- 著者
-
佐藤 寛之
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2013
ユークリッド空間における制約条件なしの最適化手法の一つである共役勾配法をリーマン多様体ヒに拡張し, 収束性の証明を行った, ユークリッド空間における共役勾配法では, 各反復において次の探索方向として, 最急降下方向と, 前回の探索方向にBを乗じたものの和を用いる. FletcherReevesのβを用いたアルゴリズムの多様体版の大域的収束性を調べるとともに, 収束性を高める工夫を加えた新しいアルゴリズムを提案した. この結果は論文"A new, globally convergent Riemannian conjugate gradient method"にて発表された.また, リーマン多様体上の最適化問題として定式化される具体的な応用問題として, 行列の固有値問題や特異値分解問題を扱った. 具体的には, 固有値問題をグラスマン多様体上の最適化問題として定式化し、その最適化アルゴリズムを導出することで, 固有値分解の新たなアルゴリズムを提案した, この結果は論文"Optimization algorithms on the Grassmann manifold with application to matrix eigenvalue problems"として発表した. また, 特異値分解については, 実行列の場合に2つのシュティーフェル多様体の積からなる多様体上の最適化問題として定式化して議論した研究代表者らの以前の論文を, 複素行列の場合に適用できるよう拡張し, 論文"A complex singular valuei decomposition algorithm based on the Riemannian Newton method"として発表した.当該年度では多様体上の一般的な最適化問題に対して新たな解法アルゴリズムを導出したり, 具体的な行列の問題に対する新たなアルゴリズムを導出し, 応用的な観点から有意義な成果が得られたと言える.