著者
湊 真一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.1152-1159, 2013-10-15

「おねえさんの問題」と呼ばれる格子グラフ上の経路数え上げ問題が,アルゴリズムの専門家のみならず,情報処理関連の研究者・技術者の間でも広く注目を集めている.本稿では,まず「おねえさんの問題」という名称の由来について述べ,この問題を効率よく解くためのデータ構造「ZDD」とKnuth のZDD 構築アルゴリズムについて簡単に解説する.次に,この問題が知られるきっかけになった日本科学未来館における研究成果展示とYouTube 動画の反響について振り返り,最近達成された世界記録の状況について述べる.最後に,この問題が高速に解けることで今後どのような応用が期待できるかを展望する.

20 0 0 0 OA 口絵

著者
クレインス フレデリック
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ
巻号頁・発行日
vol.56, 2017-10-20
著者
刀川眞
雑誌
情報処理学会研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.27(2006-IS-095), pp.59-62, 2006-03-16

サマータイム制の導入による情報システムへの影響について事前に検討すべきであるという問題提起を受け、研究会が中心となり予備的検討を行った。具体的には、サマータイムの開始と終了に応じて情報システムが認識するタイマを変更する場合と変更しない場合とに分け、航空機運行システムの影響や食品衛生法との関係など、幾つかの想定事象を抽出した。結論として、情報システムへの影響は多岐に渡ると考えられ、対応策を提示するには現場で生じる具体的事象をより多く収集しなければならないが、サマータイム制導入の動きは、それほど高まっているとは言いがたい。このため現時点で十分な情報を入手することは困難なため、社会的にサマータイム導入の機運が高まってきた時点で、再度、検討の継続を判断するものとした。
著者
安岡 孝一 ウィッテルン クリスティアン 守岡 知彦 池田 巧 山崎 直樹 二階堂 善弘 鈴木 慎吾 師 茂樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.323-331, 2018-02-15

古典中国語(漢文)の解析手法として,MeCabを用いた形態素解析手法を提案する.本手法では,漢文の動賓構造を表現すべく,4階層の「品詞」からなる新たな品詞体系を構築し,それに基づくMeCab漢文コーパスを設計した.合わせて,MeCab漢文コーパスを入力するための専用ツールとして,XEmacs CHISEをベースとしたコーパス入力ツールを開発した.また,MeCab漢文コーパスを効果的に管理し,さらには品詞体系のリファクタリングを行うべく,MeCab漢文コーパスのLinked Data化を行い,WWW上で公開した.さらに,MeCabを用いた漢文形態素解析の応用として,漢文における固有表現の自動抽出に挑戦した.結果として,地名の自動抽出は高精度に行うことができたが,官職・人名の自動抽出はそれぞれに課題が残った.
著者
岩田 彩 上坂 和美 粟津 妙華 石川 由羽 高田 雅美 城 和貴
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2015-MPS-105, no.10, pp.1-6, 2015-09-22

本稿では,近代書籍で用いられているフォントを用いた活字を自動で生成する手法を提案する.近代デジタルライブラリーで一般公開されている近代書籍のテキスト化に使用する多フォント活字認識手法の精度向上のため,学習データを十分に増やす必要がある.しかし,近代書籍に使用されているフォントは多種多様であるため,十分な学習データを収集することは困難である.そこで本稿では,学習用の近代書籍フォントセットを自動生成する変換フィルタを,遺伝的プログラミングを用いて生成する.
著者
伊豆 裕一 加藤 裕治 林 在圭 イズ ユウイチ カトウ ユウジ イム ゼエギュ Yuichi IZU Yuji KATO Jaegyu Lim
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.15, pp.73-84, 2015-03-31

1955 年、東京芝浦電気より発売された自動式電気釜は、米と水を入れてスイッチを入れればおいしいご飯が炊けるという、今では当たり前となったことを実現した夢の商品であった。日本国内で急速に普及率を伸ばした電気釜は、その後、アジアの各国に輸出され、米食を簡単で身近なものとした。本稿では、まず、我が国における、電気釜の普及と生活文化の関係を、デザインと広告の変遷を見ることで考察する。つぎに、同じく米を主食とする韓国における電気釜のデザインの変遷との比較を行うことで、地域の食文化と家電製品の関係について論じる。
著者
MisawaKeiji Kojima Hideyasu Imae Naoya Nakamura Noboru
雑誌
Antarctic meteorite research
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-12, 2003-03

Among 3550 meteorite samples found near the Yamato Mountains area during the field season of 2000-2001, three meteorites, Yamato (Y) 000593, Y000749, and Y000802 of total weight of about 15 kg, are identified as new paired nakhlites. In ordered to improve our knowledge of the nakhlite parent body, possibly Mars, a coordinated consortium study of the Yamato nakhlites was organized. We here present an outline of the Yamato nakhlite consortium and implications for Martian geological history on the basis of ongoing studies.
著者
山本 雄也 中野 倫靖 後藤 真孝 寺澤 洋子
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1423-1437, 2023-10-15

歌手は楽譜に合わせて歌うだけでなく,その音高や音色に変動を加えることがある.本論文は,これらを「歌唱テクニック」とし,ポピュラー音楽の中でもJ-POPを対象に,歌手によって歌唱テクニックがどのくらいの頻度でどのように生起するか,そして楽曲のどこで生起するか,その傾向を分析することを目的とする.そこで本論文では,J-POPのプロ歌手24名(男女各12名)の歌い方を別のプロ歌手14名(男女各7名)が学術目的で模倣した歌声データベース「AIST-SIDB」に含まれる48歌唱の13種類の歌唱テクニックを対象として,歌唱テクニックとメロディの持つ音楽要素との関係性を分析した.具体的には,歌唱テクニックの生起頻度と,歌唱テクニックの1つであるビブラートに関してはそのパラメータ(深さと速さ)を分析した.さらに,歌唱テクニックの生起位置を楽譜情報と対応付けて,各歌唱テクニックと「歌詞の音素」,「音高」,「音高差」,「音長」,「フレーズ内における位置」との関係を分析し,またビブラートパラメータと「音高」および「ビブラート長」との相関を分析した.
著者
三浦 洋子
雑誌
千葉経済論叢 = The Chiba-Keizai ronso (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
no.29, pp.45-77,

朝鮮半島の人口問題を食料事情との関連させながら、戦前の李朝時代、植民地時代から現在の韓国と北朝鮮まで比較検討を試みた。すなわち、総人口、人口変動要因である合計特殊出生率、平均寿命、国内移動、国際移動、人口政策も交えて検討し、さらに戦後の人口移動が引き起こした問題点として、年齢構造の変化、経済活動参加状況、産業別労働人口を考察した。李朝時代は食料不足が人口増加の歯止めとなったことが、人口低迷の理由であろうし、植民地時代の人口倍増は、1人1日当りの供給熱量が2,700キロカロリーという水準に到達したことと、衛生状態の改善等が主な理由である。戦後は韓国では70年代の「続の革命」まで人口増加圧力による食料不足は継続した。北朝鮮は当初人口が1000万人に満たなかったため韓国のような食料不足はなかったが、旧ソ連の崩壊とともに支援国を失い、1990年代中半から食料危機が叫ばれ餓死者まででてきた。したがって北朝鮮は人口変動のあらゆる局面に食料不足と経済難が影響している状況にある。
著者
小杉 考司
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.39-49, 2023-03-15

心理学の研究方法として心理尺度を用いたものは数多くみられるが,心理尺度が何を表現しうるかについて,その方法論的根拠が明確でないものが多く含まれる。このような問題が生じる原因は,尺度作成が手続的には非常に容易になったこと,客観的に判断する数値基準が容易に達成できることがあると考えられる。そこで本稿ではデモンストレーションとして,身長と体重を測定する客観的な基準を満たす尺度を作成した。この心理尺度の作成を通じて,あたかも心理学的な測定ができたかのような議論の展開ができること,こうした試みが原理的に排除できないことを示した。また心理学的議論がミスリードされないようにするために,心理尺度の仮定や適用の限界を再確認し,今後必要な議論の展望を論じた。