著者
永井 良治 金子 秀雄 黒澤 和生
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48102011-48102011, 2013

【はじめに】本学科は2010年より大学関連施設においてクリニカルクラ-クシップ(以下:CCS)を導入している。CCSを導入するにあたり数年前より関連施設の臨床実習指導者(以下:SV)と技術習得のために重要項目を挙げ「見学・模倣・実施」のチェックリストを作成した。CCS導入は、学生がある段階で解決困難な問題が生じるとそこから先には進めなくなり、評価段階だけとなることや、急性期病院では評価のみとなり、理学療法を「実施」する経験が非常にすくない。業務終了後に学生指導に時間がかかり思うように学習効果向上しないことなどが挙げられCCSを導入した。認知領域偏重の指導ではなく、精神運動領域を中心にチェックリストを作成した。チェックリストは検査測定40項目、治療技術40項目の合計80項目からなる。臨床実習は8週間で週1回は教員による学生指導を実施している。今回はSVに対してCCSに関するアンケ-ト調査を実施し現状と問題点ついて報告する。【方法】臨床経験4年目(平均7.8±3.3年)以上の41名を対象とした。臨床経験4~9年目30名(平均6.2±1.9年)、10年目以上11名(平均12.1±2.3年)であった。アンケ-ト内容は1)、従来の実習形態より経験値は高まるか。2)、能動的な学習(積極性)は従来の実習形態と比べ学生の行動変化が感じられるか。3)、技術領域の習得は従来の実習形態より高まるか。4)、患者の不安、リスク、また指導者の不安は軽減しているか。5)、「見学」・「模倣」・「実施」のプロセスから学生の理解度を把握できるか。6)、ケースノートとディスカションを通して学生の理解度が把握できるか。7)、SVと一緒に診療参加することで理学療法全体に関する理解度は高まるか。8)、「見学」・「模倣」・「実施」を繰り返すことで問題解決能力は向上しているか。9)、SVの学生指導の負担は軽減しているか。10)、CCSを支持するかの10項目である。各項目の回答は「そう思わない」「どちらでも言えない」「そう思う」とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には、本研究の目的と方法を文章と口頭にて十分に説明し同意を得た。【結果】CCSの支持は臨床経験10年目以上では72.7%であり、全体では48.8%であった。 10項目において「そう思う」は、1) 53.6%、2) 26.8%、3) 58.5%、4) 39.0%、5) 36.6%、6) 34.1%、7) 56.1%、8) 26.8%、9) 56.1%、10) 48.8%であった。「そう思わない」が「そう思う」より割合が大きい項目は2) 能動的な学習(積極性)は従来の実習形態と比べ学生の行動変化が感じられるか。 6) ケースノートとディスカションを通して学生の理解度が把握できるか。8) 「見学」・「模倣」・「実施」を繰り返すことで、問題解決能力は向上しているか。 以上の3項目であった。臨床経験10年目以上では、1) 100%、2) 36.4%、3) 81.8%、4) 63.7%、5) 72.7%、6) 54.6%、7) 54.6%、8) 27.3%、9) 72.7%、10) 72.7%であった。【考察】CCSの臨床実習形態に変更して2年経過した。現在、当学科では約半数学生が関連施設でCCSの実習と外部施設での実習を経験する。指導体制は各関連施設の方針に従っている。作成したチェックリストの「実施」になる項目数はすべての関連施設で平均75%以上は到達できるものである。教員は「見学」・「模倣」・「実施」のチェック状況とその内容の理解の把握と指導をしている。CCS導入の目的であった経験値の向上、技術領域の習得、理学療法全体に関する理解の向上は「そう思う」の割合が高く有効な臨床実習に進みつつある。また業務時間外の指導がないことでSVの負担軽減にも繫がっている。CCSはSVの経験年数により、捉え方は異なりSVと連携して学生指導方法についてさらに検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】当学科では関連施設においてCCSを実施している。協会の理学療法教育ガイドラインでは、実習形態は学生が主体となって患者を担当する形態を排除し,クリニカル・クラープシップを基本とすることを提言するとしている。協会の方針に従う我々の取り組みが少しでも参考になれば幸いである。今後も方法論について報告していきたい。
著者
福島 悠介 山崎 俊彦 相澤 清晴
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.J255-J261, 2016
被引用文献数
1

本稿では,テレビドラマを対象とし,放送局や時間帯といった基本的な情報に加え,出演する役者や関わったスタッフ,そして役者の話題性を用いた視聴率の予測を行う.ドラマの映像や音声は用いず,放送前に得られる情報のみから視聴率を予測すること,そして視聴率に影響を与える要因を明らかにすることが目的である.我々の作成した678本のドラマからなるデータセットに対して,サポートベクター回帰とランダムフォレストの二つのモデルを適用し,初回視聴率の予測を行った.実際の視聴率と予測した視聴率との相関は<i>r</i>=0.843と高い値,平均絶対誤差は1.93%と小さいことを確認した.また,ドラマに関わる各要素のうち,特に視聴率に強く影響する要因とその影響の度合いを明らかにすると共に,本手法がうまく働く場合と働かない場合に関して具体的なドラマ名を挙げた考察を行った.
著者
小関 友宏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】当法人リハ部門は104名在籍し,回復期リハ病棟における卒後5年以下の職員は,平成23年度では回復期リハ職員全体の69%,24年度では73%を占め,卒後教育が課題であった。この経緯を踏まえ,ISOなどで利用されるPDCAサイクルを適用し,25年度にリハ部内に教育課設立委員会を設置し,1年間かけて計画を行い,26年度に各課から独立した形で教育課が設立された。教育課の役割は,「卒後3年までの新人教育」,「プリセプター制度の管理」,「卒後4年以降の生涯教育」,「渉外業務」の4つに集約される。「卒後3年までの新人教育」では,社会スキル,知識スキル,技術スキル,研究スキルの4つのスキルに力を注ぐことで,リハビリテーション医療を理解し,他職種とのコミュニケーションが行え,社会人・医療人として相応しい人間性を確立させ,急性期・回復期・生活期のどの生活ステージにも対応できる育成を基礎としている。「プリセプター制度の管理」では,技術・臨床姿勢向上に向け,病棟巡回や治療介入を実施している。また,技能評価シートやフィードバックシートを導入し,定期的に自己・他者評価を実施し,コミュニケーションを密に取る仕組みとしている。「卒後4年以降の生涯教育」では,研究班による臨床研究活動を行っている。今回,1年の実践を経て,アンケートを行うことで確認評価し,教育システムについて,知見を得ることができたため報告する。【方法】リハ部の全職員92名を対象にアンケートを実施した。質問内容は,「新人教育」,「プリセプター制度」,「卒後4年以降の生涯教育」,「渉外業務」の有益性を調査した。回答は1~5段階評価(有益ではない~有益である)を用い,各項目には自由記載欄を設け詳細な理由を記述させた。新人教育を受けた職員にはそれに加えて「実際に受けてどうであったか」を調査,回答は1~5段階評価を用い,自由記載欄を設けた。各質問項目に対し4段階(まずまず有益である)以上の回答を肯定回答して集計し,自由記載欄はKJ法を用いて分類分析した。【結果】回答に欠損がないものを対象とし,回答率は93%であった。「新人教育」では,肯定回答率は82%であり,実際に受けている職員の評価も89%であった。「プリセプター制度」では肯定回答率は84%であり,実際に受けているプリセプティの評価も89%であった。「卒後4年以降の生涯教育」では83%,「渉外業務」では84%であった。【結論】新人教育やプリセプター制度では,相談する人が決まっていること,助言を受けやすい仕組みがあることによる安心感が高く評価されていた。生涯教育では,「業務時間外の活動であるため負担に感じる」という意見がある一方で,「勉強会や活動は多いけど,これだけ人数がいれば仕方ない」と意見もまた多かった。総じて,教育システムへの受け入れはよく,今回の意見を参考にし,より良いシステムにしていきたいと考える。
著者
鴻野弘明 山本知典 上原雄貴 武田圭史 村井純
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.645-647, 2012-03-06

近年の情報爆発に伴い,多様な情報から適切な情報を解析抽出することにより新しい情報の価値を見出す研究が行われ ている.しかし大学などの教育機関においては,生徒の目的に応じて効率的な授業の履修選択ができないなど,未だ十分に活用できていないことが問題となっている.そこで本研究では,協調フィルタリングとコンテンツベースフィルタリングを組み合わせることで,ユーザに応じた効率的な授業履修を実現する手法およびシステムを提案する.本システムは大学の学事システムと連携することによって,履修履歴データを取得解析することで,科目の分類,難易度により,授業のレコメンドを行う.本手法を実際にユーザに提供することによって効率的に授業をレコメンドできることを示した.
著者
堀越 力
出版者
湘南工科大学
雑誌
湘南工科大学紀要 (ISSN:09192549)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.65-73, 2015-03-31

Google Glassの発表をきっかけに,近年,急速にウェアラブルデバイスへの期待が高まっている。ウェアラブルデバイスは,十年以上前から存在していたが,技術の進歩により,近年,漸く日常で使えるようなデバイスの可能性が見えてきた。本稿では,ウェアラブルデバイスの現状,各デバイスの特徴並びにその課題を述べ,今後の可能性について言及する。The announcement of Google Glass project has stimulated interest in a wearable device. Although the wearable device existed ten years or more before, they were far from "wearable." However, its possibility of the device can be seen by progress of current technologies, such as display device, wireless network, communication modules and so on. This paper describes the present condition of the wearable devices: the features of each device, and their subjects. And the future possibilities of the devices are discussed.
著者
畠山 久志 林 康史 歌代 哲也
出版者
立正大学経済学会
雑誌
経済学季報 (ISSN:02883457)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-32, 2015-08

1996 年に第二次橋本内閣が発足直後,抜本的な金融制度改革,いわゆる日本版金融ビッグバンを実施した.その金融制度改革の施策の一つに外国為替取引の完全自由化という規制撤廃があった.外国為替管理の自由化によって為銀主義が廃されたために,現在では一般にFX取引と呼ばれる外国為替証拠金取引が誕生した.外国為替証拠金取引に関しては,規制する業法もないため,監督官庁もなく,通常の民法や商法などの一般法によるルールがあるのみといった,ほとんど規制のない状態で取引が自由に行えるようになった.外国為替証拠金取引は,レバレッジを用いて取引が行われ,また,差金決済が可能であるため,取引によっては多額の利得を得ることもあるが,過大な損失を被ることもある金融商品である.法律の不存在の結果,外国為替証拠金取引の商品特性の説明が不十分であったり,顧客も特性を理解しないまま取引が行われたりし,不公正な取引が行われることもあり,社会問題化し,また,訴訟にも発展した.こうした事態を受けて政府は規制を行うこととし,外国為替証拠金取引は先物取引と整理され,改正金融先物取引法で規制が行われることとなった.外国為替証拠金取引業者は金融庁に登録が義務付けられ,参入規制や,商品説明義務や不招請勧誘などの行為規制などが課され,顧客保護に一定の効果があった.しかし,リーマン・ショックが起こり,外国為替証拠金取引業者が破綻し,顧客に損害が及んだケースもあった.そのため,取引証拠金の区分管理を徹底し,ロスカット・ルールを定め,証拠金のレバレッジ規制を導入した.取引証拠金の区分管理やロスカット・ルールは,外国為替証拠金取引に本来的に不可欠なものであり,適切な規則であるものの,商品性の本質にかかわるものではない.一方,レバレッジ規制は,商品の効率性,魅力に係る本質そのものを制限するものであり,単なる業者規制,行為規制に止まらない.こうした商品の本質そのものに係る制限は,日本版ビッグバンが目指した金融制度改革の規制緩和,自由化に逆行するものと評価される.本稿は,外国為替証拠金取引を外国為替制度の規制緩和の流れのなかで位置づけて史的展開を述べ,市場・取引と法が相互依存・経路依存であることを認めたうえで,その取引に係る諸規制,就中,レバレッジ規制について検討するものである.This paper describes the development of foreign exchange margin trading within the history of the Japanese foreign exchange system and discusses regulations concerning foreign exchange margin trading, especially leverage regulation, with the recognition that the market/trading and law have a mutually dependent relationship. Soon after the second Hashimoto Cabinet was formed in 1996, the government carried out a radical financial system reform called the Japanese Big Bang, which was similar to the British Big Bang financial reform 1986. One of the measures taken was the complete liberalization of foreign exchange transactions. Due to the liberalization of Japanese foreign exchange control, which abolished a rule that foreign exchange trading had to be conducted with a registered bank, foreign exchange margin trading (commonly called FX dealings) was then introduced. After the liberalization, there was no law or supervisory authority to directly overlook foreign exchange margin trading. Only general regulations of Japanese Civil Code and the Commercial Law were still applied. Foreign exchange margin trading allows investors to trade large positions, which are many times the size of principles by the leverage of borrowed money. This is how foreign exchange margin trading could generate much larger profits or much larger losses compared to regular trading. The absence of regulation led to insufficient explanation of products by salespersons and many investors did not fully understand the products, resulting in unjust transactions. Many troubles arose and such activities developed into lawsuits and social problems. In response to this situation, the Japanese government decided to regulate foreign exchange margin trading. The new regulation categorized foreign exchange margin trading as futures trading and brought it under control with the revised Financial Futures Trading Act. Under the new rule, foreign exchange margin trading operators were required to register with the Financial Services Agency. The Financial Futures Trading Act also introduced entrance restrictions and behavior regulation, including the obligation of clear product explanation and the prohibition of uninvited solicitation. Those contributed to investor protection to some degree. However, the Lehman shock occurred, resulting in bankruptcy of foreign exchange operators and their clients' losses. Therefore, stricter rules on the classification management of margin, the loss cut rule, and the new leverage regulation were introduced. Although the classification management of margin and a loss cut rule are essentially indispensable to foreign exchange margin trading and appropriate rules, they do not influence the essence of financial products. On the other hand, leverage regulation is not exclusive to regulation of operators and their behavior as it restricts the effi ciency of products and harms the essence and attractiveness of margin trading. Evaluated in this paper are the restrictions concerning the essence of financial products themselves under the deregulation and liberalization of the financial system, which the Japanese Big Bang aimed to achieve. Note: This paper is the first of two parts, the next of which will appear in the autumn issue of this journal.
著者
藤崎 辰夫
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
防蝕技術 (ISSN:00109355)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.517-518, 1961
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.856, pp.58-60, 2014-03-20

一般的な為替取引では、インターバンク市場に参加する銀行間の相対取引を通じて価格が決まる。仮に価格差があっても裁定取引を通じてすぐに埋まるため、価格操作の余地は小さい。 一方ビットコインは、2009年に登場したばかりで、価格決定のプロセスに不透…
著者
天願 俊穂 中須 昭雄 村上 隆啓 安元 浩 八幡 浩信 本竹 秀光
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.11, pp.2778-2781, 2012

症例は55歳,男性.道路横断中にはねられ受傷し当院救急センターに搬送された.受診時はショックバイタルで意識障害を伴っていた.精査にて頭蓋骨骨折,下顎骨骨折,胸椎横突起骨折,多発肋骨骨折,胸部大動脈損傷,両側肺挫傷,右気胸,肝損傷,腹腔内出血,骨盤骨折を認めた.造影CTにて恥骨後面に造影剤の漏出像認めたため経カテーテル動脈塞栓術を行った.同時に大動脈損傷に対するステントグラフト留置術も施行した.術後,脳の高次機能障害は残存したが歩行できるまで回復し,さらなるリハビリテーション行うために転院した.術後,約6カ月後の胸部造影CT検査にてステント留置部位の異常は認めておらず脳損傷や肺挫傷,骨盤骨折を合併した大動脈損傷の治療法として有用であることが示唆された.
著者
西山 知佐
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E3O1166-E3O1166, 2010

【目的】リハビリテーション(以下リハとする)医療における今後の展開として、訪問リハサービスの提供量を増やし、かつ質も高めることで国民により認知されるよう働きかける動きがある。一方で鍼灸マッサージ師等が訪問マッサージを行っているが、なかには「訪問リハビリマッサージ」と称して機能訓練も行う業者も存在する。介護保険制度においては利用者本位の観点から必要でかつ適切な介護サービスが選択できることが理念の一つとして謳われている。我々現場で携わる者としては質の良いサービスを提供しないと利用を中止され、さもないと経営面にも大きく影響する場合もある。このような状況下にありながらも、どの程度サービスを利用されているのか実態を調査した文献はなかった。そこで訪問リハと訪問マッサージの併用利用について調査し、現状を把握することを目的とした。<BR><BR>【方法】対象者は平成20年10月から21年9月までの間で当院理学療法士(以下PTとする)が提供する訪問リハを1か月以上利用した76名とした。サービス利用状況は調査期間内の対象者のサービス提供票から集計した。必要に応じて担当PTやケアマネージャー、利用者およびその家族からの情報を参考にした。さらに愛知県介護サービス情報公表センター、社団法人愛知県鍼灸マッサージ師会のホームページを参考に、当院が存在する名古屋市南区および隣接する5区の資源の分布状況を調査した。<BR><BR>【説明と同意】訪問リハ開始にあたって契約時に個人情報の取り扱いについて説明を行い、文書で同意を得た。個人情報取り扱いに関する院内規定に則り実施した。この中には質の向上のための研究が使用目的の一つに挙げられている。<BR><BR>【結果】対象者76名のうち訪問マッサージを利用しているのは10名、過去に利用していたのは3名、加えて接骨院等へ通っているのは2名であった。うち訪問マッサージを利用した13名の介護度は要介護2が3名、要介護3が1名、要介護4が2名、要介護5が7名であった。該当する利用者の障害像は要介護2、3の場合は疼痛が強く日常生活に何らかの支障を来していた。ADLのほとんどは自立もしくは一部介助レベルであるが、外出は諸々の事情により困難であった。一方要介護4、5の場合は関節可動域制限や疼痛のあるケースがほとんどであり、寝たきりでおおむね全面的に介助が必要な状態であった。訪問マッサージ利用者が他に利用している介護保険サービスとその人数は訪問介護8名、訪問入浴6名、訪問看護9名、通所介護2名、通所リハ1名、短期入所3名であった。当院が存在する名古屋市南区および隣接する5区のサービスの分布状況は訪問リハが11箇所、リハを提供している訪問看護ステーションが15箇所であった。また従事者数は訪問リハのPT38名、訪問看護ステーションのPT24名に対して、鍼灸マッサージ師会の登録者は164名であった。<BR><BR>【考察】今回当院訪問リハ利用者の中における訪問マッサージ利用者の割合は19.7%であったが、他事業所との比較については言及できない。あくまで当院利用者における傾向を知るものであり、この研究の限界である。また資源の分布状況についても公表されているデータを用いたため、妥当性に欠けるところがある。ある文献にて「近隣に訪問リハサービスがなかったため、訪問マッサージを導入した」という報告が散見されたが、当院近隣の状況はこれとは違い決してサービス量は少なくない。だが訪問リハに従事しているPTよりも鍼灸マッサージ師の方が圧倒的に多く、提供できるサービス量の上でも後者の方が多いと思われた。しかし単純に量だけでなく、併用しているケースが存在することを考えるとリハとマッサージを使い分けて利用していることが示唆された。その背景として訪問マッサージは医療保険を使用できること、訪問リハよりも自己負担が少ないこと、ケアマネージャーの中で「リハは運動、マッサージはリラクゼーション」というイメージを持っていることが挙げられる。特に要介護4、5の利用者は利用限度枠近くまでサービスを利用しており、それに伴い経済的負担も大きく困っている利用者も少なくなかった。さらに関節拘縮予防の目的で短時間でもよいので運動頻度を増やしたい思いが利用者の中にあり、訪問マッサージも導入したのではないかと考えられた。またこれ以外のケースにおいては疼痛緩和やリラクゼーションの目的でマッサージを選択し、リハは運動や生活指導の目的で利用していると考えられた。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】今後PTの職域の拡大を目指し、PTをはじめ多くの人々が努力している。さらなる発展のためには我々の置かれている現状とそれを取り巻く周囲の様子を把握しておく必要があると考える。
著者
石島 悌 平松 初珠 林 治鄙 池添 竜也 恩地 拓己 三瓶明希夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.93, pp.55-60, 2007-09-21
参考文献数
5

迷惑メール対策において大切なことは,単に迷惑メールの排除を図ることだけではなく,見落としてはならないメールを確実に配送することである.また,さほど大きくない組織においては,その対策にかける人的・時間的コストを下げることも非常に重要である.大阪府立産業技術総合研究所では,業務時間外にのみ greylisting を適用し,throttling を併用することによって,迷惑メールの排除を試みるとともに,対策のメンテナンスフリー化を実現した本稿では,配送ログの解析とメール利用者に対するアンケート調査から得られた,本対策手法の有用性を報告する。さらに,大学の研究室に配置されたメールサーバにおける本対策手法の効果を報告する.In controlling spam mails, it is important not only to reduce spam mails, but also to deliver non-spam mails. It is also important to lower the cost in small and medium enterprises. The anti-spam method using greylisting only after working hours and throttling was implement ed at Technology Research Institute of Osaka Prefecture. And we tried to reduce spam mails without maintenance of white list and database. In this paper, we describe the usefullness of this method from questionnaire survey and mail log analysis. After that, we report the result that we tried to reduce spam mails in the university laboratory with this method.
著者
竹山 和宏 橋場 悠一 武隈 智子 常田 衛 宝泉 百合香 笹原 英希
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100538-48100538, 2013

【はじめに、目的】 バランスト・スコアカード(以下、BSC)とは財務、顧客、学習・成長、業務プロセス、という4つの視点から企業活動全体を把握する経営管理手法であり、近年、病院で導入し業績が改善されたとの報告も多くされている。しかし、介護老人保健施設での報告は少ない。今回、BSC導入後の結果と今後の課題を報告する。【方法】 以前より経営管理手法の必要性は十分に認識していたが、知識不足もありリハビリ部門のマネジメントは戦略的に行われていなかった。そのため、効率的なマネジメントや業務内容の改善を図るために平成23年4月よりBSCを導入した。年度初めに、財務の視点など4つの視点においての目標、成果指標、実施内容、及び年間事業計画を立案した。まずは、リハビリ職員全員でリハビリ部門の理念を明文化し施設内に掲示した。月一回の会議(約30分間)ではADLの改善率(新規短期集中リハ加算者のうち、初期評価時と3ヶ月後のBarthel index:BIの値を比較し改善した者の割合)等の成果指標や実施状況等について確認を行った。内部研修は年間事業計画に基づき業務時間外に45分間実施した(自由参加)。アンケート調査として、リハビリ職員5名に対して無記名・5段階方式での職員満足度調査を行った。 なお、利用者に対する満足度調査は、毎年1回実施している支援相談員が行った調査を活用した。平成24年3月に総括を行い、その結果に基づき新たな目標設定、事業計画の立案を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の報告にあたり、入善老人保健施設こぶしの庭、施設長、米澤高明の承認を得た。【結果】 前年度と比較が可能であった成果指標は、(1)財務の視点は、リハビリ総収益(45%増加)新規短期集中リハ算定者数(30%増加)であった。(2) 顧客の視点は、リハビリに対しての利用者(入所者)の満足度64%(3%増加)、通所リハビリの内容について「良い」と回答した者の割合30%(4%増加)であった。 (3) 学習・成長の視点は、内部勉強会回数14回(17%増加)外部研修への参加数7回(37%減少)、学会発表(東海北陸理学療法学術大会1名)、個人の目標設定2回(維持)、関連資格取得名1項目(認定理学療法士取得1名)であった。ADLテスト(BI)改善率は、16%(前年度は五ヵ月分の値16.5%)であった。(4)業務の視点は、在宅復帰率20%(6%減少)であった。その他、他職種との情報交換、他職種への具体的なアプローチの提案を実施したが、実績値での比較はできなかった。職場環境に関して、リハビリ職員満足度調査の実施から、職場の雰囲気・人間関係、精神的な不安、仕事の成果、の得点が全国平均と比較し低いことがわかった。そのため、平成24年度の目標・事業計画では、新たに働きやすい職場作りといった目標を掲げ、定期的な面接や職員ストレス調査、疲労蓄積度チェックリストを事業計画として立案した。【考察】 永山は、著書の中でBSCの効果を、財務面、業務面での改善が可能となる。BSCを構築する際に問題及び課題を明確にするため、コミュニケーションが活発になり納得性が得られ組織の意識が変わる(永山、2004)。といった点を指摘している。今回も、財務面での飛躍的な改善が見られた(前年度比45%増加)。これは、成果指標を短期集中リハビリ加算者と明確にしたことで、重点的に20分以上の個別リハビリに取り組めたことや入所担当職員が少ない時は、通所担当職員が協力する等の体制が整ったことが大きかったと考えられる。業務面では、バランス良く詳細に各業務を確認した結果、業務量の偏りや各個人それぞれの課題、メンタルヘルス面での課題を明らかにすることができた。今後は、各種調査や新たな事業計画を実施することで改善を図っていきたい。在宅復帰率が減少したことは、その年の入所者や家族の特性に影響される部分もあると考えられる。また、今回はリハビリ部門のみでのBSC導入であったため、在宅復帰といった明確な目標が施設職員全体に浸透しなかったことも要因と感じている。今後、施設全体のBSCや全老健協会のR4システムを導入することも必要と考えられる。介護老人保健施設では、著明にADLが向上する者は少なく、利用者の機能改善を図るといった点においては仕事の成果が生じにくい。そして、介護職との役割の違いが曖昧になりがちでモチベーションを維持しにくい状況がある。だからこそ、自己の存在意識や役割を明確にする理念の明文化やBSCをマネジメントに取り入れることは大変重要である。【理学療法学研究としての意義】 介護老人保健施設でのリハビリ部門にBSCを導入した事例を報告することで、他施設におけるマネジメントの参考になる。
著者
廣瀬 拓也 田中 満稔 松本 正明 濱田 和俊 尾形 凡生
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.275-282, 2016
被引用文献数
1

軟X線を照射した花粉を受粉してヒュウガナツの無核果形成を誘導する技術の有用性を,慣行法である四倍体の'カンキツ口之津41号'や'西内小夏'花粉の受粉と比較して評価した.ヒュウガナツの慣用受粉樹である'土佐文旦'と,'カンキツ口之津41号'および'西内小夏'の花粉に,500,1,000,2,000 Gyの軟X線照射して実験に用いた.<br>軟X線を照射した花粉の発芽率およびその花粉をネットで花粉遮断した'宿毛小夏'に人工受粉した時の収穫時の着果率は花粉品種にかかわらず照射線量が高くなるにつれ低下する傾向がみられた.完全種子は無照射の'土佐文旦','カンキツ口之津41号'および'西内小夏'花粉の受粉果では,それぞれ23.8個,0.4個および1.5個形成されたが,軟X線照射花粉を受粉すると,ほぼ消失した.種子長10 mmを超える大きな不完全種子も,無照射の'土佐文旦','カンキツ口之津41号'および'西内小夏'花粉の受粉果では1.5個,3.9個および2.3個形成されたが,500 Gyの軟X線照射花粉の受粉果では0.3個,0.2個および0.1個と減少し,1,000 Gy以上の軟X線照射花粉の受粉果では消失した.顕微鏡観察において,無照射の'カンキツ口之津41号'および'西内小夏'花粉を受粉した'ヒュウガナツ'果実では,一部の胚は受粉8週間後にも生存しているのに対して,軟X線照射'土佐文旦'花粉を受粉した'ヒュウガナツ'果実では健全な胚はまったく認められなかったことから,軟X線照射は種子の発達をより強く阻害するものと考えられた.軟X線照射花粉の受粉によりヒュウガナツ収穫果の果実重は小さくなった.ただし,この小果化は,高知県のヒュウガナツ市場で消費者が少核の小さな果実をより好むことから考えれば,果実の価値を大きく損なうものではない.以上の結果より,軟X線照射した花粉を受粉する方法は大きな不完全種子を残さない点において有用なヒュウガナツ無核化生産技術であり,照射線量は500~1,000 Gyが適当である.