著者
日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.569-591, 2017-09-01 (Released:2017-09-21)
参考文献数
178
被引用文献数
2

日本集中治療医学会の重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会は,総論的なクリニカルクエスチョン(CQ)とその推奨で構成した「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン」を2016年3月に発刊した。重症患者では臓器障害や病前合併症の状況に応じて,特殊な急性期栄養療法を要する場合も少なくない。その後,これらの個々の状況における栄養療法を行う際の臨床的補助となることを目的に,病態別のCQの立案とその推奨の作成を行い,「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン:病態別栄養療法」を作成した。本ガイドラインで対象とした特殊病態は以下のいずれかの条件に合致するものとした。1)国際ガイドラインでは言及されない治療が本邦で行われている病態(急性膵炎,中枢神経障害),2)国際ガイドラインで言及されている治療が本邦では一般的に行われていない病態(呼吸不全,急性腎障害,急性膵炎),3)国際ガイドラインで対象とされている患者群が本邦の一般的な患者群とは異なる病態(高度肥満),4)一般的な栄養療法を適応できない病態(肝不全),5)本邦の臨床現場で栄養療法の理解に混乱が見られる病態(呼吸不全,急性膵炎)。上記より,本委員会は,呼吸不全,急性腎障害,肝不全,急性膵炎,中枢神経障害,高度肥満の6病態を取り上げ,本邦の臨床に適応したCQを立案し,推奨を策定した。各推奨作成にあたっては,「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン」と同様に,既存のシステマティックレビュー(SR)と国際ガイドラインの推奨を検証し,新規のSRおよびメタ解析の必要性を検討した。本ガイドライン作成においては,いずれのCQでも新規のSRを行う必要はなかった。本ガイドラインは,本邦初の重症患者を対象とした栄養療法ガイドラインとして先行刊行した「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン」の補遺として捉えていただき,併せて臨床の現場で広く適切に活用されることを期待している。
著者
丸山 祐造
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.143-170, 2015-09-30 (Released:2016-05-30)
参考文献数
25

多変量正規分布やそれを拡張した球面対称分布のパラメータ推定や予測問題において生じるスタイン・パラドクスに関して概説する.特に,分散既知のもとでの多変量正規分布の平均ベクトルの推定,平均ベクトルの推定と予測分布の関係,線形回帰モデルにおけるパラメータ推定を扱う.推定量や予測分布の決定理論的な良さを考える際に,ベイズ推定量やベイズ予測分布が重要な役割を果たすことを概観する.
著者
立屋敷 かおる 大亦 みち子 寺元 芳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.359-362, 1983-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
2

1) 煮切り等の加熱操作により, 酒のアルコール度は減少した.アルコール度の高い酒ほど減少率は大きく, 残存量は少なかった.2) 2倍に希釈した酒を加熱した結果, いずれの酒も加熱時間に伴ってアルコール度が減少し, 加熱2分で元の約112に減り, 10分で1度以下となった.この経時変化に, 加熱時の蓋の有無と酒の濃度は影響しなかった.3) 清酒の燗は, 燗の程度によりアルコール度の変化に差があった.ぬる燗 (45℃) ではアルコール度に変化がなく, あつ燗 (60℃) で0.6%, 過度の燗 (70℃) で1.2%減少した.4) 酒を使用する料理10種の結果では, 多くのものが加熱によりアルコール含量の約90%が減少した.加熱後の料理のアルコール含有率は, ほとんどが1%以下だった.
著者
知念 渉
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.325-345, 2017-07-28 (Released:2019-03-08)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

日本の「ジェンダーと教育」研究は,特にポスト構造主義が台頭した1990年代後半以降,男/女というジェンダー関係が構築される過程に焦点を当てる一方で,男性ないしは女性という一つの性の中の分化がどのように構築されているのかという点を看過してきた。それに対して本稿は,男子生徒の性内分化を描く試みである。高校におけるフィールドワーク調査のデータから,〈ヤンチャな子ら〉と呼ばれる男子生徒たちが用いる〈インキャラ〉という解釈枠組みとその運用場面を分析し,そこに男性性がどのように組み込まれているのかを明らかにする。 本稿で明らかになった知見は以下の三点である。第一に,〈インキャラ〉とは,具体的な人物と対応する生徒類型というよりも,人々の言動や実践を解釈していく枠組みであった(4節)。第二に,〈インキャラ〉という解釈枠組みは,〈ヤンチャな子ら〉にとって自らにも他者にも適用されるものであり,適用対象や文脈に応じて様々な意味を帯び,人々のジェンダー実践を規制するものであった(5節)。そして第三に,学年が上がるにつれてそうした解釈枠組みに対して,異議申し立てが行われるようになった。そこには,彼らの中で理想とされる男性性が再定義されていく可能性や,そうした解釈枠組みの維持・変容と集団内の地位が関わっていることを見出すことができた(6節)。 最後に,これらの分析から得られた知見が,「ジェンダーと教育」研究においてどのような意義をもつのかについて考察した。
著者
前田 あゆみ 菅野 敦之
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.35-39, 2020-06-10 (Released:2020-07-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

The refill-prescription system widely implemented overseas has been discussed toward its legislation for many years but has not been enforced yet in Japan. In considering introduction of such a refill-prescription system, numerical economic effects of its introduction can be expected in this paper. Based on the survey by Kurata at al. in 2016, the first and second groups were defined for patients with prescriptions of the same medicine more than twice for 14 days or more (20.2%) and for patients in the first group who were prescribed medication for more than 180 days and visited the pharmacy over 330 days (4.4%), respectively. The number of refill-prescriptions were estimated from the total number of the prescriptions put out in 2016. In the first group 166.7 million prescriptions were replaced by refill prescription, resulting in the reduction of medical and insurance expenses by 155.6 and 108.9 billion yens, respectively, while in the second group the reduction of 36.31 million prescriptions as well as 33.9 and 23.7 billion yens for those expenses, respectively, were expected. The monthly working time of overworking doctors with poor working environment was also calculated to be shortened by 6.1〜12.1 and 1.3〜2.6 hours for these two groups, respectively. Additionally, the introduction of the refill-prescription system was estimated to reduce the physical burden of one patient by 2.7〜5.3 hours per year for consultation and waiting hours in the medical institutions. Therefore, the refill-prescription system is thought to be useful for efficient allocation of medical resources to patients.
著者
松八重 一代 大竹 久夫
出版者
日本LCA学会
雑誌
日本LCA学会誌 (ISSN:18802761)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.134-140, 2018 (Released:2019-12-15)
参考文献数
32
被引用文献数
2

リンは窒素・カリウムと並び植物の生長に必須の三大栄養素の一つであり、肥料原料に欠かすことのできない資源の一つである。現在、経済圏で用いられるリン資源の大半は鉱石由来のリンである。USGSの2018年の報告によると産出量については、中国、モロッコ、アメリカの3カ国で世界全体の産出量の約75%を占め、世界全体でのリン鉱石の経済埋蔵量のうち7割以上はモロッコ一国が占めている。リン鉱石の多くは肥料原料に用いられるが、半導体、表面処理剤、EV二次電池、医薬品や加工食品等の工業用途も大きな需要がある。食料供給に欠かすことのできない資源として、欧州をはじめ各国・地域でリンを戦略的資源とみなし、その持続的な利用について熱心な議論が進められている。持続可能なリン資源管理・保全に向け、今後、農業をはじめとするリン資源を活用する産業での資源利用効率の向上を目指し、未利用リン資源回収・再資源化技術開発、循環資源利用技術の産業化に向けた経済的・効率的な条件確立が期待される。

25 0 0 0 映画撮影

出版者
日本映画撮影監督協会
巻号頁・発行日
no.29, 1968-09
著者
長澤 卓真 高橋 純平 今野 龍之介 高玉 茜 畑中 咲希 濱口 唯 三船 昂平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.42-45, 2018 (Released:2018-04-06)
参考文献数
13

【目的】本研究の目的は,静的伸張に筋圧迫を併用したストレッチングの伸張効果を検証するとともに,筋圧迫強度の違いが即時効果に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】被験者は健常若年者59名とし,スタティックストレッチング(以下;静的伸張)のみを行った群と,5 kg,10 kgと強度の異なる圧迫を併用したストレッチングを行った2群の,計3群の右肩関節水平外転関節可動域角度を比較した。【結果】ストレッチング介入前後による主効果が認められ,各群ともに可動域の改善がみられた。群間比較では,肩関節他動的関節可動域角度(Range of Motion;以下ROM)は静的伸張群と5kg圧迫群間で有意差が認められた。【考察】関節可動域の即時伸張効果は,静的伸張のみよりも適度の強度で圧迫を行ったストレッチングの方がより大きいことが示唆された。しかし,圧迫部位など他要因による影響も考慮する必要がある。
著者
笠井 幹治
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.624-626, 1980-11-01 (Released:2011-07-19)
参考文献数
6
著者
堀 浩一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.250-258, 2015-07-01 (Released:2015-07-01)
参考文献数
15
被引用文献数
3

人工知能の研究が再び注目を集めるようになっている。人工知能の能力が人間を完全に超えてしまう技術的特異点に関する議論も盛んになってきている。人々が人工知能に対して抱く不安も高まってきているように見受けられる。本稿では,人工知能がどのように進歩する可能性があるかではなく,人工知能をどのように進歩させたいかという問題について議論する。抽象的な不安に対して抽象的な回答を返すのではなく,人工知能を今後どのように作っていくかという設計の指針をいくつか提示することを試みる。
著者
坂本 佳子
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.71-85, 2021-05-25 (Released:2021-06-10)
参考文献数
171

The ectoparasitic mite, Varroa destructor Anderson and Trueman(Mesostigmata: Varroidae), causes tremendous damage to the beekeeping and pollination industries. These industries rely upon the naïve European honey bee, Apis mellifera L.(Hymenoptera: Apidae), to which the mite has spread from its native host, the Asian honey bee, Apis cerana Fabricius. Researchers around the globe have been building our understanding of the ecology of V. destructor. However, the research has not been regularly reviewed in Japanese, and researchers and beekeepers in Japan have not had access to the most update reports over the past two decades. Here, I review recent developments in the study of the biology and ecology of V. destructor and the resistance of honey bees to the mite in Japanese.
著者
山縣 芽生 寺口 司 三浦 麻子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20222, (Released:2021-06-30)
参考文献数
31
被引用文献数
8

The purpose of this study was to investigate the cognitions, behaviors, attitudes, and living conditions of Japanese people during the severe novel coronavirus pandemic that reached the country in January 2020 and to publish the data related to the study. Using experiential data gathered from 612 Japanese nationals in late March 2020, we conducted an exploratory analysis of the associations between the variables measured in order to capture an authentic portrait of a society grappling with an infectious disease. We found that infection preventive behaviors and exclusionary attitudes toward foreigners were associated with individual differences in the cognitive responses specific to infectious diseases and pathogen avoidance. In variables directly related to the pandemic, there were some differences by gender, but not by generation or area of residence. This study provides practical, essential information that could give academic researchers, policymakers, and social support agencies valuable insights into the social pathologies specific to infectious diseases, managing public health, and improving lives.