著者
三田村 敏正 松木 伸浩 吉岡 明良 田渕 研
出版者
福島県農業総合センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

東北地方太平洋沖地震とそれに伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により、営農中断し、その後再開した水田において、生物相の変化を明らかにするため、営農中断し表土剥ぎおよび客土を実施、営農中断し、表土剥ぎなし、営農中断なし、のほ場を平野部と山間部、さらには栽培方法として、直播と移植に分け、16地区42枚の調査ほ場を設定した。調査は「農業に有用な生物多様性の指標生物調査・評価マニュアル」により、ダルマガエル類、アカネ類・イトトンボ類、水生昆虫類、アシナガグモ類について行った。ダルマガエル類は小高区金谷で、営農再開後3年目でニホンアカガエルが初確認された。また、トウキョウダルマガエルは、営農を中断した地域で少ない傾向であった。アカネ類羽化殻は富岡町以外のすべての調査地で確認された。アカネ類の羽化時期は地域によって差がみられた。イトトンボ類は6種が確認され、アジアイトトンボが最も多かった。水生昆虫は営農中断ありでは21種、営農中断なしは13種が確認され、営農中断ありが多い傾向であった。。キイロヒラタガムシ、コミズムシ属、ヒメアメンボは前年同様、多くのほ場で、また、ヒメゲンゴロウ、ホソセスジゲンゴロウ、マメガムシ、トゲバゴマフガムシ、ミズカマキリ、メミズムシは営農中断ありのほ場でのみ確認された。アシナガグモ類ではほとんどがアシナガグモ属5種であった。トガリアシナガグモとヤサガタアシナガグモは営農を中断した地域で少なく、ハラビロアシナガグモは山間部で多い傾向であった。また、2019年度は装置の基盤に結露の影響を受けにくいような処理を施し防水性を高めるとともに、秋季には昨年度より1地区増やした6地区の水田に合計18台の自動撮影装置を設置して、自動撮影枚数と見取り調査によるアカネ類密度との相関を検討した。その結果、昨年度同様にアカネ類の自動撮影枚数と見取り調査によるアカネ類密度には正の相関が見られた。
著者
川久保 俊 伊香賀 俊治 村上 周三 星 旦二 安藤 真太朗
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.79, no.700, pp.555-561, 2014-06-30 (Released:2014-07-15)
参考文献数
32
被引用文献数
9 11

Previous studies have revealed relationships between specific residential environmental factors and residents' health status. However, no previous study has considered the comprehensive health risk due to overall residential environment. Therefore, a large-scale nationwide questionnaire survey was conducted using CASBEE Health Checklist to examine the residential environment of detached houses and residents' health status. Results show that overall residential environment was likely an important determinant of health and was associated with disease prevalence among residents.
著者
奥野 淳也 岩井 将行 瀬崎 薫
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

SNSの普及に伴い,現代では日々膨大なデータが蓄積されている.これらのデータの中には,ユーザの行動や興味に関する情報が含まれている.ユーザに関する情報は,都市計画やマーケティング等の分野から注目され,様々なデザインにおいても重要視される.一方で,現代におけるリサーチ手法はパーソントリップ調査に代表されるようなアンケートやワークショップが主流である.これらの手法では参加者の偏り,コスト面,実施期間といった点における問題が指摘されている. このような背景を受けて,SNSやブログからの情報抽出に関する研究が活発に議論されている.これらの研究の多くが,特定のキーワードや人物,地域に関する情報に注目しており,ユーザが意識的に共有する情報だけでなく,潜在的に共有あるいは保持している情報に注目しているものは多くない.本研究ではユーザ自身のSNS上の情報に対する認識範囲に注目し,SNSにおけるユーザの情報の認識範囲を視覚的に把握する手法について提案し,評価を行った.その結果,ユーザが意識していなかったSNS上の情報を把握することができた.今後は考察により明らかとなった課題の改善と,より多くのユーザが利用できるようにアプリケーションを公開することで,行動情報に関するリサーチ手法の一助となるよう研究を継続したい.<br>
著者
深田 淳太郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.90, 2010

トーライ人は貝殻貨幣タブを、モノの売買、婚資の支払など多様な用途で使う。だが、タブがロロイという形態になると、彼らはそれを使えなくなる。モノも買えず、婚資も支払えない。ロロイはただ持ち続けるだけの貨幣である。トーライ人は勤勉・倹約に努め、その使えない貨幣を大きくすることに力を尽くし、そして、それを使わないままに死んでいく。本発表ではこの使えない貨幣とトーライ人の一生涯の関係について考察する。
著者
竹林 正樹 吉池 信男 竹林 紅
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.173-181, 2021-05-31 (Released:2021-06-16)
参考文献数
20

目的:ナッジのEASTフレームワークに沿って構築した職域用体重測定促進介入のプロセス評価と報告事業内容:働く世代の肥満予防策として,3つの体重測定促進介入を構築した.全群にEasy型ナッジを採用の上,クイズ群(Attractive型),宣言群(Social型),成功回顧群(Timely型)を設計した.青森県職員(応募要件:体重測定頻度が週1回未満)を対象に1時間の集合型研修会を開催し,実施者の実施意欲と負担感,参加者満足,人件費を含む実施コストについて,インタビューと質問紙調査によるプロセス評価を行った.事業評価:研修会の実施には職員4人が携わり(解析対象者3人),参加者は83人(解析対象者78人)だった.実施者の研修前の実施意欲はクイズ群,宣言群,成功回顧群の順に高かった.実施コストは成功回顧群(263~291千円),クイズ群(207~235千円),宣言群(179~207千円)で,実施負担感もこの順だった.参加者満足はクイズ群(92.6%),成功回顧群(88.5%),宣言群(64.0%)(P=0.016)の順だった.課題:クイズ群は実施者,参加者双方の評価が高く,最も普及可能性があると推測された.人件費を含む実施コストは,事前予想した額に比べ,実際に要した額は2倍以上であった.また,実施者のナッジ普及フェーズが習得期から実践期へ変化したことが観察された.
著者
河江 美保 山下 真由子 八田 一 Yamashita Mayuko 八田 一 Hatta Hajime
出版者
京都女子大学食物学会
雑誌
京都女子大学食物学会誌 (ISSN:02893827)
巻号頁・発行日
no.70, pp.15-21, 2015-12

Mr. Rosanjin Kitaouji, who was known as a famous Japanese gourmet, culinarian as well as potter, recommended his special recipe for the typical Japanese egg dish, rice with raw egg. He stated that egg dish is made more delectable using shell egg warmed by holding in palms for 30 minutes before mixing with rice. The purpose of this research was to determine by sensory evaluation if his recipe increases taste favorably. Egg samples were prepared with three different temperatures (8℃, 35℃, and 55℃) in order to evaluate how temperature of shell egg influences the taste of the dish. The egg (8℃) sample was kept in the refrigerator. The egg (35℃ & 55℃) was prepared by incubating the refrigerated egg at 35℃ or 55℃ in a water bath for 30 minutes, respectively. The egg (35℃) sample is considered to be equivalent to Rosanjin' s recipe.Sixty volunteers ranked three dishes prepared with medium size eggs of temperatures of 8℃ , 35℃ , and 55℃ without being informed of the different temperatures. Each shell egg sample was cracked and mixed with 150g of steamed rice at 86℃ in a bowl when serving. Dishes prepared with 35℃ and 55℃ eggs were evaluated as tastier than with 8℃ egg (p < 0.05) by the multiple means comparison procedure for the ranked data. However, no difference was found between dishes prepared with 35℃ and 55℃ eggs. Most volunteers sensed more umami and sweetness in dishes prepared with warmed eggs than with refrigerated eggs, although they were not informed of temperature differences. Recent research has shown that signals of sweet taste receptor increase with increasing temperature. Since umami taste receptor is quite similar to the sweet taste receptor, its susceptibility increases with increasing temperature. Mr. Rosanjin Kitaouji, with his sensitive gustation, found the taste of the egg dish preferable when prepared with warmed eggs. This research has proven with sensory evaluation for the first time that rice with raw eggs prepared by Rosanjin' s recipe is tastier than when prepared by the general recipe.
著者
加我 牧子
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-33, 2011 (Released:2017-04-12)

発達障害とは「発達期に生じる脳神経系の発達の遅延又は異常による状態を広く指す言葉である」ことを理解した上で、使われている状況や使っている人の考え方を理解して対応する必要がある。個々の発達障害児の心的特性や行動特徴を前提に、短時間で飽きない評価方法を工夫し、他覚的アプローチを多用した上で、背景となる病態を理解し、その後の支援に貢献できるような評価法が必要である。そのため本稿では認知機能評価に用いられる検査の概要、Wech‐sler 系知能検査の応用、social skill training が自閉症の身体図式の改善に有用であることの例示、AD/ HD の抑制機能評価の方法などいくつかの実例を呈示した。
著者
田島 暁雄
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1172-1177, 2015-11-15

本稿はDomain Specific Language(DSL)構築用プログラミング言語としてのRubyについて実例を含めて解説したものである.最初のパートではDSLについて歴史と情報システムにおける役割を明らかにする.続くパートでRubyが持つDSLの実装に向いたプログラミング言語の特性について実例を交えて解説する.
著者
北村 義浩
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、(+)一本鎖RNAをゲノムとして有するレトロウイルスである。レセプターを介し標的細胞に進入した後、感染細胞の細胞質でゲノムRNAは逆転写酵素(RT)によって線状2本鎖DNAに変換される。この相補DNA分子はHIVの組み込み酵素(IN)を含む様々なタンパク質とともに巨大な核酸・タンパク質複合体(組み込み前複合体PIC)を形成する。しかし、この構造について、相補DNA、RT,INが含まれること以外はほとんど分かっていない。PICにVpr、MA、などウイルスタンパク質の他、さらに、宿主のHMG-I (Y)タンパク質などが共存しているという報告が散見されるもののその報告者とは異なる研究者による厳密な検証はなされていない。メカニズムは不明であるが、PICは細胞質から細胞核に移行し、細胞核内で宿主ゲノムDNAに組み込みを起こしてプロウイルスとなる。逆転写反応以降のステップのメカニズムを明らかにし、これをベクター開発に応用することを目的とし研究を行った。HIVのウイルス中央多プリン配列(cPPT)を挿入したHIVベクターの遺伝子導入効率はそのcPPTの長さあるいは、cPPTの近傍領域の配列に依存する場合があることを示した。従来の定説ではcPPTは核移行効率に関わるとされていたが、そうではなく核移行後のなんらかのステップに重要であることを明らかにした。cPPTの近傍領域にはHIVベクターのRNA量を低下させる働きのあることも明らかにした。