著者
西村 清和
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.2-15, 2009-06-30 (Released:2017-05-22)

Ruins are places in which memories have been accumulated. For understanding the aesthetic phenomenon of ruins, we must make it clear what places really are. M. de Certeau considers a place as a configuration of the elements distributed within the relations of coexistence and a space as a crossing of historical subjects and 'a practiced place'. This conception of place is close to Gibson's 'ground theory' of space perception. The environment we perceive is, first of all, not an empty space but a place as a surface of the earth on which we are standing. The perception of the environment as the persisting structure of surfaces accompanies the perception of an instantaneous self, including the head, body, arms, and hands. And the nonperceptual awareness such as memory or expectation is made possible by the fact that the concurrent perception of the persistence of place and that of the change of a moving self are concurrent. Memory and expectation open a space of history. Yet the space turns back to the persisting place of a ruin when the history has come to be forgotten. The poetics of ruins consists not in retelling a history but in the awareness of the persistent linkage between us and the past.
著者
大久保 京子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.37-52, 2014-03-01

各地に伝承と共に存在する「義民」は、江戸時代においてはその土地で英雄であった。中でも佐倉惣五郎は、歌舞伎の流行もあって、よく知られた存在であっただけに、民権運動に利用されることとなる。きっかけとなった内のひとつに福沢諭吉の著作「学問のすゝめ」がある。暴政を行う政府に対し、正当に抵抗を続ける存在として「義民」を「民権家」に照らし合わせたのである。その後民権家によって多くの義民伝承が収拾、著述され、顕彰が行われたが、『東洋民権百家伝』により、全国の義民伝承の収拾がされている。本稿では、佐倉惣五郎の義民伝承の整理と共に、明治期の中でも自由民権運動の展開に「義民」がどのように利用され、影響したのかについて考察する。

3 0 0 0 OA 広日本文典

著者
大槻文彦 著
出版者
大槻文彦
巻号頁・発行日
vol.別記, 1897
著者
河野 真治 佐渡山 陽
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
日本ソフトウェア科学会大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.4B2, 2002

PS2Linux は,PlayStation2上で動作するLinuxである。PS2の描画機構であるEmotion Engine および専用DSPであるVUの特徴を活かしつつ、ネットワークゲームを構築するフレームワークを提案する。ネットワーク部分には、リアルタイム処理を考慮したユーザレベル・トランスポート層を持つSuciライブラリを用いる。
著者
山岸 敬幸
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.68-74, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1

房室中隔は右心房と左心室を隔て, 心房中隔と心室中隔に連なる組織である. 房室中隔は房室管の心内膜床から発生する. 原始心筒がloopingし, 心房・心室が形態的に明らかになる頃, 房室管部では心ゼリーが残存・増生する. 心内膜から上皮間葉転換により遊離して形質転換した間葉系細胞が, その心ゼリーの中に侵入し, 心内膜床が形成される. 心内膜床は, 主に上方(背側)および下方(腹側)から隆起して発達する. 上・下心内膜床の中央部での癒合により房室中隔が形成され, 房室管が右側と左側の房室弁口に分割される. 上・下心内膜床は房室管に対して垂直な方向にも伸展し, 心房中隔一次孔の閉鎖と膜様部心室中隔の形成にも関与する. 房室中隔, 心室中隔, 心房中隔の発生異常により, 多くの先天性心疾患が発症する.
著者
奥田 優
出版者
兵庫県森林動物研究センター
巻号頁・発行日
no.1, pp.46-54, 2009 (Released:2017-11-16)

・レプトスピラ症はLeptospira interrogans(病原性細菌)感染に起因する人畜共通感染症である。・レプトスピラの保菌動物はげっ歯類をはじめとした野生動物であり、近年、個体数が急激に増加し、人の生活圏に出没する機会の増えているアライグマもまた、レプトスピラの保菌動物となる可能性のある動物である。・アライグマ防除計画が実施されている兵庫県内のアライグマにおいて、顕微鏡下凝集試験(MAT)を用いてレプトスピラ抗体保有率の調査を行うとともにPCRを用いてレプトスピラ遺伝子を検出した。・主に分布中心において回収された132頭のうちMATで84頭(63.6%)が抗体陽性を示した。・PCRでは48頭中4頭(8.3%)でレプトスピラ遺伝子が検出された。これらの結果から兵庫県のアライグマには広くレプトスピラが感染していることが明らかとなった。・アライグマの生息地域の拡大により、人の生活環境への接触の機会が増すことでアライグマから人への感染のリスクが高まる可能性が考えられる。
著者
栗田 英治 横張 真
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.589-594, 2000-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
25
被引用文献数
2 5

ゴルフ場が里山地域の生物多様性保全上, 果たし得る役割を, 景観及び群集・生態系レベルでの多様性という面から解明し, 管理指針を検討した。景観レベルにおける土地利用履歴の解明の結果ゴルフ場の履歴が様々な施業段階にある里山林であったこと, 施業初期段階にあたる草地的な緑地空間が失われたことが分かった。群集・生態系レベルにおける植生および管理状況の調査の結果, コナラ林を中心とした森林の環境は, 残置森林としてゴルフ場開設後も確保されたことが明らかになった。今後, 残置森林, ラフ等の管理にあり方に検討を加えることにより, ゴルフ場が景観及び群集・生態系レベルでの多様性を保全しうる可能性が示唆された。
著者
藤崎 康
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶応義塾大学日吉紀要 フランス語フランス文学 (ISSN:09117199)
巻号頁・発行日
no.36, pp.108-54, 2003

核時代の使徒ーJ・G六徒ラバ1ウドロ『ヴィーナスの狩人』を読むー藤崎 康どうして私の人生を、そうでないかもしれないではなく、けずにいられたでしょうか?そうかもしれないほうにこそ賭ルネ・ドーマル『類推の山』1聖性のゆくえ、あるいはフエイクな神? フランケンシュタイン神話は、科学的合理主義に対抗して、科学の諸概念を、錬金 術の神秘や感情と再結合しようとした、十九世紀のロマン主義的反抗に由来する。 デイヴィッド・J・スカル『マッド・サイエンティストの夢-理性のきしみ』 英国のSF作家J・G・バラードに、『ヴィーナスの狩人』(一九六七年)という、ちょっと類を見ないよう伽 な傑作がある。この短編がとてつもなく面白いのは、バラードが科学と魔術の、あるいは合理と非合理の対決㎜ ・ん を、SFや幻想小説や文明批評の手法をもちいながらも、そうした手法ないし意匠に淫することなく、むしろ107(28)登場人物の心理や意識のひだを精妙に描くことで、きわめてユニークな物語に仕あげているからだ。バラードはこの作品でまた、近代合理主義(理性信仰)という、今やさまざまな揺らぎやほころびを見せているものの、依然として私たちの生活を律している「教義」i一八世紀の西欧で確立した啓蒙思想、すなわち「理性の光」ですべてを吟味しようとする知的態度の延長上にあるーが支配する現代にあって、人知をこえた「聖なるもの」はいったいどんな場所に降りてくるのか、という重大な問いを投げかけている。 ここで、『ヴィーナスの狩人」の読解にはいるまえに、近・現代とはいかなる時代なのかを、おおまかに輪郭づけてみよう。1近代化にともなう都市化、高度な産業化、科学技術の飛躍的な発展、市場経済の圧倒的な拡大、そして大衆消費社会の到来によって、教養、芸術、観光、民俗、健康、エコロジー、美容、セックス、「癒し」等々、文化や肉体にかかわる一切が商品化され、情報化され、日常生活の利便性や快適さがめざましく増大するいっぽうで、地縁、血縁などの旧来の共同体が無残に掘り崩され、核家族化が進行し、伝統的な文 リサイクル化・芸能・芸術が衰退する(それらはキッチュー1まがいものとして再利用される)といった状況を生んだ。 ミ イズム また人びとは、他人への関心や共感力を極端に欠いた自分主義ーそれは「自分探し」「自分らしさ」といっ こまた気味の悪い言葉を生んだーに閉じこもり、濃やかな人間関係を避けるようになった。そしてかれらは、そ よ エ ト スれまで拠りどころにしていた生活規範や行動様式を手放し、いわば「自由」を獲得した代償として、寄る辺なさ、精神的空白にとらわれるようになったー。ごく粗雑にまとめれば、近・現代とは、そういった時代である。(↓それはまた、近代化目工業化のはてに世界が「脱魔術化」され(M・ウェーバー)、宗教が世俗化され、いきおい「聖なるもの」や「崇高さ」が見失われた時代1しかし同時に、非合理的な呪術や終末予言を売りものにする新種の宗教が、あるいはカリスマ待望や過剰なナショナリズムが、合理主義の影の部分に寄生する奇妙な時代でもある。へ,) もちろん、近代化の負の側面は、いまざつと触れたいくつかの間題にとどまらない。たとえば大量生産.大量消費は大量廃棄を生み、排気ガスによる地球温暖化、異常気象、熱帯雨林の破壊と砂漠化といった事態を生じさせた。そして今日の科学主義は、生命創造という「神の領域」さえ侵犯しよ
著者
佐藤 美佳
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.2_35-2_46, 2013

【目的】自己決定理論を礎に,看護学生の友人関係への動機づけの程度と自律性欲求,有能さの欲求,および学習動機づけとの関連を明らかにし,自律的動機づけを支援する教育方法の示唆を得る。【方法】看護学生を対象に自記式質問紙調査を実施し,分析・考察した。【結論】①看護学生は,看護系以外の大学生より自律的な友人関係への動機づけをもっている。②看護学生は,看護系以外の大学生・短大生より自律的な学習動機づけをもっている。③友人関係への自律的な動機づけは,自律的な学習動機づけの要因となる。④自尊感情を先行要因とした自律性欲求の自己決定は,自律的な学習動機づけの要因となる。⑤看護学生の自律的な友人関係への動機づけは,自尊感情や自律性欲求からは直接的に影響を受けない。⑥仮想的有能感は友人関係への動機づけ,および学習動機づけを低くする要因となる。⑦仮想的有能感は自律性欲求の独立の先行要因となる
著者
桝屋 隆太 岡本 好司 木戸川 秀生 山吉 隆友 野口 純也 伊藤 重彦 南川 将吾 神薗 淳司 家入 里志
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.864-869, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
38

14歳男児.日常的にサーモンの刺身を食べていた.突然生じた右上下腹部痛のため当院を受診したところ同部に筋性防御,反跳痛を認めた.血液生化学検査で白血球および肝胆道系酵素の上昇を,腹部造影CTでは胆囊周囲および右下腹部に腹水貯留を認めたが胆石や胆管拡張の所見はなかった.審査腹腔鏡では黄色透明な胆汁性腹水貯留および胆囊漿膜の黄色変性を認めたが,明らかな穿孔部位はなく,胆囊摘出は施行せず腹腔内を洗浄しドレーンを留置して終了した.全身状態は速やかに改善し,術後1日目に腹痛はほぼ消失しドレーン排液も淡血性となった.原因検索のため便を鏡検したところ多数の虫卵を認め,形状から日本海裂頭条虫と診断した.プラジカンテル内服により翌日虫体が排泄され,腹部症状の再燃なく経過し,術後14日目に軽快退院した.条虫の感染を伴う漏出性胆汁性腹膜炎は極めて稀であり,文献的考察を踏まえ報告する.

3 0 0 0 OA 建築写真類聚

著者
建築写真類聚刊行会 編
出版者
[洪洋社]
巻号頁・発行日
vol.第1期 第24 (特殊建築 巻1), 1921
著者
秦 俊貴 清野 諭 遠峰 結衣 横山 友里 西 真理子 成田 美紀 日田 安寿美 新開 省二 北村 明彦
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.477-492, 2021-07-15 (Released:2021-07-20)
参考文献数
58

目的 本研究の目的は,食品摂取の多様性を向上させるための10食品群の摂取チェック表(以下,食べポチェック表)について,使用した効果を明らかにする。方法 東京都大田区において実施した2016年と2018年の郵送調査に応答した65-84歳の8,635人を対象とした。2017年7月より大田区において,協力の得られたスーパーマーケットなどの機関に設置する等の方法で普及させた食べポチェック表について,2018年にチェック経験を尋ね,「習慣的にチェックしている」,「チェックしたことがある」と回答した者をチェック経験あり群に分類した。2016年の人口統計学的変数,社会経済的変数,身体的変数,医学的変数,生活習慣関連変数および食品摂取多様性スコア(DVS)の計37の共変量から傾向スコアを算出し,チェック経験あり群となし群の比を1:1としてマッチングし,2年間のDVSの変化をチェック経験あり群となし群各876人について二元配置分散分析を用いて比較した。また,2018年のDVS 3点以下および7点以上を従属変数として,チェック経験なし群に対するあり群の多変量調整済みオッズ比(OR)を多変量調整ロジスティック回帰分析にて算出した。結果 2018年に食べポチェック表のチェック経験があると回答した者の割合は11.9%であった。マッチング後のチェック経験あり群となし群のDVSの平均値±標準偏差は,2016年ではそれぞれ3.9±2.2点,3.9±2.3点,2018年ではそれぞれ4.5±2.4点,4.1±2.4点であり,チェック経験と時間による有意な交互作用が認められた(P<0.001)。2018年でのチェック経験あり群となし群のDVS 3点以下割合は,それぞれ35.2%,43.8%であり,DVS 7点以上割合は,それぞれ21.7%,16.8%であった。チェック経験なし群に対するあり群の2018年のDVS 3点以下のOR(95%信頼区間)は0.68(0.56-0.83)であり,2018年のDVS 7点以上のOR(95%CI)は1.40(1.10-1.78)であった。結論 食べポチェック表の普及とその活用により,高齢者の食品摂取の多様性が向上した可能性が示された。ただし,チェック表を使用した場合でも,欠食や社会的孤立,社会参加がないこと,およびフレイル傾向がある場合は食品摂取の多様性は向上しにくいことが示唆された。