著者
山田 良広
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

法医学における歯の有効性は硬組織としての保存性の高さに起因する個人識別における役割である。従来は歯の解剖学的形態による個人識別への応用が主であったが、最近の遺伝子工学の発展がDNA分析の可能性を広げ、歯学においても、歯に含まれるDNAを利用することで新しい個人組織への情報源としての歯の可能性を示唆した。本研究は、鑑定試料として嘱託を受けた歯を想定し、実験室で各種条件下におかれていた歯からDNAを抽出、歯髄由来DNAの法医DNA鑑定における応用の可能性を研究目的とした。平成8年度は、歯髄が変性消失している歯からの有効なDNA抽出法として、髄腔壁を含む象牙質切片からDNAを抽出しそれをキレックススピンカラムを用いて精製した結果、PCR反応において良好な増幅が可能であった歯髄由来DNAを得ることができた。平成9年度は、精製された歯髄由来DNAをテンプレートとして用い、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のDループをPCR法により増幅しその多型領域の塩基配列を決定するmtDNAダイレクトシーケンス法への応用、さらに広く法医DNA鑑定で用いられているDIS80、HLADQα領域を増幅するプライマー、TH01などShort Tandem Repeat領域を増幅するプライマーをそれぞれ用いたPCR法へ応用したところ、対照とした新鮮血由来DNAをテンプレートとした結果と同等の結果を示した。身元不明死体や損壊の著しい死体で歯が唯一の身元確認の決めてになることは衆知のことである。従来の形態を主とした個人識別にDNA分析を応用することは今後不可欠になると思われ、歯由来DNAがその個人のDNAとしてDNA鑑定に用いることが可能であるといった今回の研究実績はその根拠となると思われる。
著者
広瀬 玲子
出版者
ジェンダー史学会
雑誌
ジェンダー史学 (ISSN:18804357)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.17-32, 2014

1945 年の敗戦時日本帝国の支配は東アジア・東南アジア・太平洋地域に及んでいた。朝鮮半島もその一地域である。そこに約75 万人の日本人が移動・定着して家族を形成し、植民地での特権的生活を送った。35 年間の植民地支配の過程で、植民者一世・二世(あるいは三世)という世代形成がなされた。<br>本稿は、朝鮮で植民者として暮らした日本女性に焦点を当てた。被植民者に対し抑圧者・支配者であった女性に関する研究は少ない。まず、朝鮮における日本女性の人口・職業構成を明らかにし、彼女たちの植民地での位置を概観した。続いて、女性たちのあり様を、一世の経験としての愛国婦人会の結成と活動を通して考察する。朝鮮における愛国婦人会の結成は併合以前の1906 年であり、それも内地の愛国婦人会結成と歩みを揃えて行われた。これは日本の支配層が植民地化推進に女性の力を不可欠としたことを示している。愛国婦人会は「文明化の使命」の理念を掲げ、朝鮮王室や支配層の女性の多数を組織しながら活動を展開していった。<br>さらに女性たちのあり様を、二世の経験としての女学校生活という側面から明らかにした。具体的には京城第一公立高等女学校生の植民地経験をとりあげた。朝鮮で生まれ育った彼女たちは高等女学校生として「幸せな」学園生活を送るが、それは支配者としての特権の享受のうえに成り立っていた。彼女たちの大半は、自らが「植民者= 侵略者」であるという自覚なしに生活した。そこには支配を支配と感じさせない暴力、被植民者を不可視化する暴力が働いていていた。日本の敗戦により、「自分が侵略者であった」とつきつけられ、引揚げたのちに、内なる植民地主義をいかに解体するのかが課題となるが、いまだに果たされたとは言えない。<br>さいごに、少数ではあるがこの課題に応えようとする女性植民者の事例を紹介し、植民地主義解体の可能性について考察した。
著者
谷口 守 石田 東生 小川 博之 黒川 洸
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.443-451, 1995-08-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
7

自動車交通問題の解決のためには、個人の交通手段選択を自動車から公共交通などにシフトさせることの重要性が指摘されている。しかし、そのための基礎となる都市の特性と交通手段選択の関係に関する実証的研究は不十分である。本研究では、全国の131都市を対象に、1970、80、90年の国勢調査報告の通勤・通学利用交通手段のデータを用い、各都市の通勤・通学交通手段分担率の地域的・時間的変化を把握すると共に、その都市特性との関連を判別分析、正準相関分析を通じて明らかにした。この結果、モータリゼーション化のばらつき特性、分担率変化の特性を把握するとともに、都市構造にまで言及しない交通政策の限界を指摘した。
著者
佐伯 真也 西 雄大
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1701, pp.46-53, 2013-07-29

京都精華大学で講師を務める榎戸利光さん(38歳)は根っからのゲーム好き。タイトーが1978年に投入したアーケードゲーム機「スペースインベーダー」を皮切りに、35年間で2000以上のゲームで遊んだ。大学時代にはゲームに月10万円以上を費やし、人気ゲームソフト…
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.878, pp.32-35, 2015-01-22

リスト型攻撃対策は複数あるが、全てのWebサイトに最適な解はない。かけられるコストなどを考慮して、企業ごとに適切な対策を導入する。力を入れるべきは「早期検知」。ログインの失敗回数に注目した監視体制の強化と、不正ログインを利用者自身に気付いてもらうログイン通知の導入だ。
著者
合田 幸広
出版者
公益社団法人 日本薬剤学会
雑誌
薬剤学 (ISSN:03727629)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.170-176, 2015 (Released:2015-11-01)
参考文献数
5
被引用文献数
2
著者
奈良 信雄 鈴木 利哉
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.193-200, 2014-06-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
12
被引用文献数
2

ドイツでは2003年に発効された「医師免許に関する規制法:Approbationsordung: AppOÄ」を契機に医学教育が大きく改革された.基本的には37校で同じカリキュラムに基づき教育されているが,昨今の医学の進歩や医療事情を鑑み,学際領域教育や臨床実習に重点を置いているなどに特色がある.医師国家試験は基礎医学履修後の2年終了時と,5年終了時の筆記試験と6年終了時の口頭試験が行われている.日本が医学教育を導入したドイツにおける医学教育改革は,わが国にとっても大いに参考になる.
著者
内藤 明子 印東 利勝
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.357-360, 1982-08-01 (Released:2017-08-01)

We report two cases of young women with psychogenic gait disturbance. Case 1 was a 25-year-old female who was difficult to take the first step forward at start for 5 years.Case 2 was a 14-year-old female who attempted suicide by taking high doses of sleeping drugs and showed astasia-abasia after recovery from comatose state. These two cases showed a discrepancy between neurological findings and neuroanatomical examinations.Both psychological and social backgrounds were significantly positive in each case.Whenever discrepancies were found between neurological findings and neuroanatomical standpoints, we postulate that psychosomatic consideration is essential prior to a neuroradiological approach or laboratory examinations.
著者
蛭子井 博孝
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.21, 2006 (Released:2010-08-25)
著者
長谷川 晃久 佐藤 文夫 石田 信繁 福島 康敏 向山 明孝
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1109-1110, 2000-10-25
被引用文献数
1 52

馬の性判別を迅速に行なう方法としてY染色体性決定領域(SRY)およびアメロゲニン遺伝子(AMEL)を同時増幅する方法を開発した.これによりY染色体の有無とSRY遺伝子の有無を同時に判定することが可能となり, 本法はXY雌馬症例に対して時間と経験を要する細胞遺伝子学的な分析を行なう前の迅速診断法として有効と考えられた.
著者
榎 将功 皇甫 美華 大田健紘 柳田 益造
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.129, pp.313-318, 2007-12-21
参考文献数
9
被引用文献数
2

音声認識に,認識対象として未登録の略語を使えるようにする方法を提案している.略語の生成はいくつかの規則に従うことが知られている.本研究では,それらの規則により元の表現(原型)から簡略後の表現(略語)を自動的に生成することを考えている.規則の適用により略語の候補を多数生成し,各候補に対し,どの規則を適用して生成したか,略語の言語モデルに整合しているか,Web 上での使用頻度は多いか,の3つの基準により略語らしさとしてのスコアをつけ,上位からいくつかの候補を選んで認識対象辞書に加えるという方略を提案している.提案法により原型 40 語から略語候補を生成し,各原型につき略語らしい候補を 10 語ずつ選んだところ,約 80%の略語をカバーできている.音声認識システムに提案法を応用したところ,認識語彙の増大による認識率の低下を十分上回る略語認識ができるようになっている.Proposed is a method to generate abbriviated forms of Japan expressions to accept them as words to be recognized even in case they are unregistered for speech recognition. It is known that there are several rules to generate abbriviated forms from original expressions. Proposed is automatic generation of abbriviated forms from an original expression. The proposed method generates several tens or hundreds of candidates of an abbriviated form by applying possible generation rules to the original expression. A scoring system to prune the candidates for each original expression is designed on the following three criteria; which generation rule is adopted, accordance with the language model of abbriviation, and appearance frequency on the Internet. Candidates having score ranked within the top N are registered into the word list for recognition. To evaluate the method, the proposed method is used to generate candidates of abbriviated forms from 40 original expressions, and the system choses 10 candidates for each original expression referring to the score. About 80% of the correct abbriviations were included in the top 10 candidates. The output of the proposed method is fed to a speech recognition system yielding recognition improvement sufficiently compensating decrease of recognition rate due to enlargement of vocabulary size.