著者
山下 菜穂子
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.11, pp.97-115, 2017

本研究は本邦における男性同性愛者のHIV感染増加に関する心理的問題と性教育への課題を明らかとすることを研究目的とした.世界規模では日本のHIV感染者数,HIV新規感染者数ともごく少数である.しかし,その感染者数は男性同性愛者の性行為を中心に2000年~2011年にかけて増加傾向であるという問題を抱えている.同性愛者の精神健康度は異性愛者に比べ低い傾向であり,国内の男性同性愛者を対象とした研究では,同性愛者が精神健康度を良好に保つために教育機関における性教育の中で,同性愛についても肯定的な情報提供が必要だと報告している.しかし,教育機関での性教育は異性愛を前提として行われていることが現状であり,教育機関におけるその計画実施までに年月がかかるのは明白である.よって10代の男女に性教育を行っているNGOと男性同性愛者の地域ボランティア組織が連携し,セクシュアリティの考え方を見直す働きかけを行うこと,その活動内容を教育機関に発信し,同性愛者に対する問題とその対策をともに検討していくことが短期間で実現可能な方法である.
著者
小笹 晃太郎 鷲尾 昌一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.18-24, 2009 (Released:2014-06-13)
参考文献数
19

インフルエンザ予防接種は,インフルエンザに罹患することによって重篤な合併症を生じやすい高リスク者を守るという考え方に基づいて勧奨されているが,高齢者でのインフルエンザ予防接種の有効性は,無作為化対照試験が少なく観察研究に負うところが多く,観察研究にはその実施上種々の課題がある。まず,評価のアウトカムは,できるだけ診断の特異度が高く,誤分類の小さいものが望ましい。しかし,医療機関で診断されたインフルエンザをアウトカムとすると,特異度は高いが医療機関への受診行動や医療機関での診断過程で,ワクチン接種群と非接種群でのインフルエンザ診断の精度に差異の生じることが考えられる。したがって,このような差異的誤分類を避けるために,特異度が比較的高くなくて非差異的誤分類が生じるアウトカムであっても,接種群と非接種群から同じ精度で把握するほうが,正確な評価の観点から望ましい場合もあると思われる。 高齢者を対象としたインフルエンザ予防接種の有効性を評価する従来の観察研究の結果から,ワクチン接種者は非接種者に比べてインフルエンザ罹患や死亡等のアウトカムを生じにくい低リスク者が多く,そのためにワクチンの有効性が過大評価されているのではないかという疑問が指摘されている。このような偏りや交絡を評価して調整するために,インフルエンザ流行期と非流行期,ワクチン合致度の高いシーズンと低いシーズン,大規模流行シーズンと小規模流行シーズン,および特異度の高いアウトカムと低いアウトカムを使用することで有効性の比較を行うことが求められる。いずれも後の群で有効性が低くなることが期待され,そうでない場合には偏りや交絡が残されている可能性が高いので,それらの偏りや交絡を除去して得られる高リスク因子を見いだす必要がある。その結果として見いだされたインフルエンザによる死亡が生じやすい高リスク者,たとえば,基礎疾患と機能性障害を併せ持つような人たちでの有効性の評価と,その人たちに対する接種を進めていくことが望まれる。
出版者
日経BP社
雑誌
日経情報ストラテジ- (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.168-171, 2003-02

東京都小金井市にある「無添くら寿司」では、週末の昼過ぎともなると、200席前後の店内が顧客でごった返す。空席待ちの顧客のために用意したウエイティングスペースに、20人以上が待つことも珍しくない。1日の来店客数は平均1000人で、月商は約3000万円を稼ぎ出す。 客層のほとんどは3〜4人の家族連れ。

2 0 0 0 OA [源氏物語]

著者
[紫式部] [著]
出版者
八尾勘兵衛
巻号頁・発行日
vol.[1], 1654
著者
有賀 健高
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.223-226, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
7

本研究では,風評被害の払拭には福島原子力発電所近辺を産地とする食品に対する消費者意識を把握することが重要であるという立場から,主に消費者の環境意識が,発電所近辺を産地とする食品購入に与える影響について検証した。アンケート調査によって得られたデータの分析から,環境意識の高い消費者ほど原発近辺を産地とする食品に対する購入意欲があることが示された。また環境意識以外の分析から,食品中の放射性物質の規格基準への信頼,高年齢,男性といった要素は購入意欲に正の影響があることがわかった。一方,高所得,高学歴,子供が多い,居住地が原発から離れているといった要素は購入意欲に負の影響を与えることが明らかとなった。
著者
永松 茂樹
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.205-211, 2006-03-01 (Released:2007-09-03)
参考文献数
5

Utilization of heavy crude including unconventional oil may be indispensable to cope with an increasing demand of crude oil in developing countries, such as China and India. Upgrading technologies and processes are, therefore, important for utilizing such heavy oils. In the present paper, upgrading technologies of carbon rejection and hydrogen addition processes are reviewed. Coking and SDA are focused as carbon rejection process. Hydrogen thermal cracking process based on slurry technology is focused as hydrogen addition process. Characteristics of such processes and possibility for integration of SDA and hydrogen thermal cracking are presented.
著者
藤田 修
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.178-184, 2016-11-05

人工知能が囲碁のプレイヤーとして人間に勝るレベルに到達した現在、ゲームをデザインする能力についても実現可能な研究課題となってきた。その手始めに、有限なフィールドで比較的単純なルールに従うボードゲームの一例を題材として紹介する。本報告では、レーザー、ミラー、スプリッターなどの光学系を模した駒を使用するボードゲームにおいて、ゲームの面白さや複雑さを評価関数として、盤の形状、駒の配置、プレイヤー数、プレイ順、駒の操作規則、勝敗判定などを最適化するシステムについて検討する。
著者
島田 勝巳
出版者
天理大学おやさと研究所
雑誌
天理大学おやさと研究所年報 (ISSN:1341738X)
巻号頁・発行日
no.18, pp.63-81, 2011

本稿では、ニコラウス・クザーヌス(Nicolaus Cusanus)の主著『知ある無知』(De docta ignorantia)に対する批判として知られるヨハネス・ヴェンク(Johannes Wenck)の『無知の書物について』(De ignota litteratura)と、それに対するクザーヌスからの反論の書『知ある無知の弁明』(Apologiadoctae ignorantiae)に表れた両者の争点、およびその背景について検討する。 まず認識の問題では、知性認識は類似によって事物の何性に到達し得ないとするクザーヌスに対し、ヴェンクはトマス・アクィナス(Thomas Aquinas)の「存在の類比」の立場から、知性が像と類似によって認識し得るものとして捉える。さらにヴェンクは、クザーヌスの「対立の一致」の教説が神と被造物との一致を許容するものと捉え、それがアリストテレス(Aristoteles)的な矛盾律の破壊に繋がるものとして批判する。これに対しクザーヌスは、「存在の類比」の議論が前提とするような「比」が、無限なるもの(=神)と有限なるもの(=被造物)との間には成立し得ないという点を強調する。さらに神の問題について、ヴェンクは、クザーヌスの議論がアリストテレスの「第一動者」の観念を破壊し、それによってトマス的な神の存在証明も無効化してしまう可能性を看取する。それに対しクザーヌスは、「包含」と「展開」の理論によって、運動を根源的一性としての神の展開として捉えることで、神と被造物との関係性を非スコラ学的視点から説明する。さらにクザーヌスはその視点を、個と普遍の問題をめぐる彼独自の視点である「縮限」の理論によって補強することで、汎神論(pantheism)の嫌疑を振り払おうとする。ここには、神を万物の絶対的何性として、また「世界」を縮限された何性として捉えるクザーヌスの視点の独自性を指摘することができる。De docta ignorantia, a major writing by Nicolaus Cusanus, was criticized by Johannes Wenck in his writing, De ignota litteratura, which in turn was disputed by Cusanus in his rebuttal, Apologia doctae ignorantiae. This paper examines each author's contentions unfolded in the latter two writings and their background. First, on the problem of recognition, Cusanus contends that recognition by the intellect cannot attain to an understanding of the quiddity (quidditas) of things through analogy whereas Wenck admits the intellect's ability to recognize it through image and analogy from the standpoint of analogia entis proposed by Thomas Aquinas. Further, Wenck criticizes Cusanus' contention about coincidentia oppositorum as allowing the concordance between God and creatures and eventually destroying the Aristotelian "law of contradiction." In response, Cusanus stresses that between infinitus (God) and finitus (creatures) can there be no such comparison as presumed in the discussion on analogia entis. On the problem of God, Wenck perceives the possibility of Cusanus' argument destroying the Aristotelian concept of "the First mover," which in turn invalidates the Thomistic proof of God's existence. Cusanus, on the contrary, employs the theories of complicatio and explicatio to define movement as the expansion of God as the fundamental unity and explains the relationship between God and creatures from a non-Scholastic viewpoint. By reinforcing this viewpoint with the theory of contractio, which is his own idea regarding the problem of individuality and universality, Cusanus tries to ward off the suspicion of pantheism. The uniqueness of Cusanus' viewpoint can be identified in his seeing God as quidditas absoluta of all things and the "world" as quidditas contracta.
著者
原 貴敏 垣田 清人 児玉 万実 土井 孝明 安保 雅博
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.228-233, 2014 (Released:2014-05-10)
参考文献数
16

Alien hand syndrome (AHS) is a rare neurologic disorder in which movements are performed without conscious will. Cognitive rehabilitation is usually first considered for treating AHS. However, we proposed different modalities for the treatment. This is the first case report showing therapeutic effects of the NEURO-15 program that consists of low-frequency repetitive transcranial magnetic stimulation and intensive occupational therapy on AHS symptoms and upper limb dysfunction caused by a stroke one year and three months before. A 68-year-old male developed right upper limb palsy secondary to cerebral infarction on the medial side of the left frontal lobe. On admission, he exhibited disturbed skilled motor behavior, compulsive grasping of the right upper limb, and dissociated behavior of the right hand independent from the left. The right hand interfered with the actions executed by the left hand. The left hand restricted the right hand in its actions by holding it. Six months after the onset, his Activities of Daily Living improved and he was discharged from hospital to home. However, his compulsive grasping of the right upper limb symptoms remained, and he underwent NEURO-15 one year and three months after the onset. His right upper limb function improved. Compulsive grasping of the right upper limb disappeared, and the contradictory action of the right upper limb was rarely seen. These results suggested that NEURO-15 influenced the neural network including the primary motor cortex and supplementary motor area.
著者
工藤 力 西川 正之
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.99-108, 1983
被引用文献数
7 33

本研究は, Russellら (1980) の開発した改訂版UCLA孤独感尺度の邦訳版を作成し, その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。被調査者は, 学生, 一般社会人, 入院治療中のアルコール依存症患者, 合計975名である。孤独感尺度のほかに, 社会的行動, および身体的徴候に関する自己評定尺度, 家族との愛情関係測定用のSDスケール, 自尊心尺度, CPI 10が用いられた。<BR>主要な結果は, 以下の通りである。<BR>(1) 孤独感はアルコール依存症患者で最も強く, 次いで, 男子の大学新入生, 30代~40代の一般社会人の順であった。しかし, 平均的にみると, 大学生に比べて一般社会人の方が有意に強い孤独感を示していた。<BR>(2) 孤独感の性差に関しては, 大学新入生においてのみ見出された。<BR>(3) 孤独感尺度の信頼性は, 上位・下位分析, α係数, 折半法, 再検査信頼性係数により吟味されたが, いずれの場合も本尺度の信頼性が充分であることを示している。<BR>(4) 孤独感尺度の妥当性は, 孤独感の行動的対件, 社会的関係の認知, 家族との愛情関係, 身体的徴候の現出, 自尊心尺度とCPI 10尺度との対応, 一般社会人とアルコール依存症患者の比較などにより検討されたが, いずれの場合も併存的妥当性が充分であることを示した。<BR>(5) 補足的な結果として, 母親との愛情関係 (経験) は, 孤独感の強さを規定するものであることが示唆された。<BR>今後は, 本尺度を使用して, 孤独感に陥る原因の解明や, 孤独感の永続化に寄与する要因の分析, 孤独感解消のための対処行動の様態, さらには孤独感の因果帰属が感情反応や対処行動, さらには自尊心に及ぼす影響などを明らかにする必要があるように思われる。