著者
新井 祐未 石田 裕美 中西 明美 野末 みほ 阿部 彩 山本 妙子 村山 伸子
出版者
日本栄養・食糧学会
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.139-146, 2017 (Released:2017-11-16)

世帯収入別の児童の栄養素等摂取量に対する学校給食の寄与の違いを明らかにすることを目的とし,小学5年生の児童とその保護者を対象に調査を実施した。世帯収入は保護者への質問紙調査,児童の栄養素等摂取量は平日2日と休日2日の計4日間の食事調査(秤量・目安量記録法)により把握した。低収入群と低収入以外群に分け,摂取量および摂取量に占める学校給食の割合について共分散分析により比較した。低収入群は平日より休日に摂取量が有意に少ない栄養素が多く,特に昼食で有意な差が認められる栄養素が多かった。また平日,休日ともにたんぱく質摂取量が有意に少なかった。平日1日あたりの摂取量に占める学校給食の割合には有意な差が認められなかった。休日を含めた4日間の総摂取量に占める学校給食の割合は,たんぱく質,ビタミンA,食塩相当量で有意な差が認められ,いずれも低収入群の割合が低収入以外群の割合より高かった。4日間の摂取量に対する学校給食の寄与は,低収入以外群より低収入群の方が高いことが明らかとなった。
著者
内山 秀彦 木下 愛梨 渕上 真帆 嶺井 毅 川嶋 舟
出版者
東京農業大学
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.192-199, 2014 (Released:2015-03-30)

本研究は,動物との相互関係における人の視覚認知に着目し,視線計測装置を用いて馬を観察した際の人の視線追従(注視部位,注視回数,注視時間)ならびに瞳孔径の変化を定量化した。さらに観察者の性格特性や馬に対する印象と視線との関連性を考察することを目的とした。得られたデータから,人の性格傾向において,外向性が高いほど肢・尻の部位に対し,また神経症傾向が高いほど,首・肩・胸の部位に対する注視回数や注視時間が低かった。特に神経症傾向が高い場合,馬の顔に視線が集まるといった,観察者の性格特性と注視部位に関連が認められた。また馬に対する恐怖感は,馬の外貌の中でも脚部から影響を受けると考えられた。さらに乗馬経験および動物の飼育経験と馬の顔への注視回数・時間に有意な正の相関が認められた。これらの結果から,人が動物との関係をもつ場合,アイコンタクトをはじめとした人同士のコミュニケーション方法を動物に対しても同様に適用していると考えられた。これらの視線解析を中心とした本研究の結果は,馬との相互関係から得られる精神的効果,また現在まで多く報告されている自閉症をはじめとしたコミュニケーションに関する障碍に対する動物介在療法・活動・教育の実施内容を支持するものである。
著者
高橋 正明 相澤 正樹 山村 真弓
出版者
宮城県農業・園芸総合研究所
巻号頁・発行日
no.82, pp.1-6, 2014 (Released:2016-04-13)

水田転作野菜として,作付面積拡大に向けた取組みが求められているタマネギは,加工用を中心として需要が高い。しかし,作業の機械化が進む一方で,収穫期が梅雨時期で安定的な作業体系を組めない,腐敗球の発生が問題となること,乾燥場所が確保出来ないこと等が原因で,本県の生産量は伸び悩んでいる。そこで,植物の病原抵抗性を高める紫外線と簡易な乾燥処理を組み合わせた新たな乾燥処理技術の開発を行った。その結果,収穫後のタマネギに紫外線照射をした場合,腐敗球の発生率が低下した。また,畑で地干しする必要がないため,天候の影響を受けにくく,収穫作業可能日数率が高まった。これらのことから,紫外線を利用したタマネギの乾燥処理技術は,腐敗球発生率の抑制と安定的な収穫作業体系の確立の一助となると考えられる。
著者
瀬見井 純 船越 吾郎
出版者
あいち産業科学技術総合センター企画連携部企画室
巻号頁・発行日
no.4, pp.104-107, 2015 (Released:2016-07-20)

清酒製造用の吟醸香高生産酵母を用いて、温度制御を行いながら長時間パン生地を発酵させた。その結果、吟醸香の主成分の一つであるカプロン酸エチルの濃度が、発酵時間の延長に伴いパン生地中で増加することがわかった。吟醸香を官能的に認識できるパンを作製するため、発酵温度、糖、酵母の配合比率について検討し、発酵条件の最適化を行った。その結果、吟醸香高生産酵母を用いて所定の発酵条件にてパン生地を発酵させることにより、吟醸香様の香りをもつパンを作製できることが明らかとなった。
著者
河野 光久 國森 拓也 馬場 俊典
出版者
山口県水産研究センター
巻号頁・発行日
no.15, pp.35-43, 2018 (Released:2018-06-15)
著者
竹内 芳親 遠山 柾雄
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.22, pp.41-46, 1983 (Released:2011-12-19)
著者
大木 理
出版者
日本植物病理學會
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.3-11, 2001 (Released:2011-12-19)
著者
戸松 誠
出版者
秋田県総合食品研究センター
巻号頁・発行日
no.18, pp.17-20, 2016 (Released:2017-04-28)
著者
加藤 輝 林 茂生
出版者
日本蚕糸学会
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.7-13, 2020 (Released:2020-12-22)
著者
青木 紀
出版者
東北大学農学研究所
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.119-137, 1985 (Released:2011-03-05)
著者
大塚 泰介 山崎 真嗣 西村 洋子
出版者
日本生態学会暫定事務局
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.167-177, 2012 (Released:2013-10-08)

水田の多面的機能は、そこに生息する生物間の相互作用に負うところが大きい。水田にキーストーン捕食者である魚を放流して魚を放流しない水田と比較すれば、対照区つきの隔離水界実験(メソコスム実験)になり、水田の生物間相互作用を解明する上で有効である。水田にカダヤシを放流しても、カに対する抑制効果が見られないことがある。カダヤシはカの幼虫・蛹のほかに、その捕食者や競争者も食べるので、捕食による効果の総和が必ずしもカを減らす方向に働かないためである。メコン川デルタの水田に3種の魚を放し、魚を放さない水田と生物群集を比較した実験では、ミジンコ目が減少し、原生動物とワムシが増加し、水中のクロロフィルa濃度が増加するという結果が得られている。水田にニゴロブナの孵化仔魚を放流した私たちの実験でも、これと類似の結果が得られた。ニゴロブナの後期仔魚および前期稚魚はミジンコ目を選択的に捕食し、ほぼ全滅させた。すると放流区では対照区よりも繊毛虫、ミドリムシなどが多くなった。また放流区では、ミジンコ目の餌サイズに対応する植物プランクトン、細菌、従属栄養性ナノ鞭毛虫などの数も増加した。メコン川デルタと私たちの結果は、ともに典型的なトップダウン栄養カスケードとして説明できる。また、魚の採食活動が、底泥からの栄養塩のくみ上げや底生性藻類の水中への懸濁を引き起こしたことも示唆される。これとは逆に、コイの採食活動によって生じた濁りが、水田の植物プランクトンの生産を抑制したと考えられる事例もある。こうした実験の前提となるのは、魚が強い捕食圧を受けていないことである。魚に対する捕食圧が大きい条件下での水田生物群集の動態は、今後研究すべき課題である。
著者
武田 晃治 和田 薫 砺波 雄介 佐藤 純一 村上 敏文 新村 洋一
出版者
東京農業大学
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.76-83, 2016 (Released:2016-12-15)

本研究は,植物色素が光合成のみならず酸素毒性から細胞や種を守る抗酸化物質としても働いてきたことを,進化的側面から植物色素の存在意義について再考察させるための実験開発と教材開発を行った。実験開発では,過酸化水素と2価鉄から生じる最も酸化力の高いヒドロキシルラジカルによるDNA分解が,植物色素であるアントシアニンにより防ぐことができることを可視化するための最適実験条件を明らかにした。また,高校生を対象とした授業実践から,本実験教材を用いた授業の教育効果を検証し,高等学校生物への発展的導入について考察を行った。授業実践の事前・事後アンケートの比較の結果,本教材のアントシアニンによる抗酸化能を可視化した実験により,植物色素の抗酸化能について理解しやすい教材であることが明らかとなった。また,授業解説と実験を行うことで,植物色素の抗酸化能が,紫外線や光合成から生じる活性酸素の毒性に対する防御機構として,植物の細胞機能の維持に重要な働きをしていることを,進化的側面から理解させることのできる効果的な教材であることも明らかとなった。よって本研究は,光合成以外の働きとして重要な植物色素の抗酸化能に着目した新たな実験としてだけでなく,光合成とバイオテクノロジーで学ぶ知識と実験技術を融合したバイオテクノロジーの発展的教材として,生徒に生命進化の観点から植物色素を多面的に理解させるための探究活動として,高校生物への今後の導入が期待された。
著者
横山 理雄
出版者
農林水産技術情報協会
巻号頁・発行日
vol.5, no.10, pp.23-29, 1982 (Released:2011-03-05)
著者
鈴木 絢子 秋山 今日子 西尾 陽平 田丸 精治 亀尾 由紀 中野 仁志 野口 慧多 寺田 豊 下田 宙 鈴木 和男 渡部 孝 吉澤 未来 後藤 慈 佐藤 梓 池辺 祐介 佐藤 宏 前田 健
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-12, 2012 (Released:2014-01-30)

イヌジステンパーウイルス(Canine distemper virus;CDV)は食肉目動物に致死的な感染を引き起こす。イヌでの致死的な感染はワクチン接種により減少しているが,野生動物での流行は拡大している傾向さえ見受けられる。更には,中国ではヒトと同じ霊長類であるサルに流行し,多くのサルが犠牲となったばかりか,国内の検疫所でも見つかっている。本項では最近国内の野生動物で発生した事例を中心に紹介する。
著者
南 峰夫 豊田 美和子 井上 匡 根本 和洋 氏原 暉男
出版者
信州大学農学部
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.45-49, 1998 (Released:2011-03-05)

トウガラシ果実中の辛味成分であるカプサイシノイド含量の経時的変化を明らかにするために,C.annuumとC.frutescens-chinense complexの各2系統を供試し,開花後20日おきに果実を収穫し,カプサイシノイド含量を測定した。開花後20日目からカプサイシノイド3成分(capsaicin,dihydrocapsaicin,nordihydrocapsaicin)が検出され,含量の系統間差,種間差が認められた。登熟ステージ(開花後日数)により含量は大きく変化し,経時的変化のパターンには系統間差が認められた。したがって,カプサイシノイド含量の評価にあたっては,果実の登熟ステージのばらつきを考慮した果実サンプリング法が必要と考えられた。また,いずれの系統も果実の成熟期とは無関係に開花後40日目前後に最大含量を示したことから,カプサイシノイド含量の最大値を評価するためには,開花後40日目頃の果実を収穫,測定することが必要と結論した。カプサイシノイド3成分の組成比に系統間差がみられたが,登熟ステージによる変化は認められなかった。
著者
池田 勇
出版者
園藝學會
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.39-45, 1985 (Released:2011-03-05)
著者
亀山 光博
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.35, pp.21-25, 2008 (Released:2011-03-05)
著者
向井 千夏 奥野 誠
出版者
日本哺乳動物卵子学会
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.176-182, 2010 (Released:2011-07-26)

体内受精を行う哺乳類では、精子鞭毛は射精にともない運動を活性化し、雌生殖器官内での受精能獲得時には超活性化と呼ばれる運動を示す。精子は卵に出会うまで、鞭毛運動を維持するためにATPが必須であるとともに、活性化や超活性化の運動変化を引き起こす細胞内シグナル伝達においても、cAMPの生成やタンパク質リン酸化にATPが必要となる。ATPの供給経路としては解糖系と呼吸系の2つがあげられるが、従来、精子の形態やその生産効率からミトコンドリアによる呼吸系が主であると考えられてきた。しかし、近年の研究成果により、鞭毛主部における解糖系によるATP供給が主要な働きをしていることが明らかとなってきた。本稿では、マウスでの知見を中心に、精子の鞭毛運動とシグナル伝達に関わるATP供給について解説する。