著者
淺田 義和 村岡 千種 前田 佳孝 鈴木 義彦 川平 洋
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45072, (Released:2021-09-02)
参考文献数
7

脱出ゲーム(Escape Roon,以下ER)を用いた教育は近年で増加傾向にあり,医療分野を含めて種々の事例が報告されている.しかし,2020年度の新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け,従来の対面で行うER 活用教育は実践が困難となっていた.本稿では,従来は対面で実施していたER をMoodle 上でのオンラインER へと形式変更し,実践した結果を報告する.オンラインER としたことにより,密の状態を回避したうえでの運営が可能となった.また,対面とは異なる環境での意見交換の困難さを経験したことによる学びの省察も生じていた.今後はMoodle上でのログ解析などを通じ,ER の学習分析などにも視野を広げる必要があると考える.
著者
澤田 晶子 佐藤 博俊 井上 英治 大谷 洋介 半谷 吾郎
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第28回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.108, 2012 (Released:2013-11-01)

ニホンザルの主要食物である植物と異なり、単独で点在するキノコは絶対量が少なく、あっという間に食べ尽くされてしまうため、学習のチャンスが極めて少ない食物である。菌類相の多様性が高い屋久島において、ニホンザル (Macaca fuscata yakui) は何らかの手段で毒キノコを識別して忌避しているのだろうか。本研究では、ニホンザルが食べたキノコ・食べなかったキノコの分子種同定結果を基に、ニホンザルのキノコに対する選択・忌避の傾向とその基準について解明した。 調査は屋久島に生息する野生ニホンザルAT群を対象とし、2009年8月から2010年9月にかけて実施した。キノコはニホンザルの採食時間のわずか2.2%を占めるにしかすぎなかったが、年間を通じてニホンザルは少なくとも67種 (31属) という非常に多様なキノコを食べていたことが判明した。採食時の行動に着目したところ、ニホンザルは手に取ったキノコに対してにおいを確認する、かじって吐き出すという検査行動を取ることがあった。そこで、採食時の行動パターンを、ニホンザルがキノコに遭遇したとき・手に取ったとき・検査行動を見せたとき・食べたときと4段階に分けて分析した。結果は、ニホンザルが検査行動なしですぐに食べるキノコは毒キノコである割合が低く、ニホンザルが途中で採食を止めたキノコは毒キノコである割合が高いことを示すものであった。これらのことから、ニホンザルはキノコに対してある程度事前の知識を有しており、味覚とあわせて毒キノコ回避において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 さらに、キノコの属性や系統について詳細な解析をおこない、ニホンザルのキノコに対する選択・忌避の傾向との関連性を検証する。
著者
西崎 康 入江 寛 横山 明彦 多田 泰之
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.50-56, 2009-01-01 (Released:2009-01-01)
参考文献数
12
被引用文献数
15 26

Considering interconnection of a large-capacity of wind power generation to the utility grid, it is of great concern that its output power fluctuation has adverse influences, e.g. frequency fluctuation. There have so far been some research works on installation of battery energy storage systems (BESS), as a solution of these problems. However, owing to very high cost of the BESS, its capacity should be as small as possible. In this paper, not only the installation of the BESS as one of measures of suppressing the frequency fluctuation caused by wind power generation, but also blade pitch angle control for blunting the output power of wind turbine generators (WTGs) is also considered. This paper proposes a coordinated control method of the BESS and the blade pitch angle, and evaluates reduction of the capacity of the BESS and the power generation loss caused by blunting the output power which should be originally generated by WTGs.
著者
坂入 洋右 雨宮 怜
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.836-842, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

現在, 人工知能の分野を先頭に, 科学的研究と応用的実践の方法に大きな変革が起きている. それは, 一般的仮説を検証してその成果を現実に適用するトップダウン型の方法論から, 現実の多量なデータに基づいてアウトカムを予測する最適モデルを個別に構築していくボトムアップ型の方法論へのパラダイムシフトである. 近い将来, メカニズムが複雑で個人差が大きな慢性疾患や心身医学的な問題には, 患者本人の膨大なデータに基づくボトムアップ型のアプローチが不可欠になるのではないだろうか. すでに, スポーツや教育などの実践方法においても同様のパラダイムシフトが起きており, 自律訓練法などの心身医学療法を臨床的に活用する場合にも, そのアプローチの違いが劇的な効果の差を産み出す可能性がある. 本稿では, それらがどのようなものか解説するとともに, 自律訓練法を題材として, 研究と実践における2タイプのアプローチの違いを具体的に提示する.

2 0 0 0 OA 大山元帥

著者
西村文則 著
出版者
忠誠堂
巻号頁・発行日
1917
著者
丸山 徹 入江 圭 森山 祥平 深田 光敬
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.111-117, 2017-07-06 (Released:2018-04-16)
参考文献数
19

QRS波の終末部に記録されるJ波は,近年,特発性心室細動との関連が指摘されている.しかし,この波形が遅延脱分極波であるのか,早期再分極波であるのかについては,いまだ議論が多い.J波がアスリートに多く見られ,アスリートの心臓では乳頭筋の肥大や肉柱化,仮性腱索を認めやすいことから,J波とこれらの心内構造物との関連も指摘されている.乳頭筋や仮性腱索にはPurkinje線維が豊富で,心室筋への伝導が遅延して(PV delay),心室不整脈の基質となる場合がある.また,J波と心室遅延電位の関係性も指摘されており,これらはJ波が遅延脱分極成分であることを示唆する.一方,多くの基礎研究は,J波が早期再分極波であることを支持している.また,正常な貫壁性の心室興奮は,心内膜側から心外膜側へ向かうが,肉柱化した乳頭筋はこれを修飾して,反対側の心室壁が早期興奮症候群に近い興奮伝播を呈するようになる(ミニデルタ波).これは,早期興奮症候群でも認めやすいJ波は,早期に興奮を終了した部分から再分極も早期化して生じるためと考えられる.J波が脱分極成分であるか,再分極成分であるかを知るためには,これらの心内構造物の興奮伝播様式や心室全体の興奮との関連を明らかにすることが不可欠である.
著者
清水 泰生 シミズ ヤスオ Shimizu Yasuo
雑誌
国際研究論叢 : 大阪国際大学紀要 = OIU journal of international studies
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.91-103, 2017-01-31

Haruki Murakami is a novelist who also competes in triathlons and marathons. How has his running affected him and his literary work? Furthermore, has he read any books about running that offer interesting viewpoints? In addition, how does he train? For this report, I considered works that feature in printed media, such as interviews, essays and other texts. Since many novelists do not participate in sports, Murakami was regarded as a heretic and received continuous criticism. He fought for people who were criticized all the time. It may be said that he is an atypical runner, and is therefore isolated. Also, it can be seen from the Murakami works that literary language and rhythm are important attributes. As well as music, running must affect the form of writing immensely. Additionally, there is the theoretical question about his training, but it may be said that his original training has helped him form a writing style.
著者
森 公章
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.119-179, 2001-03-30

本稿は「額田寺伽藍並条里図」に描かれている額田寺と関係すると思われる額田部氏について、畿内の中小豪族の歴史とその存在形態を明らかにするという視点から考察を試みたものである。額田部氏はこの図に描かれている額田部丘陵を五世紀以来の本拠とし、六世紀頃に飼馬を以てヤマト王権に仕え、また額田部皇女の宮の運営・資養を担当する額田部の管理者として登場する。額田部皇女が推古天皇として即位するとともに、額田部氏も惰使の郊労など中央の職務分担に与り、飼馬の技術を生かした役割を果たしたりするが、基本的にはヤマト王権を構成する中小豪族として定着している。律令制下においても、中央の中下級官人や王臣家に仕えるなど、中央での地位は変化していない。と同時に、額田部氏は本拠地にも勢力を残し、大和国平群郡の譜第郡領氏族としての活動も有する。即ち、中央下級官人と在地での郡領の地位維持という二面性を保持していたと理解されるのである。この在地豪族としての額田部氏の経済基盤となったのが、額田寺の存在とその寺領であった。畿外の郡領氏族とは異なって、在地豪族としての力が弱い畿内の郡司氏族にとっては、寺院は精神面だけではなく、経営の一大拠点となり、この地域における額田部氏の勢力の存続を支えたものと思われる。以上のような額田部氏のあり方の一般化を求めて、畿内の郡司氏族全般についても検討し、畿内郡司氏族は畿内の中小豪族として名代の管理者や職業部民の管理者などとしてヤマト王権の実務を支え、律令制下においても中下級官人として国家の日常業務を担う存在であり、同時に郡司として在地での勢威も保持しており、中下級官人と在地豪族の二面性を備えた存在であったことを確認した。この二つの側面は畿内の郡司氏族にとってともに重視すべき要素であり、両立を以てこそ畿内中小豪族たる彼らの存立基盤を確保することができたのである。

2 0 0 0 OA 全トルストイ

著者
石田三治 著
出版者
大鐙閣
巻号頁・発行日
1920
著者
梶間 育郎 森 和 矢野 忠 国安 則光 原田 拡
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.308-318, 1992-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19

脱毛症の成因については皮膚科学に於いても明確な説明が得られていない。我々は鍼灸治療の種々の脱毛症に対する有効性を検討し, その治療方針を考案するために従来の成因に関する諸説, 及び鍼灸による治験報告を再考すると共に、その成因を多角的視野で検討するために脱毛症患者534名を対象として, 頭皮所見と脱毛症に伴う身体症状の調査を行った。休止期毛性脱毛症群では頭皮の血行不良と身体的過緊張に深い関係がみられた。成長期毛性脱毛症群では自律神経系の変調を想起させる症状が頭皮と身体の双方に高率に認められた。よって脱毛症は頭皮のみの疾患ではなく, 全身的機能変調の表出と考えられる。
著者
池田 秀敏
出版者
信州大学
雑誌
信州大学法学論集 (ISSN:13471198)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.195-220, 2006-12-22

「ファンブック罪に濡れたふたり~Kasumi~」事件・控訴審判決 東京高等裁判所平成17年3月3日判決 〔判例時報1893号126頁,判例タイムズ1181号158頁〕
著者
野村 鮎子 野村 鮎子
出版者
奈良女子大学文学部
雑誌
奈良女子大学文学部研究教育年報 (ISSN:13499882)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-16, 2007-03-31

中國古典詩文中,有一部分是以自家女性為題的作品。 有悼亡詩、亡妻墓言志銘、先批行状、乳母墓銘、祭亡妾 文等等。這些描寫自家女性的作品都有個共通黠,即這 些女性親人皆己亡故。這是因為前近代的中國士大夫之 間,有著基於「内言不出於梱」(《禮記》)的儒教士規範 而沉默不語的共識,因此在表達親情戸気,往往不得不 透過哀悼的文學形式。 關於書寫女兒的文學,大部分也都是哀悼未婚女兒的 作品,但其中有若干是哀悼己出嫁的女兒之死的持文。 且談論到出嫁女兒之死的作品中,有些還提及女兒在夫 家遭到虐待一事,這點往往容易被人忽略。 本論將討論宋蘇洵〈自尤詩〉、明王樵〈祭女文〉、 明駱問禮〈章門駱氏行状〉等父親哀悼出嫁女兒死於非 命的作品。在〈自尤詩〉中,蘇洵用長達九十八旬的長 篇詩形式,道出季女八娘嫁往母相娘家-程家、卻在 夫家受虐而死的事由。<祭女文〉中,王樵以祭文的形 式描述女兒嫁給愛喝酒又素行不正的丈夫,最後在夫家 遭到虐待以至自殺的悲劇。駱問禮的〈章門駱氏行状〉 則以行状的文體,道出女兒駱復不斷被丈夫章其美施暴, 最後還被通姦罪殺害的經過,這些作品的共通點是:喪 女之痛、對虐待女兒至死的夫家之怨念、為女兒訂下這 椿親事的不是別人正是身父親自己的自責之情、以及 無法將女兒從虐待中拯救出來的悔恨。 無關男性的社會地位、學歴舆職業,虐待女性或家庭 暴力都有可能發生,這一點在今日已然廣為人知。在理 當體現儒家教誨的士大夫家庭中,實際上並非「父子兄 弟夫婦相和順」所言般理想,但虐待或暴力被認為只會 出現在平民或小説世界裡,所以士大夫階層的家庭暴力 幾乎不曾浮出檯面。這可謂為士大夫間一直以來巧妙隐 瞒的縁故。但本論所介紹的,都是士大夫階層的家庭裡 所發生的家庭暴力,而暴露這些暴力的父親也都是士大 夫階層。 前近代中國的女性因為受到「孝」或「從一而終」的 規範,出嫁後就算遭到婆婆或丈夫的虐待,也幾乎不可 的離婚。出身士大夫家庭、有教養的女性多以離婚為恥, 逃避之途唯有一死。而且殉夫之女或守潔自盡的女性往 往被稱為節婦或貞女,會受到朝庭的彰顯,也會被當成 兩家的榮譽,相對於此,身為家庭暴力被害者的女性, 即無法獲得這榮譽。她們反而會視為家門之恥,被虐 待的事實則被巧妙隐瞒。這種情况下,以詩人身份暴露 這些易於被粉飾太平的出嫁女兒受虐而死的經過,正是 身為一個父親對女兒的親情。