著者
生頼 孝博 山本 英夫 岡本 純 伊豆田 久雄
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.189-197, 1984
被引用文献数
6 1

早強ポルトランド・セメントを土に混合することによる凍上及び解凍沈下抑制効果を調べるために, 開式の室内凍上・解凍沈下実験を行った.供試体は藤の森青粘土に種々の割合でセメントを混合し, 3種類の荷重で圧密しつつ一週間養生して作製した.拘束応力が小さい場合には吊り下げ式凍結装置を用い, 拘束応力が地下数10mに相当する場合には開式凍結・解凍試験装置を用いた.<BR>凍上量は, セメント混合比<I>W<SUB>cs</SUB></I> (炉乾土に対する重量比) で10%程度セメントを加えることにより急激に減少し試料土のみの場合の1/8~1/4になるが, それ以上<I>W<SUB>cs</SUB></I>を大きくしても若干の凍上は残るという結果を得た.未凍結土の動水抵抗増加による凍上抑制効果について, 実測した透水係数を用いて検討を行ったがその効果は小さく, セメント混合による吸水能力の低下が凍上抑制の主因であると推察された.<BR>一方, 解凍沈下は試料土のみでは2%程度凍結前よりも沈下するが, セメント結合に起因する土粒子同志の結合力の増加により, <I>W<SUB>cs</SUB></I>=8%程度で沈下は無くなりそれよりも大きい<I>W<SUB>cs</SUB></I>では若干の浮上となった.<BR>以上のことから, 藤の森青粘土のような土の場合, <I>W<SUB>cs</SUB></I>=10%程度のセメント混合は凍上及び解凍沈下抑制において有効な方法であることが, 室内実験において確認された.

1 0 0 0 OA 数学と発想

著者
秋山 仁
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.283-298, 1997 (Released:2001-04-01)
被引用文献数
1 1

演者は,幼いころ,数学が苦手でありながら数学者になったという自らの体験をもとに,いかに日本の数学教育が子供の発想力を歪め,理数嫌いを増やしているかについて述べ,知識を詰め込むよりも日常の中で不思議を感じ問題を提起する力,ひいては独創性を養うことこそ今後の科学技術発展のためにも不可欠であると説いた。そして発想力が問題を解く鍵となるいくつかの定理や問題を披瀝し,その重要性を例証した。
著者
五井 孝憲 山口 明夫
出版者
福井医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

TGF-βスーパーファミリーは細胞増殖、分化、細胞内輸送に関わる重要な細胞内シグナル伝達分子群と考えられている。そのなかの1つ、Smad分子はTGFレセプターからシグナルを受け、活性化された後、核内に移行して直接転写調節を司っている。近年この制御機構の破綻が様々な組織における腫瘍発生に関与することが注目されている。本研究ではTGF-βスーパーファミリー因子群の細胞伝達分子であるDPC4とMADR2遺伝子について、遺伝子異常および蛋白量の変化を大腸癌において検索し、発癌、浸潤および転移との関係を検討した。遺伝子異常についてRT-PCR,SSCPおよびDNA sequencingにて検討したところ、大腸癌29例中6例(20.7%)にDPC4遺伝子変異(5例point mutation,1例frame shift)が認められ、MADR2遺伝子では3例(10.3%)に遺伝子変異(point mutation)が確認された。さらに両遺伝子が位置する染色体18q21のLOH検索をMicrosatellite法にておこなったところDPC4遺伝子異常の認められた症例はすべてLOHが確認された。(informative症例)つぎにDPC4蛋白質に対するモノクローナル抗体を作成し、切除手術を施行した大腸癌64症例から原発巣および正常組織の蛋白を抽出し、Western blot法にてDPC4蛋白質の発現量を検討したところ、大腸癌組織におけるDPC4蛋白の発現量は、大腸正常粘膜と比較して有意に減少していることが認められた。DPC4蛋白量比(癌組織DPC4蛋白量/正常粘膜DPC4蛋白量)と臨床病理学的所見との検討では、肝転移陽性症例のDPC4蛋白量比は肝転移陰性症例の蛋白量比と比較して有意に減少していることが認められた。またDPC4遺伝子変異/欠損とDPC4蛋白発現量比の検討では遺伝子異常の認められた症例においてDPC4蛋白発現量比の減少は高度であった。以上よりTGF-β-DPC4シグナル経路は大腸癌の発生、転移などをはじめ、シグナル伝達解明に重要なpathwayであることが認められた。

1 0 0 0 愛知県公報

著者
総務部法務文書課
出版者
愛知県
巻号頁・発行日
2006-12-08
著者
深見 希代子 山口 英樹
出版者
東京薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

我々はPhospholipase C d1(PLC d1)の遺伝子欠損(KO)マウスを作製し、PLCd1KOマウスが毛包の形態異常を伴う顕著な体毛の減少を示すことを報告してきた。今回PLCd1KOマウスとよく似たマウスとして転写因子Foxn1が先天的に変異しているヌードマウスに着目した。ヌードマウスでは、毛を構成する主なヘアケラチンの一つであるmHa3遺伝子の発現が低下し、無毛となる。PLCd1KOマウス体毛減少のメカニズムを詳細に検討した所、ヌードマウスと同様にPLCd1KOマウスの皮膚においてもmHa3遺伝子の発現が低下していた。またヌードマウス皮膚では、PLCd1の発現が低下していた。こうした結果は、毛包形成において、Foxn1→PLCd1→mHa3というシグナルの流れが存在していることを示している。
著者
金子 知適
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

大量の経験的データから学習した知識を利用する効率的な探索技術の研究を行った.探索においては対象の知識を活用することで効率が向上することが知られている.本研究により棋譜に残された人間の判断履歴から,80万次元以上のパラメータを調整し計算機が活用可能な知識とすることが可能となった.研究成果を将棋プログラムへと応用したところ,現時点で最も強いコンピュータプログラムを作成することができた.このことは本研究の有用性を示していると考えられる.
著者
高木 靖彦 平田 成 橘 省吾 中村 良介 吉川 真 はやぶさ2プリプロジェクトチーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.48-55, 2010-03-25
被引用文献数
1

「はやぶさ」に続く小惑星探査計画「はやぶさ2」が最初に提案されてからの約4年間の経緯と,計画の概要をまとめた.その中で,ミッションの目標と,それに基づき選定された搭載機器の仕様についても簡単に述べる.
著者
吉水 守 田島 研一 西澤 豊彦 澤辺 智雄
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

牡蠣の汚染による衛生上の問題に関しては、腸チフス等18世紀から報告があり、我が国でも1924年熊本県不知火での規模な腸チフスの発生が知られている。1950年に『食品衛生検査指針』により貝類の衛生基準が定められた。牡蠣は1日当たり2トンもの海水を吸入し、餌料生物を接種し、同時に細菌やウイルスを濃縮する。しかし清浄海水で飼育すると蓄積した細菌やウイルスを放出する。いかにして、清浄海水を確保するかに関しては、坂井(1953,1954)、河端(1953)の研究により、現在の浄化法の基礎が築かれ、広島・宮城県から全国に普及していった。平成9年5月31日付けの食品衛生法の一部改正により、食中毒原因物質として新たに小型球形ウイルスとその他のウイルスが追加された。小型球形ウイルス(SRSV;現在、ノロウイルス)は電子顕微鏡像での形態が類似する直径27〜38nの球形ウイルスの総称であり、1972年に米国オハイオ州で起きた非細菌性集団胃腸炎の患者糞便より発見されたNorwalkウイルスがその原型である。ノロウイルスは培養細胞や実験動物を使用して増殖させることが困難であり、現在行われている紫外線やオゾンを用いた循環型浄化装置では、ウイルスが不活化されていてもRT-PCR法では陽性となり、製品の出荷ができない。本研究は、牡蛎のノロウイルス浄化法を培養可能なネコカリシウイルスを代替えウイルスとして検討したものであり、得られた成果は以下のとおりである。1.電解海水を用いることにより牡蠣の大腸菌浄化が可能であることを示した。2.ネコカリシウイルス(FCV)を用いた場合、FCVは紫外線に抵抗性を示したが、海水電解水に高い感受性を示した。3.FCVは高水温下で不安定であったが、低水温下では安定であった。3.FCVは半数以上の牡蠣の消化管内容物で不活化された。4.FCVは牡蠣の脱殻条件、40℃・800気圧で90%以上不活化された。これらを組み合わせることによりカキのノロウイルス浄化は可能となると考えられる。今後はノロウイルスの感染性を評価する系を作る必要性があると改めて認識された。
著者
宮島 裕嗣 内藤 美加
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.364-374, 2008-12-20

課題重要性と社会的影響が中学生の同調にどのような効果を及ぼし,かつ偏向した意見が持続するか否かを検討した。同調の喚起を意図した課題を用い,218人の中学生に回答を選択してもらう質問紙上の思考実験を行った。実験1では意見課題を作成し,規範的影響下の同調を検討した。実験2では,正確な判断が求められる課題を用いて情報的影響下での変化を調べた。両実験とも第1セッションでは課題重要性を操作し,実験群には各課題の回答肢に仮想集団の選択傾向を呈示する集団状況で回答を求め,集団圧力による偏向のない統制群の回答と比較した。1週間後の第2セッションでは仮想集団の圧力を取り除いた個人状況で実験群に再回答を求め,偏向を受けた意見が持続するか否かを検討した。その結果,中学生では特に集団から受容されたいという動機に基づく規範的影響下で,重要性の低い課題だけでなく個人的関与の高い重要な課題でも同調を示し,それが長期間持続する私的な受容であること,また女子の方が男子に比べそうした同調を示しやすいことが明らかになった。これらの結果は,自己カテゴリー化の枠組みから論じられた。
著者
山崎 寛恵
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.15-24, 2008-05-10

一名の乳児の日常場面における伏臥位でのリーチングを約5〜8ケ月齢にわたって縦断的に観察した。伏臥位でリーチングを行う時,乳児は上肢で対象物に対する頭部の視覚的定位を維持するために上体を支持することと,対象物に接触することの2つの機能を達成しなければならない。乳児はこれらの機能を同時にどのように達成しているのか,またその達成方法はどのように発達的に推移するのかを明らかにするため,観察されたリーチングを機能的観点から「上体支持有り],「一時上体支持有り],「上体支持無し」の3種に分類し,その出現推移を量的に分析した。その結果,上体を支持しながらリーチングするパターンから,上体を支持することなくリーチングするパターンへの移行が見られたが,リーチング成功率とリーチング時に上肢が担う機能変化との関係は示されなかった。量的分析で明らかにならなかった複雑な様相を,全身の協調の質的記述によって検討した。得られた結果は,乳児が対象物への到達を可能にするために身体各部位を機能的に協調させていることを示すとともに,リーチング発達が身体を不安定にすることによって新しい姿勢調整を獲得する過程であることを示唆する。
著者
西尾 典洋 内山 吉彦 深沢 佑樹 杉山 岳弘 竹林 洋一
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.23, 2009

本稿では、インターネット番組制作における少人数型のスタジオにおいて、 スイッチャーが1人でスイッチング業務を行いながら、 複数台のカメラを操作して番組収録を行えるマルチカメラ撮影支援システムを提案する。 本システムではプロのカメラマンが持つ安定した画角の知識や、 複数台のカメラによる協調撮影のノウハウをシステム化することで、 経験が浅いユーザでも本格的な撮影業務をおこなうことができる。