- 著者
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佐々木 正人
- 出版者
- 日本質的心理学会
- 雑誌
- 質的心理学研究 (ISSN:24357065)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.1, pp.46-62, 2011 (Released:2020-07-09)
床の上に仰向けに置いたカブトムシが,様々な物など,周囲の性質を使って起き上がる過程を観察した。床の溝,タオル,うちわ,鍋敷,チラシ,爪楊枝,リボン(細,太),ビニルヒモ,ティッシュ,T シャツ,シソの葉,メモ用紙,割り箸,フィルムの蓋を起き上がりに利用する虫の行為が記録された(図 1~17)。周囲の性質で起き上がりに利用されたのは,物の網目状の肌理,床とその上に置かれた物の縁・隙間,穴上の陥没,抱え込んで揺らすことのできる物,床とひも状,棒状,円形状の物がつくる隙間であった。これらの観察をまとめるとカブトムシの起き上がりが,1)「地面-単一の脚」(図 18a),2)「変形する物-複数の脚・湾曲した背-地面」(図18b),3)「固い物-複数の脚・湾曲した背-地面」(図 18c)の 3 種の環境-行為系の創発として記述できることが明らかになった。