著者
福田 直子 大宮 あけみ 伊藤 佳央 小関 良宏 野田 尚信 菅野 善明 鈴木 正彦 中山 真義
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.380, 2003-03-27 (Released:2004-02-24)

同一花弁において着色組織と白色組織が存在する覆輪花弁は、色素生合成の活性化・不活性化の機構を理解するために極めて有効な材料であると考えられる。トルコギキョウの覆輪形成に関与するフラボノイド系色素の生合成について解析した。 先端着色品種では、花弁の成長初期から着色組織にフラボノイドの蓄積が認められ、開花直前からアントシアニンが合成されたのに対し、白色組織では花弁のすべての生育ステージにおいてフラボノイドとアントシアニンの蓄積は認められなかった。一方、基部着色品種では先端着色品種と異なり、花弁の成長初期には全ての組織においてフラボノイドの蓄積が認められたが、花弁の成長に伴い白色組織のフラボノイドは減少していった。両品種とも開花花弁の着色組織と白色組織においてchalcone synthase (CHS)遺伝子の転写産物の蓄積に顕著な差が認められ、白色組織においてCHS遺伝子の転写が特異的に不活性化されていた。トルコギキョウにおいては、CHS遺伝子の組織特異的発現が、覆輪の形成に深く関与していると考えられる。花弁の成長に伴うフラボノイドの蓄積パターンから、先端着色品種ではCHSの不活性化は花弁の成長の初期から起こるのに対し、基部着色品種では花弁の成長に伴いCHSの不活性化が起こると考えられる。それぞれの品種において、CHSの不活性化には、異なる機構が機能していることが示唆された。
著者
岸本 久太郎 中山 真義 八木 雅史 小野崎 隆 大久保 直美
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.175-181, 2011 (Released:2011-04-22)
参考文献数
16
被引用文献数
10 22

現在栽培されている多くのカーネーション(Dianthus caryophyllus L.)品種では,芳香性が低下傾向にある.強い芳香や特徴的な芳香をもつ Dianthus 野生種は,非芳香性品種に香りを導入するための有望な遺伝資源であると考えられる.我々は,花き研究所に遺伝資源として保持されている Dianthus 野生種の中から,芳香性の 10 種と,それらとの比較のためにほぼ無香の 1 種を選び,嗅覚的評価に基づいて 4 つにグループ分けした.GC-MS を用いた解析の結果,Dianthus 野生種の花の香りは,主に芳香族化合物,テルペノイド,脂肪酸誘導体に属する 18 種類の化合物によって構成されていた.最も強い芳香をもつグループ 1 の甘い薬品臭は,芳香族化合物のサリチル酸メチルに由来した.グループ 2 の柑橘様の香りは,テルペノイドの β-オシメンや β-カリオフィレンに由来した.グループ 3 の青臭さは,脂肪酸誘導体の (Z)-3-ヘキセニルアセテートに由来した.ほぼ無香のグループ 4 では,香気成分がほとんど検出されなかった.これらの花における放出香気成分の組成と内生的な香気成分の組成は異なっており,蒸気圧が高く沸点の低い香気成分が効率的に放出される傾向が認められた.また,グループ 1 の D. hungaricus の主要な芳香族化合物は花弁の縁に分布し,グループ 2 の D. superbus の主要なテルペノイドやグループ 3 の D. sp. 2 の主要な脂肪酸誘導体は,花弁の基部や雄ずい・雌ずいに分布した.この結果は芳香性に寄与する花器官が,Dianthus 種によって異なることを示している.本研究において,嗅覚的に良い香りで,芳香性に対する寄与が大きいサリチル酸メチルや β-オシメンや β-カリオフィレンを豊富にもつグループ 1 やグループ 2 の Dianthus 野生種が,カーネーションの芳香性育種に重要な遺伝資源であることが示唆された.
著者
中山 真孝 齊藤 智
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.86.14029, (Released:2015-05-28)
参考文献数
42

The present study investigated principles of phonological planning, a common serial ordering mechanism for speech production and phonological short-term memory. Nakayama and Saito (2014) have investigated the principles by using a speech-error induction technique, in which participants were exposed to an auditory distractor word immediately before an utterance of a target word. They demonstrated within-word adjacent mora exchanges and serial position effects on error rates. These findings support, respectively, the temporal distance and the edge principles at a within-word level. As this previous study induced errors using word distractors created by exchanging adjacent morae in the target words, it is possible that the speech errors are expressions of lexical intrusions reflecting interactive activation of phonological and lexical/semantic representations. To eliminate this possibility, the present study used nonword distractors that had no lexical or semantic representations. This approach successfully replicated the error patterns identified in the abovementioned study, further confirming that the temporal distance and edge principles are organizing precepts in phonological planning.
著者
藤原 隆広 中山 真義 菊地 直
出版者
園藝學會
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.796-804, 2002 (Released:2011-03-05)

キャベツセル成型育苗において、根鉢を乾燥させずに、地上部に適度な水ストレスを与える方法として、育苗後期にNaClを施用する方法を考案し、その実用性について検討した。NaCl処理により、根鉢の浸透ポテンシャルを低くすることで、灌水量を制限せずに育苗時の地上部水ポテンシャルを低く推移させることができた。NaCl処理によって、乾物量を減少させずに草丈と葉面積を抑制し、乾物率の高い苗を生産することができた。また、NaCl処理によって抑制された苗の葉面積は定植後1週間程度で対照区に追いつき、NaCl処理による収量の減少は認められなかった。NaCl処理によるNa含有率の増加に伴い減少したK、CaおよびMg含有率は定植後1週間程度で回復した。NaCl処理によって、クチクラ表面のワックス量が約20%増加し、定植後の苗の水分損失が抑えられた。NaCl処理開始後2日目から気孔コンダクタンスの低下、苗の蒸散量の抑制、水利用効率の向上が認められた。以上の結果、キャベツセル成型育苗における育苗後期のMaCl施用は、根鉢を乾燥させずに、苗の徒長的生育を抑制でき、乾燥ストレス耐性の付与も可能であることから、実用的な技術になりうることを明らかにした。
著者
米浪 直子 土居 香織 君ヶ袋 志麻 中山 真理子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.15, 2011

【目的】食事誘発性体熱産生(DIT)は摂取エネルギーと食事内容に影響され、高たんぱく質食を摂取した場合、食後の熱産生により摂取エネルギーの約16%が消費されるといわれている。さらに運動後のアミノ酸投与は筋たんぱく質の合成率をより高めるという報告もある。本研究では、高たんぱく質食を運動後に摂取することがエネルギー代謝にどのような影響を及ぼすか検討を行った。【方法】女子大生7名を対象として、30分間の65%VO₂max強度での運動負荷後、食事を摂取し、食後6時間までの心拍数、RQ、酸素消費量、DITを測定した(運動条件)。同様に運動を負荷せず安静状態で測定を行った(安静条件)。食事内容は高たんぱく質食644kcal(PFC 34:28:36%)と一般食642kcal(PFC 15:25:60%)とした。【結果・考察】酸素消費量、発生熱量は食事摂取前に運動を負荷することによって高たんぱく質食条件が一般食条件よりも有意に高い値を示した。また、RQは運動負荷により高たんぱく質食条件が一般食条件より有意に低く、脂質燃焼が亢進することが示された。DITは、運動条件においては一般食条件よりも高たんぱく質食条件で高くなる傾向を示したが、安静条件では食後6時間までは両食事条件で有意な差は見られなかった。以上のことから、DITは一般食では運動による影響が見られないが、高たんぱく質食は運動後に摂取することで脂質の燃焼を促進するとともにDITが高まる可能性が示唆された。
著者
中山 真由子 槇 宏太郎 久保田 雅人
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.467-475, 2014 (Released:2014-12-23)
参考文献数
11

骨格性上顎前突症に対して,外科的矯正治療とインプラント治療により咬合機能と美的調和の両者で満足し得る結果が得られたので,その概要を報告する.症例は22歳男性でガミースマイルを伴う骨格性上顎前突症および過蓋咬合,左側鋏状咬合による下顎右側偏位,下顎両側第二小臼歯の先天性欠如を認めた.そこで,関連する複数科の合同症例検討により外科的矯正治療を適応とし,上顎前方歯槽骨切り術による上顎前歯部の後上方への移動と下顎両側第二小臼歯の先天性欠如部にはインプラント補綴処置にて咬合の再構築を行った.この結果,ガミースマイルおよび過蓋咬合が改善され患者の美的な満足と共に長期的に治療後も安定した咬合状態が獲得できた.以上のことから,顎変形症に対しては,関連する複数の専門診察科によるチームアプローチが重要であると考えられた.
著者
笹川 果央理 中山 真孝 内田 由紀子 竹村 幸祐
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.431-441, 2017 (Released:2017-12-25)
参考文献数
31
被引用文献数
2

This study investigated the personality of employees on medical leave due to mental health disorders. Focusing on Contingencies of self-worth (CSW) as a metric of personality, we examined whether the CSW of employees on medical leave due to mental health disorders matched the perceived values of their workplace, in comparison with that of employees at work. We also examined the change of CSW before and after medical leave. Thirty-six employees on medical leave and 133 employees at work participated in this survey study. The results showed that three types of CSW (CSW for being superior, for having positive evaluation from others, for having autonomy) were higher in employees on medical leave than in employees at work. We also showed that there was a large difference between each type of CSW of employees on medical leave and the perceived values of their workplace and that all three types of CSW decreased after medical leave.
著者
中山 真義
出版者
一般社団法人 植物化学調節学会
雑誌
植物の生長調節 (ISSN:13465406)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.85-93, 2009-05-31 (Released:2017-09-29)
参考文献数
29

花の模様は多く場合,アントシアニン色素の生合成活性が花弁上の位置によって異なることによって形成される.花の模様は,アントシアニンの生合成に関わる遺伝子のみを対象とした,組織分化の極めて単純な系である.従って組織分化を導く「自立的な」,「部位特異的な」,遺伝子の活性化・不活性化の機構を解明するための,極めて優れた研究対象である.花の模様は多様であり,境界領域を形成する細胞の色の変化にも様々な違いが認められる.星型や覆輪型など品種として安定して発現する模様の形成には,内生的な転写後抑制が関与していることが示されつつある.一方で,不規則に発現する模様の形成にはトランスポゾンが関与していることが理解されつつある.模様を変化させる環境条件や化合物についての情報も得られており,これらは模様の形成機構を解明するための有力な手がかりになると期待される.
著者
中山 真孝 齊藤 智
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.249-257, 2015

The present study investigated principles of phonological planning, a common serial ordering mechanism for speech production and phonological short-term memory. Nakayama and Saito (2014) have investigated the principles by using a speech-error induction technique, in which participants were exposed to an auditory distractor word immediately before an utterance of a target word. They demonstrated within-word adjacent mora exchanges and serial position effects on error rates. These findings support, respectively, the temporal distance and the edge principles at a within-word level. As this previous study induced errors using word distractors created by exchanging adjacent morae in the target words, it is possible that the speech errors are expressions of lexical intrusions reflecting interactive activation of phonological and lexical/semantic representations. To eliminate this possibility, the present study used nonword distractors that had no lexical or semantic representations. This approach successfully replicated the error patterns identified in the abovementioned study, further confirming that the temporal distance and edge principles are organizing precepts in phonological planning.
著者
栁下 良美 原 靖英 中山 真義
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.125-130, 2013 (Released:2013-07-03)
参考文献数
13
被引用文献数
1

日本で施設切り花栽培に用いられる日長反応が中性のスイートピーの冬咲き性品種は,花色などの多様性がヨーロッパで利用されている長日性の夏咲き性品種に比較して小さい.我々は冬咲き性品種の多様性を拡大するために,夏咲き性品種に特有の花弁に斑の入る形質の導入を試みた.最初のステップとして斑入り形質の遺伝様式と着色性や開花習性との連鎖について検討した.斑入り花と全着色花,全白色花との交雑による後代での花弁着色の表現型の分離比から,斑入り形質は劣性の1遺伝子により制御されており,斑入りの表現型は着色性を制御する遺伝子により劣性上位で抑制されていることを明らかにした.また既存の報告と同様に,現在日本で栽培されている冬咲き性も1つの劣性遺伝子により制御されていることを明らかにした.さらに斑入り形質,着色性および開花習性は互いに独立して分離していることを示した.これらのことから,冬咲き性は表現型が発現した世代で固定が完了する一方で,斑入り形質はその自殖後代で全白色花が現れない世代で固定が完了すると考えられる.
著者
北畑 信隆 早瀬 大貴 Bisson Melanie M. A. 湯本 弘子 中野 雄司 中山 真義 Groth Gerog 浅見 忠男
出版者
植物化学調節学会
雑誌
植物化学調節学会研究発表記録集 (ISSN:09191887)
巻号頁・発行日
no.46, 2011-10-03

The gaseous hormone ethylene plays important roles in many physiological and developmental processes in plants. To regulate ethylene signaling, we screened novel chemicals with ethylene mimic activity that induce triple response phenotype of etiolated seedlings. Finally we identified a compound with ethylene mimic activity, named HJ2. Ethylene biosynthetic inhibitor did not suppress HJ2-induced phenotype. On the other hand, ethylene insensitive mutant, ein2, suppressed HJ2-induced phenotype. Moreover, antagonist of ethylene receptor, STS, suppressed HJ2-induced phenotype in dose-dependent manner. These results suggested that HJ2 is an agonist of ethylene receptor. To improve ethylene activity of HJ2, we designed and synthesized HJ2 derivatives. As a result, we developed more effective ethylene agonists. At present, we examine binding of these chemicals to ETR1 protein in detail.
著者
中山 真里 檜山 敦 三浦 貴大 矢冨 直美 廣瀬 通孝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.177-188, 2014-01-15

超高齢社会が到来した日本国内には,就労意欲に満ちた元気高齢者が多く存在する.彼らの能力を活かして就労機会を創出していくために,複数人の労働力を合成して1人のバーチャルな就労者を合成するMosaic型就労が提案されている.本研究では,柔軟な時間就労における安定的な労働力供給を実現するため,時間Mosaic型就労に着目する.特に,不規則な時間就労形態として農業に従事する高齢者グループを対象に,時間Mosaic形成支援システムを開発し有効性について実証実験を通じて評価した.この結果,時間Mosaicの効率良い形成と補填に対してシステムが有用であると分かった.特に,就労者グループにおける個人の就労可否日時,月別労働時間,働きたい/ヘルプ可能/働けないの3項目に対応した◎/○/×の3種の記号による就労意志の表示が有効と分かった.
著者
日野 泰志 中山 真里子 宮村 しのぶ 楠瀬 悠
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.569-576, 2011 (Released:2011-08-10)
参考文献数
28
被引用文献数
2 3

In the present study, we examined the effects of orthographic and phonological neighborhood sizes for Japanese Katakana words using a lexical decision task. Kawakami (2002) reported an inhibitory orthographic neighborhood size effect along with a null phonological neighborhood size effect in his lexical decision tasks. In contrast, Grainger, Muneaux, Farioli, and Ziegler (2005) reported an interaction between orthographic and phonological neighborhood sizes in a lexical decision task. Therefore, we re-examined the effects of orthographic and phonological neighborhood sizes for low-frequency Katakana words in a lexical decision task. Consistent with Grainger et al., we found the interaction between orthographic and phonological neighborhood sizes, indicating that lexical decision performance for Katakana words is modulated by the nature of orthographic-phonological relationships.