著者
櫻井 靖久
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-8, 2018-03-25 (Released:2018-04-28)
参考文献数
35

近年の画像解析の進歩により,復唱・聴覚理解に従来の弓状束を経由し,音韻→構音変換を担当する背側路以外に,上側頭回から鉤状束を経由して音韻・意味処理を担当する腹側路が注目されている.読み・読解には別の2重回路が提唱されており,筆者らは視覚野から上側頭回後部に達し,書記素・音韻変換を行う背側路と視覚野から後下側頭皮質に達し,語形認知を行う腹側路を提唱した.また書き取りの2重回路として,聴覚野から出発し,弓状束を経由して前頭葉に向かい,文字列の音韻処理を行う音韻経路と後下側頭皮質から出発して,頭頂葉を経由して前頭葉の手の領域に入る形態路を想定した.これらの2重回路説は,神経画像解析技術の進歩とともに,その妥当性が検討されるべきであろう.
著者
児玉 陽子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.432-435, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)

近年,国内でも研究データ管理への様々な取組みが始まっているが,豪州では2007年にAustralian Code for the Responsible Conduct of Researchが策定されたこともあり,すでに多くの研究大学で行われている。著者は2017,2019年にシドニー大学図書館の研究データ管理担当者から話を伺う機会を得たので,ここに実際の運用について概要を報告する。またシドニー大学図書館のウェブサイトでの研究データ関連の情報提供の展開についても触れる。大学のポリシー,研究データ管理計画書,ストレージやツール,データの公開,広報や学内での協力体制,さらに学外の組織・ANDS(現在のARDC)との関わりや,現時点で抱えている課題についてもレポートする。
著者
徳山 倫子
出版者
日本農業史学会
雑誌
農業史研究 (ISSN:13475614)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.72-84, 2015 (Released:2017-03-23)
被引用文献数
1

The purpose of this paper is to discuss the roles of rural post-elementary education for girls during the Japanese modern period. At the time, post-elementary educational institutions were diversified and ranked hierarchically. We compared two schools-Ibaraki and Katano- to show the differences in the processes of raising the hierarchal status of the schools. They were established in 1898 as the courses of sewing for girls called "saihousensyuuka," and attached by higher elementary schools in the suburban villages of Osaka. Ibaraki's status, which had been attached by Youzei higher elementary school in Ibaraki Village, changed in stages and eventually raised to become a girls' high school status, while Katano's status, which had been attached by Kounan higher elementary school in Katano Village, was not raised and eventually became a normal youth school named Katano Girls' Sewing School. The conclusions about rural girls' education are as follows: First, changes in the student hierarchy occurred. At Ibaraki, most of the students were rich farmer's daughters in Mishima District, and there was an increase in new middle class students from large cities during the Showa era. At Katano, almost all the students were farmer's daughters around Katano Village, and they were not rich. Second, the importance of sewing education changed. At Ibaraki, the number of sewing hours decreased, and the number of hours spent on other subjects increased. Katano, however, still placed a high value on sewing after World War II. Third, the social norms for women changed. At Ibaraki, the students were allowed to express more modern and varying behaviors. At Katano, the students were expected to be simple farmer's wives. The introduction of post-elementary education for girls in rural society demonstrated the hierarchical structure of the society during the Japanese modern period.
著者
加藤 昂希 杉森 絵里子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

Karremans,Claus,&Storoebe(2006)が行った実験によると,パソコン課題をしている被験者の画面に「LiptonIce」という文字を意識下では知覚できない程の短い時間繰り返し提示したところ,喉が渇いている被験者においてのみリプトンアイスティーを飲む人の割合が増えたという。この実験を受け,私は視覚的なサブリミナル効果だけでなく,聴覚的なサブリミナル効果でも同じ様に結果が出せるか否かを検証する事とした。具体的には,喉が渇いている被験者に,サブリミナル音声を忍ばせた音源を聞いてもらい,その後の選択行動に影響があるかどうかを検証した。結果として,サブリミナル効果は出なかったものの,音源をリラックスして聞いてもらった後に直感を頼りに選択してもらう場合において,サブリミナル効果が出やすくなる事が明らかになった。
著者
竹内 竜雄
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学会雑誌 (ISSN:00093459)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.584-588, 1970-03

神経症〜境界例レベルの離人症患者15名を対象としてロールシャッハ・テストを行なった。形式分析では反応領域でDm%が高いこと,内向的体験型が大部分を占めていること,運動反応中mの割合が高いこと,形態水準が低いこと,FCに比べCF+Cが多いことなどが特徴的であった。内容分析では主題分析で口愛期的傾向,超自我葛藤および同一化葛藤がめだち,Barrier ScoreとPenetration Scoreでは後者が著しく多く,防衛解釈では分離退行,知性化および合理化の機制がめだった。以上を検討した結果,離人症の精神力動の特徴として,強い口愛期的依存傾向,併存する懲罰的超自我,同一化葛藤および自我分裂,これらをめぐって対象関係の発達の障害に基づく知覚と認識の機能の病態化,ことにその基盤であるself-feelingの不安定さなどが認められ,これらの基本的な精神病理が離人症の症状形成をなしている経緯が明らかとなった。
著者
菊池 麻美 中江 秀幸 對馬 均
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.647-650, 2011 (Released:2011-11-25)
参考文献数
8
被引用文献数
4 2

〔目的〕在宅などの狭い環境下での歩行評価法の条件を検討するための予備的研究として,健常成人における歩き始めから歩幅と歩行速度が一定となるまでの距離を確認することである.〔対象〕健常成人男性10名.〔方法〕10 mの歩行路を最大歩行速度で歩いた時の平均歩幅および速度,さらに,歩き始めから7歩目までの歩幅と歩行速度をビデオ画像により計測し,歩幅と歩行速度が一定となるまでに必要な距離を統計学的に分析した.〔結果〕1~7歩目間で歩幅は3歩目以降に,歩行速度は4歩目以降にそれぞれ一定となることがわかった.〔結語〕健常成人の速歩では,4歩目までの平均歩幅が3.27 mであったことから,歩幅や歩行速度が一定となるまでの助走距離の目安を3.5mとすることが妥当と思われる.
著者
佐藤 寛 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-13, 2006-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究では、児童の自動思考をネガティブとポジティブの両側面から測定することのできる児童用自動思考尺度(ATIC)を作成し、抑うつ症状と不安症状との関連について検討することを目的とした。まず、児童のネガティブ・ポジティブな自動思考を測定する尺度を作成した。分析の結果、ATICはネガティブな自動思考である自己の否定と絶望的思考、およびポジティブな自動思考である将来への期待とサポートへの期待という4因子から構成されていることが示された。次に、児童の自動思考が抑うつ症状と不安症状に与える影響について検討した。その結果、ネガティブな自動思考である自己の否定は抑うつ症状と不安症状のいずれにも促進的な影響を与えており、絶望的思考は抑うつ症状のみに促進的な影響を与えていた。一方、ポジティブな自動思考である将来への期待とサポートへの期待は、いずれも不安症状とは関連していなかったものの、抑うつ症状に対しては抑制的な影響を与えていた。
著者
曲亭馬琴 作
出版者
山崎平八[ほか]
巻号頁・発行日
1814

安房里見家を舞台に八犬士の活躍を綴った読本。文化10年(1813)から天保12年(1841)にいたる、足掛け29年を費やして完成した。表紙と各帙第1冊目の見返しは、おおむね犬にまつわるデザインで、趣向を変えてそれぞれ20種類に及ぶ。本書は馬琴旧蔵の初刷り本。誤字を訂正する馬琴の書き入れも残されている。