著者
松本 幸久
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.11-20, 2008 (Released:2008-04-10)
参考文献数
53
被引用文献数
1 1

学習や記憶は,動物が環境に適応するために必要な脳の基本機能といえる。学習・記憶の神経機構の解明は神経行動・生理学分野における重要課題の1つであり,これまでに様々な動物種を用いた研究が進められている。筆者は,行動学や感覚生理学の材料として馴染みのあるフタホシコオロギが,高度な匂い学習・記憶能力を持つことを行動実験的に明らかにした。本稿では筆者の研究によって得られた知見を中心に,コオロギの匂い学習と記憶について紹介する。まずは,古典的条件付けにより匂い学習が容易に成立することを示す。次にコオロギの匂い学習・記憶能力のうち,1)記憶保持能力,2)記憶容量,3)状況依存的学習能力について紹介する。そして,炭酸ガス麻酔処理や薬物の投与によって,コオロギの記憶が性質の異なる4つの記憶の相に分けられることについて述べる。

2 0 0 0 OA 史籍集覧

著者
近藤瓶城 編
出版者
近藤出版部
巻号頁・発行日
vol.第1冊, 1906
著者
新沼 史和
出版者
盛岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本調査によって、ケセン語の「サル表現」のサルの機能が明らかになった。意味的には、自発・状況可能・結果状態という3つの意味を有し、自発が基本的な意味である、ということである。そして、統語的には、サルがMiddle Voiceという機能範疇であり、補部にはいかなる動詞句を要求し、その指定部には、音を持たない内項を要求するということである。この内項により、時には原因項や経験者となり様々な意味を有する、ということが明らかになった。それに加え、ar自動詞の特性を検討し、ar自動詞とサルとの関係が日本語の使役における語彙的使役・統語的使役との関係に対応することが明らかになった。
著者
楠俊雄
雑誌
日皮会誌
巻号頁・発行日
vol.105, 1995
被引用文献数
1
著者
加藤 卓朗
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.157-161, 2009-02-20 (Released:2014-11-28)

室内環境で感染する足白癬は皮膚真菌症の中で最も多く,趾間型,小水疱型,角質増殖型に病型分類される.爪白癬は遠位部の爪甲下が肥厚する病型が多い.診断は直接鏡検で行い,原因菌はTrichophyton rubrumとT. mentagrophytesが多い.イミダゾール系をはじめ複数の外用抗真菌薬があり,内服薬ではテルビナフィン塩酸塩とイトラコナゾールの有効性が高い.感染予防では患者の治療が最も重要である.
著者
光畑 裕正
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.479-487, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
25
被引用文献数
4 5

全身麻酔中に発症するアナフィラキシーは最も重篤な合併症の一つである.麻酔中は常に発症の危険性を念頭に置き,もし発症したら可及的速やかに治療しなければ死に至ることもある.迅速にアナフィラキシーと診断し治療を開始することが救命率を上げる最適な手段である.原因薬物として筋弛緩薬の頻度が最も高い.循環虚脱や重度な気管支痙攣の場合には心肺蘇生に準じた治療が必要である.気道の確保,呼吸の管理,循環の管理(救急蘇生のCAB)を行う.第1選択薬はアドレナリン,酸素,補液であり,ステロイドや抗ヒスタミン薬はあくまで第2選択薬である.アナフィラキシーの機序確認のため最低限度βトリプターゼの測定を行う.

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1920年06月24日, 1920-06-24
著者
千田 有紀
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.91-104, 1999-06-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
32
被引用文献数
6 2

本論文では, 日本の家族社会学の問題構制をあきらかにする。家族社会学そのものをふり返ることは, アメリカにおいては, ロナルド・ハワードのような歴史家の試みが存在しないわけでもない。しかし日本の家族社会学自体が, どのような視座にもとづいて, 何が語られてきたのかという視点から, その知のあり方自体がかえりみられたことは, あまりなかったのではないかと思われる。日本の社会科学において, 家族社会学は特異な位置をしめている。なぜなら, 家族研究は, 戦前・戦後を通じて, 特に戦前において, 日本社会を知るためのてがかりを提供すると考えられ, 生産的に日本独自の理論形成が行われてきた領域だからである。したがって, 日本の家族社会学の知識社会学的検討は, 家族社会学自体をふり返るといった意味を持つだけではなく, ひろく学問知のありかた, 日本の社会科学を再検討することになる。さらに, 家族社会学は, その業績の蓄積にもかかわらず, 通史的な学説史が描かれることが, ほとんど皆無にちかかった領域である。そのことの持つ意味を考えながら, ある視角からではあるが, 家族社会学の理論・学説の布置連関を検討する。

2 0 0 0 OA 樗牛全集

著者
高山樗牛 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
vol.第3巻 文芸及史伝 下巻, 1906
著者
佐藤 健司 小原 秀一 塚口 功 安井 浩一 中田 健 玉井 正彦 小林 芳夫 小塚 隆弘
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.239-244, 1977-03-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

正常な房室大血管関係をもつ両房室弁交叉症(criss-cross heart)の1例を報告する.心室中隔欠損,左肺動脈低形成,動脈管開存を合併していた.特徴ある心血管造影所見を呈し,右下側に形態学的左室,左上側に形態学的右室があり,心室中隔は上下の心室間にほぼ水平方向の陰影欠損として認められ,大動脈は右前方に,肺動脈は左後方に位置し,見かけ上は{S,L,D}であるが心房心室関係および心室大血管関係はいずれも正常で,両房室弁を流れる血流が交叉する両房室弁交叉症となっていた.形態発生学的にbulboventricular loopが心臓長軸を中心にして心基部に向って時計方向に,さらに心臓前後軸の回りに後方からみて時計方向に異常回転した結果と考えられ,Andersonの命名法によれぽ,Solitusconcordant(l-rotated)-normalと表現できる.
著者
田部井 徹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.777, 1982-10-10

ダウン症候群は,G21トリソミーあるいはD/G,G/G転座による常染色体異常に起因し,出生児の0.17%に出現する。本症は満40歳以上の高齢母親から出生する頻度が高く,とくに転座によるダウン症は,転座保有の親から出生しやすいという。主な臨床症状は,蒙古人様顔貌,四指の奇形および精神知能障害などであるが,出生後早期から適切な治療を開始すれば知能低下や精神障害の程度は軽減させることが可能であるといわれている。 現在迄,ダウン症患者の遺伝学的な検討は数多くあるが,生殖機能に関する報告は少ない。男性の患者は,性器の発育不良による性交不能あるいは精子形成障害がみられ受精能力が欠除することが多く,従って本症の男性が父親になったという報告は見当らない1,2)。通常,女性の患者は,初潮が発来し,月経を有することが多いが,妊娠し分娩する頻度は極めて低い3,4)。本症患者は早死する率が高く,結婚する機会が少なく,さらに重症の精神障害や知能低下のため性交が不可能であることが多いためといわれている。
著者
佐藤 清隆
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.179-212, 2006-03

2001年の国税調査によると、イングランド中部の一多民族都市レスターの全人口は約28万人で、エスニック・マイノリティは約10万人(36.1%)である。そのなかでもっとも多い割合を占めているのが、南アジアのインド系の人びとである。約7万2000人(25.7%)である。割合は低いとはいえ、インド系以外に、パキスタン系、バングラディシュ系、ブラック・カリビアン、ブラック・アフリカン、中国系なども住んでいる。宗教人口では、キリスト教が一番多いが、その割合は44.7%とすでに半数を割っている。キリスト教徒以外では、ヒンドゥー、イスラーム、シクの割合が多く、三つの宗教合わせて29.9%である。これらの宗教以外では、数は少ないが、ユダヤ教、ジャイナ教、仏教、ゾロアスター教、バハイ教などを信仰する人びとが住んでいる。
著者
渡辺 美樹
出版者
名古屋大学大学院国際言語文化研究科
雑誌
論集:異文化としての日本
巻号頁・発行日
pp.63-72, 2009-03-01

国際シンポジウム「異文化としての日本」記念論文集(平成20年11月1~2日 : 名古屋大学にて開催)
著者
武政 睦子 出口 佳奈絵
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.71-78, 2016

健全な食生活は健康で豊かな人間性の基礎をなすものである.子どもへの食育を通じて保護者自身 の食育への期待が高まっている.そこで,H 町小学校高学年を対象に食育講座「わくわく早島キッチ ン2014~楽しくおいしくクッキング~」を開講した.参加者14名のうち食行動アンケートが回収でき た9名の子どもとその保護者を対象とした.アンケートは,子ども自身,保護者自身,保護者からみ た子どもについて,回答を得て点数化し評価した.講座前の子どもの食行動の得点数は保護者と差が なく,子どもの食行動は保護者の食行動に依存していることが明らかとなった.しかし,保護者から 見た子どもの食行動の得点数は有意に低かった.講座後では,保護者から見た子どもの食行動の得点 数は有意に増加し.保護者自身も増加傾向にあった.このことより小学生を対象とした食育講座は, 子ども本人だけではなく子どもを通じて保護者の食行動変容が期待できると示唆された. A workshop entitled"Hayashima Happy Kitchen 2014—Fun and Yummy Cooking"was offered to older students at H-Town Elementary School. Parental views of their children's dietary behaviors appeared to be significantly lower than children's views and parents'views of their own behaviors. After workshop participation, however, parental scores of their children's dietary behaviors were significantly improved, and scores of parents'own dietary behaviors also appeared to be rising. Taken together, the findings of this study suggest that dietary workshops for children can help to improve the eating behaviors of children as well as parents.