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雑誌
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巻号頁・発行日
vol.61, no.7, 2020-06-15
著者
細見 心一 長谷川 美和 辻田 忠弘
出版者
甲南大学
雑誌
甲南大学紀要. 理工学編 (ISSN:13480383)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.59-78, 2005-07-31
被引用文献数
1

本論文は国宝源氏物語絵巻「柏木(二)」の制作当時から現在に至る約900年の間に変化したと思われる絵画の魅力について、現代人の感性(年齢は20代に限定)を使い、自然科学的に追求することを目的とし、SD(Semantic Differential)法による感性的な分析と色彩の観点からの考察を行ったものである。SD法の実験ではAdobe Systems社のPhotoshop7.0.1による画像編集を行い、9枚の実験絵面を用意し、モニターを使い印象評価を行った。用意した実験絵画は原本1枚・修復絵画1枚・復元絵画1枚・モーフイングによる合成絵画6枚である。また、日本人の心の中にある美についての評価軸を決定するために、源氏物語絵巻以外の国宝絵画20枚によるSD法実験を行った。さらに、和紙やろうそくの効果について調べるため、原本・修復絵画・復元絵画を和紙に印刷しSD法実験を行った。次に、色彩の観点からの考察では国宝源氏物語絵巻「柏木(二)」が約900年の間にどのように変化したかを調べるため、復元絵画と原本について色差・配色・CMYKの分析と考察を行った。SD法の分析を行った結果、「柏木(二)」の復元絵画では極彩色で雅やかな美を、原本ではわび・さび・幽玄のある美を被験者が感じていることがわかった。さらに、この絵画についている傷・ムラのある変色・絵具の剥落がこの絵画を見る者の想像力をかきたて、わび・さび・幽玄の印象をさらに出していることを定量的に分析した。また、色彩分析の結果から、「柏木(二)」は時が経つごとに、絵の具が色あせることなく、より明度の低い暗い色に変わり、そして幽かに残る制作当時に近い色と変色が進んだ色が混在することにより、元の極彩色で雅やかだった状態や時の流れを想像させるのではないかと考えられる。つまり、時の経過とともに失われていく極彩色で雅やかだった印象やその歴史を想像させる傷、ムラのある変色・絵具の剥落の効果プラス、絵の具が色あせることなく、より明度の低い暗い色で青の無いまとまった配色になるという色彩の変化により、この絵画を見るものを静かに引き込んでいくようなわび・さび・幽玄のある美へと「柏木(二)」が変化したことを定量的に分析することができた。
著者
結城 祥
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.66-76, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
26

わが国のアパレル業界においては,需要不確実性と在庫リスクを吸収すべく,期中生産・期中企画(シーズン中の追加的な発注・企画)が推進されている。果たして,こうした取り組みは不良在庫の削減に寄与しているのであろうか。この問いに実証的な回答を与えることが,本論の目的である。アパレル・メーカーから得られたサーベイ・データを分析した結果,①期中生産は不良在庫の削減に貢献すること,②期中企画は,小売段階を外部化した状況でそれを実施すると不良在庫が増大し,小売段階の一部あるいは全てを統合している場合でも在庫削減効果を持たないことが見出された。期中企画を実施する際には,小売段階をどの程度コントロール可能か,追加企画製品の生産・発注量の意思決定精度を高水準に保つ能力が備わっているか,という点に留意する必要がある。
著者
小林 恵理 萩野 浩
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-28, 2020 (Released:2020-02-28)
参考文献数
35

〔目的〕変形性膝関節症(osteoarthritis of the knee:膝OA)患者の足部形態を調査し,転倒発生との関連を検討することである.〔対象と方法〕対象:一次性膝OAに対する手術目的で入院した40歳以上の女性患者30名.方法:手術前日に転倒歴の聴取,自己記入式アンケート調査,足部形態評価,歩行分析,運動機能評価を実施した.〔結果〕手術適応のある膝OA患者において,舟状骨沈降度(navicular dropping test:NDT)が転倒リスク因子として挙げられた.〔結語〕手術適応のある膝OA患者において,足部の機能訓練やテーピング,足底挿板療法などを用いた物理療法など,足部へ介入することは,患者の転倒を予防する可能性があると考える.
著者
熊谷 良雄 糸井川 栄一 金 賢珠 福田 裕恵 雨谷 和弘
出版者
東京都立大学
雑誌
総合都市研究. 特別号 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.123-143, 1996-12
被引用文献数
2

平成7年1月17日未明に発生した「平成7年(1995年)兵庫県南部地震」は、未曾有の構造物被害をもたらし、長期間にわたって発生した火災ともあいまって、5,500人以上の直接的な死亡者を発生させた。また、地震発生直後からの応急対応が体系的に実施されなかったこと等によって、900人以上にも及ぶいわゆる震災関連死をもたらす「阪神・淡路大震災」に発展していった(平成8年12月26日現在、死者数:6,425名,行方不明者数:2名)。22ヵ月を経過した平成8年11月時点で兵庫県下では、11万3千棟の公費解体数の約70%にあたる建築確認申請が受理され、遅々としたペースではあるが被災建物の再建が進みつつある。しかし、建物個々の耐災性に関する調査や提言はなされているものの、地区そのものが本来抱えている脆弱性、たとえば、地形・地質と被災度等の分析は、それほど多くはない。今後の被災地域の復興や被災地域外での防災対策立案にあたって、個々の被害項目を対象とした被害発生分析: Damage Assessmentは必須のものである。阪神・淡路大震災によってもたらされた膨大な人的被害についても、死因に関する分析や個々人の死に至った過程に関する分析はなされているものの、自然的・社会的な地区特性等との関連については被害量の膨大さに圧倒され、いまだに被災地域全体を横断的にとらえた検討はなされていない。そこで、本研究でははじめに、建設省建築研究所のGIS: 地理情報システムを用いて個々の建物被災度と死亡者発生の関連を分析する。それを踏まえて、地区特性と死亡者発生率との関連を、神戸市の沿岸6区の町通単位で分析する。本研究が、震動によって直接的に犠牲となった5,500人以上の方々を慰霊できれば望外の幸せであり、また、二度とこのような犠牲が出ない都市・地域を形成することに役立てば、と願っている。More than six thousands lives were lost in the Great Hanshin-Awaji Earthquake. Around 90% of the causes of deaths were related to housing damages such as completely collapsed and burnt down. In this study,firstly,we try to clarify the relations of each victim to damage,use and structure of building which was living the victim before the quake. The geographical information system in the Building Research Institute was utilised for this analysis. Secondery,as part of the damage assessment of the Great Hanshin-Awaji Earthquake,the fatality rate in each district (Chou and Touri) in Kobe City was analysed through building damage rate caused by the quake and demographic and socio-economical backgrounds in each district. Several conclusions are as follows: 1) The fatality rate of female was 20-30% as high as male. 2) 90% of building where fatalities used to live before the quake are low-rise buildings. 3) In low-rise detached and apartment houses,80% of fatalities were killed in completely and half collapsed buildings. 4) When the rate of completely collapsed buildings increase 10%,number of death per total number of building will increase 0.05-0.06 person/bldgs. 5) The fatality rate in each district depends not only on the building damage rate but also on the ground failure of residential land. 6) Concentration of small residential houses contribute to decreasing of the fatality rate.
著者
伊藤 守
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.21-43, 2016-07-31 (Released:2017-10-06)
参考文献数
60

The spread of digital media has produced a new social realm, so that everyone can freely exchange information. In this paper, I will try to investigate how the digital media could change and create a new deliberative realm. This paper emphasizes the necessity for bringing the social and the substantial features of the realm together in order to grasp the transformation of the discourse space. In other words, the focus of analysis is the structural change in the material and social system of circulated information. This change has two sides. The first one is the expansion of controlling the discourse space and social communication processes through that space. On the contrary, the second one could include an impossibility to control any of them. The transformation of the space of discourse in social communication processes which was made by digital media has a historical significance. The reason is that it creates “an appearance” of space, which Hanna Arendt pointed out in her book - “The Human Condition” -. However, it might also bring the possibility of creating another phenomenon, an infection of feeling and contagion of affect. It is a process of activating affects. Finally, this paper suggests that more research is needed to investigate the factors of affection and time to be able to grasp the singularities and transformation of the space of discourse.
著者
古屋 正貴 剱持 苗子 檀上 圭司 ウンア ジョン
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成22年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.8, 2010 (Released:2011-03-03)

北海道の鉱山から産出したロードクロサイトは、日本から産出する数少ない宝石の一つである。北海道古平郡古平町稲倉石鉱山はマンガンの採掘を目的に昭和59年まで稼働していた。ロードクロサイトはそのマンガン鉱石の副産物として産出していたものであった。しかし、海外からのマンガンの鉱石の輸入に押され、鉱山は閉山してしまい、ロードクロサイトの産出もなくなってしまった。現在、マンガン鉱山が稼働していた頃に産出されたものが流通している状況である。 一般にロードクロサイトには、ファセットカットにもされる透明石と、カボションカットにされる半透明石がある。前者では世界最大の結晶を産出するアメリカのコロラド産が有名であり、後者ではインカ・ローズの別名に用いられているようにアルゼンチン産が有名である。これらを含め、中国、ペルー、ロシア、ブラジル、南アフリカ産のものと北海道産のロードクロサイトを比較した。 MnCO3を成分とするロードクロサイトは、透明度の高いものであると蛍光X線成分分析機ではMnOしか検出されないものもあるが、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などの不純物が検出されるものもある。また、北海道のものを始め、半透明のものでは不純物も多く検出される。それら不純物の含有量や割合を元に産地ごとの特性を調べてみた結果、北海道産について他の産地より、マンガン量が少ない、鉄分が多い、亜鉛は少なく、マグネシウムは少なく、カルシウムは多いなどの特徴が見られた。 また、紫外・可視分光スペクトルや、FT-IRなどのスペクトルにも特徴が見られたので、それについても合わせて報告したい。
著者
南川 敦宣 横山 浩之 Minamikawa Atsunori Yokoyama Hiroyuki
雑誌
データマイニングと統計数理研究会(第 12 回)

In this paper, we propose egogram estimation method from weblog text data. Egogram is one of the personality models which illustrate the ego states of the users. In our method, the features which is appropriate for egogram are selected using the information gain of the each word which is contained in weblog text, and estimation is performed by Multinomial Naïve Bayes classifiers. We evaluate our method in some classification scenario and show its effectiveness.
著者
鈴木 仁之 田中 啓三 金光 真治 徳井 俊也
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.764-767, 2006-07-15 (Released:2008-03-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1 2

Basedow病に胸腺過形成が合併する原因については,いまだ明らかにはされていないが,甲状腺機能亢進症により二次的に胸腺過形成が生じるという説や,ある種の免疫機構の関与を示唆する説がある.今回我々は,Basedow病に合併した胸腺過形成の2例を経験したので報告する.1例は甲状腺機能亢進症の遷延と,胸腺については腫瘍性病変の存在が否定できなかったために,甲状腺亜全摘と胸腺摘出術が施行された.もう1例では甲状腺機能は徐々に正常化したが,腫瘍の縮小を認めないため,生検が施行された.2例とも腫瘍性病変は認めず,胸腺過形成と診断された.しかし組織学的にはリンパ様過形成と真性過形成との違いが確認され,両者における胸腺過形成の背景因子ないし発生メカニズムの違いが示唆された.