著者
鯉渕 晴美 藤井 康友
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

表皮ブドウ球菌が生成したバイオフィルムに対し超音波を照射すると、これまで報告されてきた超音波強度よりも弱い強度でも、24時間照射すればバイオフィルムは破壊されることがわかった。さらに、培養皿に表皮ブドウ球菌液と液体培地を混和し、ここに超音波を照射することによって、超音波照射はバイオフィルム生成阻害にも寄与することが判明した。また、バイオフィルム生成の初期段階に超音波を照射すれば、より短時間の照射でも(20分)バイオフィルム形成阻害効果があることが証明された。これらより、カテーテル関連バイオフィルム血流感染症の発症予防に超音波照射が有用でありさらに実現可能であることが示唆された。
著者
徳田 均
出版者
日経BP社
雑誌
日経メディカル (ISSN:03851699)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.123-125, 2007-08

とくだ ひとし氏1973年東大卒。癌研究会付属病院、結核予防会結核研究所を経て91年より現職。東京・新宿近郊の開業医、勤務医向けの呼吸器カンファランス「新宿呼吸器研究会」をJR東京総合病院と共催。胸部X線写真の読影においては、良性か悪性かの判断が難しい画像に時折遭遇する。そういった画像を見極めるポイントについて4回にわたり解説する。
著者
杉田 昭 小金井 一隆 辰巳 健志 山田 恭子 二木 了 黒木 博介 荒井 勝彦 木村 英明 鬼頭 文彦 福島 恒男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.66-72, 2012 (Released:2012-04-24)
参考文献数
18

痔瘻癌は痔瘻の症状が併存するため早期診断が困難で,進行癌で発見されることから予後が不良な疾患である.本邦ではCrohn病症例に合併する肛門病変として痔瘻が最も多い.Crohn病に合併する大腸癌のうち,痔瘻癌を含む直腸肛門管癌が半数以上を占めるのが本邦の特徴であり,合併する痔瘻癌の特徴は基本的に通常の痔瘻癌と同様であるが,自験例の痔瘻癌診断までの罹病期間は平均20年,癌診断時年齢は平均39歳と通常の痔瘻癌に比べて罹病期間に差はなかったものの,若い年齢で発症していた.痔瘻癌発見の動機は粘液の増加,肛門狭窄の増強,腫瘤の出現などの臨床症状の変化であることが多く,長期に経過した痔瘻を合併するCrohn病症例では痔瘻癌の合併があることを念頭に置き,痔瘻の症状の変化,肛門所見に留意して定期的な指診,大腸内視鏡検査,積極的な細胞診,生検を行うことが早期診断と長期生存に重要である.直腸肛門管癌(痔瘻癌を含む)に対する癌サーベイランスプログラムの確立が望まれ,その可否の検討が必要である.
著者
長瀬 博 松本 和久 西山 久雄
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1055-1066, 1996-12-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
44
被引用文献数
6 10

Just after the discovery of PGI2, we started to find chemically and metabolically stable PGI2 derivatives with longer duration of action. Extensive studies led us to a new class of stable PGI2 analogue, 5, 6, 7-trinor-4, 8-inter-m-phenylenePGI2 that has a phenol moiety instead of enol-ether linkage in PGI2. In order to accomplish synthesis of the m-phenylenePGI2, novel synthetic methods were developed, for instance, ortho-selective metal-halogen exchange reaction of bromoanisoles by means of Grignard reagent, copper-catalyzed SN2' cyclization to prepare dihydrocyclopenta [b] benzofuran, and regioselective and stereo-selective elongation of ω-side chain by Prins reaction. Further efforts were devoted to synthesize derivatives of m-phenylenePGI2 with enhanced pharmacological activity and less adverse reaction. Finally, we attained to Beraprost sodium which is the first launched drug as an orally active PGI2. This paper will focus on the study of total syntheses of m-phenylenePGI2.
著者
苅野 正美
出版者
プール学院大学
雑誌
プール学院大学研究紀要 (ISSN:13426028)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.57-72, 2014-12

This report discusses the results of an investigation of 148 junior college and university students regarding their comprehension of the characteristics of various SNS networks, and relations between their perception of the risk of use and their experiences using SNS. The main points of this report are as follows: 1) Most of the students' SNS usage was on amartphones. The reasons for using SNS were "because we are friends" or "to kill time." "Because friends invited me to join" was not ranked highly. 2) When risk perception and the risk experience of young people was examined by gender, the following were more important for women than for men: "Understand that malicious slander and bullying is likely to be a crime." "Think about the opponent's feelings when updating responses." 3) Although women who used SNS did so while taking others into consideration, men had troubles when using SNS. 4) Regarding the relationship between risk perception and risk experience, it became clear that students who posted personally identifiable information on SNS without thinking about their opponents feelings did not understand the characteristics of LINE and Twitter.
著者
伊勢田 哲治 Iseda Tetsuji
出版者
応用倫理学研究会
雑誌
応用倫理学研究
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-17, 2006

功利主義者たちは戦争の問題について何を言ってきただろうか、そして彼らの議論から我々は何を学ぶことができるであろうか。歴史を振り返るならば功利主義の戦争論としてはベンサムやシジウィックの著作があり、近年においてもR.M.ヘア、リチャード・ブラント、ジョナサン・グラバー、ピーター・シンガーらがそれぞれ数本の論文を発表している。本論文では、そうした文献の中でも、特に現代の著作を紹介・検討することを通じて、戦争倫理における功利主義的思考法の利点と欠点について考える。戦争と倫理の関わりについては、大きくわけて、戦争を始めるのが正当化されるのはどういう場合なのか、あるいはそもそも正当化される戦争などないのか、をめぐる論争と、戦争の中ではどういう行為が許されてどういう行為が戦争といえどもゆるされないのか、を巡る論争がある。本論文では、まず、正戦論についての功利主義者たちの議論を紹介し、次に戦争の規則についての彼らの議論を紹介する。そののちに、戦争倫理学における功利主義的思考の利点、正戦論と戦争の規則を明確に区分することの意味、個々の戦争について功利主義者が発言する際に気をつけるべきことなどについて論じる。

2 0 0 0 OA 亡友帖

著者
勝安芳 編
出版者
瑞穂屋卯三郎
巻号頁・発行日
1878
著者
手塚 洋輔 TEZUKA Yosuke
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.5-18, 2013-12

大きな事故や事件、不祥事などが発生すると、しばしば政府は事後検証を行う第三者機関を設置する。本稿では、そうした事後検証機関の設置形態を行政機関からの外部性を軸に類型化するとともに、それらの組織形態が1990年代以降どのように使われているのかを考察した。 その結果、不祥事対応に関してみても、それまで内部調査が主流だったところから、90年代後半以降、行政機関外部の者が参画する外部化が進展した。さらに2000年代後半になると、外部化に加えて、元検事の登用という司法化もあいまって進んだ結果、政権維持や内部改革のツールとして使用されるようになったことが明らかとなった。Public inquiries may come into existence in the aftermath of negative events such as accidents, policy failures and scandals. This paper explains organizational forms of these inquiries in terms of externality to a department which is responsible for such an event and discusses how government or ministers choose members of inquires. Around 1990s, public inquires began to be composed of internal and external members or only external members in regard to scandals, until then, only internal members. Later, in Abe and Fukuda administrations, some inquiries were set up under the Cabinet Office or the Ministry of Internal Affairs and Communications (MIC) and others got investigators from former public prosecutors. As a result, we found that public inquiries were used for electoral politics or attack to labor unions of public sector.
著者
小林 牧人 頼経 知尚 鈴木 翔平 清水 彩美 小井土 美香 川口 優太郎 早川 洋一 江口 さやか 横田 弘文 山本 義和
出版者
日本水産學會
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.922-933, 2012 (Released:2013-10-08)

本邦の絶滅危惧種にも指定されているメダカを保全するためには,その生息環境だけでなく繁殖生態についても知見を得ることが重要である。本研究では屋外池で自然繁殖している野生メダカを対象に繁殖生態を調べた。メダカでは,雌が産卵後に卵をしばらく腹部に保持し,それらを基質に産み付ける。今回の観察で,野生下において「産み付け行動」の初の観察・記載に成功し,数種の基質を特定した。基質の特定および存在場所は,今後のメダカの保全において,繁殖場所の確保という点で重要な知見になると考えられた。
著者
金子 幾之輔
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.47-58, 2008-03-31

本研究は,まばたきチックを呈する1名の男子(10歳,小学校4年生。以下,clと称する。)に対して,ハビット・リバーサル法(セルフ・モニタリング法付加)と母親へのカウンセリングを併用し,その臨床的有効性を検討した。治療の最初の段階では,clにハビット・リバーサル法を適用するとともに,母親へのカウンセリングによる情緒の安定化と養育態度の改善を図ったが,clのチック回数は一時的に減少するにとどまった。そこで,次の段階として,clに対してセルフ・モニタリング法を付加した結果,clのチック回数は漸時減少した。また,その治療過程において母親の情緒の安定化と養育態度の改善が有効に機能した。全体の結果として,clのチック症状は相当に軽減したが,まだ完全に治癒したとはいえないことから,今後も経過観察する必要がある。