著者
中村 大輝
出版者
Japan Society for Science Education
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.165-170, 2022-12-18 (Released:2022-12-15)
参考文献数
15

近年,機械学習(Machine Learning)の技術を教育評価に応用する動きが加速している.しかしながら,科学教育における機械学習を用いた評価方法は研究蓄積が不十分であることに加えて,今後の研究へ向けた成果と課題が十分に整理されていない.そこで本研究では,科学教育における機械学習を用いた評価方法の先行研究をレビューし,研究の現状と課題を検討した.Zhai et al.(2020a)の先行レビューに新たな論文を加えた60件の論文を対象にレビューを実施した結果,次の3点が明らかになった.1.機械学習の導入によって自由記述などのより多様なデータを使用して妥当性を担保しつつ,採点の自動化によって評価の負担を減らし,大規模な評価の実施を目指す研究が多くみられる.2.評価内容や領域には偏りが見られる.3.多くの研究が転移可能性の課題を抱えている.
著者
中村 大輝 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.539-542, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
7

本研究では,教育分野における授業実践の効果量分布がどのような分布に従うのかを検討した.過去のメタ分析における効果量を対象に,正規分布,指数正規分布,混合正規分布のフィッティングを試みた結果,正規分布の予測力が相対的に低いことが示された.また,指数正規分布によるモデリングを事例的に示した.本研究の結果は,効果量分布に正規分布以外の分布を仮定したモデリングを行うことで,将来の授業実践の効果量分布に関する予測力を高められる可能性を示唆している.
著者
中村 大輝
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.197-204, 2018-11-30 (Released:2018-12-05)
参考文献数
39
被引用文献数
5

問題発見から仮説設定に至るまでの過程は発見の文脈と呼ばれ, 従来, その指導や評価があまり重視されてこなかった。そこで本研究は, 理科教育の「発見の文脈」における評価の必要性や, 当該過程における評価方法の問題点を明らかにすることを目的とし, 先行研究における評価方法を分析した。その結果, 発見の文脈においても評価の必要性が主張できること, 先行研究における発見の文脈の評価は, ①想起数の評価, ②論理性の評価, ③検証可能性の評価, ④能力の評価の4種類に分類できることが明らかになった。また, 各評価方法には, 指導方法に還元されない評価である(①), 思考過程を考慮していない(②), 正当化の文脈へ方向付けられた評価方法を発見の文脈に適用している(②③), 学習者が検証可能性を判断することが困難である(③), 発見の文脈において必要となる能力が明らかになっていない(④), 能力と実際のパフォーマンスの関係性が明らかになっていない(④)といった問題が存在することが明らかになった。
著者
中村 大介
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.75-92, 2020

先スキタイの馬具には大別してノヴォチェルカッスク類型とチェルノゴルフカ類型の二系統がある。本稿ではそれぞれの類型の特徴を整理し、時期による差異ではないことを再確認した。また、チェルノゴロフカ類型は東方のアルタイ・サヤン地域を起源とすると考えられているが、少なくとも鑣については、直前の型式は黒海周辺で連続的に変化しうることを明示した。加えて、馬に操縦に関する馬具の改良についても、アルタイ・サヤン地域ではなく、黒海から西アジアの範囲で先行することを指摘した。
著者
中村 大輝 大澤 俊介 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.433-436, 2019

<p>本研究は,理科の授業において領域固有スキルが科学的推論能力の育成に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.小学校第6学年の児童215名を対象とした調査の結果,領域固有スキルのうち,知識を適用するスキルと科学的推論能力に正の影響が認められた.他方,認知欲求が低い学習者においては,領域固有スキルのうち,事物・現象を当該領域に特徴的な視点で捉えるスキルが,科学的推論能力育成の阻害要因となる可能性が示唆された.</p>
著者
佐久間 直也 中村 大輝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.27-30, 2021-12-19 (Released:2022-01-20)
参考文献数
11

科学的探究において仮説は重要な役割を持つにもかかわらず,これまで理科の授業では仮説の立て方の指導がほとんど行われてこなかった.そこで筆者らは、複数事象の比較を通した仮説設定の段階的指導法を開発し効果検証を行ってきた(佐久間・中村,2021).本発表では,これまでの実践における課題の改善と新たな学級や単元における実践に取り組み,提案する指導法が一貫した効果を持つかを検討した.具体的には,中学校第2学年「電流とその利用」において継続的な実践を行い,授業時の仮説設定の質を評価した.その結果,提案する指導法は従来の指導法と比べて仮説設定の質の向上に相対的に高い効果があることが示された.その一方で,授業後のアンケートでは仮説設定が難しいと感じていた生徒も依然として多く見られたことから,今後は仮説設定の題材の工夫と継続的な指導によって苦手意識を軽減できるよう取り組む必要がある.
著者
中村 大貴 矢吹 太朗
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.365-366, 2020-02-20

技術文書共有サービスにおいて,よい執筆者を発見するために,PageRankに基づく順位付けを行う.対象とするサービスはQiitaである.このサービスでは,記事の投稿者の質をContributionsという指標で評価している.本研究では,このサービスにおけるユーザと記事をノード,いいねをエッジとみなし,APIとスクレイピングによってデータを取得し,PageRankを計算する.計算したPageRrankとContributionsの比較結果を報告する.
著者
Dagvadorj Otgonjargal 中村大 川口貴之 渡邊達也 川尻峻三 宗岡寿美
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.137, no.7, pp.69-78, 2021-07-31 (Released:2021-07-31)
参考文献数
16

In this study,field surveys were carried out at the damaged area of slope stabilization works,where the main cause was presumed to be the frost heaving of the rock mass.Field measurements of the freezing depth and the amount of frost heave were also conducted.In addition, the effectiveness of the slope stabilization work with the frost heave measures was verified based on the investigation results.The findings are summarized as follows. (1) From the results of the field survey and the field measurements,it was found that even if frost heaving occurred in the extreme surface layer, the rock mass would be degraded and the slope stabilization work would be affected.(2)From the results of the frost heaving tests, it is clear that the frost susceptibility of the damaged rock slope is extremely high, and there was wide agreement between the results of the frost heaving tests and the results of determining the frost susceptibility of the damaged rock slope using a simple strength test method. Therefore, the validity of the simple method proposed by Nakamura et al. for determining the frost susceptibility of rocks by using the strength test was also verified. (3)It was confirmed that both the gabion and the continuous fiber reinforced soil work were effective in preventing the freezing front from advancing into the rock mass.The method of covering the rock slope with non-frost susceptible material to prevent the penetration of the freezing front was found to be effective as a countermeasure against frost heaving.
著者
中村 大介
出版者
慶應義塾大学独文学研究室
雑誌
研究年報 (ISSN:09174281)
巻号頁・発行日
no.38, pp.29-53, 2021-03

0. 社会のなかの芸術家1. 『シニョール・フォルミカ』について2. ドイツにおける「文化の消費」3. 芸術家たちの戦略4. 結論論文
著者
中村 大地
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2020-03-25

ブロックチェーンとは2009年サトシ・ナカモトによって提案された改竄が困難な元帳を作成する分散型元帳技術である。ブロックチェーンを活用した技術の代表例として仮想通貨「bitcoin」が存在する。しかし、「bitcoin」は取引をブロックチェーンに記録する際に、一度記録されてからチェーンが数ブロック伸びるまで待つ必要があり、単位時間当たりに処理できる取引数に限界がある。これをスケーラビリティ問題と呼ぶ。ライトニングネットワークは、スケーラビリティ問題を解決するための方法として2016年にJosephらによって提案された。ライトニングネットワークは、ユーザとユーザ間を繋ぐマイクロペイメントチャネルで構成されている。ライトニングネットワークにおいて、どのユーザ、あるいはどのチャネルを経由して目的のユーザに送金を行うかを決定するのがライトニングネットワークのルーティング問題である。本研究ではルーティングアルゴリズム[Flare]を実装して性能測定、およびライトニングネットワークのルーティング問題に対して、ユーザが自分の利益を最大化するために周囲のノードと協力することを考え、ルーティングアルゴリズムの拡張を行った。 [Flare]は、2016年にPavelらによって提案されたライトニングネットワークのルーティングアルゴリズムである。Flareでは各ノードはネットワークにおける自身の近隣の情報しか所有しておらず、周囲のノードに近隣情報を要求していくことで目的のノードへのパスを発見する。このとき、支払いの中継を行ったノードは送金者から手数料として利益を得ることができる。 このアルゴリズムにおいて、一部のユーザが協力することで互いの利益を最大化しようとする場合を考える。ネットワーク上に存在するユーザの中で、中継ノードとして利用される確率の高いユーザを選択し、そのユーザ同士で互いにチャネルを持ち合うグループを作成する。チャネルを持ち合うことで、グループのメンバ1人でも近隣情報を要求されれば、グループの全ユーザが探索領域に入るようになり、中継ノードとして使用されやすくすることでお互いの利益を最大化しようとする。このようなユーザのグループを作成することで、アルゴリズムの性能、ユーザが得られる利益がどう変化するかを調査した。結果、グループを作成することで、メンバが得る利益と他のノードがパスを発見できる確率を増加させることに成功した。
著者
川口 貴之 中村 大 畑中 将志 山崎 新太郎 山下 聡 三上 登 上野 邦行
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.187-194, 2013 (Released:2014-11-06)
参考文献数
17

侵食対策として急斜面に施工された,ある連続繊維補強土の一部が完成から半年程度で崩落した.崩落箇所 を詳細に調べたところ,背後の地山からの湧水を考慮して設置されていた裏面排水材に赤褐色のゲル状物質が 付着しており,排水能力が低下した可能性が示唆された. そこで本研究では,まず始めに湧水とゲル状物質の性質を簡易的に調査した.次に,現地で裏面排水材の試 験片に地山からの湧水を流すことで目詰まりを再現し,実験室内で垂直方向透水性能試験と面内方向通水性能 試験を実施した.その結果湧水は還元状態にあり,ゲル状物質は鉄イオンの酸化に伴う沈殿物であること,排 水材の透水・通水性能はこの物質の付着によって短期間で急激に低下することが分かった.
著者
中村 大介
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.53-68, 2012 (Released:2016-01-13)
参考文献数
15
被引用文献数
1

This paper aims to elucidate what intuition is regarded to be in Jean Cavaillès’ philosophy of mathematics, by investigating his study of the emergence of Cantorian set theory. Cavaillès construes the emergence to consist in three steps: first, Georg Cantor invented point-set derivation to solve a problem for analysis; second, he also showed that point-set derivation can produce infinitely ascending derived sets without arriving at any continuum; third, by replacing point-set derivation with two generating principles and a restricting principle, Cantor established the existence of transfinite ordinal numbers. Cavaillès finds a central role of mathematical intuition in the emergence of set theory thus construed.
著者
羽原 俊祐 小山田 哲也 我満 俊文 中村 大樹
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.433-439, 2016-03-31 (Released:2016-03-31)
参考文献数
7
被引用文献数
3

NaCl等の凍結防止剤の使用に伴いコンクリートのスケーリング劣化が激しくなっており、この現象をソルトスケーリングという。ここではスケーリング劣化現象を解明するため、ASTM C 672法と整合性がある本研究室で開発した小片試験方法を使用し、ソルトスケーリングに及ぼす冷却最低温度(0~-40℃)及び凍結防止剤の濃度の影響(0.01-10%)を把握した。さらにモルタルの配合の影響を把握するため、砂セメント比(S/C=0-3)及び水セメント比(W/C=0.25-0.7)をかえてソルトスケーリングを評価した。ソルトスケーリングは真水では起こらず、幅広い凍結防止剤の濃度(0.1-10%)で生じる。凍結する最低温度の影響は少なく、-7℃以下の温度で生じる。砂セメント比は著しく小さい場合、水セメント比も0.35以下で抑制効果があるが、それ以上では水セメント比の影響は少なく、砂セメント比が1以下の範囲では抑制されるが、それ以上では影響は少ない。
著者
雲財 寛 山根 悠平 西内 舞 中村 大輝
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.545-556, 2020-03-30 (Released:2020-04-15)
参考文献数
23

本研究は,理科における批判的思考が知的好奇心に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。公立小学校の児童346名,公立中学校の生徒971名を対象に,五件法の質問紙調査を実施した。調査の結果,下記に示す3点を示唆する結果となった。熟慮的な思考を促すことによって,知的好奇心が高まること。熟慮的な思考を促すことによる知的好奇心への影響の大きさは,校種間で違いはないこと。中学生の場合,健全な懐疑を促すことで,知的好奇心が高まること。
著者
渡邊 和洋 中園 江 中村 大輔 西谷 友寛 西村 奈月 松島 弘明 谷尾 昌彦 江原 宏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.373-384, 2016-10-05 (Released:2016-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1 9

コムギの多収栽培技術の開発を目的に,耐倒伏性品種「さとのそら」を供試し,慣行の基肥重点型の施肥体系に対して,基肥を減らし追肥で窒素を増施用する生育後期重点施肥の効果を2カ年にわたって検証した.その結果,生育後期重点施肥により,茎立期以降の乾物成長量の大きくなる時期にLAIが高まったこと,登熟期後半まで葉色,NARが高く維持されたことでCGRが高く経過し,成熟期の総乾物重が大きくなった.一方で,茎立期の茎数が少なくなったことに加えて,この時期に窒素を増肥したことで,茎間の同化産物および窒素の競合が緩和され,茎の生存率が高まり,穂数が増加するとともに,シンク容量の大きな穂が形成されて1穂粒数も増加したものと考えられた.さらに登熟期後半までNARが高く維持されたことで1000粒重も増加した.以上の乾物成長経過および収量構成要素の形成の結果,生育後期重点施肥により,収量を15~50%増加させることが可能であった.一方で,成熟期が遅れること,外観品質の低下や子実タンパクの過剰,土壌の酸性化の助長などの普及技術化に向けて改善すべき課題も明らかとなった.
著者
三鍋 佑季 川尻 峻三 川口 貴之 中村 大 山下 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_497-I_507, 2015 (Released:2016-02-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

締固めた地盤材料の含水比の増加に伴う工学的性質の変化を土の微視的構造によって考察した例は多い.しかし,過去の研究での土の微視的構造は力学試験挙動を解釈するためのツール的な役割であり,物理的な意味合いを持つパラメーターによる定量的な考察には至っていない.そこで本研究では,含水比を変化させて作製した砂質土を対象に一連の力学試験を行い,得られた変形・強度特性の変化をX線CTスキャンから取得した土粒子間サクションと配位数によって評価した.その結果,不飽和・飽和供試体の変形・強度特性の変化は,それぞれサクションや配位数の変化と整合する傾向にあった.このことから,締固め時の含水比を変化させた地盤材料の変形・強度特性が最適含水比よりも乾燥側の含水比で最大となることには,配位数が関与していることを見出した.