著者
福島 哲郎
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.136, no.1, pp.11-14, 2010 (Released:2010-07-09)
参考文献数
25
被引用文献数
2

要約:アルツハイマー病(AD)は進行性の神経変性疾患であり,アミロイドβ(Aβ)やタウの凝集・蓄積に起因する神経変性が病態に関与すると考えられている.T-817MAは,神経栄養因子様作用を有する低分子化合物であり,ADの進行抑制と症状改善を目指す治療薬として,現在北米で臨床試験が進められている.T-817MAは,培養ラット神経細胞において神経突起伸展を促進し,Aβが誘発する神経細胞死を抑制した.また,AD病態モデルとして知られているラット脳室内Aβ持続注入モデルにおいて,Aβ持続注入4週目にみられる認知機能の低下に対してT-817MAは抑制作用を示した.さらに,Aβ持続注入8週間後からT-817MAの投与を開始した場合でも低下した認知機能を回復させた.一方,病理学的観察においてもT-817MAはAβ持続注入による海馬歯状回領域の神経細胞変性を抑制し,神経新生の減少を回復させることが確認された.これらの結果により,T-817MAは神経保護効果に加え,神経ネットワークを再構築することにより症状を改善する効果を有すると示唆された.また,ヒト変異タウ(P301L)トランスジェニックマウスにおける海馬歯状回領域のシナプトフィジンの低下を抑制し,認知機能の低下を改善するなど,T-817MAの神経保護効果の作用メカニズムは,軸索変性に対する抑制作用が関与していることが示唆されている.以上より,T-817MAはADの進行を抑制し,認知機能を回復させる治療薬として期待される.
著者
下橋 淳子 寺田 和子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.225-229, 1993-08-10 (Released:2013-04-26)
参考文献数
5

The effects of metallic salts and the hardness of water on the color of black tea infusion were examined.Water with the hardness of 70°-80° of calcium and the concentration of about 30 ppm of calcium ion produced the strongest redness. The addition of calcium ionmore than 60 ppm to the water caused the cream down.Water with the hardness of magnesium more than 400°and the concentration of magnesium ion more than 97 ppm had an effect on the color of black tea infusion.It is clarified that magnesium dose not practically affect the color of black tea infusion and from the sensory test, various factors such as the balance of redness and yellowness, value, chroma and transparency interact in the color of black tea infusion.The soft water with the hardness lower than 75° and the concentration of calcium ion less than 25ppm, is preferable for producing the beautiful color of black tea infusion.
出版者
奈良教育大学
雑誌
天平雲 : 奈良教育大学学生広報
巻号頁・発行日
vol.202, 2011-07-29

男女ハンドボール部春季リーグ戦優勝!!/連載 寮生インタビュー/学生企画活動支援事業採択プロジェクト決定/イベント情報/お知らせ
著者
Yasuhiro Ito Akira Miyauchi Mitsuyoshi Hirokawa Masatoshi Yamamoto Hitomi Oda Hiroo Masuoka Hisanori Sasai Mitsuhiro Fukushima Takuya Higashiyama Minoru Kihara Akihiro Miya
出版者
The Japan Endocrine Society
雑誌
Endocrine Journal (ISSN:09188959)
巻号頁・発行日
pp.EJ17-0524, (Released:2018-04-04)
被引用文献数
9

Follicular thyroid carcinoma (FTC), a form of differentiated thyroid carcinoma, is the second most common malignancy arising from thyroid follicular cells. Recently, the tumor-node-metastasis (TNM) classification for differentiated thyroid carcinoma was revised from the 7th to the 8th edition. The diagnostic criteria for poorly differentiated carcinoma (PDC) were also updated in the latest World Health Organization (WHO) classification. In this study, we investigated whether these changes are appropriate for accurately predicting prognosis. Three hundred and twenty-nine patients diagnosed with postoperative pathologically confirmed FTC, who underwent initial surgery at our hospital between 1984 and 2004, were enrolled. For this study, patients were re-evaluated and diagnosed with FTC (N = 285) or PDC (N = 44) without typical nuclear findings of papillary thyroid carcinoma. For FTC, the 8th TNM classification was a more accurate predictor of prognosis than the 7th TNM classification. In the 8th TNM classification, cause-specific survival became significantly poorer from Stage I to IVB. The cause-specific survival of PDC based on the latest WHO classification was worse than, but did not significantly differ from, that of PDC based only on the former WHO classification. For PDC, neither of the TNM classifications could accurately predict prognosis. Taken together, we conclude that (1) the 8th TNM classification more accurately reflects the prognosis of FTC than the 7th TNM classification; (2) PDC based on the former WHO classification should be retained, at least in Japan; and (3) the TNM classification may not be suitable for predicting the prognosis of PDC.
著者
杉浦 真由美
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

iPS細胞の臨床応用のために必須である「iPS細胞の質の評価」を分子レベルで可能にするため、細胞株間の質、特に分化多能性と関連する分子的特徴を解析した。ヒストン修飾に注目して分化能の程度が異なる細胞株間の比較や薬剤処理による多能性回復過程における解析を行い、活性型ヒストン修飾がiPS細胞の多能性の程度と関連し得ることを示した。さらにヒストン修飾関連因子のうちc-Mycと特定のHDACが標的ヒストン修飾や細胞の分化状態に影響を与える可能性を示した。これらの相関はES細胞ではみられなかった。また、複数のiPS細胞のゲノムを詳細に解析し分化能の違いはゲノム安定性の差によるものではないことを確認した。
著者
阿部 俊雄
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:03743470)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.71-77, 1964

写真のプロセスを利用するためには, 露光や現像と, 得られる画像の関係を知っておく必要がある.このような写真プロセスの入出力特性を求める操作を写真のセンシトメトリとよび, 製造者にとっても, 需要家にとっても重要な作業となっている.ここでは現在行なわれている白黒フィルムのセンシトメトリをJIS規格を中心にして説明し, テレビジョンの分野で写真を利用する場合の参考に供したい.
著者
尾留川 方孝
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.88, pp.111-145, 2017-09-30

年中行事という範疇がいかにして成立したか、その過程を明らかにする。 律令国家のはじめには、神祇祭祀は政治に先立ち独立性があるとされ固有の範疇をなす。律令的儀礼はそのあとに導入されたもので複数の種類があった。それらの儀礼は互いの関係を確立してはいない。その後、喪葬儀礼が他の儀礼を停止により実現されるものへ変質したのを契機に、諒闇で停止される儀礼という範疇が明確に形成された。さらに平安時代のはじめに神祇祭祀が律令的儀礼化し、その範疇に加わった。また平安時代のはじめには、神祇祭祀での排除対象として穢れが規定され、ほどなく神社でのゴミやヨゴレもそこに取り込む。すると朝廷で掃除されていたゴミやヨゴレは神祇祭祀を損なう穢れと重ねられ、さらに掃除が常に求められる事実は、朝廷を実施場所とする諸儀礼も穢れの排除を求めるからと再解釈される。そしてこの認識こそが諸儀礼を一つの範疇としてまとめたのである。こうした諸儀礼の関係や範疇の変遷は、平安時代に編纂された儀式書の構成の変遷と対応している。
著者
長谷川 晃 伊藤 義徳 矢澤 美香子 根建 金男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.68-71, 2010-08-31 (Released:2010-08-18)
参考文献数
7

The present study was conducted to revise the Japanese version of the Depressive States Checklist (JDSC), and to evaluate the construct validity of the revised version. Undergraduate students participated in two questionnaire studies. In Study 1, items with sufficient face validity and factorial validity representing the self-devaluative view and affective components were selected for the revised version of the J-DSC (JDSC-R). In Study 2, each factor of the J-DSC-R showed adequate construct validity because the correlation coefficients among the factors of the J-DSC-R, depressive symptoms, and depressive rumination generally supported the hypothesis. The J-DSC-R can be used to contribute to the understanding of vulnerability to depression.
著者
山本 恵司
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.373-373, 2016

昭和の時代だった頃に見た映画「Back to the future part 2」で,よれよれの白衣のドクとマクフライ少年を乗せたデロリアン号が大嵐の中向かった未来は,半年ほど前の過去となってしまった2015年10月21日でした.彼らは30年先の未来世界に到着してあらゆることにビックリ,特にinnovationの進展で人々の生活は様変わりしていました.医薬品製剤の世界も30年前と比べてみると貼付剤,口腔内崩壊(OD)錠はライフサイクルマネージメント(LCM)の中に定着し,経肺吸収製剤,コクリスタル製剤,イオントフォレーシスや薬剤溶出型ステントの出現までドク,マクフライが知ったとしたらその驚愕ぶりが想像できます.これらはアイデアの創出から,new product,new market,new material supplier等の有機的結合・発展,つまりinnovationの結果と言えます.我が国では安倍首相が次々と成長戦略の一環として「健康・医療戦略」を発表しており,先日のスピーチでは「医療関係産業の活性化は安倍政権の成長戦略の要であり,特にバイオ医薬品はその柱として健康長寿社会実現の鍵と言えます」と述べています.一貫した医療分野の研究開発の推進とその環境整備を総合的に行うことを目指す日本医療研究開発機構(AMED)の昨年4月の発足はその象徴と言えます.しかし現実には明るい未来が待っているとは限りません.昨年9月に出された医薬品産業強化総合戦略には「我が国として産業構造やinnovationを生み出す力が現状のままでは,日本の創薬産業は生き残りが困難な状況となる.」とあります.事実,先日発表された世界のグローバルイノベーター100社中に日本企業が40社を占めたとの発表の中で,いわゆる製薬会社がその中に1社も入っていない事実からも読み取れます.一方,USFDAは一貫してinnovationに強い意識を持っており,Statement of FDA missionの中にも「各種innovationを加速することでpublic healthを促進する」と記載されています.この流れは医薬品の生産についても確実に及んできており,マインドセットシフト(頭の構造の大転換)を要するinnovationが求められています.繁用される固形製剤の生産を例とすれば,従来からその生産方法は単位操作の積み重ねで構成されており,操作ごとに品質管理検査を行い最終的に優れた品質の製品を提供してきました.しかしinnovationの進展に伴い,これまでのquality by testingから現代ではquality by design(QbD)が主流となり,さらに昔のサンプル検査に代わってprocess analytical technology(PAT)などの技術によりreal time release testing(RTRT)が実現しています.その基礎となるのがrisk managementです.USFDAの医薬品評価研究センター(CDER)長のJanet Woodcock氏は昨春,議会で製剤プロセスを従来のバッチ式から連続プロセスにスイッチしていくことがinnovationであり,将来のあるべき姿であると発言しています.原料の医薬品,医薬品添加剤等を装置に投入して全てをコントロール,テストしながら連続プロセスにより高品質な製剤が生産されるinnovationは実は既に実現しつつあります.我らが得意とする"改善・改良"でガラパゴスへの道を再度たどること無く,世界の動きをリードするためのマインドセットシフトは待ったなしと感じられます.