著者
中村 彰宏 小杉 緑子 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.507-518, 2002-02-28
被引用文献数
2 2 2

関西旅客ターミナルビルのアトリウム空間を対象に,アトリウムの構造,トップライトの透過特性,太陽位置,屋外の光量子量の推定値を用いて,快晴日の透過光量子量を算出するモデルを作成した。算出値は,アトリウム内で得られた実測値の日および季節変化を良好に再現した。アトリウム植栽樹木,屋外の植栽樹木,室内に生育する観葉植物の光合成,呼吸速度の実測値と,このモデルによる透過光量子量から,アトリウムへ導入した植物の生育特性評価を行うために,成長量の指標となるCO_2収支を個葉レベルで算出した。またアトリウムの天井高,植栽場所を変化させた場合の透過光量子量およびCO_2収支も算出した。観葉植物のCO_2収支は,植栽場所やアトリウムの構造から受ける影響が少なく,低光量条件下での植栽利用が容易と考えられた。いっぽう,低光量条件下で順化したモッコク,カラタネオガタマでは,CO_2収支の変化が大きいため,アトリウム構造や植栽場所を十分検討してから,緑化に用いる必要があると考えられた。
著者
長田 光世 森 清和 田畑 貞寿
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.151-156, 1993-03-24
被引用文献数
1 3

本研究は,生態学的な水辺緑地計画の視点から,計画指標となりうるトンボの種の把握を目的に,トンボの生息環境としてきわめて良好な環境である桶ケ谷沼におけるトンボの優占種の検討を行い,それを基礎とした複数の池の比較考察を行ったものである。その結果,トンボ科の広域分布種について,環境復元の段階的な発展に伴い種を4段階に分類し,それぞれ有効と推定できる指穏種を提示した。また,特にチョウトンボは,池を中心とする水辺緑地の多様な構造に対応して個体数密度を増加させ,さらに最もトンボ相が豊かになるような多様な構造をもった水辺緑地では,夏期調査時のトンボ科全体に対して最大の優占種となる指標性をもつことが把握された。
出版者
加藤福次郎
巻号頁・発行日
1894
著者
岡田 努
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.162-170, 1993-11-10
被引用文献数
4 15

従来青年期の特質として記述されてきたものとは異なり, 現代青年は, 内省の乏しさ, 友人関係の深まりの回避といった特徴を示していると考えられる。こうした特徴は, 新しい対人恐怖症の型として注日される「ふれ合い恐怖」の特徴とも共通すると考えられる。本研究は, 「ふれ合い恐怖」の一般健常青年における現れ方 (ふれ合い恐怖的心性) を, 内省, 友人関係の持ち方, 自己評価間の関連から考察した。内省尺度・友人関係の深さに関する尺度を変量としたケースのクラスタ分析の結果, 3つの大きなクラスタが得られた。第lクラスタは内省に乏しく友人との関係を拒否する傾向が高く, 「ふれ合い恐怖的心性」を持つ群と考えられる。第2クラスタは内省, 対人恐怖傾向が高く自己評価が低い, 従来の青年期について記述されてきたものと合致する群であると考えられる。第3クラスタは自分自身について深く考えず友人関係に対しても躁的な態度を示し, 第1クラスタとは別に, 現代青年の特徴を示す群と考えられる。この群は自己評価が高く, 対人恐怖傾向については, 対人関係尺度の「他者との関係における白己意識」下位尺度得点以外は低かった。これらのことから, 現代の青年の特徴として, 自分自身への関心からも対人関係からも退却してしまう「ふれ合い恐怖的心性」を示す青年と, 表面的な楽しさを求めながらも他者からの視線に気を遣っている群が現れている一方, 従来の青年像と合致する青年も一定の割合存在することが見いだされた。
著者
中尾 和昇
出版者
関西大学
雑誌
千里山文学論集 (ISSN:02861852)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.一-二八, 2014-09-20
著者
田上 善夫
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.101-114, 2014-03-20

In this study, the relation between climate environment variation and religious service was investigated.First, the shrines for the god who presides over climate were studied. Next, the present religious services concerned with climate were extracted, and their distribution maps over the whole country were drawn.Furthermore, the meaning of the religious service distribution for each climate element was analyzed. As a result, the followings were found: 1) The God concerned with climate, especially the one praying for rain, has been enshrined until the present around the mountain-foot areas of Nara and Kyoto. They are worshiped as rain god, water god or dragon god by the waterfalls and the mountain streams. 2) The traditional place for the rain gods is not the source of a river in that area. In addition, the places have changed with the times. The religious service, for a rain-praying god has its complex characteristics. They were also influenced by the central governor. 3) In religious service names, many characters concerned with climate are seen. They are for fine, rain, hot, cold, wind, water and so on. 4) Names of the religious services concerned with climate do not always show the climate phenomenon itself. In addition, it is not often the case that the god concerned with climate changes into a personified god. Except for the god of water, god of dragon, god of wind and god of thunder, the nature of the climate is indirectly indicated. 5) The number of religious services concerned with climate is different for each of the climate elements. Religious services for rain or river are few, but those for water are many. It is thought that deciding where to enshrine the god is easy in the case of water (god). 6) Distribution densities of religious services concerned with climate differ with areas. It is high in Kinki District, but low in Tokai and Nankai District. The distribution of religious services concerned with climate is not equal to the distribution of the climate phenomena itself. The former one is considered to have been influenced by the ancient religious services, such as praying for rain. 7) Among the religious services concerned with climate, the ones for water, fire or wind are especially common.The theory of Godai of the Mikkyo Buddhism, in which water, fire and wind are the three of the five elements of the universe, may have influenced it.本論では気候環境の変動と祭祀のかかわりについて,調査・分析を行った。まず天候や気候にかかわる神を祀り,その祭祀の伝えてきた神社について,調査した。次に現在も行われている気候にかかわる祭祀を抽出し,その全国的な分布を調査した。さらに気候の要素ごとに祭祀の分布を明らかにし,その分布の傾向のもつ意味について分析した。その結果,およそ以下のことが明らかになった。1) 気候にかかわる神で主要な祈雨神は,現在も奈良や京都周辺の山麓などに祀られている。いずれも滝や渓流の地であり,雨神,水神,また龍神として祀られている。2) 古代より伝わる祈雨神の地は,地域的な水源の地ではない。また時代によりその位置も変化している。祈雨神祭には複合的な性格があり,国家の影響も受けている。3) 現在行われている祭祀にも,気候にかかわる文字が含まれるものが多数ある。晴雨や寒暖に関するものがあり,さらに風や水に関するものはとくに多い。4) 祭祀の名称は,気候現象そのものではない。また人格神化される場合は限られる。水神,龍神,風神,雷神を除くと,抽象的・間接的に気候の神性が示されている。5) 気候祭祀は,要素により多少がある。雨や川は少ないのに対し,水は多い。前者に比べ後者は,神の鎮座地を直接的に比定することが容易なためと考えられる。6) 気候祭祀の分布には粗密があり,およそ関東や近畿に多く,東海や南海に少ない。気候現象の分布そのものでなく,古代の祈雨祭祀などの影響と考えられる。7) 気候祭祀の中でも,とくに水,火,風の祭祀が多い。これには陰陽の五行の影響や,とくに水,火,風を含む,密教の五大の影響が考えられる。
著者
中島 和歌子
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要. 文学研究篇 (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-52, 2014-03

藤原道長の日記『御堂関白記』の陰陽道の記事では、方角神や祭祀、官職、式占などの正式名称・専門用語がほとんど用いられず、「陰陽師」「忌日」「吉日」「宜日」「方忌」「忌方」「祭、禊(祓)」などの通称・総称・間接的な表現が用いられている。これらの用語は、『源氏物語』『栄花物語』などの平安仮名文学作品に類似しており、藤原実資の『小右記』とは対照的である。また、「厄」「呪詛」は皆無、「崇」も希少で、物の気は三条と頼通の病因の三例しか採り上げないなど、書き記すことを避けた言葉や事柄がある。つまり言忌をしている。物忌や祓の数が多いことは他書と同様だが、道長の祓好きは特筆すべきで、下巳を含め、多種多様な祓(表記は主に「解除」)が記されている。基本的な祓所は中御門大路末の河原であり、土御門第は祓に行きやすい。一方、寛弘四年・八年の御嶽精進中の公的祭場での河臨祓は、氏寺の相地などと共に、公家に倣ったものである。また、道長の暦注の遵守、天文密奏の内覧、上臈の陰陽師達の階層別の私的奉仕などは、藤原摂関家や摂関・氏長者らしいと言える。その他、上巳祓や夏越祓、吉方詣などに正妻やその娘達を伴った記事が散見する。また、道長自身以外では、「御衰日」や「滅門」への拘り、病事の式占、除病の祭・祓、呪符の採用など、外孫敦成親王(後一条天皇)の記事が特に多い。これらから、道長が公私に「家」を大切にしたことが窺える。In Midokanpakuki, a diary of Fujiwara no Michinaga, most of articles about onyodo are circumlocutory, since, in most cases, common names of things or generic terms are used instead of true names of things or technical terms in onyodo. This tendency is also found in kana literature, making contrast with Shoyuki, a diary of Fujiwara no Sanesuke.Michinaga avoided using some words. For instance, none of yaku and juso, and few terms like tatari and jake are found in his diary. He, thus, did kotoimi.Similar to other books in Heian, Midokanpakuki has many articles of monoimi and harae. Michinaga was remarkably keen on harae and wrote reports of a great variety of harae (Written as gejo), including kashi in his diary. Basically, haraedokoro was placed on the shore of river in the end of Nakamikado-oji avenue, and Tsuchimikadodai was located for harae. Karinnoharae hold during mitakesoji were reproductions of those of kouke, just like sochi of ujidera. Some manners, such as obedience to rekichu, show the characteristics of sekkanke or ujinochoja.Michinaga's wife and daughters appear in some articles of harae or ehomode in the diary. Furthermore, the number of articles of Atsuhira-Shinno (Goichijo-Tenno) is remarkably high. Michinaga, therefore, appears to have had high regard for his family.
著者
木村 俊彦
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.421-414, 2013-12-20
著者
大島 まり 石上 雄太 早川 基治
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.710-715, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
10

脳動脈瘤の発症, 成長, 破裂は, 血流によって引き起こされる力学的刺激が重要な役割を果たすことが指摘されている. 力学的刺激には, 圧刺激, 進展刺激, ずり刺激の3つが挙げられ, その中でも特に壁面せん断応力は内皮細胞に影響を与え, 脳動脈瘤を考える際に重要な力学的刺激といわれている. 本研究は, これらの力学的刺激を定量的に捉えるために, 医用画像や計測データから得られる患者の血管形状に対して数値解析を適用し, 患者個別の血行動態の情報を得るとともに予防や診断を生かすことのできる支援システムの構築を目指している. 本論文では, 血液の流体力学 (血行力学) や患者個別のシミュレーションの概説とともに, より生体に近い現象を再現するための末梢血管や血管壁の弾性の影響を考慮したマルチスケール血流—血管壁の数値解析について紹介する.