著者
下田 芳幸
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.23-37, 2014-02

2006 年に福岡県筑前町で生じた中学生のいじめによる自殺は社会的に大きな注目を集め,この年度分から文部科学省は,“児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査”におけるいじめの定義を大きく変更した。また,2011年に発生した滋賀県大津市における中学生のいじめ自殺も一種の社会現象を引き起こし,既述のいじめの定義に,犯罪行為として取り扱われるべきものに関する既述が追加されたほか,いじめ防止対策推進法が2013 年に公布されるきっかけとなった。そこで本研究では,スクールカウンセリングを始めとしたいじめに対する心理学的支援に役立つ知見を整理して提供することを目的に,スクールカウンセラー事業が活用調査研究委託事業から活用事業補助に切り替わった2001年より2013年7月末時点までの,学校における主に心理学的な知見を中心に研究を概観した。
著者
翁 康健
出版者
北海道大学大学院文学院
雑誌
研究論集 (ISSN:24352799)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.293-311, 2019-12-20

在日華僑は,日本の「お盆」と似た「普度勝会」という中国民間信仰の宗教儀礼を行っている。普度勝会とは旧暦の7月15 日に行われる,祖先と無縁仏を祭る儀礼である。神戸普度勝会が最初に行われたのは1934 年のことである。それは,かつて神戸の老華僑が日本へと持ち込んだ民間信仰の文化であり,戦争などで中断を余儀なくされたこともあったが,様々な困難を乗り越えながら今日においても守り続けられている。1997 年には神戸市地域無形民族文化財に認定され,現在は福建省出身の老華僑─ 福建同郷会がその運営を担っている。他の地域の出身者たちは,当日の一般参加者として参加するという形で関わっている。 しかし,老華僑たちが年老いてきたこともあり,20 世紀の末から継承者不足の問題が浮き彫りとなり,普度勝会は存続の危機に直面している。その危機を解決したのは1970 年代以降に来日した同じく福建省出身の新華僑による普度勝会への参加と協力である。 それでは,今日の神戸普度勝会はどのように行われているのか。神戸普度勝会の開催内容については,1980,90 年代の調査に基づいた詳しい記録がある(曽,1987;2013)。しかし,すでに約30,40 年が経過していることを踏まえれば,改めて調査を行う価値があるだろう。また,曽の調査は主に普度勝会の儀礼内容そのものについてのものであったが,本稿では今日の儀礼内容を確認したうえで,主に人々がどのように普度勝会に参加し,その活動を行っているのかを確認していく。以上を踏まえたうえで,福建省出身の新華僑はいかに老華僑と接触し,神戸普度勝会の継承に協力しているのかを明らかにしたい。
著者
福井 弘教
出版者
法政大学大学院
雑誌
大学院紀要 = Bulletin of graduate studies = 大学院紀要 = Bulletin of graduate studies (ISSN:03872610)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.227-235, 2017-10-31

「ギャンブル大国」と称される日本に、カジノという新たな選択肢の付加を想定した法的枠組みが構築された。詳細については現時点では不明な点もあるが、既存の公営ギャンブルに包含される公営競技については、売上減少対策以外の検証がほとんどなされていない。公営競技場は住宅地や学校など多様な建築物、公共施設と近い場所に立地するケースが多いが、本稿では「地域資源」である公営競技を、都市空間において多様なステークホルダーとの共存をいかに構築するかという点に着目して考察した。考察の結果、既存の枠組みにとらわれない、官官連携・官民連携が多様なステークホルダー間、相互に利益をもたらすことが示唆された。
著者
浦野 広明
出版者
立正大学法学会
雑誌
立正法学論集 = The Rissho law review (ISSN:02864800)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.81-111, 2022-03-20
著者
西田 禎元 Tadayuki Nishida
出版者
創価大学アジア研究所
雑誌
創大アジア研究 (ISSN:03887030)
巻号頁・発行日
no.12, pp.75-86, 1991-03-01

『源氏物語』の作者として名高い紫式部は、中国の史書や詩文に造詣の深い女性であった。長篇『源氏物語』には、『史記』や『白氏文集』から引いた文句や、それらをふまえた表現が、ここかしこに見られる。そうした中で、女性である作者は、中国史上(漢代から唐代)のヒロインたちに、特に興味関心を示しているようである。そのヒロインたちは、漢代の戚夫人、李夫人、王昭君、それに唐代の揚貴妃などであった。作者は、皇帝とのかかわりにあった后妃や宮女における運命の悲劇を、物語の構想や主題にからませている。王昭君と楊貴妃は、中国四大美人
著者
長 実智子 渡邊 誠
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.140, pp.259-308, 2022-06-25

自傷行為当事者にとっての自傷行為の役割を明らかにすることを目的とし,女性自傷行為経験者5名に対して面接調査を行い,データを質的研究の手法により分析した。その結果,自分自身では対処不能であり,過剰なストレス状態が長期的に継続し,周囲に対して援助希求行動が取れない場合に,何とか生き抜くための即効性のあるストレス対処戦略として自傷行為が生じることが示された。また,当事者との信頼関係のもとで語られた逐語データの提示を通じて,一人一人の自傷行為にまつわる表現の多様さを示し,その固有の表現にこそ臨床家が汲み取るべきものがある可能性を示唆した。
著者
太田 知行
出版者
北海道大学大学院法学研究科
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.307-344, 2006-05-31
著者
内田 康郎
出版者
Faculty of economics, university of toyama
雑誌
Working Paper, No.309, 2017.12, Faculty of economics, university of toyama
巻号頁・発行日
vol.309, pp.1-12, 2017-12

本稿はインド市場を攻略するスズキの現地子会社マルチ・スズキ社の事業活動について、公開資料の他、スズキ本社やマルチ・スズキへのヒアリングをもとに整理したものである。1983年に進出した当初より一貫して同社は現地自動車市場においてリーディング・カンパニーだが、当時と現在とでは競合他社の数や技術水準の向上など、競争環境がまったく異なる。そのような環境にありながら、マルチ・スズキは近年さらに競争優位を獲得してきている。本稿はその具体的な活動内容について整理するものである。