220-1234, 2012 (Released:2012-06-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

Japanese cedar (Cryptomeria japonica) pollinosis is the most common allergic diseases in Japan, and some researchers show about 26.5% of population being affected. Japanese cedar pollen is carried by the wind, but the pollen suspension transport behavior must be different from the wind (carrier air flow) behavior because the aerodynamic diameter of this pollen is relatively large. I estimate the mean aerodynamic diameter of Japanese cedar pollen as about 35μm in this study. The pollen falls when the wind is weak, and it is blown up and carried (saltation and resuspension) by the strong wind. If the pollen flow behavior was completely corresponding to the wind, the range of Japanese cedar growth would be very broad and the peculiar distribution of Japanese cedar might be confused. This study aims to clarify the cedar pollen suspension transport behavior and saltation transport mechanism, and to confirm the prediction method of this behavior and mechanism. Accordingly, the followings were done : (1) The aerodynamic diameter of Japanese cedar pollen was measured and the test particle was selected. (2) The suspension and saltation behavior of the test particle was observed and measured by the optical measurement methods. (3) The suspension and saltation behavior was also numerically calculated. These measured and calculated results are shown and evaluated by each other result in this paper. The knowledge about the relation between air and particle velocities is acquired. The saltation mechanism is cleared. The suspension and saltation transport behavior can be predicted by this study method.
著者
彭 昕
出版者
長崎国際大学国際観光学会
雑誌
観光学論集 = The NIU journal of tourism studies (ISSN:18809219)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.63-68, 2020

「艦これ」佐世保鎮守府巡りは、2018年3月17日(土)から始まった佐世保市の公式観光催事である。本稿では、「艦これ」佐世保鎮守府巡りの特性について明らかにするために、催事の開催期間に参与観察を行った。「艦これ」佐世保鎮守府巡りは、2回の催事において主催者・自治体・参加者の3者の互惠関係が構築され、ゲーム・アニメ作品を通して佐世保の知名度を全国的に高めた。しかし、短期間に多彩なイベントが催されたことによって、多くの参加者がグルメコラボ店とスタンプラリー以外に佐世保の名所巡りを楽しめない事態が生じ、佐世保の魅力を十分に実感できないことが課題として指摘できる。
著者
古関 喜之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-21, 2016-01-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
23

本稿では,台湾産マンゴーの日本への輸出を取り上げ,ポジティブリスト制度導入後の日本市場向けマンゴーの生産・輸出システムと,安全性や品質管理を重視した日本市場への対応が生産地域や台湾農業に与えた影響について検討した.日本でのポジティブリスト制度導入後,台湾では政府主導によって,日本向けマンゴー輸出業者と日本市場向けマンゴー園の登録制度,および輸出前の生産者単位による残留農薬と糖度の検査体制が構築された.安全性を重視した対日輸出への取組みは,農家に農薬費の負担を増大させたが,収益増加にも結びついている.また,生産者の安全管理に対する意識を高め,台湾国内では日本の安全基準に基づく輸出システムで生産されたマンゴーが流通し,差別化商品として扱われている.台湾農業にとって,安全性重視の対日輸出への取組みは,輸出や国内販売において,台湾産マンゴーの市場を多様化させる一因となっている.
著者
中川 恵理子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.397-409, 2012-07-01 (Released:2017-11-03)
参考文献数
28

本稿では,独占的大規模産地による全国的な広域流通システムが生鮮野菜価格の空間分布をどのように規定しているのかを,長野県産の夏ハクサイを事例に,輸送費と市場規模に焦点を当てて検討する.まず,統計データの分析によって,(1)長野県からの輸送費と卸売価格の間には正の相関関係がみられること,(2)同一輸送費圏内では大規模市場の価格は平均値に近く,中小規模市場の価格は取扱量と負の相関関係にあること,の2点が示された.次に,聞取り調査より,JA全農長野の一元的出荷体制が輸送費と卸売価格との相関関係を生んでいることが確認された.そして,同一輸送費圏内での価格の分布を規定している要因は大規模市場の建値形成機能であり,中小規模市場の価格が取扱量と負の相関関係にある要因は,JA全農長野との直接取引の有無および主要な取扱品の規格の差であることが明らかになった.
著者
今里 悟之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.106-126, 2012-03-01 (Released:2017-02-21)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

本研究は,耕地一枚ごとの通称地名である「筆名」について,命名原理と空間単位に関する従来の知見を再検証した.棚田と散村が卓越する,長崎県平戸市宝亀町および木場町の8世帯・計139枚の耕地を事例に,筆名とその由来,筆名が指示する空間単位,土地利用,面積と斜度,周囲の景観要素などについて調査した.その結果,従来の研究で提示された四つの命名原理の出現頻度が平地農村とは異なる点,同一の集落内でも命名原理に大きな世帯差が見られる点,時に複数の命名原理による筆名が存在する点,小字名の転用以外の方法でも情報量が節減されている点,などが明らかになった.さらに,認知言語学におけるアフォーダンス,プロトタイプ,ランドマークとトラジェクター,ベースとプロファイルの諸概念が,命名原理の一部を理論的に説明し得ることが見出された.空間単位に関しては,従来の仮説の部分的な修正が必要である.
著者
髙野 宏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.565-584, 2010-11-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
40

大田植の習俗は,民俗学と芸能史の立場から重要な習俗とみなされてきた.前者では,日本の古い田植の様式であり,日本人に固有の信仰を残しているとされた.後者では,その芸態が田楽史を明らかにする重要な手掛かりと考えられた.大田植に関する研究は,こうした学術的な関心に基づいて推進された.しかし,従来の研究では,同習俗の社会的基盤や地域社会に果たす意味・機能の問題には,ほとんど関心が払われなかった.本稿では,以上の問題意識に基づき,大正・昭和戦前期の広島県西城町八鳥の事例を取り上げ,大田植と地域社会との関係を考察した.その結果,①大田植の習俗は経営危機に陥った畜産農家の救済を目的とし,彼らと取引関係にある家畜商によって主催されたこと,②そこには畜産業の発達に伴う家畜商の社会的地位の向上,中核的農家の不在が関与していたこと,③牛小作と相まって,当地域での畜産業の構造・生産を安定化していたことが判明した.
著者
藤井 紘司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.1-20, 2010-01-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
64

琉球弧の最も南に位置する八重山諸島では,水稲耕作のできない「低い島」からマラリアの蔓延する「高い島」へ耕作地を求めて通耕してきた歴史がある.従来,八重山諸島における遠距離通耕は旧慣租税制度である人頭税〔1637~1902〕によるものとされてきた.本稿は,1903(明治36)年の地租改正による人頭税撤廃以降,つまり近代期における海を越える遠距離通耕の変遷,その消長をあきらかにすることを目的とした.研究方法としては,土地台帳とそれに付随する地籍図,および明治30年代の行政文書「喜宝院蒐集館文書」の分析,また聞書きによるフィールド調査を行った.これらの調査によって,遠距離通耕の興隆期は近代期にあったことをあきらかにした.これらの現象は,A)新税法の施行,B)市場経済の浸透,C)「高い島」に位置する村落の衰退,D)技術的な発達などを背景として,「低い島」の過剰人口を吸収する生業適応として興隆期を迎えた.
著者
伊藤 徹哉
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.118-143, 2009-03-01 (Released:2011-05-31)
参考文献数
60
被引用文献数
1

本研究は,都市再生政策が早くから実施されているドイツのミュンヘンを事例として,都市再生政策の展開過程を整理し,1980年から2000年における都市空間の形態的・社会経済的変化という視点から都市再生の実態を分析することを通し,都市再生政策に伴って生じる空間再編の地域的差異の特徴を考察することを目的とする.ミュンヘンでは1970年代以降に都市再生政策が本格的に導入され,個別の既存住宅の改良を促進するための複数の施策のほか,主な事業として都市更新事業が実施され,既成市街地が面的に改善されていった.建築物の形態的側面からみると,都心2~4 km圏に位置する東西の都市更新事業の実施区域や,都市政策上の重点開発地域である中央駅周辺などの都心周辺において都市再生が活発である.特定区域における都市再生の活発さは,公的事業による直接的な開発行為,およびそれらを契機とした民間投資による開発を反映している.都市再生の社会的側面として,建物更新が顕著である都心周辺の更新度が「中・高」の地区においては,ドイツ人人口が維持され,または増加しており,社会経済活動の中心である18~64歳までの生産年齢人口の割合が高く,社会的な再生産がみられる.都市再生政策の実施を契機として,衰退地域が居住地としての魅力を回復し,都心周辺という立地条件を備えた開発地としての魅力を高めており,政策的判断を通して都市再生が特定地域で促進されるという選択的な都市再生が進行している.
著者
小川 健二郎 原 英彰 オガワ ケンジロウ ハラ ヒデアキ Kenjiro OGAWA Hideaki HARA
雑誌
岐阜薬科大学紀要 = The annual proceedings of Gifu Pharmaceutical University
巻号頁・発行日
vol.65, pp.20-27, 2016-06-30

わたし達の目は、日常的に太陽の紫外線や酸素などの影響を受けている。加えて、スマートフォンやパソコンなど電子端末機器の普及が進む現代社会において、目に関するトラブルの増加が懸念される。視機能の維持は我々のQOLに大きく関わるため、薬剤による治療や進行の抑制とともに、食品の機能性による予防も重要である。健康食品素材として広く利用されるビルベリーは、ブルーベリーの近縁種にあたる果実であり、果皮および果実内部にポリフェノールの一種であるアントシアニン色素を多く含んでいる。ビルベリー由来アントシアニンが目に与える機能性としては、in vitroおよびin vivo 試験において、網膜神経節細胞保護作用や光刺激に対する網膜視細胞保護作用、血管新生抑制作用、網膜炎症の軽減による視機能低下抑制作用などが報告されている。一方で、ヒト臨床試験の報告が少ないことが課題とされていたが、2015 年4 月より新たな食品表示基準として機能性表示食品制度が施行されたことにより、ヒト臨床試験の報告が増えてきている。ビルベリーエキスに含まれるアントシアニン(以下、ビルベリー由来アントシアニン)においても新たな報告がなされている。ビルベリー由来アントシアニンを健常人が接種することで得られる機能性として、物の遠近を見る近見視力や毛様体筋の緊張状態、眼精疲労の客観的指標であるフリッカー値、および目の疲労感の主観的指標であるvisual analogue scale(VAS)スコアや自覚症状アンケートにおいて、プラセボ接種群と比較して有意な改善が示されている。そのため、機能性表示食品として、目のピント調節力を改善すること、目の疲労感を和らげることが表示されている。今後もさらにヒト臨床試験が実施されることで、新たな機能性が明らかになることが予想される。
著者
Koichi TANAKA
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.292-302, 2008-05-31 (Released:2010-03-12)
参考文献数
67
被引用文献数
2 3

The purpose of this paper is to review the achievements and issues in transportation geography in Japan since 1990, focusing on modern transportation. Although the number of studies in transportation geography has decreased, the studies that have been conducted can be classified into four types, namely, studies on (1) transportation enterprises, (2) the effects of transportation developments on given areas, (3) nodal structures, and (4) airports and harbors and their hinterland. Most of the studies focus on the former two themes, while some papers have been presented on the latter two themes in the 2000s. Finally, the author points out the issues that need to be addressed —in the study of transportation geography— against the backdrop of the trend of deregulation and globalization. It is necessary to examine the significance of deregulation in a region by considering the transportation in and orientation of the city as well as its public transportation. Meanwhile, the transportation geographers in Japan should conduct studies on air liberalization and the hub airport competition in Asia.
著者
近藤 暁夫
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.215-227, 2008-05-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17

本研究では, 事業所の販売促進活動の空間的な展開にみられる特性を, 屋外広告活動を事例に検討した. 調査は京都府丹後地域の主要道路沿い 103kmの区間で行い, 1, 021件の屋外広告と, 491件の広告主を確認した. 広告主を検討したところ, 屋外広告の掲出に積極的なのは, 顧客との財やサービスの交換が日常的でない業種の事業所, 主要道路から離れた地点や市街地の外縁部などの相対的に顧客誘導上の立地環境が不利な事業所が多い傾向があった. 広告主となる事業所の多くが市街地の外縁部や外部に立地しており, 彼らは市街地の出入り口付近に多く広告を出すことから, 屋外広告は市街地の中心部で少なく外縁部で多い, 同心円状の分布パターンを示す. また, 屋外広告の広告圏には業種特有の傾向がみられ, 冠婚葬祭業や不動産関係, 遊興・観光施設, 各種商品小売店などは事業所から 10km付近にまで広告を展開させるが, 飲食店やガソリンスタンドなどは 5km程度の広告展開にとどまる.
著者
淡野 寧彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.382-394, 2007-05-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2 2

本稿は, 茨城県旭村における養豚業の存立形態を示すとともに, 銘柄豚事業による農産物のブランド化が, 養豚業の存続にもたらす有効性と課題にっいて検討した. 旭村では, 1970年代以降, 養豚専業経営農家が現れ, 養豚団地の整備や糞尿処理設備の導入によつて, 養豚業の基盤が整えられた. 産地全体での生産・出荷体制は構築されず, 個々の農家による経営規模拡大や生産性の効率化によって, 茨城県最大の養豚産地となっている. しかし現在, 環境問題対策への負担増や肉豚取引価格の下落が課題となっており, その対策として銘柄豚事業が取り組まれつつある. 銘柄豚事業への着手は, 生産部門にとって, 肉豚取引価格の向上や安定, 流通・販売部門との結びつきの強化, 豚肉の販売状況に関する情報の入手といった利点を生み出している. 一方, 販売部門からは, 質的・量的安定性やトレーサビリテイの実現可能性が, 銘柄豚事業の利点として評価されている. しかし, 銘柄豚の流通範囲が限定的であることや, 小売業者によって銘柄豚の取扱いに差異があるといった課題が生じている.