著者
半田 淳子
出版者
国際基督教大学 日本語教育研究センター
雑誌
ICU 日本語教育研究 = ICU Studies in Japanese Language Education (ISSN:18800122)
巻号頁・発行日
no.9, pp.3-12, 2013-03-31

本研究は、上級の日本語学習者を対象に、日本人の名字ベスト200 に関して、難易度と正答率を調査したものである。具体的には、中国・台湾・韓国からの留学生16 名に、ベスト200 の名字の読み方を記述してもらった。その結果、1)ベスト50 の名字の正答率は高いが、下位になるほど正答率が下がるわけではない、2)正答率が低い名字に使用されている漢字は、上級レベル以上の漢字とは限らない、3)名字に関する知識と滞在月数には、相関関係が認められない、以上のことが明らかになった。日本語学習者にとって日本人の名字が難しいのは、漢字の難易度に原因があるのではなく、音読みと訓読みの使い分けや濁点の有無の判断に加え、名字に特有の読み方や例外の多さが関係している。名字を正しく読めることは、日本での就職を希望する留学生にとって重要なことであり、今後は漢字の指導にも積極的に取り入れていくべきである。
著者
中村 和之
出版者
函館大学
雑誌
函館大学論究 (ISSN:02866137)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.59-69, 2021-10

During the 13th and 14th centuries, the water in the lower Amur basin began to freeze. This climatic event lasted from the eighth month of the lunar calendar until the fourth or fifth month of the following year when thawing began. Such records are found in the Chinese historical sources of the 13th and 14th centuries. Compared with early 20th century data, it can be seen that the climate in the 13th and 14th centuries was cold. The example shows evidence of cooling in the high latitudes of Eurasia.
著者
清水 夕貴 池田 千紗
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育臨床研究編 (ISSN:27583902)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1・2, pp.95-105, 2023-01

特別支援学校や特別支援学級では体力づくりとして毎日運動に取り組んでいることも少なくない。近年,運動が脳を活性化させる研究から短時間の運動で注意機能を向上させるという報告もあり,特別支援教育においても毎日の運動が注意機能へ影響していることが予想される。そこで本研究は,運動習慣のない成人に協力を依頼し,毎日2分間の運動を3週間行い,運動による注意機能への影響を検討し,教育現場で運動を導入する際の手掛かりを得ることを目的に実施した。本研究で実施したわらべ歌「おちゃらかほい」に合わせて全身を動かすじゃんけんは,運動直後の注意機能評価で課題達成時間や正確性に,個人差はあるものの好影響を与えることが示唆された。一部の研究協力者の注意機能に短時間の運動の効果が見られたことから,個々に合わせた難易度や強度などの運動内容をさらに検討することで,教育現場での新たな運動の選択肢を広げることに寄与できると考える。
著者
柏木 理佳 カシワギ リカ Rika Kashiwagi
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.1-16, 2008-12-19

わが国において少子高齢化にともない労働力不足が懸念される中、女性の労働力が注目されている。しかしながら近年の雇用の格差による環境の悪化は、より女性に多くのしわ寄せがきている。女性における労働市場において学歴インフレによる需要と供給のミスマッチが問題視され、世界から指摘されている。若い時期にだけ働いてくれればいいといった日本企業による女性の雇用方法が根強く残っている。中国企業では採用する際に女性の年齢や外見だけにとらわれることは少なく、同じ仏教を信仰する文化を持つ国でありながら日本とは違う欧米型の女性の雇用形態となっている。しかし中国においても企業や国の取り組みは、一概に日本より恵まれている環境にあるとはいえない。特に女性特有の職業においては必ずしも中国企業の採用方法が日本企業と大きく違うとは言い切れない。日中の差は、個人のキャリアアップへの意識において中国人女性の方が強いといえる。個人のリカレント教育やキャリア教育においてはいずれも十分とはいえないが、少なくとも職業意識においては大学生の段階からすでに構築している人の割合が中国人女性の方が多い。日中の比較を通して個人における女性のリカレント教育を分析し若干の示唆をする。
著者
千田 嘉博
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.223-235, 1995-11-30

従来,遺構に即した踏み込んだ検討が行われてこなかった東北北部の山域について,墳館・唐川城・柴崎城・尻八館を事例に検討を行った。この結果,墳館は10世紀末~11世紀にかけての古代末の防御集落と中世の館が重複した遺跡であったことを示し,東北地域で数多くみられるこうした重複現象が,中世段階ですでに古代末に地域の城が構えられた場が,特別な意味をもち,そこに改めて城を築くことが,中世の築城主体にとって権力の権威や正当性を示す意義をもったとした。さらに唐川城・柴崎城・尻八館は,曲輪の整形が未熟な反面,堀が卓越して発達するという,同一系譜の特徴的な城であったことを明らかにし,その築造時期が14世紀末にはじまり,15世紀前半までに限定できるとした。この14世紀末という時期は,十三湊において都市を南北に2分した大土塁が築造されはじめた時期に当たり,また15世紀半ばという最後の改修の年代も安藤氏と南部氏の戦いの時期に一致したことを示した。そして諸状況から考え,これらの3つの山城は安藤氏の拠点城郭として機能したと評価した。堀を卓越させたこれらの城郭構成は,これまでみすごされてきた北の城郭の特徴を示したもので,中世後期の城郭形成に,北からの堀が不可欠であったことを述べるとともに,南方のグスクと共通した郭非主体の防御のあり方は,その先のさらなる北や南との交流の中で生み出されたものだとした。
著者
佐藤 浩輔 中分 遥
雑誌
じんもんこん2021論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.30-37, 2021-12-04

近年,人文社会科学においてデータベースのデジタル化が進展している.それに伴い,民話や神話などに対して計量分析を行う計算民話学・計量民俗学と呼ばれる取り組みがなされている.本研究では,国内の民間伝承に関する主要なデータベースである「怪異・妖怪伝承データベース」を計量的に分析する端緒として,書誌情報を用いて全容を把握するための基礎的な分析を行った.収録されている事例数について都道府県ごとの分布を可視化したところ,地域による資料数の多寡に差があることが明らかになった.主要な「怪異・妖怪」に関するクラスター分析の結果から,怪異・妖怪の分布の地域的特性が示唆された.データベースを用いた計量分析の展望について議論する.
著者
大田 翔貴 村井 源
雑誌
じんもんこん2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.85-90, 2022-12-02

怪談作品は古くから存在し、 怪談にまつわる研究もまた古くから存在している. 本研究は, 怪談 を読むことで感じる奇妙さや怖さの要因を解明するため, 怪談に登場する怪異という特徴的なキャラ クターに着目して怪異の特徴分析を行った. また, 分析の一つとして怪異特徴について Web上に投稿 されている怪談と書籍として販売されている怪談の比較も行った. 分析には,N-gram 統計や因子分析 を利用し、結果として怪異の行動パターンやメディア間で生じる怪異特徴の差異が明らかになった.
著者
阿久津 智
出版者
拓殖大学言語文化研究所
雑誌
拓殖大学語学研究 = Takushoku language studies (ISSN:13488384)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.123-147, 2018-02-20

「母音」と「子音」とは,vowel,consonantの翻訳語として,明治元年ごろから使われ出した和製漢語のようである。「母音」が日本文典・英文典(洋文典)の両者で使われた語であるのに対し,「子音」は,当初,主に英文典で使われた語であった。日本文典では,明治中期~後期に,「父音」が多く使われた。江戸時代には,洋学を中心に,母音を表すのに,「韻字」,「母韻」,「韻母」,「音母」,「母字」などが使われ,子音を表すのに,「父字」,「子韻」,「子字」などが使われた。この「父・母・子」は,反切用語から来たもののようである。「音節」は,本来「ふしまわしやリズム」という意味の語であったが,1900年ごろからsyllableの翻訳語として使われるようになった。それ以前は,日本文典では,「子音」,「子韻」,「複音」,「単音」など,音(構造)に関する名称が主に使われ,英文典では,「連綴」,「綴字」,「綴音」など,つづりに関する名称が主に使われた(「熟音」は両者で使われた)。この両者における名称の違いは,日本文典と英文典における関心の違い(日本文典における五十音,英語における正書法)を示すものだと思われる。
著者
中村 眞人
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.1-25, 2022-09-30

Tanka is a form of traditional Japanese short poem with a syllabic metre. Along with the modernization of Japanese society, a literary movement of realist tanka reform emerged and aimed at universality of emotional expression while describing objective facts and things.This article examines the works of Mokichi SAITŌ, Bunmei TSUCHIYA and other poets of the Araragi school. These poets published in the periodical Araragi, and they were highly influential among Japanese literary practitioners. They regarded an ancient poetry book, the Manyōshū, as an important poetic model.日本が近代社会を形成していく過程で、短歌を、伝統的な形式を踏まえつつも文学としての普遍性を志向する文芸に革新する運動が興った。雑誌『アララギ』に拠る人々は、写実主義を標榜し、『万葉集』を模範としながら、大衆的な広がりをもった文芸活動を実践した。斎藤茂吉はヨーロッパ滞在の体験や、飛行機への搭乗の体験などを素材として、近代にふさわしい短歌の様式を創り出した。土屋文明は、あえて殺風景な都市景観を即物的に描写しつつ、短歌の韻文としての格調を確立した。茂吉と文明は、『万葉集』における写実的な心情の表現と民衆的な基礎を尊重した。
著者
安田 豊
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.e26-e37, 2022-04-15

本稿では情報入試における情報通信ネットワーク関連の問題について,これまでの作題傾向と今後の方向性について考察する.情報入試におけるネットワーク分野の問題は単純で類型的なものになりやすい.近年の大学入学共通テストの問題を見ると,ネットワーク関連問題はその第1問に現れることが多く,充分な理解がなくても丸覚えで解答可能なものが見られる.しかしその一方でさまざまな形で「理解を問う」問題とする工夫が行われており,本稿ではその手法・アプローチについて具体的な解説を試みる.またそれを踏まえて今後の方向性・可能性について展望する.