著者
井上 翔太郎 神吉 直宙 久呉 真章
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.278-282, 2019 (Released:2020-04-28)
参考文献数
12

急性中耳炎の頭蓋内合併症は稀だが致死率も高く神経学的後遺症を残す場合もあり早期の診断と治療が重要である。今回急性中耳炎にS状静脈洞血栓症を合併した症例を経験した。症例は11歳の女児で受診前日に急性中耳炎と診断され経口抗菌薬を処方されたが,その後嘔気・頭痛が増強し当院を受診した。発熱なく意識清明で髄膜刺激徴候はなく,CTにて右中耳炎・乳様突起炎と診断し広域抗菌薬の経静脈投与を開始した。翌日MRIで右S状静脈洞血栓症を認め,ヘパリンNaの投与も開始した。抗凝固療法は計7日間,抗菌薬投与は計14日間行った。第26病日のMRIで血栓は消失し,神経学的後遺症なく経過した。急性中耳炎で頭痛や嘔吐が強い場合,本症も念頭に置く必要がある。小児でも成人と同様に広域抗菌薬,抗凝固療法による治療が有用と考えられた。
著者
福本 潤也 後藤 雄太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.390-407, 2011

2004年に国土交通省の下に「自動車の検査・点検整備に関する基礎調査検討会」が設けられた.同検討会は自動車検査証の有効期間延長の社会的影響について推計・試算を行い,有効期間の延長が自動車の安全確保と環境保全に甚大な悪影響を及ぼすと結論づけた.しかし,同検討会の推計・試算で重要な位置づけを占める自動車の不具合率の推計は様々な問題を抱えている.本研究では,同検討会の推計が抱える問題を克服するハザード・モデルを提案する.同検討会が不具合率の推計に用いたデータを使用してハザード・モデルのパラメータを推計する.推計結果に基づき,同検討会による社会的影響の推計・試算結果が過大推計であった可能性を指摘する.
著者
松下 雪郎
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
油化学 (ISSN:18842003)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.3-9, 1987-01-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
38
被引用文献数
2 1
著者
高橋 裕 山崎 健
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.116-121, 2003 (Released:2008-04-24)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

CO2 was absorbed into C60-C70 binary solids at room temperature using a commercially available autoclave. The solids were then immersed in liquid CO2 for 24 h at a gas pressure of 5 to 6 MPa, and the degree of CO2 storage was evaluated by infrared (IR) spectroscopy and X-ray diffraction (XRD). CO2 was detected in pure C60 by IR measurement, and the stoichiometry was estimated to be C60(CO2)0.34 based on the increase in the lattice parameter. Although no trace of CO2 storage was detected for pure C70, the addition of C70 to C60 at a mole fraction of up to 0.16 did not appreciably degrade the storage capacity of CO2 from that in pure C60. The stability of CO2 trapped in solid fullerenes is explained in terms of geometrical considerations based on hard-sphere packing at octahedral sites.
著者
田尻 慎太郎 タジリ シンタロウ Shintaro Tajiri
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.81-94, 2006-11-30

2004年度に規制改革・民間開放推進会議では、運輸部門の規制緩和の一環として自動車検査制度における検査証の初回有効期間を現行の3年から4年に1年間延長することを提唱した。それを受けて国土交通省自動車交通局では有識者による「自動車の検査・点検整備に関する基礎調査検討会」を設置し2005年3月に報告書をまとめた。報告書では自家用乗用車の初回検査期間を1年延長することにより、自動車の不具合率が10.6%上昇し、その結果交通事故による年間死傷者が613人増加すると試算している。そこで本稿では、検討会が用いたのと同じ個票データを利用して、非集計回帰分析を行うことで、第三者による比較検討可能な数値を示す。本稿での試算では、1年延長による不具合率の増分は6.35%にとどまり、検討会での試算は過大なことが示された。
著者
川崎 磯信
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.927, pp.85-88, 1998-02-09

1997年12月12日、東京地方裁判所において、無免許でどぶろくを製造、販売し酒税法に違反したとして有罪判決を受けました。内容は懲役4月、執行猶予2年、罰金40万円でした。 法廷で裁判官から「法軽視の態度が顕著だ」と指摘されました。当たり前です。酒税法は悪法なのですから。今後もどぶろくはつくり続けます。 どぶろく密造で告訴されることは、自ら望んでいたことです。
著者
西村 昌也
出版者
関西大学文化交渉学教育研究拠点(ICIS)
雑誌
周縁の文化交渉学シリーズ6 『周縁と中心の概念で読み解く東アジアの「越・韓・琉」―歴史学・考古学研究からの視座―』
巻号頁・発行日
pp.105-141, 2012-03-01

ベトナムの形成史を考える時に、主要民族、キン族が居住した北部平野部において、その南域(タインホア省からハティン省あたり)は、先史時代より非常に興味深い役割を果たしている。 つまり銅鼓に象徴されるドンソン文化の核領域を形成しつつ、中部のサーフィン文化集団による大量銅鼓の移出を実現する。そして、後漢代以降、中国文化を積極的に受け入れた集団と山岳部でドンソン文化伝統を保とうとする二極化がおきる。また、時には、中部のチャンパなどと連合しながら、しばしば中国政権側に起義・反抗を行う。そのなかには、中国側政権にもともと近しい存在で、権力基盤形成を行い、反抗・起義に到った例もある。 独立達成の10世紀から李陳朝期を通じて、ベトナムはチャンパと抗争を繰り広げると同時に、文化的にも経済的にも様々な交流関係を深め、チャンパとの交流はベトナムが独自文化形成を行う上で大きく寄与していたし、チャンパ側も陶磁器生産技術などをベトナム側から導入している。 15世紀以降、タインホア、ゲアンなどの北部南域の人たちは、積極的に中部入植や政権樹立を行い、現在のベトナムに到っている。その地政学的位置から、北部南域の人たちは、中国とチャンパを両端として、ベトナムの政権を真ん中に据えつつ、振り子のように重心を変えながら、巧みに勢力拡大に努めてきたと言える。
著者
野上 道男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

&nbsp;対馬海峡の流速は0.5m/sec程度であり(九州大応用力学研WEB公開データ)、速さがその4倍以下の人力船は大きく流される.海図も羅針盤もなく航路距離は測定不可能な値である.そこで倭人伝に記述されている里数は測量による直線距離であると判断される.つまり天文測量である1寸千里法(周髀算経)で得られた短里による数値である.<br><br> 帯方郡(沙里院)から狗邪韓国(巨済島)まで七千余里、女王国(邪馬台国)まで万二千余里、倭地(狗邪韓国と邪馬台国の間)は(周旋)五千里と記述されている.これらの3点はほぼN143E線上にある.この方位線は子午線と、辺長比3:4:5のピタゴラス三角形を作る(周髀算経と九章算術で頻繁に使われている) .帯方郡での内角は36.78度であり(N143.22E)、東南(N135E)あるいは夏至の日出方向を東とする方位系での南(N150E)の近似である可能性が高い.<br><br> 1.2万里は斜め距離であり、南北成分距離は、1.2万里x4/5=9600里である.1寸千里によると日影長の差は9.6寸となる.帯方郡は中国の行政内であるので、日影長による定位が行われていたはずである.現在の知識では郡(沙里院)の緯度は38.5Nであり、日影長は21.53寸と計算できる.それより9.6寸短い11.93寸という値が得られる緯度は31.92Nである.方位N143E線と合わせると郡から1.2万里の点は宮崎平野南部となる.<br><br> 測定誤差に配慮すれば、倭人伝では邪馬台国は九州南部にあったと認識されていたといえる.それより詳しい比定は考古学の問題である.漢文法に時制はなく、「邪馬台国女王之所都」は文意を補って、邪馬台国はかって(倭)女王(卑弥呼)が都して(治めて)いたところである、と読むべきであろう.邪馬台国が倭国の首都であるとするのは明らかに誤読である.<br>
著者
井上 章二
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.19-24, 1999-06-25
被引用文献数
1

林野火災延焼拡大の動態を解析するためには,風向・風速データが不可欠であり,火災現場から離れた気象観測所のデータを用いることが多い。しかし,火災時の熱で発生すると考えられる局地風の風向・風速を知ることは困難である。本研究は,火災跡地の立木に残る燃焼痕(いわゆる樹木の片面燃焼痕)から火災時の現地の風向・風速を推定する方法を検討したものであり,燃焼痕に関係する因子を明確にするため風洞による燃焼実験を行った。風向については,いずれの実験条件においても,樹木の風下側の燃焼痕が風上側に比べて高い位置まで残っており,風向は樹木の燃焼痕から推定できることが明らかとなった。さらに,風上側の燃焼痕の高さは,風速が大きくなるほど低くなり,風下側の燃焼痕は風速とは無関係に直径が大きくなるほど高くなった。また,風下側の燃焼高と風上側の燃焼高の差(Hd)が,風速を推定する上で重要な因子であることが確かめられた。しかし,この結果を現地へ適用するためには,風洞実験と実際の林野火災とのスケールを考えると,風下側燃焼高と風上側燃焼高の比(Hr)も,重要な因子であると考えられ,次元解析の結果,次の実験式が導かれた。風上着火:H/D=1.86×10^<-6>(U・D/v)^<1.64>風下着火:H/D=7.24×10^<-5>(U・D/v)^<1.20>ただし,H=Hd×Hr,Dは直径,Uは風速,vは空気の動粘性係数火入れを利用した現地実験において,実験式の適用性を検討したところ,高い精度で火災時の現地の風速が推定できることが確認された。
著者
Valentina Carubelli Marco Metra Ugo Corrà Damiano Magrì Claudio Passino Carlo Lombardi Domenico Scrutinio Michele Correale Gaia Cattadori Massimo F. Piepoli Elisabetta Salvioni Marta Giovannardi Rosa Raimondo Mariantonietta Cicoira Romualdo Belardinelli Marco Guazzi Giuseppe Limongelli Francesco Clemenza Gianfranco Parati Angela B. Scardovi Andrea Di Lenarda Maurizio Bussotti Rocco La Gioia Piergiuseppe Agostoni on behalf of the MECKI score research group
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.2608-2615, 2015-11-25 (Released:2015-11-25)
参考文献数
33
被引用文献数
17 18

Background:In patients with chronic heart failure (HF) the Metabolic Exercise Cardiac Kidney Indexes (MECKI) score, is a predictor of cardiovascular death and urgent heart transplantation. We investigated the relationship between age, exercise tolerance and the prognostic value of the MECKI score.Methods and Results:We analyzed data from 3,794 patients with chronic systolic HF. The primary endpoint was a composite of cardiovascular death and urgent heart transplantation. Older patients had higher prevalence of comorbidities and lower exercise performance compared with younger subjects (peak V̇O2, 925 vs. 1,351 L/min; P<0.0001; V̇E/V̇CO2slope, 33.2 vs. 28.3; P>0.0001). The rate of the primary endpoint was 19% in the highest age quartile and 14% in the lowest quartile. At multivariable analysis, the independent predictors of the primary endpoint were left ventricular ejection fraction (LVEF), eGFR, peak V̇O2, serum Na+and the use of β-blockers in patients aged ≥70 years, and LVEF, eGFR and peak V̇O2in younger subjects. The MECKI risk score increased across age subgroups, but on receiver operating characteristic curve analysis its prognostic power was similar in both patients aged ≥70 and <70 years.Conclusions:Older patients with HF are a high-risk population with lower exercise performance. The MECKI score increased according to age and maintained its prognostic value also in older patients. (Circ J 2015; 79: 2608–2615)