著者
佐々木 正人
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.317-326, 1997-09-30 (Released:2007-12-27)

筆者らは参加観察とインタビューで重度の視覚障害者のナヴィゲーションについての情報について検討している。たとえば、通路が交差するところでの独特な音響的構造によって通路の転換点を知覚することができる。また足裏の接触感の連続によってルートの延長を知覚できる。盲人も、視覚に障害がない者も、このように環境に偏在し、埋め込まれている情報によってナヴィゲーションが可能になっているが、伝統的な盲人の認知研究ではこのような環境に存在する情報については無視してきた。その理由は一つの光学理論にある。ルネッサンス以来、西欧の視覚理論は、イメージが視覚の原因であると考えられてきた。デカルトは幾何光学の方法で、眼球の後ろに外界と類似した像が映っているとするこの考え方をしりぞけ、視覚の像理論を否定した。彼は、像に変えて、視覚刺激に由来する微小な運動が視覚の原因であるとした。彼の転換によって視覚の理論は無意味な運動刺激を解釈する「心」という機構を必要とすることになった。このような光学の「記号化」が、特殊な盲人という問題を登場させた。それは無意味な刺激と意味深い情報との関係という問題であり、制限された刺激が盲人の思考にどのような問題を引き起こすのかという問題であった。この文脈では盲人の問題は非常に狭く設定された。アメリカの心理学者ギプソンは、物理的エネルギーとしての光と、視覚刺激としての光と、視覚情報としての光を区別した。彼はその生態光学によって、環境に存在する視覚の情報としての包囲光を問題にした。放射光が多重に反響した状態である照明が環境には満ちている、この照明光はすべての観察点を包囲する光の基礎となる。この光は環境の表面の構造に依存しており、知覚の情報となる。構造化した包囲光がナヴィゲーションをガイドする。図1には弱視の女性の事例を示した。環境に意味の存在を認める生態光学を基礎とすることで、盲人の認知の研究は、デカルト光学の設定した境界をこえることができ、この問題への多元的理解に接近することができる。
著者
佐々木 正明 川人 祥二 田所 嘉昭
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.121, no.8, pp.1312-1317, 2001-08-01 (Released:2008-12-19)
参考文献数
14

This paper presents a method for integrating gamma correction and gain control functions on a CMOS image sensor with logarithmic response. The proposed method is based on a fact that gain variation and level shifting in logarithmic compressed domain are equivalent to the gamma correction and the gain control, respectively, in the exponentially expanded domain. The prototype chip integrating proposed function is fabricated with triple-metal double poly-silicon n-well 0.6μm CMOS technology. As a result of calculation using measurement data of test circuits, the gamma value can be adjusted to 0.45 when the gain given in the logarithmic compressed domain is 0.741, and a gain of 20dB is obtained by the voltage level shift of 60mV.
著者
森山 秀樹 山村 浩然 北村 祥貴 西田 佑児 竹原 朗 芝原 一繁 佐々木 正寿 小西 孝司
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.368-371, 2009-04-01 (Released:2011-12-23)
参考文献数
17

症例は18歳の女性で,自動車運転中の自損事故で受傷し,当院へ救急搬送された.シートベルトは着用していなかった.腹部全体が板状硬で上腹部に著明な圧痛を認めた.腹部CTで腹腔内遊離ガスを認めた.外傷性消化管損傷による汎発性腹膜炎が疑われたため緊急手術を施行した.腹腔内には血性の腹水があり,胃前庭部の離断を認めた.幽門側胃切除を施行し,Billroth II法再建,Braun吻合を行った.術後経過は良好で術後15日目に退院した.他臓器の損傷を伴わない外傷性胃離断の報告は今までに1例もない.その発生機序を考察し報告する.
著者
森山 秀樹 佐々木 正寿 北村 祥貴 竹原 朗 芝原 一繁 小西 孝司
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.850-853, 2009-03-25
参考文献数
6
被引用文献数
2 5

症例は34歳,女性.2007年9月,ビーチバレーボール中に強い腹痛が出現したため当科受診した.腹部全体に強い圧痛を認めた.超音波およびCTで上腹部に径16cmの嚢胞性腫瘤および多量の腹水を認めた.嚢胞性腫瘍破裂による腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.腹腔内には漿液性の腹水を1,800ml認めた.上腹部に巨大な嚢胞性腫瘍があり周辺臓器を圧排していた.解剖学的位置関係が不明確なため,腫瘍穿孔部縫合閉鎖および腹腔内ドレナージを施行し開腹した.術後の精査で膵粘液性嚢胞性腫瘍を疑った.術後17日目に再開腹し,腫瘍を含めた膵体尾部切除術を施行した.病理所見より卵巣様間質を有する膵粘液性嚢胞腺腫と診断した.膵粘液性嚢胞性腫瘍は比較的稀な疾患である.嚢胞破裂による腹膜炎の発症は本邦報告例を検索したところ本例が3例目であり,稀な症例と考えられたので報告する.
著者
大倉 恵美 石井 仁美 高本 祐子 高山 幸宏 牧平 清超 熊谷 宏 佐々木 正和 田地 豪 二川 浩樹
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.258-265, 2012
参考文献数
10

本研究では市販口腔保湿材13種類と試作品3種類を用いて,その粘性,湿潤度と香り,味,舌触り,潤いについて物性評価および官能評価を行った.粘性は粘度の低い口腔保湿材で数mPa・sから高い口腔保湿材で数千mPa・sと口腔保湿材の間で大きな差があった.口腔保湿材の粘度は温度が高くなると低くなり,常温で粘度が高くても口腔内では粘度が低くなると考えられた.湿潤度は,フィットエンジェルジェルタイプで最も高くなり,ついでバイオティーンマウスウォッシュ,試作品(ウメ,グリーンアップル)が高くなった.官能試験ではVAS法を用いて,香り,味,舌触り,潤いを評価した.口腔保湿材ごとに特徴があり味や香りに対する好みなども分かれていた.これより,口腔保湿材には粘性や湿潤度などの物性に加えて味や香りなどの好みもあり,それぞれの特徴を理解し,患者に合わせて選択する必要があると考えられた.
著者
佐々木 正徳
出版者
長崎外国語大学
雑誌
長崎外大論叢 (ISSN:13464981)
巻号頁・発行日
no.17, pp.189-201, 2013-12-30

This paper comprises a translation of the "prologue" of Hallyu Forever - Hallyu Style in the World', a publication issued by KOFICE (the Korea Foundation for International Culture Exchange). Of the epic 567 pages of the original text, 24 of them have been assigned to the prologue. This paper translates the prologueincluding all tables, but excluding accompanying figures. Hallyu Forever as a whole analyzes the history and issues of Hallyu in different regions of the world, as follows: (Prologue); Part 1: China; Part 2: Japan; Part 3: Southeast Asia; Part 4: Central Asia; Part 5: United States; Part 6: Europe; Part 7: the Middle East.The main theme of the text in its entirety is how to promote national brand value through culturalproducts. Economic benefits appear to be construed as a product of national brand competitiveness, a perception which can be confirmed by reading the prologue translated in this paper. The original text focuses on how to maintain the popularity of Hallyu in the future and on how to make Hallyu a trend in as yet uncharted regions, not on an analysis such as are popular in Japan of reasons why the Hallyu movement arose. In recent years, as witnessed in "Cool Japan" strategies, it is the agenda of manydeveloped countries to connect cultural goods to enhancement of national brands. While the strategy of Korea may seem excessive to readers living in Japan, the act of relativizing the cultural strategies of Japan should prove a fruitful one.
著者
岡 伸一 藤本 吉範 佐々木 正修 田中 信 生田 義和
出版者
中国・四国整形外科学会
雑誌
中国・四国整形外科学会雑誌 (ISSN:09152695)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.185-189, 1996-09-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
7

We have experienced three cases of cervical cord or radicular symptoms caused by acupuncture needle migrating into the cervical spinal canal.Two patients had cevical cord symptoms and the other one had radicular symptoms. The first case was a 63-year-old female, who noted numbness in her bilateral fingers, 5 years following her acupuncture treatment. The second case was a 52-year-old male, who had had a nuchal discomfort and treated himself with a needle. He unfortunately broke the needle. Two months following the event, numbness appeared in his bilateral upper and lower extremities. The last case was a 44-year-old male. He had felt radiating pain in the middle of his acupuncture treatment. He subsequently developed pain in the great occipital nerve area during neck rotation.The needles were removed surgically, in all cases. The symptoms were dramatically resolved in the second and the third cases, In the first case, however, the neurological deficits did not improve after the operation, which seemed to be ascribable to the irreversible changes which had occured in the spinal cord.
著者
辻 孝三 堀出 文男 美濃部 正夫 佐々木 正夫 白神 昇 広明 修
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.371-384, 1980-08-20
被引用文献数
1

スミチオンを空気中でDTA測定を行なうと(I)(150∿190℃), (II)(210∿235℃), (III)(270∿285℃)の3本の発熱ピークが観測される.一方窒素中では(II), (III)に相当する2本の発熱ピークが観測されるのみである.これらのピークは次のように同定された.ピーク(I) : 二酸化イオウガス発生を伴うスミオキソンの生成, ピーク(II) : S-メチルスミチオンからのジメチルサルファイドの発生とポリメタホスフェートの生成, ピーク(III) : フェノール環の炭化とジメチルサルファイド, ジメチルジサルファイドおよびエタンガスの発生.また, 193℃までスミチオンを加熱するとS-メチルスミチオンが生成するが, これに対応したDTAピークは観測されなかった.スミチオンと酸素の反応は拡散律速であり試料表面での反応が主である.スミオキソンの生成熱は170∿180 kcal/molである.
著者
酒井 哲夫 小野 正人 吉田 忠晴 佐々木 正己 竹内 一男
出版者
玉川大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

可動巣枠式巣箱による飼育法が確立したことにより,ニホンミツバチで初めてプラスチック人工王椀を用いた女王蜂の人工養成が可能になった。セイヨウミツバチのローヤルゼリー(RJ)を利用したニホンミツバチ女王蜂養成では,自種のRJでは高い生育率と女王蜂の分化を示したが,両種のRJの成分に生育に影響を及ぼす差があることが認められた。少数例ではあるが,女王蜂の人工授精が成功し,これからの選抜育種に明るい見通しが立った。ニホンミツバチとセイヨウミツバチの配偶行動については,14時30分頃を境に2種間の生殖隔離が行われ,ニホンミツバチ女王蜂は遅い時刻(14:45〜16:00)に長い飛行で交尾することが認められた。同一蜂場内に併飼したセイヨウミツバチ,ニホンミツバチの両種の花粉採集行動の季節的な変動パターンは,基本的に類似していた。花粉だんごの分析から訪花植物の種を同定すると,特に多くの植物の開花が見られる時期には違いが認められ,両ミツバチの花への嗜好性は異なっているのではないかと考えられた。両種の収穫ダンスを比較し,餌場までの距離とダンス速度の関係を解析した結果,ニホンミツバチの距離コードは同種の東南アジア亜種のそれより,むしろセイヨウミツバチのそれに近いことがわかった。また両種の採餌距離を推定した結果,ニホンミツバチの平均的採餌圏は半径2.2km,セイヨウミツバチのそれは3kmとされた。また貯蜜量の減少による逃去時のダンスはこれまでにないスローダンスであることが判明した。ニホンミツバチのミツバチヘギイタダニに対する行動を観察した結果,落下したダニの多くは触肢や脚に負傷しており,その割合はセイヨウミツバチより高かった。スズメバチに対するニホンミツバチの防衛行動に関しては,学習が関与していることが初めて明らかになった。
著者
佐々木 正 源 勝麿
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.12, no.11, pp.1329-1338, 1964-11-25 (Released:2008-03-31)
被引用文献数
12 14

Im Rahmen der Untersuchungen der Synthesemoglichkeit von as-Triazin-N-oxyden, oxydierten wir 3-Amino- bzw. 3-Amino-5, 6-dimethyl-as-triazin durch Persaure, wobei sich die entsprechenden 5-Oxo-verbindungen und ein Mono-N-oxyd von 3-Amino-5, 6-dimethyl-as-triazin erhalten lieβen, deren Konstitutionen bzw. diejenigen der acetylierten Korpern durch Dipolmoment-Messungen sowie spektroskopisch diskutiert wurden.
著者
田爪 正気 梅原 恵子 松沢 秀之 相川 浩幸 橋本 一男 佐々木 正五
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.517-522, 1991

マウスの寿命に及ぼす無菌状態と食餌制限の影響について検討した。実験動物は雄のICR系無菌およびSPFマウスを用いた。制限食の開始時期は生後5週とし, 自由摂取群と制限食群とに分けた。制限食群の食餌は自由摂取群の摂取量の80℃6 (4.5g/日) を毎日与えた。平均寿命は自由摂取群のSPFマウスでは75.9週, 無菌マウスでは88.9週, 制限食群のSPFマウスでは117.5週, 無菌マウスでは109.6週であった。また, 体重を計測した結果, 制限食群は自由摂取群と比べて, SPFおよび無菌マウス共に低値の成績が得られた。この結果, 離乳直後からの食餌制限は成熟を遅らせ, 成長期間が長くなり, 寿命が延びている可能性が考えられる。一方, 無菌マウスの平均寿命はSPFマウスの平均寿命と比べて, 自由摂取群では長く, 制限食群では短かった。この成績から, 無菌状態と食餌制限の組合せでは顕著な延命効果は認められなかったが, 各々単独では平均寿命の延長に影響を及ぼしている可能性が示唆された。