著者
明石 正和
出版者
城西大学
雑誌
城西大学教養関係紀要 (ISSN:09125299)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.101-113, 1977-03-30

大学のバレーボール部員4名の熟練者(踏み込み利き足左の熟練者1名含), 新入生2名の未熟練者(踏み込み利き足左の未熟練者1名含)として, バレーボールのダイレクトスパイクを行なわせた。これを, 真横から16mm撮影機によって撮影し, そのフィルムによって動作分析を行ない, 比較した結果, つぎの諸点が明らかになった。(1)踏み込み利き足右の熟練者の, 最も深い沈み込み位置における腰, 膝, 足首の角度は各118度, 72度, 70度で, 踏み込み利き足右の未熟練者に比較し明らかに前傾角度の大きいことがわかった。(2)踏み込み利き足の熟練者の, 両足踏み込み位置における腰, 膝, 足首の角度は各々106度, 125度, 91度で, 踏み込み利き足左の未熟練者に比較し明らかに直立姿勢に近いことがわかった。(3)踏み込み利き足右の熟練者の, 最も深い沈み込み位置における腰, 膝, 足首の角度は, 踏み込み利き足左の熟練者の両足踏み込み位置に比較し明らかに前傾角度の大きいことがわかった。(4)助走の速度は, 利き足右, 左の熟練者と未熟練者では, 明らかな差は認められなかったが, 熟練者と未熟練者では, 明らかに熟練者に速い傾向が認められた。関節角度が適切であるとともに, 筋力の合理的な発揮のためには助走の力を生かしての反動的なコンセントリックな全身の伸筋の働きが必要であることから, 助走のスピードと重心の直線的な移動が必要である。(5)腕の使い方に着目し, 大きく速い腕の使い方が課題解決に有効であるが, 特に腕の引きあげ動作の速度を増加することが有効である。(6)打球にあたっては, じゅうぶんな身体のそりとともに, ほぼ直線に近いミート時のフォームの会得が大切である。
著者
青木 輝勝 西村 竜一 須田 修司 木屋 善夫 坂本 琢也 野村 和男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.25, pp.61-66, 2004-03-05
被引用文献数
2

近年、AV符号化技術やブロードバンド技術等の進化ならびにP2P通信等の新しい通信形態の普及に伴い、コンテンツ流通は世界中で急速に普及しつつある。しかしながら、これらは同時にコンテンツ管理&保護をより困難にしていることも事実である。本稿では、安全かつ利便性の高いディジタルコンテンツ流通を行うにあたっての最も基本となるコンテンツ識別技術(コンテンツID付与技術)を概観するとともにその問題点を指摘する。続いて、新しいコンテンツ管理&保護のためのコンテンツ識別技術としてCoFIP(content FInGerprinting)技術を提案する。このCoFIPは既存のコンテンツ識別技術の問題のほとんどを解決することができることに加え、従来混乱であったP2P通信のような通信形態においても威力を発揮する。Recently, content distribution is widely being spread all over the world with the progress of AV coding technologies, broadband networking technologies and the advent of new communication methods such as P2P content delivery. However, it is true that this situation poses more difficulties in management and protection of content. In this paper, we firstly review current content identification technologies and indicate the problems of them. After that, we propose an innovative copyright protection technology called "Content Fingerprinting" that offers solution to all the problems in current identification technologies and realizes management & protection of digital content even in possible new communication styles including P2P distribution.
著者
中尾 信雄 小野寺 良次 稲澤 昭 別納 征欧 長谷川 信美 山内 清 六車 三治男 堀井 洋一郎 藤代 剛 林 国興 森下 敏朗 林 綾子 田原 秀隆 高橋 勝南 竹之山 愼一 上島 良介 目 和典 堤 孝彦 駒谷 謙司 置本 宗康 河野 謙宗 北爪 惣 佐藤 玲史 高橋 信也
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.17-38, 2001-12
被引用文献数
2

本研究では、カンショ焼酎粕(濃縮液+脱水ケーキ)を主原料とし、大豆粕を副原料として製造した焼酎粕ペレット飼料の成長、飼料効率、肉質等に及ぼす影響を検討するため、期待体重60から115kgまでの交雑種(WL×D)による飼養試験を1回(実験1、加茂牧場、中部飼料株式会社)、期待体重60~115kgまで(実験2)、期待体重30から115kgまで(実験3)ならびに期待体重10から115kgまで(実験4<通しの試験>)のバークシャー種によるフィールド試験を計3回(永田種豚場)行った。試験飼料の焼酎粕含量率は、乾物当りで、加茂牧場(実験1)2.26%、永田種豚場(実験2)1.77%、永田種豚場(実験3)3.00%(期待体重30~60kg)、3.00%(期待体重60~115kg)、永田種豚場(実験4)2.90%(期待体重10~30kg)、2.42%(期待体重30~60kg)、2.26%(期待体重60~115kg)であった。対照飼料としては、市販飼料を用いた。得られた結果は以下の通りである。 (1)実験1の加茂牧場における期待体重60~115kg間の飼養試験では、試験区の平均1日増体量は対照区よりも約19%高かったが、平均1日飼料摂取量が対照区より約13%高くなったので、結果として飼料効率は試験区が対照区より約6%高い傾向を示すにとどまった。肉質等には試験区・対照区間に差は認められなかったが、肉のビタミンE含量は試験区が有意に高かった。 (2)実験2の永田種豚場における期待体重60~115kgまでのフィールド試験では、試験区よりも対照区の方が、1日増体量で10%、飼料効率で15%ほど高くなった。これは、この試験に用いた配合飼料の焼酎粕含量が1.77%と他の試験に比べてきわめて低かったことが影響しているのかも知れない。なお、血液成分や健康状態には差は見られなかった。一方、行動面では、試験区において社会的序列の上下差が大きく、それによる耳かじりなどの異常行動が見られた。肉質等に大差はなかったが、肉のビタミンE含量は試験区が高い傾向にあった。そして、肉の官能検査では、総合的好ましさは、試験区がよいと感ずる人が多かった。 (3)実験3の永田種豚場における期待体重30~115kg区間では、平均1日増体量は試験区が対照区よりも約10%高かったが、試験区の平均1日飼料摂取量が対照区よりも約7%高かったので、結果として飼料効率は試験区が対照区より約3%改善されたにとどまった。なお、血液成分や健康状態には差が認められなかった。 この試験の中の60~115kgの部分を抜き出してみると、この場合は、実験2の結果と違って、区内平均1日増体量は対照区よりも試験区が約10%高くなり、飼料効率も試験区で約5%改善された。なお、肉質等に大差はなかったが、肉のビタミンE含量は試験区が有意に高い傾向にあった。そして、肉の官能検査では、総合的好ましさは、試験区がよいと感ずる人が多かった。 (4)実験4(通しの試験)の永田種豚場における期待体重10~30kg区間では、区内平均1日増体量は試験区が対照区よりも約21%も高かった。区内平均1日飼料摂取量は試験区・対照区間に差が認められなかったので、結果として飼料効率は試験区が対照区よりも約21%も改善された。 (5)実験4(通しの試験)の永田種豚場における期待体重30~60kg区間では、区内平均1日増体量は試験区が対照区よりも約6%低かった。区内平均1日飼料摂取量も試験区が対照区間より約6%低かったので、結果として飼料効率は試験区・対照区間に差は認められなかった。 (6)実験4(通しの試験)の永田種豚場における期待体重60~115kg区間では、区内平均1日増体量は試験区が対照区よりも約2%低かった。区内平均1日飼料摂取量も試験区が対照区に比べて約4%低かったので、結果として飼料効率は試験区・対照区間に差は認められなかった。 (7)実験4(通しの試験)の永田種豚場における期待体重10~115kg区間では、区内平均1日増体量は試験区・対照区間にほとんど差が認められなかった。区内平均1日飼料摂取量は試験区が対照区よりも約2%低く、結果として飼料効率は試験区が対照区よりも約3%改善された。通しの結果を総合してみると、離乳期子豚に対する焼酎粕ペレット飼料給与の効果が著しいと言える。肉質等に大差はなかったが、肉のビタミンE含量は試験区が有意に高かった。そして、肉の官能検査では、総合的好ましさは、試験区がよいと感ずる人が多かった。 以上、肉用豚肥育期の成長に対する焼酎粕ペレット飼料給与試験の結果を総合すると、焼酎粕ペレット飼料の給与は、市販の対照飼料並みまたはそれ以上の成長促進効果があると考えられる。また、焼酎粕ペレット飼料給与豚の肉のビタミンE含有率は、対照飼料給与豚の肉よりもほぼ有意に高まり、肉の官能検査では、総合的な好ましさが認められた。
著者
張 穎奇 河村 善也 蔡 保全
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.81-92, 2008-04-01 (Released:2009-04-25)
参考文献数
25
被引用文献数
2 3

小長梁遺跡は前期更新世の人工遺物を出土する遺跡として重要であるが,その遺物包含層と同一層準から採取した大量の堆積物を細かい目の篩で水洗して,多くの小型哺乳類化石を得た.遺物包含層の年代は古地磁気測定により1.36 Maとされている.小型哺乳類は生層序の研究や古環境復元に重要であるが,この遺跡ではこれまで小型哺乳類化石はほとんど採集されてこなかった.今回は得られた化石をもとに,この遺跡の小型哺乳類の動物群の特徴を明らかにし,それを近隣の地域にあって古地磁気層序や放射年代が明確な4つの化石産地の動物群と比較した.それらにもとづいて,後期鮮新世とそれ以降の時期の地層における小型哺乳類の生層序と,それらの時期の小型哺乳類の動物相の変遷について論議した.変遷については,絶滅種が卓越する後期鮮新世から前期更新世にかけての中国北部の動物相が1.66 Maと1.36 Maの間に現生種(カヤネズミ)の出現により若干変化したあと,1.36 Maと0.6 Maの間には多くの絶滅種が見られなくなる一方で,現生種が数多く出現するという大きな変化があったと考えられる.さらに,この遺跡周辺の前期更新世の古環境については,温帯の気候で,湖の近くにまばらに灌木の生えた草原という環境が推定された.
著者
波江 元吉
出版者
日本細菌学会
雑誌
細菌學雜誌 (ISSN:18836925)
巻号頁・発行日
vol.1909, no.160, pp.119-137, 1909-03-10 (Released:2009-07-09)
著者
青島 茂
出版者
スペイン現代史学会
雑誌
スペイン現代史
巻号頁・発行日
no.20, pp.126-132, 2011-12
著者
高田 靖司
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.123-134, 1985-02-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

愛知県三河湾の佐久島 (171ha) と本土 (春日井市・名古屋市) の間で、野生ハツカネズミの分布と密度 (捕獲率を尺度とする) を比較した。1981年から1984年までの調査により次の事がわかった。1) 島には本種の他に, ドブネズミとジネズミが見られ, その他の野生哺乳類を欠く。2) 本土では本種の他に, アカネズミ, カヤネズミ, ハタネズミ, ジネズミ及びヒミズが見られる。3) 島のハツカネズミは森林を除いて、調べた総ての生息環境, すなわちイネ科の一年生と多年生の草地, タバコ・クワ畑及びヨシ湿地に独占して見られる。4) 本土のハツカネズミはイネ科の一年生草地にだけ優占し, ここでも他のネズミと共存している.また, 多年生草地と森林にはアカネズミが, ヨシ湿地にはカヤネズミが優占している。5) 本土の各生息環境におけるネズミ類の総密度は, 島の同じ生息環境におけるそれに等しいか, あるいはより高い.6) 他の優占的な競争種を欠く島におけるハツカネズミの密度, 繁殖, 齢構造及び食性は生息環境間で異なることが示唆された。ハツカネズミの生息地拡大と好みの分析から, その分布を決定する上で重要な要因として, 1) ネズミ共同体, 特にアカネズミやカヤネズミのような優占的な競争者, 2) 環境, 特に植生に働く人為作用が考えられた。
著者
梅崎 輝尚 松本 重男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.364-367, 1989-09-05

本研究では, ダイズの主茎節間における伸長性を明らかにするため, 九州地方の秋ダイズ4品種を供試して, 各節間の伸長経過について経時的に調査を行った。1) ダイズ主茎の各節間は主茎と同様におのおのS字カーブを描いて伸長した。2) 主茎各節間の最終節間長は第1節間 (子葉節-初生葉節) が長く, 第3あるいは第4節間が最短で上位節間になるに従って長くなり, 頂部で再び短くなるパターンが認められた。3) 主茎節間の伸長と出葉には同伸性が認められ, 一般に第N節間の伸長最盛期は第N+2葉期, 伸長停止期は第N+4葉期で示すことができた。以上のようにダイズの主茎節間の伸長には規則性が存在することが明らかとなった。今後, 人為的に節間長を制御しようと試みる場合, この規則性を考慮・活用することにより, より効果的な制御が可能となろう。
著者
江副 智子 森本 兼曩
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.397-405, 1994-11-20
被引用文献数
3

Selyeによってストレス学説が唱えられて以来,さまざまな角度からストレス研究が行われてきた.ストレスは,身体疾患および精神疾患の重要な危険因子であるとともに,免疫能などの生体の防御力にも深く関連し,さらに転勤率などの社会行動面にも影響を及ぼす.衛生学,公衆衛生学の分野でも,近年ストレスは重要課題となっており,特に職域を中心としてさまざまな調査が実施されてきた.本論文では,従来行われてきたストレス評価法を,国内外の文献を整理し,ストレッサー評価とストレス反応評価に分けて概説する.まず,ストレッサー評価の質問票のうち,信頼性および妥当性が検討されているものについて概説し,さらに,障害者の家族や入院患者,看護学生などの特定の集団を対象とした質問票を紹介した.次に,職場におけるストレス要因を,1)仕事に固有の要因,2)組織における役割,3)昇進・降格,4)職場の人間関係,5)組織の構造と風土,および6)その他,に分類して概説した.ストレス反応については,1)ホルモンの反応,2)免疫学的反応,3)その他の生理的反応,4)心理的反応,および5)行動的反応に分類し,ストレスと血液生化学的指標との関係に関する研究結果やストレス反応の測定方法を紹介した.ホルモンの反応については,ストレスと血漿および尿中アドレナリン,血漿ノルアドレナリン,血漿および尿中コルチゾール,血漿ヒスタミン,サイロキシン,プロラクチンおよびテストステロンなどとの関係が調べられている.免疫学的反応については,急性および慢性のストレスとTリンパ球数,NK細胞活性,PHAやCon-Aに対するTリンパ球の反応,EBウイルスに対する抗体価,IgAやIgGなどの免疫グロブリン,補体などとの関係を調べた研究結果を紹介した.その他の生理的反応としては,冠血流量,血圧などの血行動態的指標,リンパ球のDNA修復,ヘモグロビンA_<1c>などとストレスとの関係に関する研究を紹介した.心理的反応に関しては,代表的な質問紙票を列挙するとともに,声の録音によりストレス,特に不安と敵意を評価する方法を紹介した.行動的反応については,その指標となるものについて簡単に触れた.最後に,われわれが行った,単一の質問によるストレスの包括的評価方法を紹介し,勤労者を対象に,その質問による自覚的ストレスと,精神健康調査票28項目版(GHQ-28)による精神的健康度,喫煙・飲酒・睡眠・運動・生活規則性などのライフスタイル,および交流分析のエゴグラムから抽出した性格要因との関係を調べ,その結果について述べた.それにより,自覚的ストレスが多いほど,精神的健康度が悪く,ライフスタイルの中では,特に多忙感,体調悪化,長時間労働,生活への不満,生活および食事の不規則,短時間睡眠を訴える者の割合が,ストレスの多い群で有意に高いことがわかった.また,性格要因の中では,完全主義と神経質の者が,ストレスを多く感じていることが明らかになった.以上のことから,人々のストレス度を把握し,メンタルヘルスの保持・増進を図るためには,血液生化学的検査値などの客観的な指標を目安にすることに加えて,本人の主観をもとらえて,多元的にアプローチする必要があると思われる.

1 0 0 0 琉大史学

著者
琉球大学史学会編
出版者
[琉球大学史学会]
巻号頁・発行日
1969
著者
伍 隆萓
出版者
筑波大学比較民俗研究会
雑誌
比較民俗研究 (ISSN:09157468)
巻号頁・発行日
no.18, pp.77-92, 2002-11

ケゼは中国四川省涼山イ族地区に流布している伝統的なユニークな民間伝承である。イ族語ではケゼ(kep zzep)は「口をよく動かすこと」の意味で、言葉を巧妙に使うことを指している。そのほか、いくつかのほぼ同義であるが、あまり広範には用いられていない呼称がある。それらは異なる角度からケゼの特徴を具現している。ケゼは通常婚礼と高年齢の老人の葬礼や、または、いくつかの祝日の集まりにおいて用いられている。これらの場合にはよく二つ以上の家支が集まっている。その時、主人の側と客人の側が自分の家支の中(もしくは、別の所)からケゼの達人を選んでお互いに競い合う。その間にもしある家支の競技者が言葉に詰った時、この家支のほかの人が交代することが許される。吟詠対抗時には両者は一つの題目をめぐり、一方が一首のケゼを吟詠すると他方も一首を吟詠する。このようにして勝負がつくまで行う、量が多く題目にふさわしい、言葉使いの優れている側が勝つ。ケゼの内容は大体二つの部分に分かれている。あいさつと主体部分である。あいさつの部分はまた婚礼のあいさつと葬礼のあいさつに分かれる。その内容とスタイルは場合によって異なる。けれども「ケゼを初めから唱吟する」のは同じである。主体部分の内容はさまざまで、天文、地理、歴史、哲学、風俗などがある。ケゼではしばしば連辞、誇張、引用、比喩などいろいろな修辞法を用い題について吟詠する。それで自分たちの弁舌、博学とを巧妙に顕示する。ケゼとアビ(諺)、マズ(長篇詩歌)、民謡などとは異なるものである。ケゼの句型は五、七、九など奇数語の句から構成されるものが主流を占める。二音節が一拍で発せられるが、最後の音節は必ず一拍である。吟詠する時リズムを伴うのであるが、しかし、通常の話しかたでないのはもちろん、歌唱をするのとも異なる。ケゼは一つの奇妙な民間伝承である。どうしてこれは涼山地区で産まれ発展して広く伝承されているのか。これの使用されている場合と、使用されている形式、修辞の特徴を考え併せると、以下のような大胆な推理が可能である。文化生態学的角度から見ると、ケゼと涼山イ族の家支文化との密接な関係が指摘できる。家支文化はケゼの存在や発展の土壌である。家支は涼山イ族社会の政治組織の一つで、漢族の「宗族」は多少異なる。その目立った特徴は、政治、経済、軍事の上で激しく対抗し、衝突と競争が伴う点である。家支成員の一切の財(生命を含む)は家支の強弱に連関している。家支の個々の成員は小さい時から家支は文化の薫陶を受け、彼らの言行、振舞には家支の印が深く刻印されている。また、それは家支の利益を直接・間接に代表している。家支の衝突や競争が止んだことはなかった。だが、涼山イ族の婚姻は家支内では禁じられている。したがって家支間は競争あり、連盟ありの複雑な関係になった。家支婚姻関係を結び、他の家支の脅威を防ぐために同盟した。けれども、これが親類両方の家支間の衝突を解消するわけではない。婚姻は一家と一家の間だけだが、家支の全体的な利益が全てに優先されていた。婚姻関係を結んで親類になった家支間では衝突を緩和させることが競争になった。両方が一緒に座って、酒を飲んで遊ぶ婚礼や葬礼では、わざくらべは重要な位置を占める。知識を尊び弁論を尊ぶ涼山イ族社会の中に、ケゼの話術を利用して弁舌と知識を競い合うのは、大衆的な活動になった。ケゼの吟詠対抗は、その表面から見ると言葉の技巧の試合だが、その活動の眞の目的は「家支を誇示し、祖先を称揚する」ことにある。これは運動選手のレベルに似ていて、国家体育以外のレベルの尺度のようになった。ケゼの吟詠対抗に勝つのは、ある家支の中に技巧者が出ることを意味し、家支が栄誉を受けたことを示す。ケゼは家支の政治、経済、軍事の対立、衝突、競争のほかに「文化」的対立、衝突、競争の有機的構成部分となっている。ある意味で言えばケゼは家支文化の産物である。ケゼの内容、形式、修辞の特徴はケゼの宗旨によって決められる。吟詠をし、歌わないのは、たくさんの内容を含み、聞くものは理解しやすいからである。リズムの選択における技巧は、ケゼの話術に効果をもたらし、変化を与えている。修辞上の強調と比喩の活用により言葉をより一層上手に操れるようになれる。名人の名言とアビの引用は、詠み手の記憶と博識とを示している。誇張はケゼのユーモアや、愉快さを一層きわだたせるものである。