著者
高坂 康雅
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.23-34, 2013-03-19

本研究の目的は、ある時点において恋人がいる青年(大学生)を対象として調査を実施し、その対象者に対し全3回の縦断的な追跡調査を実施することにより、アイデンティティ及び「恋愛関係の影響」が恋愛関係の継続/終了の予測可能性を、明らかにすることであった。第2回調査の時点の恋愛関係の継続/終了、及び第3回調査時点での恋愛関係の継続/終了を独立変数に、アイデンティティや「恋愛関係の影響」について比較したところ、「恋愛関係の影響」の「他者評価の上昇」が短期的な恋愛関係の継続/終了を予測することが明らかになった。またアイデンティティの感覚や「恋愛関係の影響」の「充足的気分」も、短期的な恋愛関係の継続/終了を予測する可能性が示された。
著者
斉藤 くるみ
出版者
日本社会事業大学
雑誌
日本社会事業大学研究紀要 (ISSN:0916765X)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.193-209, 2022-03

What is“Orality and Literacy”for hearing impaired people, especiallyfor Deaf people whose native or primary language is a sign language? What is“Orality and Literacy”for visually impaired people, especially for those who aretotally blind? Can Deaf people have orality and/or literacy? Blind people haveorality, but can they have literacy? Is Braille character(s) or letter(s)? Thisarticle examines the relationship between orality and auditory sense, and betweenliteracy and visual sense.Chapter 1 reviews the present definitions of“Orality and Literacy”and discussestheir problems. Chapter 2 examines what literacy is for the visually impaired andwhat Braille and reading-aloud are for them. Chapter 3 examines what oralityis for the hearing impaired and whether sign language(s) can have literacy ornot. We have considered orality as voice, and literacy as visual letters, which isnot correct. Sign linguistics has already proved that the true nature of languagewas not voice. It is necessary to redefine“Orality and Literacy”without beingconfused with modality.音声言語を聞くことのない聴覚障害者、特に手話を母語、または第一言語とするろう者や、既存の文字を読み書きすることがない視覚障害、特に全盲の人にとって、オラリティとリテラシーはどういうものなのか。ろう者はオラリティとリテラシーを持ち得ないのか?全盲の人はオラリティは持てても、リテラシーは持てないのか。点字は文字ではないのか。本論文では 1 でオラリティとリテラシーのこれまでの定義やその問題を述べ、2で視覚障害者にとって、リテラシーはどのようなものかを、点字や音読を通して考察する。3では聴覚障害者にとって、手話という言語にオラリティとリテラシーはあり得るのかを検証する。そして長きに渡り、当然と思っていた「オラリティとは音声、リテラシーとは視覚記号」という考え方は言語の本質を考えたときに、不十分であったということを明らかにする。モダリティにまどわされず、オラリティとリテラシーを定義しなおす必要がある。
著者
青木 慎
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.65, pp.77-93, 2021-12-01

現代貨幣理論(Modern Money Theory;MMT)の理論家は、主流派マクロ・モデルであるIS - LMモデルに否定的な立場を取っている。それにもかかわらず、MMTにはそのモデルに代わるモデルがなく、政策の手順とその効果だけで、その間の過程を欠如した理論になっています。本論は、MMTのこの問題点について着目し、MMTを主流派モデルに当てはめると、MMTの理論家にとって、どのような不都合が生じるのかについて明らかにすることを目的とします。また、補足として、MMTが提唱する「最後の雇い手」(ELR)についても、経済の安定化として十分に機能するのかを検討します。
著者
森元 隆文 横山 和樹 池田 望
出版者
札幌医科大学保健医療学部
雑誌
札幌保健科学雑誌=SAPPORO MEDICAL UNIVERSITY SAPPORO JOURNAL OF HELTH SCIENCES = SAPPORO MEDICAL UNIVERSITY SAPPORO JOURNAL OF HELTH SCIENCES (ISSN:2186621X)
巻号頁・発行日
no.10, pp.13-24, 2021-03-01

本研究では,統合失調症に対する作業療法,および作業療法士が実施している心理社会的介入の内容と有効な側面を概観し、今後の実践と研究の方向性を検討するために,英語論文のレビューを実施した。3種類の検索データベースとハンドサーチにて論文を収集し 2 段階のスクリーニングを経た結果,34 編が分析対象となった。その内訳は,「作業活動・作業療法マネジメント」9 編,「手段的日常生活活動訓練」2 編「認知機能リハビリテーション」9 編,「運動療法」2 編,「心理教育・技能訓練」4 編,「就労支援」5 編,「地域生活支援」3 編であった。各介入の主な治療標的に加え精神症状や QOL など様々な側面への効果が示されていたが,特に認知機能は作業療法士による多くの介入で効果を示す重要な治療標的であることが示唆された。さらに,今後の実践や研究で作業に関する指標を扱うことで,作業療法の独自性やさらな効果を示すことにもつながると考える。
著者
滝沢 力 平井 重行
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2022-SLP-142, no.55, pp.1-6, 2022-06-10

アニメや映画,ゲームなどの制作現場では,サウンドエンジニア・クリエイターが,経験や知識・技能により効果音を選定・収集・生成・編集している.最近は,プロ以外の人による作品制作は盛んに行われるが,効果音の選定や編集による表現は素人には容易ではない.ただ,オノマトペ(擬音語)として音声で音のニュアンスも含めた効果音を表現することはある程度可能である.そこで,本研究では,オノマトペ音声を用いた効果音合成手法の確立を目指す.特に,様々な種類やニュアンスの表現が含まれる爆発音に焦点を当て,その音響合成手法について取り組む.ここでは,映画やアニメーション等で利用される爆発音の音響データ多数と,それらを口頭でオノマトペとして発話した音声データ多数を用意した.そして,系列変換モデルである Transformer でメルスペクトログラム画像を学習し,爆発音合成(音声から効果音への変換)を試みた.本稿では,Transformer での学習およびメルスペクトログラムからの音響合成モデルの学習について述べ,現状で得られている生成結果について報告する.
著者
北市 仁 中谷内 修 柳井 清治
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-8, 2022

石川県に生息するサクラマスの野生集団および県内で飼育される種苗集団に対して、マイクロサテライト10遺伝子座を用いて遺伝的集団構造の把握を試みた。石川県内の8水系10河川集団から採集した野生サクラマス145個体と県内の漁業関係機関等から提供してもらった4系統群の人工種苗サクラマス20個体をそれぞれ遺伝子解析に供した。その結果、調査した野生サクラマスの各集団は遺伝的多様性が高く保持されていることがわかった。また帰属性解析の結果から、野生サクラマス集団は3つの遺伝的クラスターに分けられた。このうち2つのクラスターは加賀地方と能登地方に由来する地理的なクラスターであったが、残り1つのクラスターは人工種苗の放流によって人為的に作られたクラスターであることが示唆された。このことから、石川県の野生サクラマス集団は過去に人工種苗放流による遺伝的撹乱を受けた可能性があると考えられた。
著者
髙橋 愛典
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.131-153, 2022-03-31

[概要]紀要とは,本稿が掲載されている『商経学叢』を含め,「大学や部局,研究機関,学内学会等が刊行する学術雑誌全般」を指す。多くの紀要では査読制が導入されていないこともあり,学協会誌や英文学術雑誌と比較して,掲載される論文等の水準が低いとみなされ,様々な批判を受けてきた。また,日本で発行される紀要は全部で約4,000種類に及ぶとされ,図書館等での保管・管理上の問題も引き起こしてきた。一方で紀要は近年,オープンアクセスの進展等に伴って学術コミュニケーションの促進に資する側面が明確になってきた。本稿は,紀要の「味方」という視点から,紀要のメリットを伸長させデメリットを克服する方策を,大学・部局といった教員組織における研究活動の促進をも視野に入れて検討する。[Abstract] Kiyo, or departmental research bulletins, have long been published by Japanese universities. About 4,000 series of the bulletins are supposed to be published every year in Japan. The papers in the bulletins are mostly non-refereed, but the bulletins represent the unique features of Japanese universities, mainly in their faculties of humanities and social sciences. This paper examines the pros and cons of the bulletins, for the sake of the promotion of academic communication, including readers and researchers outside the universities.
著者
山本 太郎 植田 広樹 高橋 克巳 小笠原 盛浩 関谷 直也 小室 広佐子 中村 功 橋元 良明
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2012-GN-84, no.17, pp.1-8, 2012-05-10

我々は,インターネット利用に際する「安心」と「不安」に関する研究の一環として,9ヵ国の出身者を対象としたインターネット利用時の不安に関するグループインタビューを実施した.このインタビューは,日本を含む10ヵ国を対象とした同様の趣旨の国際電話調査結果の有用性の検討並びに各国の文化的・社会的背景を調査するために実施したものである.本稿は,日本との比較を交えつつ,前記グループインタビューの米国事例を報告するとともに,その結果により国際電話調査結果に対する考察を行うものである.
著者
朴聖俊 高田 彰二 山村 雅幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.898-910, 2005-03-15

爆発的に増加するタンパク質立体構造を比較することは構造ム機能相関の解析にきわめて重要である.既存の立体構造比較手法はタンパク質全体を剛体として扱う.しかし,進化的に新しい機能を獲得する際にタンパク質構造は部分的特異的に変形を受けるため,剛体としての取扱いには限界がある.本論文では機能進化過程において,構造変形を受けにくいビルディングブロックと構造変形が顕著なループ部分が存在することを考慮に入れた立体構造比較手法を開発する.提案手法は部分構造比較と全体構造比較を2層で並列探索し,遺伝的アルゴリズムの集団探索性能を活用してタンパク質の機能進化における構造変形の柔軟性を可視化する.2層比較の基本的なアイデアと実装について説明したうえで探索アルゴリズムと評価関数の特徴と性能について述べ,構造-機能相関の解析ツールとしての有効性を示す.
著者
国広 真吾 鄭 俊俊 猪俣 敦夫 上原 哲太郎
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2022-IOT-58, no.5, pp.1-8, 2022-07-05

OAuth2.0 を用いてユーザ認証の統合を行う Web アプリケーションが広く普及している.OAuth2.0 にはクロスサイトリクエストフォージェリ (以下 CSRF) 攻撃等に対する脆弱性が存在しており,開発者が Web アプリケーションに OAuth2.0 を実装する際に,URL に state パラメータを付与する等の対策をすることが必要とされている.しかし,CSRF 攻撃等に脆弱であるまま OAuth2.0 を実装している Web アプリケーションが複数確認されている.本研究では,CSRF 攻撃等に脆弱な OAuth2.0 の実装をしている Webアプリケーションを検知し,ユーザへ知らせる事で CSRF 攻撃等の被害を未然に防ぐ事を目的とし,ブラウザの拡張機能を用いて検知する手法を提案した.結果,ブラウザの拡張機能を用いることで,CSRF 攻撃への対策が不十分なまま OAuth2.0 実装をしている Web アプリケーションを検知することが可能であった.
著者
岡 惠介
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.319-355, 2003-03-31

本稿は,北上山地の山村における藩政時代以来の森林利用を,商品生産や生活のための利用などに分類しながらその実態を洗い出したものである。商品生産のための利用としては,藩政時代にその起源が求められる養蚕,狩猟,たたら製鉄,牛飼養,大正から昭和初期以降の枕木生産,製炭,昭和30年以降のパルプ・用材生産がある。年間伐採量を推定すると,森林に与えるダメージが大きかったといわれているたたら製鉄用の製炭による森林伐採は,昭和期の製炭やパルプ・用材生産のための森林伐採に比べればその規模は小さい。また,たたら製鉄は三陸沿岸に比較的多く,製塩の燃料用木材の伐採も同様で,北上山地の中央部では大規模な伐採はなかった。製炭による大規模な森林伐採は,昭和10年ごろからの自動車道路の開削によってスタートし,途中からパルプ・用材生産に移行しながら,林道の延長・整備によって昭和60年代まで継続し,安家の主たる生業の位置にあった。この50年以上にわたる森林伐採に耐えうる大径木の豊富な森林は,安家川中下流域では,たたら製鉄衰退後の明治から大正期に蓄積され,また上流域では藩政時代以来の蓄積によるものであったと考えられる。生活の中では様々な森林の植物が利用され,資源の枯渇を招くような採取はみられず,また道具類の素材になる性質・形状をもった野生植物が,巧みに利用されてきた実態が浮かび上がってきた。また信仰儀礼のための森林資源の利用が多く,山村の人々の心の部分においても,森林の資源が欠かせなかったことが確認できた。現在の森林利用の重要なものに燃料としての利用があり,未来にむけた循環型社会のモデルとして,山村の薪の伝統的な利用形態を支えていく地域のシステム作りが必要であると考えられる。