著者
大髙 崇
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.34-39, 2020-01-07 (Released:2020-03-02)
参考文献数
4

放送局に保存される膨大な数の過去のニュースや番組など「放送アーカイブ」は映像資産としてその価値が注目されるが、どのように活用すればよりよい社会還元になるのか、模索が続いている。本稿では、最近の活用での成功事例として「NHKアーカイブス 回想法ライブラリー」の内容や、活用する現場の様子、コンテンツ制作の経緯などを報告し、今後の放送アーカイブ活用のために求められる課題を提示する。アーカイブ活用は、所有者(放送局)だけで完結することは困難であり、外部有識者の知見も交えて多角的な視点が必要であることが、今回の研究での発見となる。
著者
辻本 志郎
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.22-27, 2020-01-07 (Released:2020-03-02)
参考文献数
3

米ワシントン州シアトルを拠点とする「DENSHO」という非営利団体がある。太平洋戦争中に米国内で行われた日本人・日系人に対する強制収容の歴史をデジタルアーカイブとして後世に伝える目的で1996年に設立された。具体的には、強制収容された日系人らにインタビューを重ねている。団体のホームページには入植時から戦時中、そして戦後の日系人らの様子を伝える写真、新聞記事など多数の資料に加え、計1700時間以上に及ぶインタビュー動画を掲載してきた。コンテンツはいずれも無料で閲覧でき、「テーマ」「場所」「時代」などごとに検索できる仕様になっている。本稿ではDENSHOの設立経緯、デジタルアーカイブ資料の内容、HP以外の活動について検証する。
著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.16-21, 2020-01-07 (Released:2020-03-02)
参考文献数
6

鹿児島県奄美群島から沖縄本島、先島地方には民謡を始め琉球王朝の古典音楽、あるいは祭祀のための音楽が豊潤にあって、暮らしや様々な行事、あるいは盛んに行われるコンクールなどのためにいまも盛んに歌われている。さらに、そうした音楽をベースにした新民謡やポップスも次々に生み出されている。しかし、小さな集落や島で生まれた民謡や戦後次々に作られた新民謡などは、歌う人がいなくなったり、レコードが廃盤になったりするなどして消え去る危険に直面している。また、同じ曲でも時代や場所や流派によって演奏の仕方が変わる。これらの音源を収集し、何らかのプラットフォームなどで体系的に保管し、公開することでこの音楽文化をしっかり留めたい。現状と進められている様々な試みを調査・報告し、これからの南島の音楽のデジタルアーカイブの可能性を考えたい。
著者
大川 功
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.7-15, 2020-01-07 (Released:2020-03-02)
参考文献数
19

他校に先駆けて専用HPを構築した東京の聖学院中学校・高校図書館では、1906年(明治39年)の創立以来の史料を、随時デジタルアーカイブ化して公開している。当初のねらいは、在校生、卒業生、教職員、また、将来本校に関わるすべての者に、建学の精神と本校教育活動の歴史を視覚的遺産として残すことを目的として始めた取り組みであった。しかし、次第にコンテンツ自体が反響を呼び始め、「未来と過去、人と人をつなげる媒介」に成長していった。本稿では、その経緯を省察すると同時に、今後のデジタルアーカイブの可能性について論考する。
著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.3-6, 2020-01-07 (Released:2020-03-02)
参考文献数
5

デジタルアーカイブは、そのコンテンツの種類やジャンルによって利活用の手法は様々である。今回の特集では、個別のアーカイブの設計や運営に当たっている人々、アーカイブを積極的に使っている研究者などにそれぞれのデジタルアーカイブの利活用の手法について報告していただく。設計や構築に当たった人々が当初想定したものとは異なる利活用の手法をユーザーが発見することもある。そうしたデジタルアーカイブの潜在力も確認したい。
著者
神武 直彦 中島 円 小高 暁
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

発展途上国の農村地域では低所得者層である小規模農家が公式の金融サービスにアクセスできない金融廃除が深刻な問題となっている。借用履歴など記入期間が貸付判断をする際に必要な小規模農家の信用情報の欠如が主な要因だが、これまでに構築された金融機関からの貸付を促進するための小規模農家の信用評価モデルは限定的である。そこで本研究では衛星データやモバイルデータ等の地上データを駆使し、情報の信頼性検証方法等を明らかにすることで、借用履歴に代わるデータ駆動型の信用評価モデル構築を目指す。また、小規模農家の金融廃除経験に貢献するため、モデル構築のみならずアプリケーションとしての信用評価モデルの運用方法を構築する。
著者
Shigeru Ishida Hanae Morikawa Hiroyuki Watanabe Toshikazu Tsuji Takeshi Sugio Yasuo Mori Toshihiro Miyamoto Satohiro Masuda Koichi Akashi Nobuaki Egashira
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.488-492, 2020-03-01 (Released:2020-03-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1

The intravenous injection of bendamustine often induces venous irritation, which reduces patients’ QOL. We previously reported that the dilution of the final volume of bendamustine from 250 to 500 mL significantly decreased the incidence of venous irritation. However, the influence of this change on the therapeutic efficacy of bendamustine remains unclear. Therefore, the aim of this study was to evaluate the efficacy and safety profiles of bendamustine at different dilutions of the final volume, comparing with the correspondences of previous studies. Thirty-four patients, who received a total of 161 courses of bendamustine and rituximab chemotherapy, were included in this study. The overall response rate of this regimen was 94.1% in this study, which was comparable to that reported in the BRB study (94.2%, a phase II study of bendamustine plus rituximab therapy in Japanese patients). Additionally, the median progression-free survival was not inferior to that reported in the BRB study. Bendamustine-induced venous irritation was observed in 17.6% of the patients during the first treatment cycle administered at a final volume of 500 mL, and was found to be lower than that observed in the control, where bendamustine was administered at a final volume of 250 mL (85.7%). These results suggest that diluting bendamustine to 500 mL, but not to 250 mL, reduces the incidence of venous irritation without a negative impact on its therapeutic efficacy; thus, this simple strategy may be beneficial to ensure efficacy and safety in patients receiving regimens including bendamustine.
著者
矢島 伸男
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.83-97, 2014-08-02 (Released:2017-07-21)

本稿は、NHK総合で放送されていたテレビ番組、『爆笑オンエアバトル』の番組内容とそのシステムについて紹介したものである。『爆笑オンエアバトル』は、自由・平等・公平という3つの理念の下、制作者によって「お笑いネタの復権」という理想が掲げられて始まった。番組の特徴である「最低限のネタチェック」「一般審査員への全権委任」「消極的な言葉狩り」は、いくつかの問題を抱えながらも、純粋に面白いネタを見たいと願うお笑い好きの視聴者と、自分の芸風が純粋に受け入れられたいと願う若手芸人によって支持された。15年間の放送を通し、『爆笑オンエアバトル』はコンセプトを崩すことなく、また「お笑いブーム」の有無に左右されず存在した。この変わらざる番組の姿勢によって蓄積された15年分のアーカイブスは、21世紀以降の若手お笑い界の動向を捉える指標となるだろう。
著者
細井 裕司 添田 喜治 西村 忠己 下倉 良太 松井 淑恵 中川 誠司 高木 悠哉
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

我々人間の聴覚では 20 kHz 以上の超音波領域の音は聞こえないが、超音波振動として骨導に与えると音知覚が得られる(骨導超音波)。さらにこの骨導超音波は、音が全く聞こえない最重度難聴者でも聴取可能である。この現象を利用し、我々は最重度難聴者に音知覚を与える骨導超音波補聴器の開発を行っている。本研究では(1)未だ知られていない超音波聴覚メカニズムの解明、(2)骨導超音波補聴器の実用化研究という二つの課題に取り組んできた。そしてその研究成果から、骨導超音波の末梢の知覚器官は蝸牛の基底回転に存在すること、またそれは変調された可聴音ではなく超音波自体を聴取していること、その際外有毛細胞が関与している可能性は低いことなど、聴覚路上の末梢・中枢での超音波聴覚メカニズムが明らかになってきた。また語音で変調した骨導超音波のプロソディ(抑揚)が弁別可能であること、リハビリテーションによって言葉の聞き取りが改善されることなどの実用化研究も大きく進展した。
著者
西園 昌久 牛島 定信 松口 良徳 野入 敏彦
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.1091-1096, 1971-11-15

Ⅰ.緒言 向精神薬,なかでもneurolepticsを使用するさいにはいろいろの随伴症状や副作用があらわれるのをつねとするといえるほどである。したがってneurolepticsの随伴症状としてのパーキンソン症状群やその他さまざまの副作用を軽減する目的で,Artane, Akineton, promethazine (Pyrethia, Hiberna)が一般に使われる。ことにpromethazineは必須のように併用されている。それは,neurolepticaによってひきおこされる可能性のあるアレルギー反応ことに発疹,皮膚炎さらにパーキンソン症状群やアカシジアを予防し,抑制することを期待してからのことである。また,向精神薬療法のはじまりに人工冬眠療法といわれていたころ,chlorpromazineとともに併用することでカクテル療法とよび,phenothiazine誘導体を使用するさいに欠かすことのできないものとされていた当時のなごりがそのままひきつがれているともいえよう。 ところが,neuroleptics,抗パーキンソン剤とともにpromethazineを併用している症例において,しばしば,鼻閉,口渇,目のちらつき,排尿困難などの自律神経性障害,ねむけ,あるいは全身倦怠感などの中枢神経性障害を訴えるものがある。これらは,そのような副作用がもともとneurolepticsによってひきおこされるところに,promethazineの併用によってさらに,増強されたものとみられるのである。向精神薬の導入のころは,そのような副作用よりも,それら向精神薬の治療効果の方が重視されて,副作用は患者に耐えしのぶことを求めてきた。しかし,そのような副作用がつよくあらわれてきた時に,患者の苦痛ははなはだしい場合もある。また,このごろのように,長期にわたり,向精神薬を連用するようになると,社会復帰をしてなお向精神薬は継続して服用する症例がふえてきた。社会復帰したような患者にとって,上記したような副作用をもっていることは,日常生活に支障をきたすことになりかねない。自然,多少の副作用にも耐えて治療した時代から,副作用をできるだけ少なくして治療する時代へと移行してきている。
著者
伊達 聖伸
出版者
東京大学文学部宗教学研究室
雑誌
東京大学宗教学年報 (ISSN:02896400)
巻号頁・発行日
no.31, pp.17-34, 2013

論文/ArticlesDid the concept of "religion" change in the aftermath of the French Revolution? If so, in what way did it evolve? This article argues that there was indeed a change in conceptualizing religion during this period and tries to partially explain it by comparing the approaches of Voltaire and Chateaubriand to religion. Though these French writers belonged to two different generations, they were both anglophiles and were able to reflect on the religious situation in France with reference to England. What is often said about these two is that the former criticized religion while the latter defended it. However, we should bear in mind that Voltaire was never an atheist in the strict sense of the word despite his fierce criticism of religious institutions, for he believed in the existence of God which transcended different religious denominations. Also, Chateaubriand was an ardent proponent of Enlightenment thought, although he became a devout Christian. In other words, we need to understand the complex nature of religious discourse especially during this transitional period. A key word in Voltaire's religious critique is "tolerance". While he celebrated religious diversity in England and was greatly influenced by John Locke's work, especially A Letter Concerning Toleration(1689), Voltaire did not share the same vision as this English philosopher. Unlike Locke, who vindicated religious liberty and presupposed the separation of the religious community from political institutions, Voltaire's idea of religious tolerance was based on the assumption that the religious system should be subordinated to the political system, thereby placing little importance on religious liberty. As for Chateaubriand, religious liberty occupies an important place in his thought, but as an antirevolutionary thinker, he emphasized it in a conservative manner. The Genius of Christianity(1802) is an attempt to vindicate the Christian faith by reinterpreting the notion of liberty. Here, Chateaubriand reappropriates Christian discourse and attempts to restore Catholicism to its rightful place. Nevertheless, this reappropriation is not so much explained by theological as cultural impetus, because religious faith for him was a matter of individual commitment.
著者
稲垣 栄洋 稲垣 舜也 加藤 百合子 河合 眞 砂川 利広
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.183-186, 2017 (Released:2018-03-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

農道法面や畦畔法面の草刈り管理に代わり,踏圧により畦畔雑草を抑制するロボットを開発する基礎として,踏圧処理が畦畔の植生に及ぼす影響について調査した。その結果,踏圧処理により,匍匐性のシロツメクサが優占する植生となり,斑点米カメムシの発生源として問題となるイネ科雑草のネズミムギが抑制された。また,その効果は週に 1度,自重 4 kgの園芸用台車を走行させるという低頻度の刺激で可能であった。
著者
北所 健悟 西村 昂亮 神谷 重樹 堀口 安彦
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.223-229, 2013-06-30 (Released:2013-07-02)
参考文献数
38

Clostridium perfringens enterotoxin(CPE)is a cause of food poisoning and is considered a pore-forming toxin which damages target cells by disrupting the selective permeability of the plasma membrane. We determined the crystal structure of the full-length CPE at 2.0 Å. The overall structure of CPE displays an elongated shape, composed of three distinct domains, D1, D2, and D3. In this structure, the pore-forming domain(Val81〜Ile106)of CPE has alternating pattern of polar and hydrophobic residues and forms α-helix. This characteristic sequence is frequently observed in β pore-forming toxin families as typified by α-hemolysin. These results indicate that CPE behaves as β pore-forming toxins.