著者
佐藤 未央子 サトウ ミオコ Sato Mioko
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.82, pp.89-103, 2015-03

大正中期における谷崎潤一郎の映画受容を分析するにあたり、本稿では「痴人の愛」(大正十三年~大正十四年)に焦点を当てた。ナオミが二重写しにされたさまざまな女優とその評価や位置付けについて、関連資料を用いて具体的に考察し、小説における当時の文脈を復元した。また映画観客としてのナオミの主体性や、「痴人の愛」が映画界に対して二重に同時代性を持つことを論じた。
著者
鎌内 宏光 佐藤 修一 林 大輔 岡部 芳彦 勝山 智憲 福島 慶太郎 吉岡 歩 佐藤 拓哉 徳地 直子 仲岡 雅裕
出版者
京都大学フィールド科学教育研究センター森林生物圏部門
雑誌
森林研究 = Forest research, Kyoto (ISSN:13444174)
巻号頁・発行日
no.78, pp.81-87, 2012-09

高緯度域では遡河性魚類によって河川に輸送される海洋由来栄養塩 (Marine derived nutrient : MDN)が河川内および河畔域の生物群集に影響を与えているとされる. 本研究では北海道東部の森林河川上流部において初冬にシロザケ死骸 (ホッチャレ)を約800kg 散布し, ホッチャレの消費者を明らかにした. 散布した死骸は10日間でほとんどすべて消費された. 自動撮影された画像から, 消費者はカラス類が優占しており, トビおよびオオワシを含めて鳥類が96% を占めた. カラス類は近隣の牧場で越冬している個体が移動したと思われた. 自動撮影された画像では, カラス類の摂食は少なくともホッチャレの一部が水面上に露出した場合に限られていたのに対して, オオワシは水面下のホッチャレも摂食した. 集水域の周囲の土地利用や河川の水深および河道形状がホッチャレの消費者組成に影響することが示唆された. 鳥類は, 秋にMDN を輸送するクマとは行動範囲や摂食パターンが異なるため, 初冬にシロザケが遡上する河川では, MDNの散布距離や散布量が秋とは異なることが考えられる.Marine derived nutrient (MDN), which is carried to stream by anadromous animals, affects stream and riparian ecosystems at high latitudes. To clarify the consumer of salmon carcasses during early winter of Eastern Hokkaido, we carried out a field experiment on spreading out carcasses (ca. 800 kg) at a woodland stream. Almost all of carcasses were consumed during 10 days. Crows was dominant, and birds abundance including black kite and Steller's sea eagle occupied 96 % of photo-trapping data. Crows were thought as immigrant from ranches surrounding experimental watershed. From the photo-trapping data, although crows fed only if, at least, a part of carcass was exposed over the water surface, Steller's sea eagle fed carcass even if it submerged. It suggests that land use of surrounding the watershed, channel morphology or depth of stream would affect the composition of carcasses consumer. Because of unique behavior (e.g. migration distance, feeding pattern) by bird, spreading distance and amount of MDN would show different pattern against autumn in streams that salmon runs in early winter.
著者
佐藤 昌子 楠 幹江 奥山 春彦
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.123-128, 1974-04-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
4

目的: 脱水後の布の含水率が, 再汚染におよぼす影響を検討するため, ローラー式絞り機と遠心脱水機を用いて, 比較実験を試みた.方法: 試料布5種, 汚れ粒子2種, 界面活性剤3種を使用した.結果: (1) ローラー絞りでは, 含水率が減少するにつれて, 汚れ付着量も減少する傾向がみられるが, 脱水機では.必ずしも, 同様な傾向はみられなかった.(2) 同一含水率における汚れ付着量は, ローラー絞りよりも脱水機の方が多い.(3) 分散液の粒子の分散状態と汚れ付着量の関係は, 汚れ粒子や界面活性剤の性質などにより異なり, 種々の汚れ付着量を示す.
著者
佐藤 美沙 柳井 孝介 柳瀬 利彦 是枝 祐太 丹羽 芳樹
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

ディベートにおける立論文章生成を目的としたソフトウェアのデモンストレーション展示を行う。聴講者は「カジノを合法化すべきか」のような任意の論題を入力し、賛成・反対両方の立場からの意見文章を出力させることができる。データソースとして国会会議録データベースを利用し、会議発言を元に意見文章を生成する手法を提案する。また提案手法の評価結果について報告する。
著者
花田 修治 渡辺 貞夫 佐藤 敬 和泉 修
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1279-1284, 1981 (Released:2008-04-04)
参考文献数
30
被引用文献数
5 8

Magnetic heads made of Sendust alloy head cores (standard chemical composition: Fe-9.6 wt%Si-5.4 wt%Al) are known to have superior magnetic properties and wear resistance. The cores are usually made by mechanical working, such as slicing and grinding since the alloy is so hard and brittle that it has been believed to be difficult to make head cores by plastic deformation. In the present work, plastic deformability of the alloys was investigated by compressive tests on Sendust single crystals at temperatures between room temperature and 1173 K and various strain rates. Main results are summarized as follows.The operative slip systems are {110}〈111〉 and {112}〈111〉 depending on compressive axis. Therefore, the von Mises criterion for a polycrystalline material to deform plastically by slip within grains is satisfied, indicating that the brittleness of Sendust alloys cannot be explained by the number of independent slip modes available. At room temperature the stress-strain curve exhibits three stages in a similar manner to Fe3Al and Fe3Si with DO3 structure.Above the temperature where yield stress decreases abruptly, the steady state deformation takes place. Under the condition of the steady state deformation, the strain rate is represented by the relationship of \dotε=Bσnexp(−Q⁄kT), where n=4.6 and Q=540 kJ/mol. These results suggest that even a polycrystalline material of Sendust alloy may be deformable under the suitable conditions.
著者
佐藤 幹代 高橋 奈津子 濱 雄亮 城丸 瑞恵 本間 真理 佐藤 りか (佐久間 りか) 射場 典子 別府 宏圀
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、慢性の痛みを患う人や家族に面接調査を行い、わが国の文化、社会、保健医療福祉制度背景を踏まえた身体的・精神的・社会的苦悩の体験世界や疼痛対処および医療者-患者・家族の相互理解のありかたを探究する。「慢性の痛みの語りデータベース」を構築する(https://www.dipex-j.org/chronic-pain/)。これらは慢性痛に関する看護学、医学、社会学、保健福祉医療分野における教育および、研究資源として期待できる。
著者
佐藤 修臣
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.143-150, 1984-01-25 (Released:2017-01-15)

Since the 1972 Collision Regulations came into force certain difficulties have been reported by mariners, and many proposals and interpretaions to the Regulations have been suggested by many countries and etc. The author considered such a trend of amendment on the Regulations in this paper. Although there are some ambiguities in the Regulations certainly, these difficulties have been arisen mainly because the luck of understanding of an idea about new Regulations. Therefore the author suggest that Regulations should be amend under serious consideration based on an idea and aim of new Regulations, and should not be amend by local circumstances or particular requirements.
著者
佐藤 匡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.211-215, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)

本稿の目的は,図書館のレファレンス調査における発想の技法に焦点を当て,その本質について考察することである。その手掛かりとして,G. ポリアによる,数学の問題を解く際に有用な発想のリストを利用した。これによって以下の2点が明らかになった。第一に,ポリアのリストがレファレンスの問題を考える上でも有効であること。第二に,レファレンス調査の技法はポリアのリストに還元可能であり,その調査技法の核は<類似性>と<変形>という発想の技法に帰着することである。最後に,ポリアのリストによって図書館レファレンスのみならず,広くインフォプロの調査技法の全体を包括的に理解できる可能性があることを示唆した。
著者
小出 晃 佐藤 一雄 田中 伸司 加藤 重雄
出版者
公益社団法人精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.547-551, 1995-04-05
被引用文献数
1 8

The use of hemispherical concave specimen is proposed to evaluate orientation-dependent etch rate of single crystal silicon. Etch rate is calculated from dimensional change of the hemisphere during etching. Etch rate distribution to the total orientation has been obtained for the etchant of 40wt%KOH aqua solution. The orientation showing maximum etch rate was [110] at 40°C. It deviates from [110] with an increase of temperature. The maximum point seems to move toward [320]. This fact indicates that the etched profile varies with etching temperature even when the etchant and the initial masking pattern are the same. The effect of temperature on the etch profile is experimentally proved. Variation in etch profile according to the change in temperature is theoretically explained by the etch rate data.
著者
石原 和夫 佐藤 彩乃 曽根 英行
出版者
新潟県立大学
雑誌
県立新潟女子短期大学研究紀要 (ISSN:02883686)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.9-18, 2008
被引用文献数
1

わが国の伝統的な発酵調味料である味噌は、製法や産地によりその風味は異なり、また、種類は多く地域性の高い調味料である。さらに、原料の大豆や発酵・熟成に由来する多くの機能性を持つ優れた食品でもある。味噌は主として、味噌汁として食され、その味噌汁の調理にあたっては、味噌を溶かし短時間沸騰させる。そのことにより、香味が最大限引き出され、おいしさが感じられる。しかし、過度の加熱では、多くの香気成分が揮発、あるいは逆に増加することで風味が損なわれ、おいしさは減少することが知られている。本研究では、味噌汁中の香気成分が味噌の種類や加熱時間の長短によりどのように変化するか香気成分捕集方法として動的ヘッドスペース法を用いて検討した。実験には、越後味噌、信州味噌、八丁味噌、西京味噌の4種類の味噌を用いて、未加熱、加熱時間10〜60分での香気成分の変化をガスクロマトグラフィー(以下、GC)により分析し、比較検討を行った。GC分析の結果検出された総ピーク数は、越後味噌111、信州味噌106、八丁味噌113、西京味噌65であり、越後味噌、信州味噌、八丁味噌の香気成分は西京味噌に比べ、多種類の成分より構成されていた。また、GCパターンを比較すると、越後味噌、信州味噌は類似し、八丁味噌、西京味噌はそれぞれ特有のGCパターンを示した。GCの総ピーク面積は、越後味噌が一番大きく、次いで西京味噌、八丁味噌で、信州味噌は一番少なく、他の味噌の約41〜50%に相当した。標準化合物および文献をもとに、各味噌汁中の香気成分を解析したところ、味噌汁の香気成分として、アルコール13、アルデヒド7、有機酸4、エステル12、合硫化合物2、炭化水素5、ケトン類1の総計44種類の化合物を同定または推定した。これら化合物のうち、94〜99%占めたのがアルコール類で、このうちethanolが一番多く、越後味噌で65.14%、信州味噌で67.05%、八丁味噌で82.82%、西京味噌で93.19%であった。八丁味噌と西京味噌はその発酵・熟成には酵母の関与が比較的少ないにもかかわらず、ethanol量の多いのは上述の「酒精」の添加によるものと考えられる。そして、ethanolのほか、2-methylbutanol、3-methylbutanol 、methanol、2-methyl-1-propanol、n-butanol、n-propanolなどが主なアルコール類として検出された。越後味噌、八丁味噌、西京味噌中の多くのアルコール類は加熱により減少する傾向を示したが、信州味噌では増加またはほとんど変化しないという特徴が認められた。各味噌汁中のアルデヒド類としてethanal、hexanal、benzaldehydeなどが検出され、これらは一般に加熱により増加する傾向にあり、他の香気成分との違いが認められた。アルデヒド類の加熱による増加は一般的にも知られ、その原因は味噌中の遊離アミノ酸からストレッカー分解により生成されるためと考えられる。有機酸のacetic acidは越後味噌、butyric acidは八丁味噌、2-methylbutyric acidと3-methylbutyric acidは信州味噌中で最も多いことが認められた。そして、加熱によりacetic acidは減少、butyric acid は増加、2-methylbutyric acidと3-methylbutyric acidは変化がないという、それぞれの特徴を示した。各味噌汁中で検出された主なエステル類はethyl acetate、ethyl heptanoate、ethyl lactateおよび2-methylbutyl acetate と3-methylbuty lacetateなどであり、量的にはethyl acetateは八丁味噌、ethyl heptanoate は越後味噌、ethyl lactateは信州味噌に多いことが認められた。これらのうち量的に多かったethyl acetateも加熱により増加する傾向にあったが、八丁味噌では加熱10分で一旦急激に減少することが認められた。そして、エステル類はその種類や味噌の違いにより加熱による傾向が異なったが、信州味噌ではethyl dodecanoateのみ減少傾向を示し、その他多くのエステル類は増加する傾向があった。食欲化合物のdimethyl disulfideは加熱により減少し、3-methylthiopropanal(methional)は増加した。また、炭化水素類ではハ丁味噌においてtridecane、hexadecaneに増加がみられた。これらの結果から、味噌汁の香気成分の中には加熱により減少するもの、逆に、増加するもの、また、味噌の種類による違いなど解析することができた。また、前報では香気成分捕集法として静的ヘッドスペース法を用い、味噌汁の香気成分として15化合物を同定または推定したが、本研究での動的ヘッドスペース法では44化合物が同定または推定されたことから、後者の分析法の優位性が認められた。