著者
伊藤 伸介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.383-389, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)

本稿は,世帯の社会人口的属性だけでなく,家計の消費,所得,資産といった経済的属性の捕捉を指向した,わが国の代表的な公的統計調査である家計調査と全国家計構造調査(旧全国消費実態調査)を例に,家計消費の十大費目の実態を明らかにしている。本稿では,第1に,近年における十大費目の変化の動向,さらには貯蓄現在高や年間収入との関連性を明らかにした。第2に,全国消費実態調査のミクロデータの特性を生かしつつ,世帯類型と配偶者の就業選択の違いが世帯の消費の構成に与える影響についての実証分析に関する成果について述べた。
著者
伊藤 克彦
出版者
日本法哲学会
雑誌
法哲学年報 (ISSN:03872890)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.181-190, 2008 (Released:2021-03-31)

It seems that current jurisprudential discussions neglect legal meta-axiology (meta-ethics). For example, when we claim to be “discussing the value reasonably” in normative theory of Justice, we don’t know “what is “reasonable””. Normative theory in current discussions faces the problems of justification of theory. I propose that we should focus on legal meta-axiology (meta-ethics) to solve this problem, and this paper explains John McDowell’s meta-ethical theory and its philosophical background. McDowell criticized J. L. Mackie’s and Simon Blaclburn’s projectism through arguments on secondary quality and thick ethical concepts. Particularly, McDowell doubted the Cartesian view which is the background of their meta-ethical theory. McDowell’s meta-ethics position is based on his philosophical claim “Spaces of reasons” and criticism of “Myth of the given”. In his view, we do not receive experience that is given; we receive experience thorough concepts and beliefs. These concepts construct complex structure of justification, which McDowell called “Spaces of reasons” In my view, McDowell’s discussions is similar to significance of jurisprudential problems such as : (1) the problem of legal value, (2) critical reconsideration of the dichotonomy of fact/value, (3) analysis of “reason”, and (4) practical reason and reasoning.
著者
戸倉 夏木 金子 弘真 伊藤 正朗 名波 竜規 本田 亮一 渡邊 正志 寺本 龍生
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.522-527, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

癌終末期の消化管閉塞による悪心, 嘔吐, 腹部膨満感は患者のquality of lifeを損なう. オクトレオチドは, これらの症状を緩和すると報告されている. 2004年10月にオクトレオチドが保険適応となり一般病棟でも消化管閉塞患者に使用可能となった. 我々は2005年5月から2006年3月までに, 癌終末期消化管閉塞患者7例にオクトレオチドを使用し良好な結果を得た. 平均年齢は67.3±11.2歳, 男性4例, 女性3例で, 胃癌3例, S状結腸癌, 上行結腸癌, 膵臓癌, 原発不明癌が各1例であった. 悪心, 嘔吐, 腹部膨満感はJCOG toxicity scaleでgradeが全例低下し, 5例は経口摂取が可能となった. オクトレオチド投与後, 全例経鼻胃管を挿入することはなく, 輸液も減量することができた. 我々消化器外科医もオクトレオチドを手術適応のない癌終末期消化管閉塞患者の第1選択薬として考えるべきである.
著者
板倉 有紀 伊藤 和恵 佐藤 美智子 佐藤 はま子 大田 秀隆
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.151-161, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
14

「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では認知症高齢者等にやさしい地域づくりが目指されている.本稿では,認知症啓発・予防および認知症当事者支援が行われる秋田県羽後町の事例を取り挙げる.「若竹元気くらぶ」と「うごまちキャラバンメイト・認知症サポーター協会」という二つのグループの認知症に関する活動が成立する背景要因を検討する.特に「認知症予防」という考え方が,どのように働いているかに焦点化する.認知症予防の取り組みは認知症当事者を結果的に排除するという議論がなされてきたためである.「若竹元気くらぶ」は,認知症予防のための活動として始まったが認知症当事者支援の場にもなっている.「うごまちキャラバンメイト・認知症サポーター協会」は「若竹元気くらぶ」から独立して結成され,当事者支援のための活動として始まったが認知症予防に関心のある会員を取り入れ活動を継続している.いずれの活動においても保健福祉に関する専門知識を持つ行政職員や住民が活動に深く関与している.地域社会において認知症予防という考え方は,認知症の当事者の参加の機会にもなりうる.当事者の参加のためには専門職の関わりかたが重要である.
著者
伊藤 亜都子
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.37, 2018-08-30 (Released:2019-11-08)
参考文献数
3
被引用文献数
1

阪神・淡路大震災(1995年1月17日)では,住宅の復興政策は「避難所」→「仮設住宅」→「災害復興公営住宅」への移行を中心とするものであった.しかし,その移行の過程において震災前の地域コミュニティが分断されたことで新たな問題が生じ,同時にこの単線型の支援メニューから外れた人々への支援が不十分になるなどの問題があらわれた. 本稿では,仮設住宅および災害復興公営住宅における地域コミュニティの状況を紹介し,課題や解決のための取り組みについて示す.特に,災害復興公営住宅における状況については,神戸市灘区にあるHAT神戸・灘の浜団地の事例をとりあげる.まず,1999~2000年に実施したコミュニティ調査の内容を報告し,入居から1~2年が経過した住民へのヒアリング調査をもとに分析を行う.そして,震災から20年以上が経過した現在の災害復興公営住宅が抱える大きな課題として,借り上げ市営住宅への対応と居住者の高齢化,そしてコミュニティ形成のための取り組みについて紹介する. 現在,神戸市では,高齢者への「見守り活動」を安否確認に限らず地域コミュニティづくりの支援も含めて取り組んでおり,復興公営住宅へのサポートに限らず一般的な取り組みへと広げつつある.
著者
伊藤 敦広
出版者
日本シェリング協会
雑誌
シェリング年報 (ISSN:09194622)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.4, 2018 (Released:2020-03-21)

Wilhelm von Humboldt (1767-1835), der vor ca. 250 Jahren in Potsdam geboren wurde, ist durch seine Begründung der Friedrich-Wilhelm-Universität zu Berlin (heute „Humboldt-Universität zu Berlin“) weltweit bekannt. Obwohl es sich in der Diskussion über die heutige Universität um die sogenannte „Humboldtsche Idee“ dreht, ist es nur wenig beachtet worden, was Humboldt selbst in seiner Bildungsreform eigentlich beabsichtigte. In diesem Aufsatz wird die Entwicklung seines Bildungsgedankens historisch dargestellt, um so zu beleuchten, dass seine eigene Idee der Bildung, d. h. die Bildung nach dem „individuellen Ideal“, mit der Idee der Universität zu Berlin eng verknüpft war.
著者
美野 秀弥 伊藤 均 後藤 功雄 山田 一郎 徳永 健伸
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.1162-1183, 2021 (Released:2021-12-15)
参考文献数
34

本稿では,文脈を考慮したニューラル機械翻訳の精度向上のため,目的言語側の前文の参照訳と機械翻訳結果の両方を文脈情報として用いる手法を提案する.文脈として,原言語側または目的言語側の周辺の文が利用できるが,目的言語側の周辺の文を用いる手法は翻訳精度が下がることが報告されている.目的言語側の文脈を利用したニューラル機械翻訳では,学習時は参照訳を用い,翻訳時は機械翻訳結果を用いるため,参照訳と機械翻訳結果の特徴の異なり(ギャップ)が原因の 1 つと考えられる.そこで,学習時と翻訳時の目的言語側の文脈情報のギャップを緩和するために,学習時に用いる目的言語側の文脈情報を学習の進行に応じて参照訳から機械翻訳結果へ段階的に切り替えていく手法を提案する.時事通信社のニュースコーパスを用いた英日・日英機械翻訳タスクと,IWSLT2017 の TED トークコーパスを用いた英日・日英,および英独・独英機械翻訳タスクの評価実験により,従来の目的言語側の文脈を利用した機械翻訳モデルと比較して,翻訳精度が向上することを確認した.
著者
伊藤 和良
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.21-32, 2008 (Released:2018-10-01)

日本では1995年の地方分権推進法以来、12年ぶりとなる2007年4月に、地方分権改革推進法が施行され、第2期地方分権改革がスタートした。分権改革の第二ステージに向けて、各自治体は第1期地方分権改革で残された改革課題を自ら検証するとともに、地方分権改革推進委員会での議論などを踏まえ、今後、どのように分権改革を進めていくのか、その先見性が問われている。スウェーデンの地区委員会は、60年代と70年代に行われた二度の合併を経た後、91年の新地方自治法の制定に至る地方分権の制度実験のなか、大きな期待感を持って導入されたものである。制度創設から20年以上が経たいま、地区委員会はスウェーデンの地方自治を展望する上で当初の意図を超えて動き始めている予感もある。本論文は、日本における住民自治の拡充及び近隣政府の議論を進めるための一助として、スウェーデンの地方制度改革の歴史を踏まえ、地区委員会の現況と課題を整理、紹介したものである。
著者
伊藤 正純
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.33-43, 2006 (Released:2018-10-01)

スウェーデンの1950年代以降の教育改革は、義務教育改革、高等学校改革、大学改革とも、(1 )教育の機会均等を保証する総合化と(2)職業教育に理論教育と同等の地位を付与することの試みだった。それは、平等・連帯を培いながら、社会的経済的変化に対応した職業人養成のための教育実践だったといえる。したがって、日本と比較すれば、スウェーデンの教育理念は職業教育重視ということができる。 ところが、この試みは1970年代までと、1980年代以降では、とりわけ90年代以降では内容を異にする。 前者は大学をリカレント教育の原理で再編する方向に進むが、後者は大学を高度情報化社会の担い手育成の場に再編する方向に進む。リカレント教育はコムブックスなどの成人教育の場に移っていった。以上のことを、図表を使いながら明らかにした。
著者
伊藤 知子 安藤 真美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2022年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.136, 2022 (Released:2022-09-02)

【目的】汁物は様々な具材を使うことができ、献立の栄養バランスを取る上で便利な調整役を果たすことのできる料理である。しかし、一方で塩分の摂取量を上げる原因となりやすいことから敬遠されることもある。日本人の食事摂取基準(厚生労働省)において、1日の塩分摂取量(食塩摂取量)の基準は、改訂ごとに引き下げられ、2020年版では男性7.5g未満、女性6.5g未満とされている。本研究は、日常の食生活記録ではないものの「時代の半歩先に出る」というコンセプトで作られ食の変遷を示す資料であると考えられるNHK「きょうの料理」に掲載されたレシピから、汁物に含まれる塩分量を中心に検証を行い、献立の変遷について明らかにすることを目的とした。【方法】1990~2015年に発刊されたNHK「きょうの料理」テキストを5年ごとに調査した。汁物の献立について、だし汁の量(牛乳、トマトジュース等の液体を含む)、具材重量、塩分量を算出し、その変遷について分析を行った。【結果・考察】汁物の掲載献立数は1990年:76、1995年:75であったが、2000年は114と増加しており、以降、2005年:95、2010年:81、2015年68と減少していた。塩分量は1食で2.0gを超えるものも多かったが次第に減少しつつあった。だし汁の量は1990年では1人分200gを超えるものが多かったが、次第に減少傾向にあった。年々、減塩の必要性が重要視されるようになったこととの関連が推察された。また、1990年は「建長汁」、「国清汁」など郷土料理としての汁物の掲載がみられたが、近年になるほど具材等がわかりやすい料理名称が増加した。