著者
中村 多見 前田 健一
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.3, pp.147-155, 2003

本研究では,「怒り経験(誰にどのようなことをされて,どのくらいの怒りを感じたか)」と「怒り対処方法(その怒りを誰に対して,どのように対処したか)」について,怒りを感じた対象(怒り対象)とその怒りを表出した対象(表出対象)が同じ場合の「一致群」と異なる場合の「不一致群」との比較検討を行った.調査対象は,大学生および大学院生180名であり,エピソード法を用いた質問紙調査を行った.その結果,一致群と不一致群のいずれの場合も,友人や恋人・配偶者などの身近な人物が怒り対象になりやすく,怒り対象への好意度は一致群の方が不一致群より高かった.また,不一致群が表出対象として多く挙げていたのは,怒り対象とは別の友人や恋人・配偶者であり,怒り対象よりも好意度が高いという特徴を有していた.このことから,大学生の怒り対象と表出対象の一致と不一致の規定因に,怒り対象もしくは表出対象への好意度があることが明らかになった.さらに,不一致群の方が一致群よりも言語的表出という怒り対処方法を多用していた.
著者
島 洋一郎 大貫 朗子 佐藤 晴哉 田名部 逸也 前田 和哉 杉山 雄一
出版者
日本薬物動態学会
雑誌
日本薬物動態学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.75, 2003

(目的)human OATP2(hOATP2/SLC21A6)は、肝臓特異的に発現するトランスポーターであり基質特異性の広範さから医薬品を含む有機アニオンの肝取り込みに重要な役割を果たしていると思われる。サルは、遺伝的にはヒトに比較的近い実験動物であり、薬物動態・毒性学的解析において繁用されている。サルでのhOATP2ホモログ(mkOATP2)を単離、機能解析することは、ヒトにおけるトランスポーターを介した肝取り込みの予測に、サルを用いることの妥当性の評価につながると考え、本研究を行った。(方法)カニクイザルの肝臓よりcDNAを調製し、hOATP2, rat Oatp4遺伝子のアミノ酸レベルで相同性の高い領域からプライマーを設計し、RT-PCR法によりクローニングを行った。単離したmkOATP2を哺乳類発現ベクターに導入して、HEK293細胞で安定発現系を構築し、hOATP2発現系とともに、標識体の取り込みを観察することで輸送能を評価した。(結果・考察)単離されたmkOATP2は、全長2073bpの翻訳領域をもち、hOATP2と遺伝子レベルで96%, アミノ酸レベルで92%と高い相同性を示した。また、発現細胞系への取り込み実験からestradiol-17b-glucuronide(E217bG)並びにestrone-3-sulfate(E-sul)の輸送が明確に見られ、それぞれの親和定数(Km)は、約3mM, 0.2mMと算出されたことから、本遺伝子はhOATP2のホモログであると推定された。また、rifampicin, pravastatin, glycyrrhezin, enalaprilなどの薬剤はhOATP2, mkOATP2を介したE217bGの取り込みをいずれも阻害し、そのIC50 値は、ヒト、サル間で比較的良好な相関が見られたことから、両トランスポーター性質の類似性が示唆される結果を得た。現在さらなる基質認識性に関する検討を行い、両トランスポーターの特徴の類似・相違性を調べる予定である。
著者
前川 泰之
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.158-164, 2015 (Released:2016-10-15)

PENTAX 645Zは,2010年にペンタックス初の中判デジタルカメラとして発売したPENTAX 645Dの改良機である.645Dは大型CCDセンサー搭載による超高画質とフィールドに持ち出せるタフなボディ,そしてハイアマチュアが購入可能な低価格設定により大変好調なセールスを実現した.しかしその一方,作動レスポンスについては改良を求める声が多く,645Zではその強化をメインにさらなる画質向上を行い完成度を高めている.
著者
中尾 矩也 戸張 和明 杉野 友啓 伊藤 佳樹 三島 光博 前田 大輔
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.141, no.1, pp.18-27, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

This paper presents a control scheme for smooth torque production in permanent-magnet synchronous motor drives. The proposed control scheme consists of two techniques: a feedforward compensation for torque ripple minimization and an online parameter estimation technique for harmonic fluxes. The feedforward compensation is constructed on a position-sensorless vector control system and generates voltage commands to suppress torque ripples. The command calculation process requires the parameters of the harmonic fluxes; therefore, the proposed control scheme includes their estimator and calculates them from detected current information. These techniques are simpler than existing ones and can be implemented on a computational device with a small amount of calculation load. The proposed control scheme is verified by performing simulations and experiments.
著者
大前 由紀雄
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.2, pp.66-71, 2011 (Released:2011-07-12)
参考文献数
20
被引用文献数
1

QOLの向上が求められる中, 嚥下障害に対するリハビリテーション (嚥下リハ) が注目されている. 嚥下リハは, 主として代償法を用いた摂食訓練を通じて効果を上げてきた. 一方, 嚥下の生理学に基づいて運動負荷をかけることで嚥下機能の改善を目指したいくつかの訓練法が報告され, その効果に対する検証も蓄積されつつある. しかしながら, 嚥下リハが必ずしも医学的根拠をもって選択し実践されているとは言い難い. 効果的な嚥下リハを実施するためには, 嚥下障害の病態を把握し適切な対処法を選択することが不可欠である. このためには, 嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査が優れた検査法となる. 耳鼻咽喉科医は, 嚥下に関連する器官を扱う専門家として, 嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査を実施し, 嚥下リハの選択や指導に関わることが必要である. 本稿では, 嚥下機能検査の所見に基づいて医学的根拠をもって嚥下リハを選択し実施するための留意点を, 最近の知見を踏まえて概説する.
著者
前田 尚子 Maeda Naoko
出版者
Graduate School of International Development. Nagoya University
雑誌
Forum of International Development Studies (ISSN:13413732)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.47-64, 2004-03

It is frequently said that the Japanese people have not been able to establish positive relationships with other ethnic peoples while accepting the many differences that exist among peoples of different social and cultural backgrounds. On the basis of this view, a number of researchers have criticized Japan’s assimilative policy and the Japanese way of communicating, and have produced a brand of discourse that encourages individuals to know and respect the diversity between Japanese and other cultures.The intent of this paper is to critically examine, using the concept of Constructionism, the views of discourse dealing with heterogeneity. For that purpose, I examine how the concept of “the self”is argued within the discourse on heterogeneity, and how individuals’selves (realities) are constructed through the acceptance of this particular discussion. I will show that the current discourse on heterogeneity advises people to have such selfimages as to be themselves and to be conscious of their own characters, as well as to be relativistic and to respect others equally. These points of views on heterogeneity appear to be rationalized on the grounds that they attempt to harmonize these two specific types of self-image. In addition, I will point out the limitations of the current discourse on heterogeneity. The discussion itself cannot avoid the systemic way of thinking that allows individuals to pursue self-image to be themselves and conscious of their own characters while harmonizing the efforts to be relativistic and respectful of others equally,even though there is an assumption that people can attain the first of these self-images by themselves. The discussions concerning heterogeneity are in error since they include the assumption that individuals’complementary roles in their systems are a result of self-determination. Finally, I will describe the occurrence of two paradoxes that arise as a direct consequence of the inaccuracy of these assumptions. The more eagerly individuals pursue their authenticities by themselves, the more tightly they are bound to one of the complementary roles within their systems. Furthermore, the more strongly they emphasize the differences or boundaries between themselves and others, the more they fail to recognize that they themselves are the parties concerned in the construction of mutual selves(realities). As a final result, individuals develop an attitude called “the denial of coevalness”.
著者
岡崎 尚 前重 静彦 鈴木 寛一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.647-652, 1997-09-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
16
被引用文献数
6 7

ダイコンの加熱による軟化速度と柑橘ペクチンの加熱による分解速度を90℃~110℃の温度範囲で測定し,両者の関係を速度論的に比較した.(1) 加熱によるダイコンの軟化は,90℃~110℃の温度範囲で一次の速度式に近似した.(2) 加熱による柑橘ペクチンの分解は,90℃~110℃の温度範囲で一次の速度式に近似した.(3) 加熱によるダイコンの軟化速度と柑橘ペクチンの分解速度は,90℃~110℃の温度範囲でアレニウス式に従い,みかけの活性化エネルギーは,それぞれ146kJ・mol-1と144kJ・mol-1でほとんど等しかった.このことから,ダイコンの軟化はペクチンの分解によって支されている可能性が高い.
著者
甲田 広明 堤 陽平 森 幸子 北口 遼 船越 大生 前川 和道
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1535, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】理学療法を行うにあたってブリッジ運動を利用できる場面は様々である。ブリッジ運動は臥位で行えるため安全で,幅広い患者に用い易い。理学療法中ブリッジ運動を用いると,患者によって殿部の挙上度合いに差があり,歩行自立度の高い患者ほどブリッジ運動時に股関節を伸展出来ているように感じる。そこで今回,ブリッジ運動時の股関節伸展角度と歩行自立度の関係を調べ,歩行自立度低下の予測及び予防をする際の指標とすることを目的とした。【方法】当院外来通院中で,屋外歩行自立度が独歩自立または杖歩行自立の患者を対象とした。対象の年齢選定は,年齢によるバイアスを少なくする目的で,下限を前期高齢者以上とし上限を90歳未満とした。得られた対象者は独歩自立の者が21名(男性8名,女性13名,平均年齢76.4±5.4歳,以下,独歩群),杖歩行自立の者が11名(男性2名,女性9名,平均年齢79.2±7.8歳,以下,杖歩行群)であった。下肢に麻痺のある者,ブリッジ運動時に痛みの出る者,また屋外歩行が独歩であったり杖歩行であったりと歩行自立度が一定しない者は除外した。ブリッジ運動の開始肢位は,背臥位にて両側上肢をベッド上に置き,膝関節を膝蓋骨の鉛直下方に踵部の後端が位置するところまで屈曲した肢位とした。開始肢位からゆっくりと可能な範囲で殿部を挙上させ,挙上が止まった時点での股関節伸展角度をゴニオメーターで計測した。その際上肢の力を用いることは禁止しなかった。股関節伸展角度は,日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会の定める測定方法を参考にし,体幹と大腿で計測を行った。統計は,独歩群と杖歩行群において得られた股関節伸展角度及び年齢について比較検討した。統計処理にはt検定を用い,有意水準を5%未満とした。また,独歩群と杖歩行群の歩行自立度に関するカットオフ値をROC曲線より決定し,クロス集計表より感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率,正答率を算出した。【結果】ブリッジ運動時の股関節伸展角度の平均値は,独歩群1.4±11.1°,杖歩行群-21.8±11.5°で有意差を認めた(p<0.05)。両群間の年齢については有意差を認めなかった(p=0.25)。またブリッジ運動時の股関節伸展角度のROC曲線から,最も有効な統計学的カットオフ値は-15°であると判断できた。この点をカットオフ値としたクロス集計表より,感度86%,特異度82%,陽性的中率75%,陰性的中率90%,正答率84%の値が算出された。【考察】今回の研究から,独歩群は杖歩行群と比較してブリッジ運動時の股関節伸展角度が有意に高値を示し,カットオフ値は-15°であることが分かった。クロス集計表から得られた値は,陽性的中率を除いてすべて80%以上であり,歩行自立度に関する評価指標として有用であると考えられた。陽性的中率は75%であったが,陰性的中率は90%,正答率は84%であり,ブリッジ運動時の股関節伸展角度が-15°以上であれば歩行自立度が独歩となり易いことが示された。以上より,独歩自立の者のブリッジ運動時の股関節伸展角度が-15°のカットオフ値を下回るようであると,今後歩行自立度が低下すると予測された。また,独歩自立の者でブリッジ運動時の股関節伸展角度が-15°以上であれば,それを下回らないように理学療法を行うことで歩行自立度低下を予防できると考えられた。さらに現在の歩行自立度が杖歩行である者に対しては,-15°のカットオフ値を上回るように理学療法を行うことで,歩行自立度を向上させる可能性も示唆された。しかし今回の研究では,何故ブリッジ運動時の股関節伸展角度と歩行能力に関連があるのかについての詳細な検討は出来ておらず今後の研究課題としたい。また,どのような理学療法を行うとブリッジ運動時の股関節伸展角度が向上するかについても合わせて調査をしていきたい。【理学療法学研究としての意義】ブリッジ運動時の股関節伸展角度を計測することで,歩行自立度低下の予測及び予防をする際の指標になる可能性を示すことができ,理学療法学研究としての意義はあったと思われる。
著者
前田 伸子
出版者
日本歯科薬物療法学会
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.115-122, 2016 (Released:2017-01-14)
参考文献数
35

Candida is the most significant species among fungi, because it is not only a member of the normal microbiota of oral cavity, skin, gastrointestinal tract and vagina, but also one of the pathogens for opportunistic infections(candidiasis). Recently incidence and prevalence of candidiasis have increased in large populations of compromised hosts. Studies of poly-microbial Candida biofilms suggest that the hyphae of Candida provides the scaffold for oral bacteria in biofilms and show the interactions with many oral infections such as dental caries, periodontal disease, endodontic infection, and denture stomatitis. Candida has a number of virulence factors, the most important is aspartic proteinase (Sap). Sap plays a central role in the pathogenicity of Candida destroying human proteins and invading tissues. The gold standard of diagnosis for candidiasis is based on clinical findings and confirmed by identification of colonies cultured on the media for Candida. However, microscopic examinations of staining smear samples are faster and simpler methods than culture methods, if the staining is sufficiently accurate. We compared staining methods of candidiasis smear samples, and suggest that Fungiflora Y staining is useful for the diagnosis of oral erythematous candidiasis. Right now, we are doing both, basic and clinical research to reduce Candida colonization in the oral cavity. Basic research includes the development of probiotics with lactobacilli as well as biogenic products of lactobacilli for controlling Candida colonization in the oral cavity. Clinical research comprises of reducing the number of Candida in the oral cavity by gargling with a diluted antifungal drug(amphotericin B). The goal of our studies is to improve QOL, not restricted to the oral cavity, but for the entire body by eliminating Candida from the oral cavity.
著者
木村 昌美 関 昭夫 前田 英児
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.F0610, 2004

【はじめに】 前腕骨折において,ギプス除去後の上肢全域にわたる腫脹は,理学療法を行う上での阻害因子であり大きな問題点である.今回,前腕骨折(尺骨・橈骨の両骨骨折)の症例に対して高周波治療を行ったところ,上肢,特に前腕部の腫脹が軽減する現象が見られたので,ここに報告する.<BR>【症例】 76歳の女性.平成15年8月16日に転倒し,左前腕両骨末端骨折と診断.約3週間のギプス固定を行った後,同年9月5日より理学療法開始となる.<BR> 開始時より前腕の腫脹が著明で,渦流浴などの温熱療法を行ったが腫脹の変化は見られなかった.3週間後に再評価を行った結果,肩甲帯周囲筋の緊張が高く,特に僧帽筋,菱形筋群に著明であった.<BR>【方法】 高周波治療器はテクノリンク社製スーパーテクトロンHP400を用いた.この機器にはマイナス導子(青導子)とプラス導子(黄導子)がある.導子の装着部位は,左僧帽筋中部線維上に青導子,三角筋中部線維に黄導子と,左菱形筋群に青導子,右菱形筋群に黄導子の計4箇所とした.波形は同機にプリセットされているDモードで,筋のリラクセーションが得られる波形にて施療した.また同機独自のシステムであるハンマーモードを併せて用い,モードは LIGHTにて行った.治療時間は10分間とした.<BR> 腫脹の測定は,前腕の遠位端の最小周径測定部位を,治療の前後にメジャーにて測定した.<BR>【結果】 施療開始初日に測定した前腕部の腫脹は18cmであったが,施療後には17cmに低下.その後は来院時には腫脹の憎悪を認めるも,施療後は16.5cmを示した.健側である右前腕も周径が16.5cmであり,施療開始4日目から施療後は16.5cmを維持.8日後には施療前後とも16.5cmとなった.<BR>【考察】 高周波は深部筋刺激に優れており,低周波や干渉波などに比べて電気刺激が深部に到達しやすく,通電においても皮膚への電気刺激が小さい.筋のリラクセーションを得て,末梢循環を改善するには適していると考え,施療にあたった.<BR> 今回の症例は肩甲帯周囲の筋緊張が亢進しており,長期化する腫脹はこれによる循環不全と推測した.肩甲帯周囲の筋である僧帽筋・回旋腱板・三角筋・菱形筋群は共に筋連結がある事は知られている.今回これらの筋に対して高周波刺激を行った結果,導子をあてた筋群,そして筋連結のある肩甲帯及び上肢全域の筋にリラクセーションが得られたと考えられる.体幹近位の筋にリラクセーションが得られたことにより,末梢循環つまり静脈還流やリンパ還流が改善され,腫脹の軽減が得られたと考えられる.<BR> 今後の課題として,他の症例でも同様の施療を行い,効果の信頼性を探る必要がある.一方でサーモグラフィー等のパラメータを用いて体表面の温度変化を追い,この現象を科学的に捉えてエビデンスを追求していきたいと考える.
著者
大前 敦巳
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.37-52,146, 1992-02-29 (Released:2017-02-15)

The purpose of this paper is to find a homology and differences of research frameworks between Pierre Bourdieu and Paul Willis, in order to turn them to practical use in Japan. Willis propounded a notion of cultural production which stresses the activities of "lads" who exercise "partial penetration". I think the reason is that, against the criticism (after the publication of Learning to Labour) which regards his model as determinism similar to Bourdieu's system, Willis wanted to declare the differences between them. However, in my view, Bourdieu's system is also far from deterministic model, because he starts with a notion of practice which explains the activities of social agents in "temporal" time as opposed to "chronologic" time. From this view point one may say that the conceputual frameworks of practice and cultural production have a homology as non-deterministic model. Then, it is important to consider one of the critical differences. It's about praxis. Bourdieu never talks about praxis, but Willis develops his analysis toward paxis which is linked with "resistance". But his argument has a contradiction, because his theoretical framework does not consider the paradox of dominated people. To avoid falling into this paradox, Bourdieu demands a preparatory analysis in order to objectify the relation between the researcher and the inguired people. Bourdieu's "counter culture" is to create the culture which can analyse the alternative opposition between "resistance" and "submission". Therefore, with regard to "counter culture", I think Bourdieu's theory of practice is more available for my purpose in spite of his difficult methodology.
著者
伊与 亨 朝倉 敬子 中野 真規子 山田 睦子 大前 和幸
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成27年度大会(大阪)学術講演論文集 第1巻 給排水・衛生 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.165-168, 2015 (Released:2017-11-15)

貯湯式温水洗浄便座の吐水中の従属栄養細菌数(HPC)と緑膿菌の挙動を調査したところ、貯湯タンク内の残留塩素が低下する夜間において、貯湯タンク内で生物膜が再増殖した。温水洗浄便座の吐水使用開始時に、再増殖した生物膜が剥離することでHPCが一時的に増加したが、吐水使用につれてHPCは低下した。吐水使用開始時には緑膿菌も微量ながら検出され、生物膜の再増殖時に緑膿菌も増加したと推察された。緑膿菌の由来や挙動についてはさらに検討を要する。
著者
小山 伸一 行岡 秀和 森本 修 新藤 光郎 西 信一 前田 均 藤森 貢 若杉 長英
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.235-239, 1996-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
11

自殺目的で燃料用アルコール(メタノール)を服用し,脳死に陥った症例を報告する。患者は42歳の男性で,腹痛と嘔吐で発症し高度代謝性アシドーシスが認められ,昏睡状態に陥ったため気管内挿管後に当院ICUに入室した。入室時,高浸透圧血症と浸透圧ギャップの増加が認められ,頭部コンピューター断層撮影(computed tomography; CT)上両側レンズ核部に低吸収域が認められた。持続血液透析により代謝性アシドーシスの改善が認められたが患者は脳浮腫を生じ,脳死になった。ICU入室7時間後の血中メタノール濃度は173mg・dl-1であった。脳死になった原因として,メタノールおよびその代謝産物の直接作用ならびに脳浮腫による可能性が考えられる。