著者
伊藤 康弘 宮内 昭
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.160-165, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1

甲状腺濾胞癌は,乳頭癌の次に頻度の高い甲状腺濾胞細胞由来の癌である。乳頭癌と異なり,リンパ節転移や周辺臓器への浸潤は少ないが,反面遠隔転移や遠隔再発が多い。濾胞癌の予後不良因子としては手術時の遠隔転移(M1),低分化成分の存在(50%以上),浸潤度(広汎浸潤型),年齢(再発予後不良因子は20歳未満と45歳以上,生命予後不良因子は45歳以上)が挙げられる。濾胞癌は術前の細胞診では診断がつきにくく,濾胞性腫瘍という診断の元に初回手術は通常,片葉切除が行われる。しかしM1症例や組織学的に予後不良因子をもつ症例に対しては,病理診断がついたあとで,補完全摘や症例によっては放射性ヨウ素を用いたアブレーションが推奨される。
著者
伊藤 久志 菅野 晃子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.193-203, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
23

本研究の目的は、行動論的アプローチに基づく自閉スペクトラム症と知的障害児者に対するトイレットトレーニングにおいて、What Works Clearinghouseが作成した「エビデンスの基準を満たすデザイン規準」に従った単一事例実験計画研究を抽出してメタ分析を行うことである。メタ分析に組み入れるために最終的に抽出された文献7本の統合された効果量は0.77[0.66—0.88]であった。標的行動に関して、3種類(排尿のみ/排便のみ/排泄関連行動を含む)に分類したところ、排尿のみを扱った文献は4本該当し効果量は0.88[0.75—1.00]であった。排尿訓練に関する実践研究が進展してきたことが明確となった。今後、エンコプレシスを伴わないケースの一般的な排便訓練をエビデンスの基準を満たすデザイン規準に従って進めていく必要がある。
著者
伊藤 豊
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.91-94, 2018-11-15 (Released:2018-12-15)
参考文献数
4
被引用文献数
1

1.はじめに磁石は文房具店で手に入れることができ,子どもから大人までよく知っている身近な物質である.磁石を2つ使えば手頃な強さの引力と斥力を感じることができ,N極とS極は接触させても
著者
安藤 昌也 伊藤 泰信
出版者
千葉工業大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、人や社会を要件として捉え、システム設計を専門とする人間中心設計(以下、HCD)と、集合的な社会・文化に焦点を当てて人間社会を理解することを専門とする文化人類学(以下、人類学)の知見を融合させつつ、人工知能(AI)を適用したシステムの設計において人と社会の調和を考慮したシステム設計思想および設計方法のあり方を検討するものである。本研究では、HCDと人類学の融合する「多元的HCD」という一見矛盾する設計思想を仮説としつつ、2つの学問領域の対話と連携により、実際にAIが導入されている現場(医療支援システムや転職支援サービスなど)のフィールドワークをすることを通し、双方の差異・共通点から課題を整理する。
著者
長南 治 伊藤 彰敏 大橋 あけみ 綿貫 雅章 古江 尚
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.11-17, 2002-02-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
18

イチョウ葉抽出物摂取が高血圧者の血圧に及ぼす影響を調べる目的で, プラセボを用いた比較対照試験を実施した。高血圧者16名を対象者とし, イチョウ葉抽出物40mgを含む飲料もしくは対照飲料を1日1本, 12週間飲用した際の血圧変化を調べた。さらに, 飲用開始時ならびに飲用終了時に採血を行い, 一般血液検査および血液生化学検査を行った。試験期間中, 対照飲料摂取による血圧変化は観察されなかったが, イチョウ葉抽出物飲料摂取により, 収縮期血圧, 拡張期血圧, 平均血圧の有意な低下が観察された。また, イチョウ葉抽出物飲料摂取により, 血中尿酸濃度の低下が認められた。飲用終了後のリバウンド現象はみられず, 自覚症状, 体重および一般血液検査・血液生化学検査などの諸検査においても, イチョウ葉抽出物飲料摂取によりGOT, GPTの上昇が認められた一例を除き, 問題となる変化は認められなかった。
著者
伊藤 憲佐 中山 恵美子 梶川 奈津子 清水 翔志 野田 剛 中村 隼人 村中 清春 林 真也 伊藤 太一 中井 智子 田中 研三 大橋 正樹 不動寺 純明 葛西 猛
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.419-426, 2011-10-20 (Released:2020-09-11)
参考文献数
36

鈍的胸部外傷による肋骨骨折患者の入院日数と, 初診時に得られる臨床情報について重回帰分析を行い, 入院日数の推定式を構築することを目的とした後ろ向き研究である. 肋骨骨折にて入院した患者92例を対象とし入院日数と, 性別, 年齢, HR, SBP, 血気胸の有無, 胸腔ドレーン挿入の有無, 硬膜外麻酔・神経根ブロックの有無, 肋骨骨折の本数を調査した. これらの項目に対し入院日数を目的変数として, 探索的に重回帰分析を行った. 最終的に推定入院日数=4.9+肋骨骨折の本数×0.9日に, 年齢が60歳以上の場合, +3.3日, 胸腔ドレーン挿入が施行された場合, +3.6日が加算される, 単回帰推定式が得られ, 95%信頼限界は±15.6日であった. この推定式により鈍的胸部外傷による肋骨骨折患者の入院日数が, 初診時に得られる情報から推定可能と思われる. また入院期間を短縮するためには肺炎の予防が重要である事が暗示された.
著者
堀江 真子 伊藤 玄
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.63-72, 2022-07-31 (Released:2022-07-31)
参考文献数
15

2021 年11 月に岐阜県美濃市の用水路から74 個体のメダカ類が採集された.採集されたメダカ類の形態的特徴を観察したところ,このうち24 個体は,背側に虹色素胞が集まり光る形質(体外光)を有していた.この形態的特徴は,体外光メダカ(幹之メダカ)の特徴と一致したため,観賞魚メダカであると判断された.また,青体色のメダカ(青メダカ)や体側面に虹色素胞が集まり光る鱗を多数有するメダカ(ラメメダカ)などの観賞魚メダカも採集された.採集された個体は,市場価値の低い特徴も観察されたため,育種選抜時に不要となり,野外に遺棄された個体であると推測された.
著者
伊藤 亜里
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

免疫記憶の柱の一つである、抗体産生を長期に行う長期生存形質細胞を取り巻く環境については明らかになりつつあるが、それ自体の性質の変化は明らかではない。我々は、骨髄の形質細胞で脾臓に比べて発現が高い遺伝子として、亜鉛を結合するMT1とMT2を同定した。MT1,MT2高発現形質細胞の遺伝子発現を調べたところ、Flt1, Hmox1など、細胞のストレス低減に関連する遺伝子群と発現の相関が高かった。脾臓の形質細胞ではMT1とMT2の発現がIL-6刺激によって上昇した。これらの結果から、長寿命形質細胞は、骨髄環境内でIL-6などの生存刺激を受けてストレス耐性機能を獲得している可能性が考えられた。
著者
藤原 孝之 坂倉 元 伊藤 寿 本庄 達之助
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.24-28, 1999-01-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
16
被引用文献数
4 3

ブドウ果実の糖分析中のショ糖分解に及ぼすインベルターゼの影響を検討した.1.ブドウ果実の搾汁液においては,ショ糖の加水分解が急激に起こり,主にインベルターゼの作用によるものと判断された.搾汁液のショ糖分解程度およびインベルターゼ活性には,大きな品種間差異が認められた.2.今回供試したブドウ7品種の中で,‘スチューベン’のみは特異的にインベルターゼ活性が低く,ショ糖含量が高かった.3.‘スチ〓ーベン’を除くブドウ各品種のインベルターゼ活性は,イチゴ,ニホンナシ,メロンおよびウンシュウミカンより極めて高かった.4.ブドウの糖分析において,エタノール抽出を行う場合,抽出時のショ糖分解を抑えるために,抽出前に果肉切片をマイクロ波処理することが必要と判断された.
著者
伊藤 芳恵 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.52-58, 2017 (Released:2022-09-03)
参考文献数
25

機能性月経困難症は月経のある女性の約半数が経験する婦人科疾患で,激しい下腹部痛によりQOLの低下及び経済的損失が報告されている.本疾患の疼痛管理として経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)の研究が報告されているが電極貼付部位は様々である.本研究の目的は機能性月経困難症に対するTENSの鎮痛効果を電極貼付部位に着目して調査することである.医師に機能性月経困難症と診断され,特に疼痛の強い女子学生2名を対象にTENSの介入研究を行った.調査期間は月経3周期とし,各周期でそれぞれ設定した電極部位の鎮痛効果を調査した.電極部位は,Th12/L1/L2とS2/S4デルマトームに電極を貼付する群(全髄節刺激),Th12/L1/L2デルマトームのみに電極を貼付する群(一部髄節刺激),無関係なL3/L4デルマトームに電極を貼付する群(非髄節刺激)とし,TENSの刺激は月経痛が強くなった時から60分間実施した. TENS前後にVisual Analog Scale(VAS)とMcGill Pain Questionnaire-Short Form(MPQ-SF)を測定した.VAS値は全髄節刺激で37.5±16.5 mm,一部髄節刺激で64.0±14.0 mm,非髄節刺激で18.0±7.0 mm低下した.MPQ-SF(情緒的項目)の改善が認められた.VAS値は一部髄節刺激,全髄節刺激で30.0 mm以上低下し,臨床的に重要な鎮痛が可能だった.MPQ-SFの結果より,鎮痛による精神的苦痛の改善が期待できる可能性がある.
著者
上ヶ谷 友佑 白川 晋太郎 伊藤 遼 大谷 洋貴
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.535-538, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
10

本稿の目的は,「推論主義」と呼ばれる現代哲学に基づき,生徒達にとって既知の概念をさらに発達させていくような数学的タスクのデザインの原理を開発することである.より具体的には,推論主義の示す資格保存的推論/コミットメント保存的推論といった実質推論の考え方を用いて,数学の授業における問題解決の様相を特徴付けることを試み,生徒達がどんな場面でどんな風に推論することが概念発達に寄与するのかを検討した.結果,次の3点が原理として導出された.[1] より概念化させたい既知の概念を2つ以上定める.[2] 本来はある概念の適用が有効であるにもかかわらず,思わず別の概念を適用してしまうようなタスクを設計する.[3] 生徒同士でなぜ自分がそのアプローチを選んだのかを議論させたならば,自分がどんな条件の下でどんなアプローチを使用しているのかを明示化する必要性が生じ,概念化が促進される.
著者
小野 浩二 伊藤 挙 窪山 泉 大木 幸子 椛沢 靖弘
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.35-41, 2004-06-25 (Released:2017-10-27)

東京都の総死亡の月別変動を見ると,1月に極大値を持ち,6〜9月に極小値をとる1年を周期とした明らかな季節変動が認められた。4つの疾患群(悪性新生物,心疾患,脳血管疾患の3大死因及びそれ以外の死因)の中で,心疾患,脳血管疾患,その他の疾患の3群ではほぼ同一の季節変動が認められた。悪性新生物の季節変動は他の疾患群より小さかった。主成分分析を行うと,4つの疾患群に共通した季節変動を表すと見なされる第1主成分と,主に悪性新生物に関係した長期に亘って漸増する第2主成分とが抽出された。第1主成分は全死亡の変動の分散の75.6%を説明した。第1主成分の1月の極大値は年によって大きく異なった。インフルエンザによる死亡の年による増減と第1主成分のピーク値の増減とは明らかな相関が認められた。
著者
藤田 桂一 伊藤 寛恵 笹原 沙衣子 鴇田 真弓 長田 裕子 川重 結子
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.109-115, 2008-12-20 (Released:2009-11-17)
参考文献数
16
被引用文献数
1

デンタルガム(グリニーズ® ティーニー)を1日1本成犬に投与したときと投与しなかったときにおける歯垢付着程度,歯石付着程度,および歯肉炎の程度(歯肉炎指数)を比較検討した。犬を2群に分けてクロスオーバー試験を行った。14日間のプレテスト期間とそれに続く28日間のテスト期間で構成した。テスト期間終了時に歯垢付着程度,歯石付着程度,および歯肉炎の状態(歯肉炎指数)を評価した。その結果,デンタルガムの投与時期では非投与時期と比較して有意に歯垢(減少率54.8%(p=0.001))および歯石(減少率62.0%(p=0.02))の付着率が減少し,歯肉炎(減少率53.8%(p=0.04))が軽快あるいは軽減した。特に,これらの効果が期待される裂肉歯(上顎第4前臼歯と下顎第1後臼歯)および上顎第1後臼歯の6歯では,歯垢(減少率56.6%(p=0.0002))および歯石(減少率66.0%(p=0.001))の付着率が減少した。しかし,咬合に多く関わらない犬歯および切歯では,歯垢・歯石の付着率の減少はみられなかった。歯垢や歯石付着程度の減少および歯肉炎の軽減が期待できるデンタルガムの機械的擦過作用による効果試験を行う場合,上下顎裂肉歯および上顎第1後臼歯の頬舌側面を評価すべきであると考えられた。
著者
伊藤 正典 畠山 収一 久慈 一英 宮内 勉 森 保人 伊藤 利之 北野 博嗣 泊 康男
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.26, no.11, pp.1709-1713, 1993-11-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
13

胃異所性石灰化を合併した長期血液透析患者の1例を経験したので, 臨床所見と合わせ報告する.症例は49歳, 男性. 18年の血液透析歴をもつ長期透析患者であった. 心窩部痛の訴えがあり, 胃内視鏡を行ったところ, びらん性胃炎と診断された. さらに, 生検標本にて, 胃粘膜内に石灰化が認められ, 異所性石灰化と診断された. 骨シンチグラムでも, 胃に集積がみられた. 胃運動機能を評価する目的で, 胃排出時間を測定したが, 固形食, 液体食ともに遅延は認められなかった.臓器異所性石灰化は, 尿毒症の合併症のひとつと考えられるが, 胃異所性石灰化の臨床的意義について, これまで言及した報告はない. 本例では, 内視鏡検査では出血を伴った胃粘膜のびらんが認められた. また, 胃排出時間を検討した結果では胃運動機能は障害されていなかった. しかし, この点に関しては, さらに経過観察が必要と思われる.