著者
木村 亨
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.157-168, 2011 (Released:2013-03-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

製造業70社の従業員約1,800人の職務満足を調べた。景気・為替などの外的要因の変化の影響を除くため,この中から機械22社,化学14社,医薬13社を選び,職務満足調査時ならびに調査前・調査後の対売上高営業利益率を調べ,職務満足との相関を求めた。その結果,職務満足調査前の利益率と職務満足は相関性がなく,調査時および調査後の利益率と職務満足との間には相関性が認められた。職務満足の調査が1時期のみであり調査対象の会社数も十分でないため,この結果から結論を下すことはできないが,従業員の職務満足は企業業績に寄与すると推定できる。このことから,職務満足を高めることは業績と従業員のwell-being両立の手段になり得ると考えられる。(図2,表5)
著者
田村 朋美
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

古代ガラスにはSrが100~500 ppm含まれており、地中海周辺地域の出土品を中心にSr同位体比による産地推定が行われている。一方、日本出土品でSr同位体比分析が行われた例はほとんどない。本研究では、日本出土のガラス製遺物のSr同位体比分析を実施し、これまで特定することのできなかった生産地の特定を目指すものである。研究期間の前半では、化学組成において地中海周辺地域で生産された可能性の高いナトロンガラス(Group SI)を分析対象とした。さらに、主成分はナトロンガラスに類似するものの、微量成分や製作技法から判断すると南~東南アジア産と考えられる「ナトロン主体ガラス」(Group SIV)も調査した。その結果、Group SIは確かに地中海周辺地域で生産された「ナトロンガラス」であるが、Group SIVは真正の「ナトロンガラス」ではないことが確認された。さらに、日本出土のナトロンガラス(Group SI)の多くは、現在のイスラエル周辺で生産された可能性が高いことが明らかとなった。研究期間の後半では、インド~東南アジアで生産されたと考えられるカリガラスおよび高アルミナソーダガラスのSr同位体比を測定した。その結果、これらのガラスは地中海産のナトロンガラスとは全く異なる値を示した。特にカリガラス(Group PI)は今回調査した資料の中で最も高い値を示した。筆者らは製品の流通状況などからGroup PIのカリガラスについてインド産の可能性があると考えているが、インドのガンジス川流域の土壌は高いSr同位体比をもつことが知られており、関連性が注目される。最終年度では、これまでに実施した同位体比分析の結果について学会誌で報告するとともに、Sr同位体比にNd同位体比を組み合わせた日本出土のナトロンガラスの産地同定についても試みた。その結果、地中海産のガラスと矛盾しない結果が得られた。
著者
前田 和宏
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
日本風工学会誌 (ISSN:09121935)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.242-249, 2011 (Released:2012-08-24)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2
著者
溝尻 真也
出版者
目白大学
雑誌
目白大学総合科学研究 = Mejiro Journal of Social and Natural Sciences (ISSN:1349709X)
巻号頁・発行日
no.18, pp.95-107, 2022-03-31

This paper clarifies the images of DIY/Sunday Carpenter, which spread in Japan from the late 1960s to the 1970s as a handicraft hobby carried out mainly by men, and how it took root throughout the country. As a result of a content analysis of the bulletin magazines of the Japan DIY Club, an organization that gained members up to 45,000 during this period, it became clear that various kinds of activities were represented as DIY/Sunday Carpenter, such as making furniture and maintaining and repairing houses. In addition, it became apparent that DIY/Sunday Carpenter at that time was described with the images of craftsman devoting himself to manual labor.
著者
髙橋 和子 山本 光
出版者
公益社団法人 日本女子体育連盟
雑誌
日本女子体育連盟学術研究 (ISSN:18820980)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.1-16, 2016 (Released:2016-05-31)
参考文献数
42
被引用文献数
2

レジリエンスは,困難な出来事を経験しても個人を健康へと導く心身の特性である。本研究は,大学生360名と教員200名にダンスを実施し,ダンスがレジリエンスを高める効果があるかを検討することを目的とした。心身の健康の指標は,レジリエンス尺度(精神的健康尺度・精神的回復力尺度)を用い,その解析を行うと共に,質的研究として,ダンス教材「新聞紙」の即興的な表現における自由記述分析を行った。その結果,次のことが明らかになった。①ダンス実習を通して「運動好き」「ダンス好き」「精神的健康」「精神的回復力」が肯定的に変容した。②「精神的健康尺度」は [憂鬱][集中力欠如][怒り][身体的症状]の4因子構造であり,「精神的回復力尺度」は[挑戦的][情緒不安定][感情コントロール]の3因子構造であり,各因子間に相関があった。③「精神的健康尺度」と「精神的回復力尺度」の各々の因子間においても,6つの因子間に相関が認められた。④大学生がダンス教材「新聞紙」で獲得した概念は,レジリエンスを高める要素と類似していた。以上のことから,レジリエンスを高めるダンスの効果が明らかになった。
著者
島 創平
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
人文・社会科学論集 (ISSN:09157794)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.47-64, 2022-03

It is a commonly accepted view that Nero persecuted Christians for charge of arson and St. Peter and St. Paul were martyred in the time of Great Fire of Rome. However, B. D. Shaw denied that common view. There is no definite historical evidence that Peter and Paul were martyred in Rome because of Nero’s persecution.There are no other documents than the Tacitus writing that relates the Great Fire of Rome with the persecution of Christians. Although Tacitus called those who believed in Jesus Christ “Christiani,” that naming was not common in the reign of Nero, i.e., AD60s. During the reign of Nero, Romans could hardly distinguish the Christians from the Jews.Early Christian writers often called Nero as “the enemy of the God.” After Nero killed himself, the legend arose that Nero did not die and would come back from the East to Rome. Such image of Nero influenced the literature of the Apocalypse of Judaism and Christianity. And that image also placed Nero in the position of the “enemy of the God” and “Antichrist” who would appear at the end of the world.
著者
原田 大 北村 正樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.679-683, 2014 (Released:2016-09-17)
参考文献数
22

「朝起きて,コーヒーを片手に朝食をとり,いつもの薬を飲んで,タバコを一服…」.そんな何気ない日常の行動が,時として有害事象の原因となる場合がある.現在まで,食事や嗜好品と薬には,注意しなければならない組み合わせとして知られるものが幾つかある.それによって薬の効果が減弱してしまうこともあれば,逆に増強することもある.ここでは,主な食品や嗜好品と薬剤との相互作用について述べていきたい.
著者
井上 淳子 冨田 健司
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.55-67, 2002-02-22 (Released:2012-11-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

近年,医療機関を取り巻く環境は確実に厳しさを増している。各医療機関とも生き残りを賭けた熾烈な競争を強いられ,大きな変革を迫られている。ビジネスの世界において他社と協調的な関係を結ぶ傾向は,病診連携,病病連携,医療と福祉の連携など医療業界においてもみられるようになった。機能分化や医療資源の効率的活用が叫ばれる今日,医療機関どうしの連携はますます重要性を増している。本稿では,亀田総合病院の地域医療ネットワーク事業を事例にとり,成功要因の分析を行った。同院の成功は,情報共有を通じた地域医療機関との戦略的提携,顧客である地域医療機関との良好な関係性構築,徹底した患者(顧客)志向によって説明できる。同院は「企業」戦略ではなく,ネットワーク組織全体がもっ人的資源や,物的資源,情報の利用により,組織全体の利益・便益が向上することを目的とした「組織」戦略をとっている点が特徴的である。

3 0 0 0 OA 将棋玉図

著者
桑原君仲 著
出版者
文玉圃
巻号頁・発行日
vol.上, 0000
著者
深谷 達史 植阪 友理 田中 瑛津子 篠ヶ谷 圭太 西尾 信一 市川 伸一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.88-104, 2016-03-30 (Released:2016-04-11)
参考文献数
24
被引用文献数
16 11

学習者同士の教えあいは, 内容の理解だけでなく, 日常的な学習場面における効果的な学習方略の使用をも促す可能性がある。本研究では, 学習法の改善を企図した2つの教えあい講座の実践を報告した。2010年度の予備実践では, 理解することの重要性や教えあいのスキルを教授したにもかかわらず, 生徒の問いが表面的である, 教え手が聴き手の理解状態に配慮しないという問題が確認された。これらの問題は, 生徒が「断片的知識/解法手続きを一方的に教える」という教授-学習スキーマを保持するために生起したものと考えられた。そこで, 2012年度の本実践では, こうしたスキーマに働きかける指導の工夫を取り入れ, 「関連づけられた知識を相互的に教えあう」行動へと変容させることを目指した。高校1年生320名に対し, 講演を中心とした前半と2回の教えあいを中心とした後半(計6時間)の教えあい講座を行った。教えあいの発話と内容理解テストの分析から, 理解を目指したやり取りがなされ, 教えあった内容の理解が促進されたことが示された。また, 説明することで理解状態を確認する方略や友人と教えあいを行う方略の使用が講座により増加したことが明らかとなった。
著者
横山 拓 鈴木 宏昭
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.156-171, 2018-06-01 (Released:2018-12-01)
参考文献数
44

This study aims at revealing the process and mechanism of meta learning in acquiring expertise in the field of insight problem solving. We gave a participant a series of ten geometric insight problems and analyzed the processes microscopically. During solving a series of problems, the participant’s performance was greatly improved. This improvement seems due to three factors. The first factor is increasing variety of combination patterns. The second factor is increasing appropriateness of evaluation, which enables the participant to quickly discriminate feasible trials from unfeasible ones. The third and most important factor is distribution of problem solving load to the environment. Instead of memorizing the goal pattern and mentally evaluating the fitness of a current combination pattern to the goal, the participant recruits external resources on the spot to offload the cognitive burden. These mechanisms are very different from elaborating and sophisticating individual operations. Rather, they contribute to establish the meta level knowledge that enables the participant to improve his performance.