著者
越田 全彦 山崎 武俊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.134-139, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
19
被引用文献数
2

症例は特記すべき既往のない19歳男子大学生。16歳の時に明らかな誘因なく1日に10回以上嘔吐を繰り返し,経口摂取不能のため近医入院の上,点滴加療を受けた。発作間欠期にはほぼ無症状だが,以後年に2~3回,激しい嘔吐のために1週間程度入院するようになった。その都度精査を受けたが,脱水を認めるのみで他に明らかな異常を認めなかった。19歳を過ぎた頃より毎月入院するようになったため,精査目的に当院紹介受診となった。西洋医学的には特記すべき異常を認めず,周期性嘔吐症候群と診断した。漢方医学的には,気鬱・気逆と診断した。半夏厚朴湯を処方したところ,自覚症状は著明に改善し,内服開始から半年が経過したが嘔吐発作は出現していない。 気鬱・気逆を伴う強い嘔吐症状を半夏厚朴湯が予防する可能性があり,機能性消化管障害に対する漢方薬の有効性が示唆された。
著者
清水 亜紀子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.231-249, 2009-05-01 (Released:2009-07-04)
参考文献数
20

本研究では,自我体験の「体験内容」・「体験の位置づけ方」の類型化を試みる。そこで,25名の被調査者を対象に,自我体験に関する個別面接調査を実施した。得られた語りを分析した結果,自我体験の体験内容は,時間軸・空間軸への問い,存在への感覚的違和,自・他の実在への懐疑,独一性への気付きの4つに分類された。また現時点での自我体験の位置づけ方は,個人史再編成,体験同化,意味づけ途上,体験疎外の4つに分類された。特に,個人史再編成では,新たな自己が生成される一方で,体験疎外では,旧来の自己のあり方を堅持しようする様子がみて取られた。さらに,事例的検討から,自我体験とは,「第二の私」が「今ここの私」として生きるという新たな自己の成立の契機的体験であり,その体験をいかに受けとめるかによって,「今ここの私」を根底から崩すものにも,支えてくれるものにもなりえるパラドキシカルな体験なのではないかと考えられた。
著者
塩見 一雄 田中 栄治 熊谷 純智 山中 英明 菊池 武昭 河端 俊治
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.341-347, 1984-02-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
1
被引用文献数
6 7

It is said that, during the thawing of frozen puffer fish, muscle becomes toxic due to the migration of toxin (tetrodotoxin) from toxic viscera and skin. In this study, the extent of toxification of muscle after thawing at 4°C was examined using slowly or quickly frozen puffer fish Fugu niphobles. No significant difference in the extent of toxification of muscle was observed between slowly frozen specimens and quickly frozen ones. The muscle of most specimens was found to be toxic (up to 58 MU/g) even immediately after the first thawing. The migration of toxin into muscle from toxic tissues progressed gradually with the time elapsed after thawing; several specimens showed a strong toxicity of more than 100 MU/g after 24 and 48 h from the end point of thawing. The toxicity of muscle at the second thawing was failry low as compared with that at the first thawing probably because of the difference of muscle parts used for toxicity test. In the case of half-thawed specimens, the toxin did not migrate into muscle from toxic tissues.
著者
桃園書房 [編]
出版者
桃園書房
巻号頁・発行日
1990

2 0 0 0 有明町史

出版者
有明町
巻号頁・発行日
vol.下巻, 1989
著者
横山 和樹 小笠原 那奈 小笠原 啓人 矢部 滋也 森元 隆文 池田 望
出版者
公益社団法人 北海道作業療法士会
雑誌
作業療法の実践と科学 (ISSN:24345806)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.47-55, 2021 (Released:2021-08-31)
参考文献数
23

本邦の作業療法におけるピアサポートの内容と作業療法士の役割を探索的に明らかにすることを目的に文献レビューを行った.対象文献11編を分析した結果,ピアサポートの内容は,多い順にフォーマルなピアサポート,インフォーマルなピアサポート,仕事としてのピアサポートに分類された.作業療法士の役割は,グループの立ち上げや運営,グループ参加前後の個別支援,当事者の希望や役割等の評価やそれを生かした実践,ピアサポートの活用に向けた治療構造や環境の調整等が報告された.また,ピアサポーターと連携する時の役割として,同等な立場としての関わり,当事者が安心・安全に活動するための体制づくり等が挙げられた.
著者
松寺 翔太郎 渡邊 峻 谷 有希子 山口 岳史 荻野 恵 桑島 成子 土岡 丘
出版者
日本小児放射線学会
雑誌
日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.116-121, 2019 (Released:2019-11-22)
参考文献数
18

毛髪胃石は経口摂取された毛髪が胃内で一塊となったもので,稀に腸閉塞を引き起こす.今回我々は毛髪胃石による腸閉塞に対し小開腹により胃石を摘出した一例を経験したので報告する.症例は11歳女児.腹痛・嘔吐を主訴に来院した.腹部造影CTでは非絞扼性の内ヘルニアが疑われた.イレウスチューブを挿入すると大量の血性排液を認めたため緊急手術を施行した.中腹部正中切開にて開腹すると,Treitz靭帯から200 cmの小腸内に長径6 cmの毛髪胃石を認めたため摘出した.術後イレウス管抜去の際に胃内の胃石残存が疑われ,内視鏡的摘出の方針とし術後9日目に一旦退院となった.再入院後,胃石の内視鏡的摘出を試みたが困難で,初回と同じ創で小開腹し長径8 cmの胃石を摘出した.開腹歴のない腸閉塞の鑑別診断として稀ではあるが胃石によるものも考慮する必要がある.また胃石の画像的特徴を認識し重複毛髪胃石の確認を行うことが重要である.
著者
高橋 龍介 萩原 礼紀 龍嶋 裕二
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CdPF2035-CdPF2035, 2011

【目的】<BR> Femorotibial angle(以下FTA)210度の変形性膝関節症(以下KOA)患者に対して,当院整形外科にて人工膝関節置換術(以下TKA)を施行した.手術前後での歩行について動作分析装置を用いて,比較検討を行ったので報告する.<BR>【症例紹介】<BR> 83歳女性で,高血圧症以外に特記すべき既往歴,合併症はない.現病歴は,約20年前より右膝の内反変形を自覚するも近医にて保存的加療を継続していた.3年前より右膝関節の疼痛が増悪し,歩行困難を主訴にて当院整形外科に紹介され手術適応と判断された.術前は安静時,動作時にNRS(numerical rating scale)7~8の疼痛がみられた.FTAは右210度,左181度であり,横浜市大方式による変形性膝関節症分類(以下OAgrade)5であった.ROMは右膝関節屈曲115度,伸展-10度で,右下肢筋力はMMT3であった.コンポーネントは,Zimmer社LCCKを使用してcement固定で行った.手術後の理学療法は,日大メソッドにて実施した.<BR>【方法】<BR> 路上における10mの直線自由歩行を測定課題とした.測定前に複数回の試行を実施し動作に習熟させた.被験者の体表面上位置に赤外線反射標点を貼り付け空間座標データを計測した.直径25mmの反射標点を,剣状突起,右側の膝蓋骨上縁,脛骨粗面,下腿遠位中央部,両側の肩峰,上前腸骨棘,大転子,腓骨頭,外果,踵骨,第5中足骨頭の計18点に貼り付け,6回測定を行った.歩行が定常化する4歩行周期目以降の位置に,測定域として2m<SUP>3</SUP>の補正空間を設定し,空間内を移動する反射標点を測定した.測定課題を実施中の標点位置を三次元動作解析装置(ライブラリー社製GE-60)により撮影した.サンプリング周波数は120Hzとした.計測した1歩行周期を,画像データから各運動相に分類した.解析方法は,観測データをPCに取り込み,平均的な波形を抽出するために,最小二乗法により最適化を行い,位相を合わせ平均化した.計測した重複歩長,歩隔,歩行周期の各相における右股関節,膝関節の角度,右立脚期のFTAを3次元動画計測ソフト(ライブラリー社製 Move-tr/3D)を使用して求めた.測定された値は,5次スプライン補間により補正し,小数点2桁目を四捨五入し,術前と独歩可能となった術後12病日目を比較した.<BR>【説明と同意】<BR> 本研究の目的および方法について,十分に説明し書面にて同意を得た.なお本研究は,本学医学部の倫理委員会の承認を得て行った.<BR>【結果】<BR> 術前右重複歩長39.9±2.4cm,左重複歩長34.0±5.7cm,術後右重複歩長45.9±2.0cm,左重複歩長48.6±4.4cmと左右ともに延長された.術前歩隔は13.5±2.5cm,術後7.0±2.7cmと狭小化した.術前歩行周期の各相における右股関節屈曲角度heel strike(以下HS)14.3±6.7度,foot flat(以下FF)14.6±5.0度,mid-stance(以下MS)12.9±5.9度,heel off(以下HO)11.8±4.9度,toe off(以下TO)19.9±4.5度.右膝関節屈曲角度HS22.1±6.7度,FF30.3±5.0度,MS35.2±5.9度,HO33.1±4.9度,TO30.1±4.5度.術後歩行周期の各相における右股関節屈曲角度HS17.3±6.7度,FF13.3±5.0度,MS18.3±5.9度,HO25.4±4.9度,TO8.8±4.5度.右膝関節屈曲角度HS8.2±7.7度,FF22.8±5.7度,MS43.4±6.7度,HO10.2±4.8度,TO9.3±6.5度となった.右立脚期のFTAは術前で211.8±3.8度,術後で181.3±4.1度と改善した.<BR>【考察】<BR> 術前は,右立脚期に著明なlateral thrustが生じていた.これは,関節構成要素が破綻していることによって生じており,疼痛を回避するために主動作筋と拮抗筋の同時収縮による関節の剛性が高まった結果,膝関節運動も低下していた.12病日目に独歩可能となり,同日に測定した結果は上述のとおりで,右立脚期のFTA,重複歩長,歩隔が改善した.これはTKAにて結果に示す様なアライメントに矯正され,関節にかかる力学的不均衡の問題が解消し,さらに,理学療法の施行によって再獲得したアライメントに対する効率的な運動再学習が得られたことによると考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> OAgrade5でFTA210度と高度KOAであっても,適正な理学療法を実施することで,早期に歩行可能となった症例を提示した.
著者
垂水 良浩
出版者
詫間電波工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

研究目的急速に高齢化が進む日本たおいて、身体的な介護とともに認知症の予防は重要な課題となっている。そろばんは指先・目・耳を使い、高い集中力が必要で、脳神経細胞が活性化されるため、認知症予防に効果があると言われている。最近では認知症予防の講座を開くそろばん塾もある。しかし、従来のそろばんの習得には指導者が必要であり、自分の好きな時間にできなかったり、一人では練習が続期ないなどの問題がある。そこで、以下のことが可能な「USBそろばん」システムを開発し、これらの問題を解決することとした。1.初心者が画面の指示どおりにそろばん入力し、ゲーム感覚で楽しく指使いの練習ができる。2.画面表示による読み取り算、音声による読み上げ算ができる。また、早さと正確さにより段位認定を行う。3.ネットワークを使ったランキングや珠算大会ができる。研究方法・成果珠の状態を光学センサで読み取りパソコンにUSBインタフェースで繋がるそろばんを開発した。11桁のそろばん珠配列に対応した5*11個のフォトリフレクタをマトリックス状に配置したセンサ基板を設計製作した。列ごとにセンサの状態をスキャンすることで、珠の位置をパソコンに取り込む。また、外光補正用センサにより、外光の影響による誤動作を防ぐようにした。画面に実際の珠の動きと連動したそろばんの絵が表示されるソフトウェアを開発した。音声や画面表示で問題を出題し、そろばんで入力された値の正誤を判定する。出題は10問単位で出され、時間と正確さにより段位を表示する。現在、3の機能は実装することができていないが、早期に実現し、実用化を目指したい。