著者
梅原 基雄
出版者
淑徳大学短期大学部
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.1-7, 2004-03-15

本稿は、Y社会福祉協議会のボランティアセンターが派遣したボランティアZが身体障害者Xの歩行介護を行っている間に起きた転倒事故について、YとZの損害賠償責任が争われた事案で、Y社会福祉協議会と原告Xとの間には準委任契約関係は存在しないと判断され、Y社会福祉協議会の債務不履行責任が否定されるとともに、ボランティアZについても本事例の場合・善管注意義務違反による責任が否定された判例について解説したものであり、ボランティア、実習に参加する場合どのような注意が必要かについても述べたものである。社会福祉学科という特質性から、ボランティア参加や実習に出る学生が多く、その動機については様々であると思われるが、直接利用者と接し介護や指導監督をすることの責任の重要性について、関連の教職員と学生には特に再認識を促したい。
著者
藤原 康宏 加藤 浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.703, pp.97-100, 2005-02-26
被引用文献数
6

協調学習における評価では、学習コミュニティを構成する学習者同士が評価を行うことは有用な方法の1つである。しかし、実際には他の学習者全員の評価をすることは困難である場合が多く、それぞれの学習者が何人かを選択して評価する必要がある。本稿では、その選択方法を考えるために、学習者xが学習者yを評価するときに、「学習者yもまた学習者xを評価する場合」と「学習者yは学習者xを評価しない場合」で学習者xの行う評価に差があるかについて実験を通じて考察する。今回は、大学教養教育における情報処理入門科目のレポートを、Web課題提出評価システムを使って、学習者間で評価させた。実験の結果、相互評価をする際に、評価する相手によっても評価されるか、評価されないかが、評価に影響を与える場合があることが分かった。
著者
田中 康夫
出版者
低温生物工学会
雑誌
凍結及び乾燥研究会会誌 (ISSN:02888297)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.83-85, 1982-08-20

冷凍生地を製パンに使用することによって,従来両立が困難であったがために製パン業界を悩ませてきた新鮮パンの提供と労務対策という,2つの問題の同時解決が可能となる.冷凍生地とは,発酵工程を終え,分割,整形まで終わった生地を凍結したもので,ふつう-20℃に1〜3週間くらい貯蔵される.解凍後は膨張工程である焙炉(ほいろ)発酵と焙焼だけが行なわれて,パンは常に新鮮なうちに消費者に提供される.この方法は多くの利点をもっているが,解凍後の焙炉発酵が著しく遅延したり,パンの品質低下が起こりやすいという欠点のために,普及が妨げられている.これは酵母の凍結障害に起因するもので,そのためパン酵母の凍結障害の防止法や冷凍耐性酵母の検索が強く求められている.そこで冷凍生地中における酵母の凍結障害に影響を与える要因につき検討すると共に,冷凍耐性機構の解明を目的として,冷凍耐性酵母と非耐性の酵母につき2,3の特性の比較を行なった.
著者
中村 隆 徳丸 仁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.200-207, 1995-03-25
被引用文献数
22

近年の電波利用の増加に伴い,電波の人体への悪影響が懸念されている.特に,職業上強い電波照射を受ける人々にとっては,大きな問題である.本論文では,強い電波を扱う研究者を対象に,人体への影響で問題となる吸収電力を完全導体のシールドを用いて低減させるという手法を提案し,その基礎段階として,完全導体のシールドを着けた円柱人体モデルに平面波が入射する場合の電力吸収率(SAR)の低減効果を計算し,シールドの有効性を示した.
著者
安田 茂 坂久 美子 夏秋 啓子
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.85-93, 1998-06-01

葉脈沿いに進展した退緑モザイクを主な症状とするアルストロメリアから分離されたウイルスの性状を調べ, その同定を行った.汁液接種によって調査した本ウイルスの宿主域は, 12科34種の試験植物のうち, 3科4種であった.感染葉汁液の電子顕微鏡観察では, ウイルス粒子は長さ700nm, 幅12nmのひも状で, 併せて層板状封入体も認められた.また, 超薄切片の電子顕微鏡観察では, 葉肉細胞細胞質に散在したウイルス粒子とともに, 渦巻状および風車状の封入体も観察された.本ウイルスは, モモアカアブラムシおよびネギアブラムシによって, 非永続的に伝搬された.SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によってウイルスの外被たんぱく質の分子量を調べたところ, 約33kDであった.本ウイルスを精製し, 家兎に注射して抗血清(As-AlMV-Y)を作製した.本ウイルスはBOUWENおよびBRUNT両博士より分譲されたアルストロメリアモザイクウイルスに対する抗血清と反応した.以上の結果から本ウイルスはPHILLIPSら(1986), およびわが国では井上ら(1992)が報告したアルストロメリアモザイクウイルスと同定された.さらに, As-AlMV-Yを利用した発生調査で, 本ウイルスは栽培圃場あるいは市販の切り花からも検出されることから, わが国でも広く発生していると考えられた.本ウイルスは, ティッシュブロット法などによって根茎や貯蔵根からも血清学的に診断可能であることが示された.アルストロメリアはプラジル, チリなど南アメリカに広く自生し, これらから多くの園芸品種が作出されている.また, アルストロメリアおよびこれと近縁で熱帯・亜熱帯に多く見られるヒガンバナ科植物ウイルスについての研究は少ない.したがって, アルストロメリアのウイルス病に関する研究は, これら植物の栽培や育種上も重要な課題の一つであると考えられた.
著者
坂田 晶子
出版者
東京経営短期大学
雑誌
東京経営短期大学紀要 (ISSN:09194436)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.133-164, 2006-03-15
著者
瀬戸 和明 吉田 茂二郎 今永 正明
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部演習林報告 (ISSN:03899454)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-10, 1995-10-20

近年日本でも,地理情報システム(GIS)が森林経営に応用されるようになってきている。この研究の目的は,GISを鹿児島大学佐多演習林に応用することとこのGISの有効性を評価することにある。この研究では,テラソフト(ビジュアルサイエンス社)が利用された。各小班ごとの森林情報を基礎にデータベースが構築され,森林基本図,林分表,地形,および道路がこのデータベースに納められている。この研究では,地図に関する問題,すなわち現行の森林基本図はGISの精度に耐えるものではないことが指摘された。現在,各県の林務課はこのGISを県の森林経営管理に応用することを計画しているが,筆者らは完全な地図の整備を行うことが先決であると考える。
著者
土橋 由造 井野 智
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.272, pp.41-51, 1978-10-30
被引用文献数
4

1100枚を越える既存のRC床スラブの沈下撓みを実測し, 大撓みをもつ障害スラブの実態を明らかにすると共に, 調査結果を分析・総合して, 大撓みの発生する限界寸度の推定を試みた。以上を要約し, その内容を列挙すると次の如くである。(1)RC床スラブにおける大撓み障害は, その亀裂パターンと大撓みに至る経年変化から推測して, 曲げ応力に他の要因(例えばコンクリートの乾燥収縮, クリープ, 温度応力等)が複合的に作用して生じたものと考えられる。(2)現行設計法によれば, 曲げ材は引張側コンクリートの亀裂を許し, 引張力は鉄筋が負担するものとしているが, 設計荷重程度の段階では曲げ補強筋の効果はそれ程大きくはないようで, 大撓みの発生を防止するためには, 曲げ応力による縁応力度を一定限度内に納め, 曲げ亀裂を許さぬようにする必要がある。(3)RC床スラブの調査結果から, 大撓みの発生する限界縁応力度は, 履歴における最大荷重(通常の建物では施工時荷重)による最大縁応力度が, 大凡コンクリートの引張強度に当る20kg/cm^2内外と推定できる。但し, 調査することのできた建物は昭和20年代の後半から昭和40年代の前半に施工されたものであって, 現在ではコンクリート強度の向上と品質の均一化を考慮して, 上記の縁応力度の限界値を引き上げ得るものと考えられる。(4)設計及び施工に際しては, 施工誤差による版厚の不足, 並びに上端鉄筋の沈下に対しての配慮が必要である。以上は主として, 曲げ亀裂の発生防止を意図したものであって, コンクリートの乾燥収縮, クリープ等に対して, 沈下撓みを小さくするためには, (5)現在までの慣用設計寸度では大撓み防止上, 床版面積を大凡, 平版で24m^2, 中央部薄肉版で36m^2以内に納めることが望ましい。(6)コンクリートの調合決定に当っては, 可能な範囲で単位水量, 及びセメント量を少なくする。(7)スラブ下の型枠支柱の存置期間の適正をはかる。以上のような配慮によって, 健全な床スラブの施工を期待することができるものと思われる。