著者
阿濱 志保里
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.2_31-2_40, 2018-06-30 (Released:2018-07-04)
参考文献数
13

高等教育における効果的な知的財産教育の実施には,学習者の知識や関心を把握し,それを反映したカリキュラムを作成することが重要である.そこで本研究では,学習者の学びのニーズを考慮した学習モデル提案を行うことを目標とし,理工系学部の学生を対象に学習者の知的財産に対する学習意識の解明を試みた.学習者の状況を把握するために,学習者の自由記述をもとに学習者の知的財産に対する関心や意識などについて質的調査及び分析を行った.分析では,得られたデータをもとに,知的財産に対する学習者の興味及び関心に関する記述について,データマイニング(テキストマイニング)による分析を行なった.分析には共起ネットワーク分析を用いた.その結果,知的財産の学習内容について,著作権のような文化的な内容と特許権のような産業的な知的財産に関する学習を整理して行う必要性を示唆することができた.
著者
橋本 摂子
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.49-63, 2003-06-30 (Released:2010-04-23)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

階層研究において, 女性の社会的地位をどのようにあらわすかは, 現在でも結論が出ていない問題の一つである.これまでに提案された解決策は, 主として2種類にわけられる.職業尺度を維持したまま, 地位の表示形式を変更する方法と, 尺度自体を変更する方法である.しかし見出されるべき「不平等」がリベラリズムに基づいた不平等である限り, 地位の表示形式は個人単位でなければならない.そしてこれまで用いられてきた職業地位はリベラリズム的倫理観に深い関わりをもつ尺度であり, その経験的妥当性こそが階層研究のリアリティを支えてきた.地位指標のこうした政治性は, 無職者と有職者を統合することでは女性の地位問題が解決しないことを意味している.階層研究の主題は, 職業を通じた個人単位の資源獲得ゲームにおける不平等の発見でしかない.女性問題はそこからの排除と疎外という形でのみ位置づけ可能となる.
著者
水谷 雄一郎 髙島 一昭 山根 剛 山根 義久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.165-171, 2015-12-25 (Released:2016-12-25)
参考文献数
38

鳥取県中部に位置する倉吉動物医療センター・山根動物病院に来院した猫のFeLV抗原陽性率,FIV抗体陽性率などを過去10年分,カルテの記録をもとに回顧的に調査した。FeLV抗原陽性率は10年間の平均で15.1%であり,年ごとの陽性率を見る限りはFeLV陽性率は横ばい傾向と思われた。FIV抗体陽性率は10年間の平均で17.5%であり,年ごとのFIV陽性率は上昇傾向にあるように思われた。口内炎の罹患率は FIV / FeLV陰性群11.4%,FeLV単独陽性群20.8%,FIV単独陽性群27.6%,FIV / FeLV陽性群37.5%であった。リンパ腫の発症率はFIV / FeLV陰性群0.6%,FeLV単独陽性群16.4%,FIV単独陽性群2.6%,FIV / FeLV陽性群2.1%であった。死亡年齢はFIV / FeLV陰性群9.2歳,FeLV単独陽性群4.2歳,FIV単独陽性群9.6歳,FIV / FeLV陽性群7.0歳であった。
著者
加納 聖
出版者
岩手大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

動物には、種固有の大きさがあるが、それはどのような仕組みで決まっているのであろうか。例えば5倍体イモリにおいては、細胞の大きさは1倍体の5倍の大きさであり、全体の細胞数は5分の1になり結果的に体全体や組織の大きさは変わらない。このことから、体の大きさを制御するための細胞分裂調節機構があり、単に細胞数や分裂回数を数えているのではなく、何らかの方法で実際に大きさを調整する因子が存在すると考えられている。この体の大きさを調節していると考えられる因子の探索の糸口として本研究では、異数体ニワトリに注目した。異数体ニワトリは、コルセミドを投与することによって、卵子の減数分裂に異常を起こし、2倍体卵子が精子と受精することによって3倍体の個体が作出されるものである。この3倍体ニワトリ個体の外見上の大きさは、他の異数体動物と同様に2倍体個体と変わらない。雌ニワトリにコルセミドを投与し、3倍体ニワトリの作出を行った。一方、3倍体ニワトリは間性となることが多いので、その生殖巣についての研究が比較的よく行われているが、われわれはTGF-βシグナル伝達を中心としたゴールデンハムスター精巣の機能・大きさの変化の機構解明を中心に研究を行った。まず細胞増殖の制御、動物の体の大きさに対し重要な役割を持つと考えられるTGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達因子であるSmad3のクローニングを行った。また飼育室の点灯条件を変化させて人工的に萎縮させたゴールデンハムスター精巣においてSmadフアミリー、特にSmad2ならびにSmad3の発現や局在の変化についての解析を行ったところ、点灯条件変化によって精母細胞や精祖細胞における発現や局在の変化がみられ、TGF-βやアクチビンを介した精巣の機能や大きさの調節にSmad2ならびにSmad3が大きく関与していることが示唆された。
著者
相馬 武久 安川 明男 甲斐 一成
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.89-93, 2002-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

本邦の家庭猫における猫免疫不全ウイルス (FIV) 抗体, 猫白血病ウイルス (FeLV) 抗原および猫コロナウイルス (FCoV) 抗体の陽性率を検討した. 胸・腹水貯留により猫伝染性腹膜炎 (FIP) が疑われた症例でのFIVとFeLVの陽性率はそれぞれ26.3%, 36.8%で, 健康猫 (FIV9.3%, FeLV8.1%) に比べ高い値を示した. 上部気道炎を呈する症例でのFIVとFeLVの陽性率はそれぞれ35.7%, 21.4%で, 健康猫に比べ高い値を示した. 以上の成績から, FIVやFeLVの感染がFIPや呼吸器感染症の顕性化の一因である可能性が示された. 一方, 健康猫におけるFCoVの陽性率は47.7%と, FIV, FeLVに比べ高く, FCoVの野外での伝播力の強さがうかがわれた. また, 貧血症例が66.7%ときわめて高いFeLV陽性率を示したことから, 貧血を伴う症例においてFeLV検査は不可欠な診断手段であることが示された.
著者
森石 みどり
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.386-391, 2015-09-01

米国の大学図書館では,拡大するアクティブ・ラーニング・スペースを確保する手段の一つとして,シェアード・プリントが進められている。電子リソースの普及により利用の少なくなった冊子体資料を,共有の蔵書として保存する取り組みである。本稿ではシェアード・プリントについて,用語の整理やシェアード・ストレージとの比較を通じ,その特徴を示す。また,複数のシェアード・プリント・プログラムに共通する運用ポリシーをまとめ,日本におけるシェアード・プリント実施の必要性や,実施の際に検討すべき点を考察する。
著者
西岡 祖秀
出版者
Japanese Association of Indian and Buddhist Studies
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.474-468,1230, 2006-12-20 (Released:2010-03-09)

The Country of Shambhala is an ideal Buddhist kingdom described in the Kalacatantra. The 25th generation Raudracakrin king of this country is said to win the final war with Islam, and revive Buddhism. When the Kalacakratantra was introduced to Tibet after the 11th century, it was widely accepted by Tibetan Buddhists. 'Jam-dbyangs-bzhad-pa (1648-1722) and Sumpa-mkhan-po (1704-1788), who were great scholars of the dGe lugs sect in the 18th century, wrote Chronological Tables of Tibetan Buddhism. The enthronement of the king of Shambhala is stated in both chronological tables, and the revival of Buddhism by the Raudracakrin king is predicted. This paper provides a general description of the Country of Shambhala from the Dang po'i rgyas dpal dus kyi 'khor lo'i lo rgyus dang ming gi rnam grangs of Klong-rdol-bla-ma (1719-1805), who was a great scholar of the dGe lugs sect.
著者
斎藤 聡 八田 光弘 星 浩信 小柳 仁
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.769-776, 1995-09-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
28

近年心臓移植再開の気運が高まり,心臓移植後患者の術後管理を我々が行う日も近い.移植後患者管理のためには,心臓移植後脱神経支配を受けた心臓の生理機能の理解が重要課題である.本論文では心臓移植によって脱神経支配を受けた移植心の安静時および運動負荷時の心機能を中心に考察を加えた.心臓移植によって移植心は自律神経系の調節機構を失っているにもかかわらずほとんどの心臓移植患者は生体の需要に対応できる生理機能が温存されNYHAI度の状態になり社会復帰することができる.移植心の安静時心機能はほぼ正常である.しかし拡張能障害,洞機能不全が認められることがありこれに対する注意が必要である.また移植心は運動負荷に対して正常心と同様心拍出量を増加させることができるが,そのメカニズムは運動初期のFrank-Starling機構,それ以後は血中カテコールアミンの作用という正常心とは異なる機構によって脱神経支配を代償している.また移植心の電気生理,薬理について言及したが,移植心の生理特性を理解すれば移植後の薬物治療も躊躇する必要はない.しかし移植心は脱神経支配に加え,拒絶反応,サイクロスポリン投与による高血圧,冠動脈硬化などによる心筋障害の危機にさらされているためこれらに対する厳重な経過観察が必要である.本論文において著者は,移植心の生理機能を考察し心臓移植は重症心不全患者に対する優れた治療であり,本邦においてはその治療体系において欠損した部分であることを示した.我々は心臓移植を心疾患治療体系の一部として組み込み,一般の理解を得る努力を続けるべきであると考える.
著者
田中 真 小山内 隆生 加藤 拓彦 小笠原 寿子 和田 一丸
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.363-374, 2012-08-15

要旨:統合失調症患者57名と健常者30名を対象として,ぬりえ課題を用いて線画の呼称と塗った色の分析を行った.線画の呼称を正答し,かつ線画に対応した色を塗ることができた者が共に8割以上であった線画は,健常者群では12項目全てであったが,統合失調症群ではバナナとミカンの2項目であった.四つ葉のクローバーとピアノは,統合失調症群で判別できた者は健常者群よりも有意に少なかった.残りの8項目は,線画を正しく呼称していたにも関わらず対応した色を塗ることができない者が多かった.統合失調症群のぬりえの特徴は,線画を認知できるが健常者が選んだ色とは異なる色を塗る者が多いことであった.
著者
高橋 秀栄
出版者
駒澤大学
雑誌
駒沢大学仏教学部研究紀要 (ISSN:04523628)
巻号頁・発行日
no.52, pp.p257-285, 1994-03
著者
高橋 秀栄
出版者
駒澤大学
雑誌
駒沢大学仏教学部研究紀要 (ISSN:04523628)
巻号頁・発行日
no.51, pp.p248-267, 1993-03
著者
山崎延吉 著
出版者
農林堂書店
巻号頁・発行日
vol.続, 1933
著者
武部 裕光
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.252-262, 1980 (Released:2010-10-28)

除脳ネコにおいて下顎を他動的に開口させると, 反射的に舌の後退が認められる。この顎舌反射の機構を, 閉口筋及び外舌筋の筋電図により検索し, 次の結果を得た。1) 側頭筋を側頭骨付着部より剥離すると, 開口により誘発される同側茎突舌筋の筋電図活動は消失した。又, 側頭筋を選択的に伸張する事により顎舌反射が誘発された。2) 咬筋神経切断, 顎関節嚢の麻酔は顎舌反射に何ら影響を及ぼさなかった。3) 顎舌反射は10度以上の開口により誘発されたが, これは側頭筋の伸張反射の閾値より十分大きかった。4) 側頭筋神経を100Hzで電気刺激すると, 同側茎突舌筋に筋電図活動が誘発されたが, このときの閾値は側頭筋神経の最も低閾値の線維の1.3~1.7倍であった。5) 下顎に振動刺激を与えると頻度が130Hz以下で茎突舌筋に筋電図活動が誘発されたが, それ以上の頻度の刺激では誘発されなかった。6) 三叉神経中脳路核への入力系路を遮断すると, 同側の茎突舌筋の筋電図活動は消失した。以上の結果より, 顎舌反射は主として側頭筋中の伸張受容器, 恐らくはゴルジ腱器官の興奮により誘発されること, 及びその反射経路としては中脳路核を経由することが明らかになった。
著者
藤井 夕香 磯和 勅子 平松 万由子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.179-188, 2016 (Released:2017-02-25)
参考文献数
18
被引用文献数
2

目的:外来通院をしている高齢糖尿病患者がインスリン自己注射手技を正確に実施することに影響する要因を明らかにする.方法:65歳以上の在宅にてインスリン自己注射を行っている糖尿病患者に対し,正確な自己注射手技に影響すると考えられる15の要因を独立変数,正確な自己注射手技の可否を従属変数として,ロジスティック回帰分析を行った.結果:対象者は105名で,平均年齢は74.0 ± 5.4歳であった.ロジスティック回帰分析の結果,正確な自己注射手技に関連していたのは,改訂長谷川式簡易認知評価スケールで評価した認知機能が高いこと(オッズ比1.16,95%信頼区間1.01~1.33),看護師を中心とした医療従事者の支援があること(オッズ比6.35,95%信頼区間1.43~28.28)であった.結論:認知機能の低下があると,正確なインスリン自己注射手技が困難となる.しかし,看護師を中心とした医療従事者のサポートがあると正確な自己注射手技が実施できる可能性が高まることが示唆された.
著者
平山 裕子 井元 清隆 鈴木 伸一 内田 敬二 小林 健介 伊達 康一郎 郷田 素彦 初音 俊樹 沖山 信 加藤 真
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.60-64, 2008-01-15 (Released:2009-09-11)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

症例は76歳,女性.両下肢浮腫と呼吸困難を主訴に来院した.経胸壁心エコーで右房内に可動性に富む腫瘤を認め,心不全を伴う右房内腫瘤と診断し手術を施行した.術中の経食道心エコーで右房内腫瘤が下大静脈内へ連続していることを確認したが原発巣は不明なため,心腔内腫瘤摘除にとどめ,残存腫瘍断端はクリップでマーキングした.術直後のCTで子宮筋腫から下大静脈内へ連続する構造物の中にクリップを認め,さらに摘出標本の病理所見からintravenous leiomyomatosis(IVL)と診断した.術後半年のCTでクリップは下大静脈から子宮に連続する静脈内に移動しており,腫瘍は退縮傾向であると考えたが,今後も厳重なる経過観察が必要である.