著者
長崎 励朗
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

日本学術振興会特別研究員(DC1)として最後の年度となった本年は、これまでに調査を重ねてきた大阪労音に関する研究をまとまった形の論文に仕上げる作業に集中することとなった。その過程で、理論装置として機能させるべく考察を重ねていた「キッチュ」というテーマについて、国際学会AMIC(Asian Media Information and Commumcation Centre)で発表したことで、国際的に通用する研究へと育てるためのヒントを得られたことも大きい。元来、ドイツ語であった「キッチュ」が英語圏の人間にとってどのような意味を持つのか、という点は今後の課題ともなった。調査の進展としては、二点が挙げられる。まず第一点として、大阪労音の前史としての宝塚についてより詳細に分析したことを挙げておきたい。大阪労音の初代会長であった須藤五郎という人物は元・宝塚の指揮者であり、実際に数えてみたところ、戦前・戦後を通じてちょうど100の公演に関与していることがわかった。さらに、宝塚に関する先行研究を調べる中で、宝塚が人々の西洋イメージを反映した「イメージの西洋」によって大衆性と教育性を両立していたという事実も明らかになった。このことは「イメージの教養」たるジャズ・ミュージックによって会員層を拡大した労音の手法と相似的である。このメカニズムこそ、「イメージの〇〇」という形で人々の共同主観に訴えかける「キッチュ」のそれであった。本研究で追求してきた文化的共通基盤のよりどころとは、動員力と教育力を兼ね備えたこの「キッチュ」であったと結論づけられよう。調査の進展における二点目は朝日会館に関するものである。朝日会館には大阪労音設立における影の立役者として以前から注目していたが、朝日会館のオーナーである朝日新聞社に足を運び、実際にその通史や機関誌を閲覧することで、大阪労音との協力関係の実態を知ることができた。意外なことに、朝日会館の公式記録を見る限り、少なくとも1950年代前半において大阪労音の公演は一度としておこなわれていない。これは、大阪労音の公演に際しての賃館が、十河巌という当時の会館長の権限によって私的なものとして行われていたためである。『大阪労音十年史』に記されていた「好意的賃館」の意味がここで明らかになった。すなわち、初期における大阪労音は会員集めを含め、すべてが個人的つながり(あるいは社会関係資本といっても良い)によって運営されていたことが明らかになった。以上のような新たな研究成果を盛り込みつつ完成した集大成としての論文は、京都大学教育学研究科において審査され、結果として博士論文として認定された。また、この成果を著書として出版するため、某出版社とも企画の段階に入っている。その意味で本年は日本学術振興会特別研究員としての研究を締めくくる集大成となった年度であったといえる。
著者
谷口 綾子
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,ベビーカー連れの外出の難易度認知について移動時満足度(STS)を用いて評価するとともに,ベビーカー連れのSTSに周囲の人々の対応がどの程度関係しているのかを探索的に検証し,欧州の先進国と我が国の比較を行った.その結果,我が国ではベビーカー連れの移動時に周囲からの支援を受けた経験が欧州各国よりも少ないこと,ベビーカー連れの移動の認知的幸福感は,一般にSTSが低いとされる通勤目的よりもさらに低いことが示された.また,ベビーカー連れでの移動時に周囲の人々から受けた支援の経験や,記述的規範の知覚が,ベビーカー連れのSTSに正の影響を与えていることが示された.
著者
中野 泰志 佐島 毅 小林 秀之 氏間 和仁 永井 伸幸
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

拡大教科書を選定するための評価方法は確立されておらず、適切な教科書の選択がなされていない。そこで、拡大教科書を利用する際の諸条件が読書の効率に及ぼす影響を明らかにした上で、拡大教科書選定支援のための検査バッテリーを試作した。また、試作した検査バッテリーの有効性を検討するために、試用調査を実施した。さらに、本検査バッテリーを非専門家が簡便に利用できるようにするためのマニュアルを作成し、拡大教科書を利用している弱視児童生徒の担任教員に配布した。
著者
藤井 裕治
出版者
浜松医科大学
巻号頁・発行日
1995-09-22
被引用文献数
35

浜松医科大学学位論文 医博論第218号(平成07年09月22日)
著者
中島 敦司 Nakashima Atsushi
出版者
三重大学生物資源学部演習林
雑誌
三重大学生物資源学部演習林報告 (ISSN:09168974)
巻号頁・発行日
no.20, pp.41-99, 1996-03
被引用文献数
1

多くの温帯植物は,絶えず変化する季節と同調(Synchronize)しながら,器官や植物自体の形態,生理的状態,成育ステージを進めている。生理的な状態が異なれば,温度や日長などの環境条件が同じであっても,植物の示す反応も異なる。また,障害などのストレスを受けない限り,成育ステージの進行は,その期間の長短の違いはあっても,ライフサイクルのなかでは決まった順序で進行する。一年生の植物で基礎的な研究の進んでいるイネOryza sativa L.では,成育ステージに則応したきめ細かい生産技術が開発されており,地域や年次差などに対応し,生産の不安定要因除去の方策が確立されている。この結果,イネでは,成育ステージを基準として,栽培地の緯度,標高,気象,成育状態などに応じた管理や植物調節がほぼ可能になっている。その際,成育ステージの推移は,通常,生物季節現象(フェノロジー)の変化として捉えられている。緑化および園芸植物では,開花調節実験を通して成育ステージの進行,転換が明らかにされる例が多い。これは,開花調節そのものが,成育ステージの調整に他ならないことを示している。しかし,得られた結果を,成育ステージと対応して議論し,技術上の指針として明示した報告はほとんどみあたらない。また,月別温度などの環境要因と関連させて緑化指針が論じられる例はあるが,この指針には地域差や年次差による緑化技術上の煩雑さが多い。特に,地球温暖化が危惧されるなか,過去の指標が整合性を失う場合の生ずる可能性すらある。テーダーマツPinus taeda L. やユリノキLiriodendron tulipifera L. などでは,水分要求,蒸散量が季節変化することが知られている。なかでも,高温期の8月よりも温度の低下する9月に多くの水を要求する現象は,休眠導入に向かう植物の成育ステージの進行と水分要求が同調していることを示唆している。したがって,9月も旱天が続く場合には応急的な散水で対応できる。ところが,緑化植物および工法に関する多くの解説書や技術書を著した近藤は,1992年の夏期のような旱天対策としては,1散水設備の充実,2耐乾性品種の採用などが有効であると報告している。これらは,確かに旱天対策としては効果的であるが,反面,施工コストの増大,植栽デザイソの制限を意味するもので,多様化した緑化のニーズに則した指針としてはあまり現実的でない。植物を少量の土壌で育成させる人工地盤上緑化工法,コンテナプラソツなどの鉢ものを直接設置する緑化工法では散水設備が不可欠である。しかし,わが国の降水量を考慮するならば,従来からの植え込み緑化工法では,散水設備の推進よりは成育ステージと対応した管理暦の方が現実的である。このように,成育ステージの的確な把握は,緑化推進の実際上,重要であるが,この点を明らかにした技術書は少ない。さらに,成育ステージそのものについても,現在,統一した理解は得られていない。温帯樹木の成育ステージは,成長期と休眠期に大別されることが多い。温帯樹木の芽における休眠現象を,アプシジン酸(ABA)などの休眠物質に制御される冬休眠として一元的にとらえようとした,VILLIERS,SMITH&KEFFORD,KRAMER&KOZOLOWSKIらの報告は,芽の休眠現象の統仙=一的解釈としては理解できる。しかし,休眠と成長との関連,とりわけ成長が再開した休眠解除以降のステージを内的成長期ではなく成長停止状態とする解釈には疑問がある。WAREING,ROMBERGERらの定義および解釈は,1960年代以降,多くの研究者に支持されてきたが,温帯樹木の芽の休眠現象をいくつかに分割するもので,休眠の定義そのものに問題がある。その後,KRAMER&KOZOLOWSKIや永田らによって,温滞樹木の芽の休眠現象はいくつにも分けられるべきでないと修正が加えられたが,わが国ではいまだにROMBERGERらの定義を支持する研究者が多い。仮に,成育ステージの重要性が認識されたとしても,ステージ自体の的確な判定を誤る可能性がある。また,ある種の植物が,みかけ上,特異的な反応を示した時,種や品種の特徴,性質として整理されてしまう場合もある。例えばFoxtailing現象は南方系マツ固有の性質であるかのように報告されてきたが,環境条件によっては北方系マツのアカマツPrunus lannesiana WILS.や,ウメP.mume SIBE. et ZUCC. などでも人為的に誘導される。また,サトザクラPrunus lannesiana WILS.や,ウメ P. mume. et Zucc.の開花と開芽の順位は,遺伝的に決まっていると報告されてきたが,実験的には開花と開芽の順位は容易に逆転する。これらは,成育ステージが環境との相互関係によって生じる現象的な変化であるにも関わらず,その植物種固有の性質と誤解されてきた例といえる。いずれにせよ,録化植物の成育ステージは,その変化のメカニズムが複雑なはかりでなく,これまでの報告だけでは十分な議論が困難であると考えられる。さらに,成育ステージの規定は難しく,関連するデーターを積み重ねる必要がある。筆者は本研究を足がかりとして,今後も緑化植物および林木における生物季節現像を明らかにしようとするものであるが,今回は,植栽される機会が多く植栽地域も広い,サザソカCamellia sasanqua THUNB.およぴサツキツツジRhododendron indicum SWEET の生物季節現象について検討したので報告する。本研究は,これら植物の緑化指針などを検討するものではないが,生物季節現象と,これに関わるメカニズムを明らかにし,地球温暖化にむけた基礎的な知見を得る目的でおこなった。
著者
段 家誠
出版者
阪南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、世界銀行の正統性と国際開発レジームにおける影響力を、 世界銀行の査閲(インスペクション)パネルの事例を実地調査と文献資料等により明らかにす るものである。開発途上国における環境と社会影響、人権侵害等で問題となった世銀プロジェ クトを査閲パネルと非政府組織(NGO)の視点からみることによって、当該国と先進国の市民社 会が、グローバル・ガバナンスのなかで、どのようなつながりを持つかを知る手がかりを得た。 調査対象は、カンボジアのプノンペン、ネパールのアルン渓谷、アルバニアの火力発電所、世 界銀行・IMF 年次総会における市民社会(CSO)会合等に及んだ。
著者
市橋 秀友 本多 克宏 野津 亮
出版者
大阪経済法科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

クラスタリングとパラメータ最適化による簡便な識別器であるファジィc-平均識別器(FCMC)の識別時間(テスト時間)と訓練時間(事前計算時間)の大幅な改善手法を開発した.そして,FCMCの訓練時間を高性能なサポートベクターマシンとして知られているLibSVMと比較した.四つのパラメータのうちの二つを自動最適化する.LibSVMのパラメータ数は2である.改良されたFCMCではLibSVMと同等の識別精度が得られ,100万件以上の大量データでの訓練時間は,LibSVMに比べて100倍から1000倍の高速化を実現した.
著者
川本宇之介 著
出版者
目黒書店
巻号頁・発行日
1917
著者
川本宇之介 著
出版者
目黒書店
巻号頁・発行日
1916
著者
川本宇之介 著
出版者
大同館
巻号頁・発行日
1915