著者
猪口 達也 後藤 大二郎 和田 一郎
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.229-242, 2018-11-30 (Released:2018-12-05)
参考文献数
12

本研究では, 主体的な学習を高める鍵となり得るメタ認知概念について, 社会性を加味した概念へと拡張し, それらの機能によって理科における資質・能力の育成に関わる問題解決活動の充実を図ることを目指した。具体的には, メタ認知概念の拡張に関して, Chiu & Kuo(2009)が提起した「社会的メタ認知(social metacognition)」の機能によってもたらされる5つの利益を援用し, 理科学習における問題解決活動の質の向上に関わる利益として捉え直した。その上で, それらの機能が問題解決活動にもたらす利益と併せて促進すると考えられる, 個人内メタ認知の活性化と科学概念構築の成立過程について, 小学校理科を事例に検討した。事例的分析の結果から, 社会的メタ認知の機能によってもたらされる5つの利益から, 問題解決活動の質の向上を捉えることが可能になった。さらに, 社会的メタ認知を通じた個人内メタ認知の機能の活性化が, 科学概念構築に寄与することが明らかになった。
著者
佐藤 健二 池永 満生 佐藤 吉昭 喜多野 征夫 佐野 栄春
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.9, pp.963, 1985 (Released:2014-08-20)

色素性乾皮症(XP)患者を太陽紫外線から保護する方法を検討した.A群XP患者の皮膚における紫外線紅斑の作用波長は,中波長紫外線のみならず340nmにまで及ぶことが知られている.この波長域の紫外線を効率よく遮断することを目的として種々の素材を調べた.その結果,服の生地では軽くて蒸気をよく通すハイレークエレット(太糸)があり,これを用いた衣服にフードを付け,フードの前にボンセットやUVC-400(農業用紫外線遮断フィルム)を垂らすと外出が可能となる.また,窓ガラスを透過した太陽光線には上記波長域の紫外線が含まれているが,窓ガラスに,スコッチティントP-70,ガラステクト,サーモラックスTF-100,サンマイルドCL-クリアーなどを貼ればこれを除くことができる.室内照明には,紫外線を含まない退色防止用蛍光ランプがある.これらの方法により,XP患者は,日常生活において,日焼けとそれにもとづく種々の皮膚障害を防ぐことができる.
著者
逓信省工務局 編
出版者
逓信協会
巻号頁・発行日
vol.昭和11年3月末日現在, 1936
著者
野口 友紀子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.14-23, 2003-11-30 (Released:2018-07-20)

社会事業成立期に防貧事業が多くなされるようになる・これは主として経済保護事業のことを指しており,その対象となるのは従来の研究では低所得者といわれている.しかし,防貧概念が導入された当初は,防貧の対象者は「所得」ではなく「労働能力」でとらえられていた.さらに社会事業成立期には「低所得」という見方だけでなく,「生活」という視点でも把握されていた.その背景には時間の経過によって救済行政当局者が貧困という問題をどのように理解し,そのような問題のうちどの範囲を救済行政の対象としていくのかということを把握する視点の変化がある.防貧という考え方は所得だけでなく,多様なとらえ方があり,救済行政に防貧という枠でこれまでの救貧以外の新たな対象を取り入れる際に,防貧は変容しながらその形を整えていったといえる.
著者
為沢 一弘 小野 志操 佐々木 拓馬 団野 翼 中井 亮佑
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-2_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】小殿筋は股関節の関節包に付着しており、股関節を求心位に保つ役割があるとされている。そのため、股関節疾患を有する患者では、小殿筋の筋攣縮を招き、股関節の可動域制限に繋がることを経験する。我々は、第43回股関節学会にて開排動作に股関節外側の組織の柔軟性が関与する可能性を報告した。今回、我々は実際に小殿筋の組織弾性が低い例では、股関節のどの可動域に影響をおよぼすのかを検討した。【方法】対象は、股関節に既往のない成人男性12名24股である(平均年齢26.8±4.8歳、身長172.0±4.7cm、体重66.1±4.2kg、BMI22.4±1.2)。測定は、小殿筋の組織弾性と股関節の可動域測定を実施した。組織弾性の測定は、超音波画像診断装置(日立製作所製noblus)のReal-time Tissue Elastography機能を使用した。リニア型プローブを用い、専用アタッチメントと音響カプラを装着して使用した。被験者を安静背臥位とし、股関節中間位における小殿筋の組織弾性を計測した。測定部位の描出は、プローブを大転子前面に当て、短軸走査にて小殿筋の最前方線維を確認した後、長軸走査として筋線維の走行に合わせて近位方向に移動し、腸骨稜の起始部を描出した。測定の関心領域は、小殿筋内で可能な限り広範囲にとった。音響カプラを比較対象の点とし、算出された値を測定値とした。測定は同一検者が計3回行い、平均値を算出して測定値とした。測定値の中央値にて、小殿筋の組織弾性値の高値群と低値群の2群に分けた。股間節の可動域は、日整会の定める可動域の項目に加え屈曲伸展中間位での内外旋およびパトリックテスト肢位での脛骨粗面と床面の距離(以下、KFD)とした。統計学的検討はMann-WhitneyのU検定を用い、2群における各可動域の有意差の有無を比較した。有意水準は5%未満とした。【結果】小殿筋の組織弾性の平均は0.49±0.45、中央値は0.49で、高値群は平均0.48±0.25、低値群は0.59±0.24であった。2群における可動域に優位な差を認めたのは外旋(高値群:47.1±11.4、低値群:35.8.±11.45、p=0.03)、中間位内旋(高値群:37.5±15.59、低値群:24.6.±12.33、P=0.04)、およびKFD(高値群:20.8±3.46、低値群:24.6.±4.12、p=0.03)であった。【結論(考察も含む)】Beckらは股関節屈曲位での外旋および股関節伸展位での内旋にて小殿筋が伸張されると報告している。今回の我々の研究でも同様の結果を示しておりそれを裏付けする形となった。加えて、本研究では組織弾性の低い群では開排動作の可動性も小さいことが示された。開排動作は日本人にとってあぐら動作などで重要な動作である。開排肢位は股関節唇前上方の圧が高まるとされている。開排制限の改善は股関節唇への機械的ストレスを軽減する重要な要素の一つと考えられる。股関節の外旋、中間位内旋および開排動作に制限を有する症例では、小殿筋の柔軟性が十分であるかを確認することが重要であることが考えられた。【倫理的配慮,説明と同意】今回の発表に際して、被検者には研究の趣旨と内容を十分に説明した上で同意を得た。
著者
林 佐和子
出版者
金沢大学人間社会学域経済学類社会言語学演習
雑誌
論文集:金沢大学人間社会学域経済学類社会言語学演習 (ISSN:21886350)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-27, 2016-03-23

映画ポスターは、 映画の内容を伝え、 鑑賞者を惹きつけるための重要な宣伝手段である。 人々の心をつかむ魅力的なポスター、好まれるポスターはその国々によって違うようだ。 海外の映画が日本で公開されるとき、 そのポスターやタイトルはその国の人々がより興味を持つように日 本人好みに変更される。 それは逆に日本の映画が海外へ輸出されるときも同様である。 では、 その[好み」は何に起因しているのだろうか。 本研究では、 日本語らしい日本語、 英語らしい英語があるように、 邦画らしい邦画ポスター、洋画(アメリカ映画)らしい洋画ポスターがあるのではないかという仮説を立てた。 この仮説を検証するために日英の映画ポス ーを比較し、 認知言語学の観点からその特徴を分析する。
著者
今井 健介 三浦 和美 飯田 博之 藤崎 憲治
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.147-154, 2011 (Released:2012-12-03)

クズは日本から北米へ導入されて害草化し、アメリカ合衆国では侵略的外来植物とされている.アメリカにおけるクズの生物的防除に資する目的で、原産国である日本におけるクズの天敵相を調査し、2004年~2005年に近畿地方を中心に行った野外調査と文献調査により48種のクズ食者を確認した.そのうち20種は先行研究で作成された日本産クズ天敵リストに掲載されていない種であった.これらの中で導入可能なクズの単食性天敵と推察されたのは、食性が知られていない3種、エゾコハナコメツキParacardiophorus subaeneus yasudai Ohira、ヨスジヒシウンカReptalus quadricinctus Matsumura、およびコガタヒメアオシャクJodis orientalis Wehrliであった.また、本調査で明らかになった近畿地方のクズ天敵相(41種)と鹿児島市における先行研究の結果(62種)を比較したところ、2地域間の共通種は21種で、天敵相に大きな違いが認められた.同様に、既存の日本産天敵リストと本研究の結果を併せた129種を、先行研究で報告された中国産天敵リストの116種と比較したところ、2国間の共通種は15種でさらに大きな差が認められた.このように調査地点により天敵相が大きく異なることから、気候等の環境条件の異なる多くの地点で探索することが有効な導入天敵の発見につながる可能性が示唆された.しかし、本調査の近畿地方における調査時間と累積発見種数との関係を解析したところ、今回の天敵探索方法による発見種数は飽和に近づいており、今後も天敵の探索を継続するなら、別の地域における調査や別の調査手法の導入が必要と考えられた.
著者
Keisuke Kuwahara Ai Hori Norio Ohmagari Tetsuya Mizoue
出版者
National Center for Global Health and Medicine
雑誌
Global Health & Medicine (ISSN:24349186)
巻号頁・発行日
pp.2020.01041, (Released:2020-04-29)
参考文献数
30
被引用文献数
4

The coronavirus disease 2019 (COVID-19) has spread rapidly across the globe, presenting severe challenges to societies. Gaining a better understanding of patient demographics is essential to develop measures to counteract such spreading. In this context, from a viewpoint of occupational health, we analyzed the publicly available data on patients diagnosed with COVID-19 in Tokyo, which reported the highest number of cases in Japan. A total of 243 cases aged 20 years or older (excluding students) were recorded between January 14 and March 27, 2020. Of 233 cases excluding 10 cases of the first cluster, 162 were men and 176 were of working age (20 to 69 years). Of 203 cases with valid information on employment status, 151 (74%) were workers: 114 employees, 31 self-employed, and 6 medical staff. Of the working patients, the majority were male: 72% in employed and 87% in self-employed. These data suggest the importance of occupational health in controlling the spread of COVID-19. In April 2020, a state of emergency was declared in response to a surge in the number of cases, especially in metropolitan areas. A working schedule associated with lower risks of infection, including telework and flexible working hours, should be rigorously promoted to minimize human-to-human contact. Such policies, along with the implementation of effective measures to protect essential workers from infection, overwork, and stigma, would ensure the smooth running of society amidst the present crisis.
著者
藤原 武弘 黒川 正流
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.53-62, 1981-08-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
24
被引用文献数
3 4

本研究は, 土居健郎によって精神分析的見地から提唱された甘えの計量化をめざしたものである. 研究Iにおいては, 甘えを測定するための一次元尺度構成に関する基礎的資料を得ること, ならびに日本人の対人関係の基本次元を明らかにすることが目的である. 35名の大学生 (男子16名, 女子19名) は, 97の動詞を類似しているものは同一のグループに分類することが求められた. その類似性行列は林の数量化第IV類によって解析が行われた. そして次の8つの群が見出された. 1. 拒絶・無視, 2, 好意・一体感, 3. 優越感, 4. 保護, 5. 相手の気嫌をとること, 6. 甘えられないことによる被害者意識, 7. 負い目, 8. 甘え.研究IIの目的は, いかなる対象に対して, どのような状況のもとで甘えが最も表出されるのかを明らかにすることにある. 286人の大学生 (男子112人, 女子174人) は, 11の困った状況のもとで, 12の対象人物に対する感情を10の甘え尺度で評定することが求められた.主要な結果は次のとおりである.1. 両親よりもむしろ恋人や親友に対する甘えの方がより強くみられた.2. 男性よりも女性の方により多くの甘えがみられた.3. 家庭問題に関する状況では, 両親や兄弟姉妹に対して甘えを最も示し, 個人生活の問題に関するその他の状況では, 恋人や親友に対して甘えを強く表出した.こうした結果は, 甘えとそれに関連する問題についての理論的含みから議論が行われた.
著者
五十嵐 絵美 浜田 純一郎 秋田 恵一 魚水 麻里
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A0007, 2007

【目的】前鋸筋を支配する長胸神経が麻痺し、翼状肩甲骨が生じる事がよく知られている。またこの筋に機能不全が生じると、肩甲骨周囲の痛みや違和感、挙上困難を訴える患者がいる。この研究の目的は、長胸神経を構成する頸椎神経根と長胸神経の走行、前鋸筋の上部・中部・下部筋束の神経支配と形態を調査し、長胸神経麻痺のメカニズムと前鋸筋の機能解剖を明らかにすることである。<BR><BR>【対象と方法】解剖学実習用屍体5体10肩(男性3体、女性2体、平均年齢82.4歳)を対象とした。前鋸筋の上部筋束は、第1, 2肋骨から起始し肩甲骨上角(以下上角)に停止する部位、中部筋束は2, 3肋骨から起始し肩甲骨内側縁に停止する部位、下部筋束は第4肋骨以下に起始し肩甲骨下角(以下下角)に停止する部位とした.長胸神経の走行を頸椎神経根レベルから追跡し、中斜角筋貫通の有無とその末梢の神経走行、各筋束の頸椎神経根支配を調査した。さらに各筋束の機能的役割を構造と走行方向から評価した。<BR><BR>【結果】長胸神経は,第5頸椎神経根(以下C5), C6, 7で構成される例が8肩、C4, 5, 6, 7が2肩であった。C5は6肩で中斜角筋を貫通していた。C7が中斜角筋を貫通する例はなかった。上部筋束の複数神経支配は10肩中8肩であり、C5単独支配は2肩のみであった。中・下部筋束はC6, 7神経根支配が8肩であった。上部筋束は前方へ、中部筋束は前側方へ、下部筋束は下部になるに従い前下方に走行していた。肩甲骨を除くと、前鋸筋は菱形筋、肩甲挙筋と一体になっていた。<BR><BR>【考察】C5が中斜角筋を貫通する頻度は60%で、同部が神経障害部位になりやすい。この結果から、急性外傷やスポーツにより中斜角筋貫通部で神経麻痺になり、翼状肩甲骨が生じる可能性が示唆された。上部筋束はC5を中心に複数神経支配が多く、前鋸筋の機能上中心的役割を担っている。各筋束の形態と走行から、上部筋束は肩甲骨の回旋中心を形成し、中部筋束は肩甲骨を外転させ、下部筋束は下角を上方回旋、外転させる機能を有している。非外傷性や軽微な外傷で神経麻痺を伴わない前鋸筋機能不全に陥る症例がある。これらの症例では肩甲骨が下垂・外転している場合が多い。この病態は菱形筋、肩甲挙筋が伸張され、一方前鋸筋は短縮し機能できない状態に陥り、僧帽筋で肩甲骨上方回旋を代償していると推測された。<BR><BR>【まとめ】前鋸筋は主にC5, 6, 7で支配されるが例外的にC4も関与する。C5神経根は60%で中斜角筋を貫通していた。複数神経支配下にある上部筋束は前鋸筋の機能上中心的役割を担っている。上部筋束は肩甲骨の回旋中心を形成し、中部筋束は肩甲骨を外転させ、下部筋束は下角を上方回旋、外転させる機能を有している。

2 0 0 0 OA 古今和歌集

著者
藤村作 編
出版者
至文堂
巻号頁・発行日
1928
著者
YANG Huadong WU Liguang XIE Tong
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
pp.2020-020, (Released:2020-01-22)
被引用文献数
15

The tropical cyclone (TC) center position is often needed in the study of the inner-core processes although there is currently no consensus on the definition of the TC center. While previous studies evaluated center-detecting methods in terms of the center position, vertical tilt and decomposed symmetric and asymmetric circulations, this study used the 1-km resolution output of the predicted Hurricane Wilma (2005) at 5-minute intervals to evaluate the four TC centers that are frequently used in the diagnostic analysis of the inner-core dynamics processes: the pressure centroid center (PCC), the potential vorticity (PV) centroid center (PVC), the maximum tangential wind center (MTC) and the minimum pressure variance center (MVC) by focusing on the evolution of the small-scale track oscillation and vortex tilt. The differences in the detected center position and vertical tilt are generally small during the course of rapid intensification and eyewall replacement. The four methods all lead to similar small-scale track oscillations that rotate cyclonically around the mean track. While the MVC and PVC lead to a relatively smooth rotation, abrupt changes exist in the track oscillation of the MTC; the track oscillation of the PCC contains amplified embedded rotations that are associated with the PV mixing in the eye region. The tracks of the MVC and PVC relative to the lower-level center (vertical tilt) are generally smooth, while the relative tracks of the MTC and PCC contain abrupt changes. The MVC also leads to the strongest symmetric structure in the tangential wind, PV, and radial PV gradient in the eyewall region. This study suggests that the MVC should be selected in the study of inner-core processes.