著者
高橋 英紀 中川 清隆 山川 修治 田中 夕美子 前田 則 〓 永路 謝 羅乃 曽 平
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.179-191, 1989-12-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

中国海南島の北部にゴムの木のプランテーションが展開されている農場(林段)があるが,そこで1986年4月から1989年3月までの3年間に観測されたデータを基に,微気象特性を調べた。粗度,地面修正量,ゴム林のキャノピーを通過する放射透過率など空気力学的パラメーターは,落葉前後で明らかに異なる。キャノピー上の短波放射のアルベードは,冬季には10%であるが,夏季と秋季には16%になる。落葉後,キャノピー上の顕熱フラックスが増加すると,潜熱フラヅクスは急激に減少する。林床上における顕熱フラックスは1日を通して非常に小さい。また,夜間には,負の正味放射による熱の損失があるが,それは地熱フラックスにより補償されることなどが明らかとなった。
著者
岡田 夏男 前川 陽平 大和田 済熙 芳賀 一寿 柴山 敦 川村 洋平
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.137, no.1, pp.1-9, 2021-01-31 (Released:2021-01-29)
参考文献数
10
被引用文献数
3

Currently, there have been issues concerning the depletion and scarcity of mineral resources. This is mostly due to the excavation of high grade minerals having already occurred years and years ago, hence forcing the mining industry to opt for the production and optimization of lower grade minerals. This however brings about a plethora of problems, many of which economic, stemming from the purification of those low grade minerals in various stages required for mineral processing. In order to reduce costs and aid in the optimization of the mining stream, this study, introduces an automatic mineral identification system which combines the predictive abilities of deep learning with the excellent resolution of hyperspectral imaging, for pre-stage of mineral processing. These technologies were used to identify and classify high grade arsenic (As) bearing minerals from their low grade mineral counterparts non-destructively. Most of this ability to perform such tasks comes from the highly versatile machine learning model which employs deep learning as a means to classify minerals for mineral processing. Experimental results supported this statement as the model was able to achieve an over 90% accuracy in the prediction of As-bearing minerals, hence, one could conclude that this system has the potential to be employed in the mining industry as it achieves modern day system requirements such as high accuracy, speed, economic, userfriendly and automatic mineral identification.
著者
中野 繁 Kurt D. Fausch 田中 哲夫 前川 光司 川那部 浩哉
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.211-217, 1992-11-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

モンタナ州フラットヘッド川水系の山地渓流において, 同所的に生息する2種のサケ科魚類ブルチャーとカットスロートトラウトの採餌行動と生息場所の利用様式を潜水観察し, さらに両種の食性を比較した.一般に, 渓流性サケ科魚類の採餌行動は, 水中の一地点に留まり泳ぎながら流下動物を食べる方法 (流下物採餌) と河床近くを広く泳ぎ回りながら底生動物を直接つつくようにして食べる方法 (底生採餌) に大きく二分される.両種の採餌行動は大きく異なり, ブルチャーの多くの個体が主に後者の方法を採用したのに対し, 観察されたすべてのカットスロートトラウトは前者を採用した.両種間には明瞭な食性の差異が認められ, ブルチャーがコカゲロウ科やヒラタカゲロウ科幼虫等の水生昆虫を多く捕食していたのに対し, カットスロートトラウトは主に陸性の落下昆虫を捕食していた.両種が利用する空間にも明らかな差異が認められ, ブルチャーが淵の底層部分を利用するのに対し, カットスロートトラウトはより表層に近い部分を利用した.また, 前者が河畔林の枝や倒木の下などの物陰を利用するのに対し, 後者は頭上の開けた場所を利用した.両種の食性と流下及び底生動物の組成を比較した結果, 両種間に見られた食性の差異は採餌行動の差異のみならず採餌空間の違いをも反映しているものと考えられた.このような種間における資源の分割利用が両種の共存を可能にしているものと考えられた.
著者
前原 直子
出版者
経済学史学会
雑誌
経済学史研究 (ISSN:18803164)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.100-126, 2011 (Released:2019-08-20)

This paper aims to analyze John Stuart Mill’s theory of joint-stock companies on the basis of Mill’s theory of an ideal civil society. Mill recognized that the Industrial Revolution sparked social and economic problems. Unskilled labourers lapsed into moral decadence, which lowered productivity and decreased profit rates; thus this would then result in a dismal stationary state without any reform in the distribution of wealth. However, Mill asserted that social reforms would realize the ideal condition of a civil society even in the stationary state. To resolve these problems, Mill’s theory of joint-stock companies is significant from two perspectives. First, from the perspective of productivity, large-scale production is greatly promoted by the accumulation of large capital through the formation of joint-stock companies. Furthermore, co-operation among various people and combination of the labour force would lead to superior productivity. Second, from the perspective of property, Mill insisted on fair and just distribution of wealth and the necessity of managerial reforms. Reforms aimed at solving the unequal distribution of wealth could raise the living standards and the moral and intellectual standards of labourers. The moral qualities of this new kind of labourers, which could increase the rate of productivity, are as important to the overall efficiency of their labour, as their intellectual qualities. On the basis of the law of the inverse relationship between cost of labour and profits, Mill asserted that superior productivity would reduce the total cost of labour and increase the real wages of labourers and profits of capital. It was for this reason that Mill emphasized the importance of human development in terms of both labour and capital and the significance of joint-stock companies wherein labourers acquire skills and develop their abilities and individual specialties. JEL classification numbers: B 31.
著者
前田 富士男
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.53-68, 1978-09-30 (Released:2017-05-22)

Der Begriff Zeichen bei Paul Klee ist noch nicht genau fundiert, obwohl die zeichenhafte Arbeitsweise an seinem Werk eine grosse Rolle spielt. Der Grund dafur liegt darin, dass das Zeichen nicht nur die allegorische Vieldeutigkeit auf der inhaltlichen Ebene, sondern auch den engsten Zusammenhang mit der bildnerischen, formalen Orientierung hat. Unter den von Klee haufig eingesetzten Zeichen zieht der Verfasser das Auge als ein Muster heran, das die Entzifferung des Zeichenbegriffs ermoglicht. Ein Auge in Bildern seiner Kriegsjahre gilt als allegorisches Zeichen fur Auge Gottes, das weniger Allwissenheit als Weltschopfung aus Chaos sowie als Anfang des kunstlerischen Schaffens zeigt ; in der Bauhaus-Zeit bedeutet das Auge als ein Teil der Physiognomie von Tieren und Pflanzen den Blick aus dem Bild, der die Aufmerksamkeit des Betrachters auf das Kunstwerk, das gestaltete Form-Ende, lenkt ; im Spatwerk erweist sich das Auge als Zeichen, sogar als Symbol fur die die gesetzmassig schaffende Welt anschauende, menschliche Existenz. Durch diesen Uberblick lasst sich zeigen, dass der allegorische Charakters des Zeichens uberwunden ist, und dabei es sich darum handelt, Gestalt und Zeichen als Begriffspaar wie Eros und Logos zu begreifen.
著者
前野 利衣
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.126, no.7, pp.1-33, 2017 (Released:2018-10-20)

十七世紀のモンゴル高原には、ハルハ=モンゴルという集団が左翼(東方)と右翼(西方)に分かれて遊牧していた。これまでの研究では、左翼の知見に基づいてハルハの全体像を描いてきたが、実像を知るには右翼の研究が必要である。そこで本稿では、右翼のチベット仏教界を取り上げ、ハルハの全体像の解明に挑戦し、以下の点を明らかにした。 当時のハルハの高僧と言えば左翼のジェブツンダンバ一世が有名であるが、右翼をなす三王家(ハーン家、ジノン家、ホンタイジ家)にも転生僧がそれぞれおり、彼らは当主に次ぐ莫大な属民を有し、清・チベット・ロシアと交渉する等、政治的に重要な役割を果たしていた。ハーンらがこうした転生僧を重用したのは、転生僧が十六世紀後半のチベット屈指の学僧の系譜に連なる高僧であっただけでなく、彼らがそれぞれ右翼三王家の当主の近親者であったからだと考えられる。 右翼におけるハーンと転生僧との政治的な提携関係は、左翼のトゥシェート=ハーン・ジェブツンダンバ兄弟の連携と酷似しており、従来特異な事例とされてきた左翼の聖俗連携の体制は、実はこの時代のハルハ全体に共通するものだったことが明らかになる。 かかる権力構造のパターンは、右翼のホンタイジ家で発展したものである。初代ホンタイジには側近として外交交渉を担う高僧がおり、第二代ではその外戚の高僧が同じ役割を果たし、第三代では当主の弟である転生僧が活躍した。つまり、十七世紀後半の全ハルハに現れた聖俗連携の権力構造は、左翼ではなく右翼において、十六世紀から三代かけて代替わりごとに発展してきたものだったのである。 以上本稿では、十七世紀後半のハルハにはボルジギン氏族の当主とその近親者たる高僧による聖俗連携の権力構造が現出し、そのパターンは右翼で成立したことを明らかにした。
著者
前田茂己
出版者
シャ-プ研究開発本部
雑誌
シャープ技報
巻号頁・発行日
no.72, 1998-12
著者
安田 貢 前田 剛 小林 三善
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.17-29, 2015

KKR高松病院人間ドックセンターでは, 平成25年度より, 任意型検診である人間ドックの胃がん検診において, 受診者全員の血清<I>H.pylori</I>(Hp)抗体価, pepsinogen(PG)値を測定し, 問診内容も参考の上で, 総合的に個々のHp感染状態(現感染・既感染・未感染)を判定している。これをgold standardとした際の, 胃X線(1,535名)の背景胃粘膜読影によるHp感染状態の正診率は91.4%であったが, 現感染と既感染を区別しなければ96.5%と良好であった。今後は未感染者増加への対応が課題と考えられた。この読影方法は胃X線検査のみ実施する対策型検診においても適用可能である。Hp感染が疑われる受診者は, 精検不要であっても感染診断後, 除菌治療が考慮されるべきであろう。胃がんの早期撲滅のためには, 今後すべての胃がん検診システムが「Hp感染胃炎」という新基軸をもとに再構築されていく必要があると考えられた。
著者
小河 孝夫 清水 志乃 戸嶋 一郎 神前 英明 清水 猛史
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.221-227, 2011 (Released:2011-09-30)
参考文献数
41
被引用文献数
1

近年,好酸球性副鼻腔炎などの難治性上気道炎症の病態形成に凝固線溶系が深く関与していることが明らかになり,凝固線溶因子を標的とした治療法の開発が注目されている。一方,ヘパリンは抗凝固作用を有し,臨床上も血栓症治療などに古くから使用されてきたが,同時に抗炎症作用も有することが知られている。ヘパリンは陰性荷電とその特異な分子構造により炎症過程における多くの生理活性物質と結合することが作用機序として考えられている。実際の臨床においても,気管支喘息,炎症性腸疾患,熱傷などで有効性が報告され,様々な疾患モデル動物においてもヘパリンの抗炎症作用が報告されているが,鼻副鼻腔疾患に対する検討はほとんどない。筆者らはヘパリンの持つ抗凝固作用と抗炎症作用の両者に期待して,難治性上気道炎症に対する治療薬としての可能性を検討している。 ラット鼻粘膜炎症モデルを使用した未分画ヘパリンや低分子ヘパリンの点鼻投与の検討では,LPS刺激やアレルギー性炎症により生じたラット鼻粘膜の杯細胞化生や粘液分泌,炎症細胞浸潤はヘパリン投与により有意に抑制された。培養気道上皮細胞を用いた検討でも,TNF-α刺激や好酸球性細胞株との共培養によるムチンやIL-8分泌を有意に抑制した。これらの結果より,ヘパリンはステロイド以外に有効な薬物療法のない好酸球性副鼻腔炎などの難治性上気道炎に対する新たな局所治療薬としての可能性が期待できる。
著者
大西 晶子 諸頭 三郎 前川 圭子 山崎 朋子 玉谷 輪子 藤井 直子 藤原 敬三 内藤 泰
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.531-538, 2020-12-28 (Released:2021-01-16)
参考文献数
11

要旨: 人工内耳 (CI) 装用小児の装用状況と音環境についての知見を得ることを目的とし, 18歳未満の CI 装用小児100例のデータロギングから得られたログデータについて, 各項目の分布を調べ, 就学前群, 小学生群, 中高生群で3群間の比較を行った。 CI 装用時間は, 年齢が高くなるごとに装用時間が長くなり, 中高生になると送信コイルの装用が安定した。音環境は, 雑音下の話声の方が静寂下よりも高い割合を占め, ログデータからも情報保障のための環境調整の重要性が示唆された。 CI データロギングは, 一定数の結果を集積した値と, 個々の小児の経時的変化を医療者が把握し, 保護者や関連機関と共有することで, より個々の小児に即したハビリテーションを行うことを可能にすると期待される。