著者
伊藤 聡 小西 真治 村上 哲哉 新田 裕樹 阿南 健一 中川 貴之 本田 中 赤木 寛一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F2(地下空間研究)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.14-31, 2020

<p> 地下鉄開削トンネルの縦断方向の一部に大きな沈下や沈下に伴うひび割れが多く見られ,その使用にあたって耐荷性能を精度よく評価することが課題となっていた.そこで,鉄筋ひずみの調査を行ったところ,トンネルの中立軸位置が設計計算の値と大きく異なることがわかった.この要因として,トンネルにひび割れが生じることでトンネル縦断方向に伸長する挙動が,両端の変状が起こっていない部分により拘束されることにより見かけの軸力が発生するといったメカニズムを想定し,軸力の算定方法を検討した.さらに,この軸力を用いて構造計算を行った結果,見かけの軸力を与え,トンネル形状を再現した疑似3次元モデルを用いることで,トンネルのひび割れ状況などの変状を精度よく再現できることがわかり,軸力の発生メカニズムの妥当性が確認できた.</p>
著者
FENG Lujia ZHANG Tengfei KOH Tieh-Yong HILL Emma M.
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
pp.2021-026, (Released:2021-01-15)
被引用文献数
3

Using data from the Sumatran GPS Array in Indonesia–a hero network in tectonic and earthquake studies–we study the summer intra-seasonal variability of precipitable water vapor (PWV) over Sumatra in years without strong inter-annual variability. Unlike most other studies that use external meteorological data to derive PWV from GPS (Global Positioning System) signal delays, we use the zenith wet delay (ZWD) time series estimated from a regular geodetic-quality processing routine as a proxy for PWV variations without using auxiliary meteorological data. We decompose the ZWD space-time field into modes of variability using rotated Empirical Orthogonal Function (EOF) analysis, and investigate the mechanisms behind the two most important modes using linear regression analysis both with and without lags. We show that the summer intra-seasonal variability of daily ZWD over Sumatra in 2008, 2016, and 2017 is dominated by the South Asian Summer Monsoon, and further influenced by dry-air intrusions associated with Rossby waves propagating in the Southern Hemisphere midlatitudes. Both active South Asian monsoons and dry-air intrusions contribute to the dryness over Sumatra during northern summer. Our results indicate an intra-seasonal connection between the South Asian and western North Pacific Summer Monsoons: when the South Asian monsoon is strong, it pumps atmospheric water vapor over the eastern Indian Ocean to feed into the western North Pacific monsoon. We also show a tropical-extratropical teleconnection where PWV over the southern Maritime Continent can be modulated by the activity of eastward-traveling Rossby waves in the southern midlatitudes. Our case study demonstrates the use of regional continuously operating GPS (cGPS) networks for investigating atmospheric processes that govern intra-seasonal variability in atmospheric water vapor.
著者
中村 洋樹
出版者
全国社会科教育学会
雑誌
社会科研究 (ISSN:0289856X)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.49-60, 2013-11-30 (Released:2017-07-01)

本稿の目的は,歴史学習の論理を「歴史実践(Doing History)としての歴史学習」と規定し,その論理と意義を考察することにある。本稿では,米国の歴史教育研究者S.ワインバーグが提唱した「歴史家の様に読む」アプローチの基本的な考え方・教授方略及び授業案を考察した。当該アプローチは,歴史家の読解方略を歴史学習へ応用することを目指している。本稿では第一に,当該アプローチをみていく前提として,ディシプリナリ・リテラシーという概念に焦点を当てた。第二に,「歴史家の様に読む」アプローチを分析した。当該アプローチは,出所を明らかにすること,文脈に位置づけること,丁寧に読むこと,確証あるものにすること,という方略から成る。当該アプローチの教授方略は,学習科学研究における「足場かけ」という概念に焦点が当てられている。本稿では,出所を明らかにすることを重視した授業案と確証あるものにすることを重視した授業案を分析した。その結果,本稿では当該アプローチの意義として次の2点を指摘した。第一に,当該アプローチは,テクストの著者の意図や前提を読解することに焦点を当てている。第二に,通説を支える資料と,それとは異なる立場の資料との間の相違点や矛盾を考察することを重視している。このような形で,当該アプローチは,歴史家の様に対話する(=頭を悩ませる)過程を担保することになっている。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.977, pp.39-42, 1999-02-08

松下電器産業の小型ノートパソコン「レッツノート」がヒットしている。レッツノートの売り上げ、販売台数は1999年3月期、ともに前年度の1.5倍である300億円、15万台を見込む。昨年12月の大手家電量販店における販売調査では、B5サイズの小型ノートパソコンの市場で、競合する10社を相手に3割近いシェアを獲得した。
著者
笹井 博一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.43, no.515, pp.590-602, 1936 (Released:2008-04-11)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2
著者
遠藤 幸吉
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:03743470)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.106-111, 1955

テレビジョン放送局を設立するに当り,いかなる規模において開始すべきかはその企業体の資金により色々と相異もあるのは当然であるが,ある程度の将来性も考慮して充分に運用できる程度のものが望ましい。先進国としての米国の例を見ると現在ではネットワークが完備し,小都市の放送局では簡単な施設のものでもキー・ステーションからの番組を貰って聴視者を満足させている。一方キー・ステーションの方も,初期の頃はスタジオでもラジオに使用していたものを改造した程度であったが放送時間が増え,番組内容の充実するに伴いテレビジョン専門の大スタジオを建設するようになった。この経過を見ても判るように僅か数年間におけるテレビジョンの進歩は真に目覚しいものであると同時に現在でも新しい機械が次々と発表され,今後の発展は予想し難いものがある。そのため現在新設されるテレビジョン専門の放送局でもスタジオなどは将来増設を考慮して敷地を広くとってある。ラジオ東京テレビジョンの局舎および施設は現在の段階において放送時間を5時間位とし,ある程度番組をスタジオ内において充分こなせること,将来の増設が可能なることに基本方針を置き旧近衛三連隊跡の5000坪の敷地に現在の局舎を建設した。なお観客参加番組はラジオと共通のが多いこと,および観客動員の都合でなお一層都心に近いことが望まれるのでその目的のためには現在のラジオ東京ホールおよび築地に建設中のラジオテレビスタジオを使用し,マイクロウエーブで赤坂の局舎まで連絡することにした。
著者
関 喜史 福島 良典 吉田 宏司 松尾 豊
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.95-115, 2017-02-15 (Released:2017-05-15)
参考文献数
17

推薦システムのユーザ体験を高めるために重要な指標の 1 つが多様性 (Diversity) である.多様性は推薦システムが提示するリスト内には様々なコンテンツが含まれるべきという考え方であり,過去の研究では多様性が含まれるリストの方がユーザに好まれるとされている.しかし実際のサービス上で推薦システムを検証したという報告は少なく,サービス上で多様性がユーザにどのような影響を与えるのかは明らかになっていない.本研究では実際にサービスとして提供されているウェブページ推薦システムを分析し,その推薦システムに多様性を導入して比較を行った事例について報告する.まず多様性が導入されていない推薦システムのユーザ行動を分析し,結果としてリストの中位以降に表示するウェブページに課題があることを明らかにした.その上で多様性を導入し,多様性のない既存システムとサービス上でのユーザ行動を比較した.結果として継続率やサービス利用日数が有意に改善していることを示し,従来研究で示されていた多様性を含む推薦リストの方がユーザに好まれるということを実サービス上で示した.そして利用日数が増えるに従ってリスト全体のクリック数が改善していくこと,特にリスト下部のクリック率が多様性のない手法では下がっていくのに対して,多様性のある手法では向上していくことを示した.
著者
稲垣 敏之
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.181-186, 1993-03-10 (Released:2009-11-26)
参考文献数
22
被引用文献数
1
著者
山西 歩 岩佐 弘一 大坪 昌弘 佐々木 綾 平杉 嘉一郎 中村 光佐子 岩破 一博 北脇 城
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.311-317, 2013-03-31 (Released:2017-01-26)

月経前不快気分障害(PMDD)はDSM-IV-TRで特定不能のうつ病性障害に分類される疾患である.今回我々はPMDDと診断し,その治療中に顕在化した双極II型障害の症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例1は20歳,病歴および連続2性周期の経過観察によりPMDDと診断した.選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)投与を開始したところ,軽躁症状が出現したためSSRIは漸減中止,抗不安薬と漢方薬に変更した.その後,軽躁症状が再度出現し,精神科に受診したところ双極II型障害と診断された.症例2は27歳主婦,性周期における精神症状の消長はPMDDに典型的ではなかったが,病歴から大うつ病性障害に合併したPMDDを疑った.SSRI増量後より軽躁症状があらわれたためSSRIは漸減中止し,炭酸リチウム,バルプロ酸および低用量ピル(LEP)に変更した.その後軽躁症状は生じておらず,精神科で双極II型障害と診断された.躁うつ双極性(bipolarity)を有する症例ではSSRIの投与初期や増量期に賦活化症候群(activation syndrome)を発症して軽躁症状を呈する場合や,SSRIが引き金となって病相の急速交代現象が誘発される場合がある.若年女性でPMDDと診断されるものには,双極II型障害が潜んでいる可能性がある.PMDDの診断・治療に際しては,病歴や月経周期における症状の消長を詳細に聴取すること,投薬中の経過観察を密にすること,精神科と連携を図ることが重要であると思われる.若年女性でPMDDと診断した場合には,SSRIを第一選択とするのではなく,先にLEP,抗不安薬,漢方薬を試みるほうが安全なのではないかと考える.
著者
Luca MALFASSI Francesca FIDANZIO Massimo SALA Silvia MARCARINI Giovanni MAZZA Nancy CARRARA Simone PAVESI Giacomo GNUDI Gaetano URSO Mario DOLERA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.695-704, 2021 (Released:2021-04-24)
参考文献数
77
被引用文献数
3

The aims of this pilot study were to evaluate the feasibility and efficacy of high-dose hypofractionated volumetric modulated arc radiotherapy (VMAT) applied to whole pelvic region radiotherapy (WPRT) with multilevel simultaneous integrated boost (MLSIB) combined with piroxicam and chemotherapy for the treatment of canine transitional cell carcinoma (TCC) of the lower urinary tract with muscle invasion TCC. Twelve dogs were enrolled, according to stage, in two groups: group 1, TCC confined to the urinary tract; group 2, TCC with metastasis. The planning target volume dose was tailored from 36 to 42 Gy in 6 fractions. All dogs were prescribed piroxicam and radiosensitizing carboplatin, and six received chemotherapy after radiotherapy. Serial follow-ups with computed tomography and magnetic resonance imaging were performed. Disease control and toxicity effects were evaluated according to the Response Evaluation Criteria in Solid Tumors and Veterinary Radiation Therapy Oncology Group criteria. The treatment was well tolerated, and no high-grade side effects were reported. The median overall survival times for groups 1 and 2 were 1,230 and 150 days, respectively. A considerable percentage of patients in group1 (50%) were still alive at the time of writing this paper, and a longer follow-up could enable a more accurate survival analysis. This preliminary analysis shows that VMAT applied to the WPRT with MLSIB is an effective and safe option for dogs with lower urinary TCC, although the presence of metastases worsens the prognosis.
著者
Maki Fukuda Tsuyoshi Ohta Hiroshi Okabayashi Noritaka Masahira Toshiki Matsuoka Kenji Okada Takaya Tsuno Shota Nishimoto Yusuke Ueba
出版者
The Japanese Society for Neuroendovascular Therapy
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.151-156, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Objective: The objective of this study was to evaluate the reproducibility of three-dimensional (3D) images of the aortic arch reconstructed using a novel image processing algorithm for non-enhanced computed tomography (CT) images of the cervicothorax and abdomen obtained before emergency endovascular surgery.Case Presentations: In all, 46 patients who underwent acute mechanical thrombectomy between January and December 2018 were examined. The anatomical variations of the aortic arch were reproduced in all cases; however, the reproduction of the carotid arteries was difficult.Conclusion: Our novel 3D analysis system enables obtaining information on the aortic arch easily from plain CT data that may be useful in acute endovascular treatment.
著者
石丸 紀興
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.295-300, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

本研究は、広島戦災復興計画時に復興顧問であった英連邦軍オーストラリア軍少佐のS.A.ジャビーによって提案された計画・構想から導かれる計画思想について考察するものである。抽出された計画思想の一つは被爆遺跡保存に関するものであり、さらに一つは全市ジャビープランと称する広島全市計画に関する計画思想である。そして、白島地区における土地区画整理設計である白島ジャビープランと呼ばれる計画に関するものである。もう一つは、平和記念公園コンペティションにおける設計コンセプトに関するものである。それらは、当時としては先進的であり、啓蒙的であり、たとえば原爆ドーム保存におけるように、いくつかの計画思想は当時の市民に対しては指導的な役割を果たし、また平和記念公園コンペにおけるコンセプトが入選者の丹下健三に強く批判されたように、ある計画思想は関係者に馴染まず、反発されて終わるなどの傾向が見られたことを明らかにした。