著者
石井 亮登 森田 ひろみ
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.1784-1793, 2013-06-15

スクロール表示は,狭い領域に多量の情報を提示するために用いられる.本論文では,横書きの文章が下から上へと流れる縦スクロール表示について,その基本的な読み特性を調べることにより,携帯端末などのデザインに資することを目的とする.実験1ではスクロール表示の読みの基本的評価指標の1つとされる快適速度(読み手が快適に読めると感じる速度)と,移動単位(スクロールする際に1度に移動する距離,ここでは1ピクセルまたは1行)や表示枠サイズ(表示行数および1行内の表示文字数)の関係を調べた.その結果,移動単位が1ピクセルの条件の方が快適速度が速いこと,また表示行数および表示文字数の増加にともない快適速度が速くなること,表示枠内の広さが同じであれば,行数を犠牲にして行内の文字数を多くとる方が快適速度が速くなることが示された.実験2では,読み最中の眼球運動を測定した結果,移動単位により読み方が異なることが分かった.ピクセル単位のスクロール表示を読む場合は,1行を読み終えたら速やかに次の行の行頭に視線移動するのに対し,行単位のスクロール表示を読む場合,1行を読み終えてもそのまま行末で行送りを待つ読み方をする.また,移動単位によらず読み手は表示枠内の最下行に視線を向けて読むことが多いことが分かった.結果から,移動単位により異なる縦スクロール表示の読みモデルを提案する.
著者
櫻井 美代子 大越 ひろ 増田 真祐美 大迫 早苗 河野 一世 津田 淑江 酒井 裕子 清 絢 小川 暁子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】 食文化視点より次世代に伝え継ぎたい日本の家庭料理を掘り起こすことを目的とする。<br /><br />【方法】 神奈川県内の主だった14地域である横浜市中区・横浜市泉区・川崎市多摩区・鎌倉市・三浦市・大和市・相模原市(旧津久井)・伊勢原市・秦野市・小田原市・大磯町・山北町・真鶴町・清川村の地域を中心に調査を行った。それらの地域の年配者に昭和年35年前後から昭和45年前後の食生活について聞き取り調査を行った。それらの料理内容をまとめ,文献による補足調査を行い,検討を行った。<br /><br />【結果・考察】<br />神奈川県は、立地により海・山の産物を利用した料理が多くみられた。水田を多く所有する地域ばかりでなく,水田や畑作からの裏作として,小麦・蕎麦・豆類が作られている地域も多く存在する。<br />その中で今回は,間食(おやつ)に注目し報告を行うこととする。神奈川県全域で小麦粉製品の所謂,粉物が多く登場する。行事(祭り等)での頻度が多い酒まんじゅうやまんじゅう類の他,小正月,どんど焼き等でのまゆ玉飾りがあげられる。月見の十五夜や十三夜に供えるだんごの他,日常では、春先のよもぎだんごや草の花だんご,へらへらだんごなどのだんご類のいろいろな種類がうかがえる。そのだんご類の材料としては,米粉,小麦粉,さつまいも粉などが使われている。行事等で供えられただんごは,きなこやあん,砂糖醤油などをつけて食されていた。また,日常のおやつとしては,蒸しパンや庭木として育てられた果物類なども間食としてあげられる。
著者
永井 靹江 今村 ひとえ 山本 正代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.315-322, 1986-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
23

3週齢のウィスター系雄ラットを用いて, 基本飼料群, 塩類混合から亜鉛を除去した対照群, この対照群に未処理小麦ふすまを10%添加したWB群, 0.5% EDTA-2Na溶液で脱ミネラルした小麦ふすまを10%添加したEDTA-WB群の4群に分け, 3週間飼育後の亜鉛欠乏食ラットにおける小麦ふすまの影響を成育状況, カルシウム, マグネシウム, 鉄, 亜鉛の出納について検討した.1) 亜鉛欠乏の対照群, EDTA-WB群は3日目で成長は阻害され, 実験終了時に至るまで体重は増加せず, 3日目の体重をそのまま維持する程度であった.WB群は順調に体重が増加し, 基本飼料群と同じ成長速度を示した.さらに摂食量, 飼料効率においてもWB群は基本飼料群と有意差なく優れていた.2) 各臓器中のミネラル含有量は臓器, ミネラルの種類によって変動した。総重量あたりのミネラル量は基本飼料群, WB群で高い値を示し, 対照群, EDTA-WB群で有意に低い値を示した.大腿骨中のミネラル量も同様の結果であった.3) WB群のミネラル吸収量は基本飼料群とそん色なく良好な値を示した.とくに亜鉛の糞中排泄が抑制され, 吸収率は基本飼料群よりはるかに高く, 80%以上であった.対照群, EDTA-WB群の亜鉛吸収量は負の値を示した.4) 以上の実験結果から, 未処理ふすま中の亜鉛は亜鉛欠乏飼料を十分に補いうるもので, フィチン酸, センイ成分などミネラル吸収阻害作用で懸念される負の要素を考慮してもさらに上回った有効性が観察された.EDTA処理ふすまは何ら有効性を示さなかったが, 負の作用をさらに強調するほどではなかった.
著者
小濱 剛 加瀬 ちひろ 佐藤 那美 鷹野 翔太 山口 太一 山本 俊政
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.12, pp.79-84, 2019-02

近年、世界的な水産資源の需要増加に伴い、好適環境水等の人工飼育水を用いた閉鎖循環式陸上養殖が注目を浴びている。本研究では、カクレクマノミ及びニホンウナギをそれぞれ対象にして、人工海水と好適環境水における行動特性の相違を検証する事を目的とした。カクレクマノミの行動結果より、水槽内の平均利用場所は、人工海水下では上面および下面利用率が同等だったにもかかわらず、好適環境水下では下面の利用率が大幅に増加した。条件提示直後の平均活動性より、人工海水提示直後に比べ、好適環境水提示直後で境界線の通過回数が半分以下になることから、現行の好適環境水がカクレクマノミに適さないことが示唆された。一方、ニホンウナギにおいては行動を抑制させるような結果は見られなかった。以上の結果から、好適環境水の塩分及び成分比について、飼育魚種毎に明らかにする必要があると推察された。
著者
井土 ひろみ 赤松 利恵
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.89-99, 2007

【目的】TPBの枠組みを用い, 中学生における菓子の過食行動に関する心理社会学的要因を検討し, 菓子類の摂取に関する新たな栄養教育の方法を提案する.<BR>【方法】2005年5月下旬から7月末, 東京都内の8つの公立中学校の生徒1, 936人を対象に, 横断的質問紙調査を実施した.質問紙の内容は, 態度, 主観的規範, 行動コントロール感, 行動意図, 行動, 食べ過ぎないための対処法等の項目であった.<BR>【結果】1, 796人から回答を得た (回収率93%) .菓子をよく食べ過ぎる生徒はそうでない生徒に比べ不定愁訴が多かった.TPBに基づく重回帰分析は, 男女ともに態度が行動意図に与える影響が最も大きかった (男子: β=.44, 女子: β=.34) .態度の項目別得点では男女で違いがみられ, 男子の1位は「お金がかかること」, 女子は「太ること」であった.行動コントロール感が高い生徒は, 対処法をよく実施していた.<BR>【考察】心理社会学的要因には性別による違いがいくつかの項目において確認されたことから, 男女の違いを考慮した栄養教育のプログラムの必要性が示唆された.また, 従来の栄養教育は知識伝達型のものが多かったが, 本研究からは, 菓子の過食を防ぐためのスキル教育が提案できた.
著者
たなか しげひさ
出版者
史迹美術同攷会
雑誌
史迹と美術 (ISSN:03869393)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.57-69,巻頭2, 1972-02
著者
吉井 ひろ子 田嶋 長子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.30-40, 2016-11-30 (Released:2017-11-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本研究の目的は,境界性パーソナリティ障害患者の看護における精神科熟練看護師の実践内容を明らかにすることである.7施設の精神科熟練看護師10名(平均看護師経験16年・平均精神科看護経験13年)に半構造的面接を行い,KJ法での分析の結果,115個のコードの抽出から25個のサブカテゴリと6つのカテゴリに生成された.BPD看護における熟練看護師は,BPD患者病理を理解した上で,【生きづらさや本音を引き出しながら患者を理解する】といった患者受容をし,【大切に思う気持ちを伝えることで安心と励ましを届ける】ことや,【“まきこまれない”を意識しすぎず思いに共感することで信頼関係を形成】していた.また,患者に即した成長を促す目的で,【患者のありのままを受容し,セルフコントロールを支える】ことや,【患者の状況に応じて枠組みを調整したりしなかったりしながら,セルフコントロールを手伝う】こと,心理的中立の立場を遵守するために,【看護師のありのままの自分を受容し,プロ意識でセルフコントロールする】ことも含め,全般にわたってフレキシブルな対処がみてとれた.これらから,BPD看護は難しくても,患者や看護師自身のありのままを受容し,看護師の思考と行動のフレームを柔軟に変容させたりさせなかったりするフレキシブルな対処によって,心的疲弊に陥らずよいかかわりを続けることが可能になると考えられた.
著者
いとう たけひこ ゴールドスティン キース
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.70-75, 2015

地震、津波、そして原発事故と2011年3月11日に東日本大震災で被災した人々への災害支援活動のなかには様々な活動のタイプがある。そのなかでも人々に幸せをもたらす共通の物語のテーマがあるはずである。本研究では1659人の調査に基づいて質的・量的分析をおこない、東北支援のタイプをカテゴリー化した。そして、その中でもコミュニティにたいしてポジティブな経験をもたらすようなものとネガティブな経験をもたらすような場合とで何に差があるかを分析し、「地球幸福憲章」との関連について考察する。
著者
塚田 久恵 三浦 克之 城戸 照彦 佐伯 和子 川島 ひろ子 伊川 あけみ 西 正美 森河 裕子 西条 旨子 中西 由美子 由田 克士 中川 秀昭
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1125-1134, 2003 (Released:2014-12-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1

目的 乳幼児期の肥満が成人後の肥満にどの程度結びつくかについての日本人でのデータは乏しい。本研究は乳幼児期(3 か月,12か月,3 歳)の肥満度と成人時(20歳)の肥満度との関連を明らかにし,乳幼児健康診査(以下,健診)時の肥満指導のための基礎資料を得ることを目的とする。方法 石川県某保健所管内において1968-1974年に出生した20歳男女を対象として行われた成年健康調査を受診した男女のデータと,同管内における 3 か月,12か月,3 歳の乳幼児健診データとのレコード・リンケージを行い,全ての健診を受診して20年間追跡できた2,314人(男1,080人,女1,234人)を対象とし,乳幼児期と成人時の肥満度の関連について分析した。成績 各月齢・年齢のカウプ指数(または body mass index (BMI))相互間の相関を見たところ,20歳時の BMI と 3 か月時・12か月時・3 歳時のカウプ指数との間ではいずれも有意な正相関が認められ,中で最も強い相関を示したのは 3 歳時カウプ指数とであった(男 r=0.33, P<0.001,女 r=0.42, P<0.001)。乳幼児期の肥満度カテゴリー別に20歳時の肥満者(BMI 25 kg/m2 以上)の割合をみると,3 歳時カウプ指数15未満の者では男で4.6%,女で1.0%であったが,3 歳時カウプ指数18以上の者では男で29.1%,女で29.5%にのぼり,カウプ指数15未満の者に比べ男で6.3倍,女で29.5倍の率となった。3 か月時および 3 歳時におけるカウプ指数が平均未満か以上かのカテゴリー別に20歳時に肥満になっていた割合を検討したところ,3 か月時のカウプ指数が平均以上か未満かを問わず,3 歳時のカウプ指数が平均以上であったもので割合が高かった。結論 乳幼児期の肥満度は20歳時の肥満度と強い関連があったが,3 歳時との関連が最も強かった。3 歳時に肥満であった児は成人時にも肥満である率が約30%と評価され,本データは 3 歳児健診における将来の肥満のアセスメントに利用できると考えられる。
著者
かりまた しげひさ
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.23-28, 2005-12-31 (Released:2017-08-31)

In order to hand down the endangered Ryukyuan language to posterity, we have made an audio database of all headwords and examples of the Ryukyuan language based on a number of dictionaries of Ryukyuan dialects, such as Dictionary of Nakijin Dialect and Dictionary of an Amami Dialect, on Semantic Principles. The database is available on the homepage of the library of the University of the Ryukyus. This paper will introduce the Audio Database of the Ryukyuan Language and also discuss the significance of the preparation of the database and problems to be solved in the future.
著者
堤 大三 藤田 正治 宮本 邦明 今泉 文寿 藤本 将光 国領 ひろし 泉山 寛明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_721-I_726, 2011 (Released:2012-03-14)
参考文献数
5

In August 2009, the Typhoon Morakot hit Taiwan and caused an extraordinary amount of rainfall. Due to the heavy rainfall, a large number of floods and sediment-related disasters occurred all over the island. In Shaolin Village, Kaohsiung County, a huge landslide occurred around 6 am August 9, destroyed the village completely and killed more than 500 people. After the landslide, authors visited the landslide site and investigated the landslide scour to collect information on factors affecting landslide occurrence such as exposed bedrock and soil layer conditions. GIS analysis using DEM data were also conducted to determine the sliding domain. According to the site investigation and GIS analysis, rainwater infiltration analysis and slope stability analysis were conducted. Results of the analysis suggested that the landslide domain, about 1,200 m long, 500 m wide and 80 m deep was collapsed by multi phased manner.
著者
宮下 ひろみ
出版者
仙台白百合女子大学
雑誌
仙台白百合女子大学紀要 (ISSN:13427350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.117-123, 2002-01-31
被引用文献数
1

若年女性の調理可能なレパートリー調査をしていく過程において,比較的調理経験の浅い対象者にとって,料理の「できる」「できない」という実態または判断にはどんな要素がどのように関与するものなのか,検討の余地が残されている。ここでは,料理の難易度はどのような要因に起因するのか,難易度の基準となるものはどのようなことなのかを探ることを目的として,これまで調査票に取りあげた34種のうちご飯物の6品の料理についてその食材数と調理過程を詳しく分析することを試みた。結果はご飯ものの場合,食材数は赤飯の5食品を除き,おおよそ10食品前後が使用されていた。食材の数と調理操作数をみると,ちらし寿司のように食材の数,調理操作数共に多い料理もあれば,赤飯のように食材数が少なくても調理操作数が比較的多い料理もみられた。調理操作数が同じ29のチャーハンと赤飯でも学生の調理可能者数の割合には大きな差がみられた。今後の課題として,調理過程の分析にはそのもととなる調理過程を設定するにあたり,家電調理器の普及や市販のインスタント調味料類や加工品の使用状況を把握したり,共存する調理法を標準化していく必要がある。
著者
大西 美智恵 山内 明子 「えひめ訪問看護研究会」
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.38-43, 2004-01-01

はじめに 午後9時過ぎ,訪問看護ステーションから,「お疲れさま! じゃ,また次回」という挨拶を交わしながら,数人の訪問看護師たちが帰って行く……。平成13年度から,訪問看護実践に役立つ感染防止マニュアルづくりのために結成された「えひめ訪問看護研究会・感染防止マニュアル作成プロジェクトチーム」の仲間たちである。5か所の訪問看護ステーションの訪問看護師と,元民間病院の在宅ケア顧問の看護師,大学の教員等,総勢9名のメンバーである。「現場で使える有益なマニュアルをつくろう」を合い言葉に,愛媛県内すべての訪問看護ステーションの協力を得て作業を進めてきた。今年中に愛媛の訪問看護師たちにマニュアルを届けるため,最終の作業に追われている。 まず最初に,「えひめ訪問看護研究会」(以下,「研究会」と略記)の現在の活動の一端を紹介した。本会はなにものにも束縛されない訪問看護師たちの自主的な会として平成8年に発足した。引き続きその轍を紹介したい。