著者
前原 武子 Maehara Takeko
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:13425951)
巻号頁・発行日
no.6, pp.55-60, 1998-12

ある人を取り巻く重要な他者(家族,友人,同僚,専門家など)から得られるさまざまな形の援助,すなわちソーシャル・サポート(social suport)が,その人の健康維持・増進に十分な役割を果たすことが注目されている(久田,1987)。児童・生徒が示す心理的ストレスもソーシャル・サポートによって軽減されることが,数少ないながら,実証されるようになった。Furman & Buhrmester(1985)やReid,Landesman,Treder,and Jaccarrd,(1989)は,小学生が,自分のサポートネットワークをどのようにとらえているか検討した。また,Dubouw and Tisak(1989)は,3-5年生を対象に,ストレス(転居,親の死亡,離婚など)が強いほど問題行動が多いこと,しかし,その関係は子ども自身が報告するサポートの多い群より少ない群で強いことを見出した。わが国では,森と堀野(1997)が,小学生を対象として,絶望感がサポートと負の相関関係にあることを報告している。また,岡安・嶋田・坂野(1993)は,中学生を対象に,各種学校ストレッサー(教師,友人,不活動,学業)による各種ストレス反応(不機嫌・怒り,抑うつ・不安,無力感,身体的反応)がサポートによって軽減されることを報告している。興味深いことに,それら両研究は,サポートの有効性がサポートの内容やサポート源によって異なるばかりでなく,サポートを受ける側の属性によっても異なることを見出した。森と堀野(1997)は,ソーシャルサポートが有効に働くための介在要因として達成動機の個人差に注目し,自己充実的達成動機が高い児童がサポートを有効に活用できること,競争的達成動機は介在要因として有効でないことを見出した。また岡安ら(1993)は,男子においては,女子ほど,サポートが有効にはたらかないことを見出し,サポート以外の要因について検討する必要性を指摘した。House(1981)も指摘するように,サポートが送り手と受け手の相互交渉であることを考えると,送り手はもちろん,受け手の属性に焦点を当てた研究が必要である。本研究は,受け手の属性,特に,パーソナリティ属性の1つである統制感を取り上げて検討する。Rotter(1966)は,統制の所在(locus of control)というパーソナリティ変数を定義した。すなわち,自分自身の行動が,ある成果や結果をもたらすという期待を内的統制と呼び,逆に,結果の生起に自分の行動以外の外的な力が左右するという期待を外的統制と呼び,その違いが行動を予測するという。類似した概念が,feelings of personal control, perceived control, sence of control, perception of control,などの用語で強調されてきた。まさに自分自身の力が結果を左右するという期待や,感情,知覚などを含めて,ここでは,便宜的に,統制感(perceived control)の用語を使用する。神田(1993)は,小・中学生対象の統制感尺度を作成し,統制感の高低と適応感・不適応感とに対応関係があることを見出した。この結果に基づくならば,統制感とストレスは負の相関関係にあることが予想される。では統制感とサポートではどちらが有効に作用するのだろうか。ストレス対処は,サポートさえあれば可能なのだろうか,あるいは,たとえサポートがなくても,個人の統制感によって可能なのだろうか。その疑問を解決することが本研究の主な目的である。特に,岡安ら(1993)が見出した無力感に対するサポート効果の性差に注目し,無力感に対するサポートと統制感の効果に関する性差を明らかにしたい。
著者
安藤 英由樹 渡邊 淳司 稲見 昌彦 杉本 麻樹 前田 太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.11, pp.2025-2033, 2004-11-01
被引用文献数
18

これまで,指先に皮膚触覚情報を提示する手法についての研究が数多く成されている.しかし,これらの研究においては,指の腹側から触覚提示を行う方式が採用されているため,実環境からの触覚情報にバーチャルな触覚情報を重畳することは困難である.そこで,指の腹側ではなく,爪の側から振動を加えることによって,指のなぞり動作時に実環境ヘバーチャルな凹凸感を重畳可能な触覚提示デバイスを提案する.本デバイスは,指先で物体をなぞるときに指先に振動が加わると,振動ではなく凹凸といった知覚が生じることを利用している.本論文においては,そのなぞり動作時に指腹部で起きている圧力変化について調べ,その知覚が生じるメカニズムについて考察した.そして,心理物理実験によって任意のバーチャルな凸状幅を提示するための振動タイミングを特定した.
著者
前田 知子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.541-546, 2004 (Released:2004-11-01)
参考文献数
8

Science.govは,米国連邦政府の研究機関等が作成した科学技術分野の約30のデータベースや1,700以上の関連Webサイトへのポータルである。検索語の指定もしくはカテゴリーを選択する方式により,科学文献,技術レポート,特許情報,基礎データ,研究機関でのテーマ紹介などの情報へのリンク一覧が表示される。12省庁の17の研究機関や専門図書館の連携と分担により運営されており,研究者や学生から一般市民まで政府関係機関の科学技術情報にアクセスしやすくするべきである,という考え方に基づいて開設された。
著者
中前 栄八郎 西田 友是 金田 和文 多田村 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.1515-1527, 1993-08-25
被引用文献数
5

コンピュータグラフィックスは,その誕生から30年を過ぎ,その適用範囲は極めて多岐にわたり,90年代,完全に応用の時代に入った.ここでは,ホトリアリズムの中でも大気や水など,3次元空間に分布した気体や液体およびその中の漂遊微粒子(ちり,煙,霞,混濁微粒子等)の光学現象のモデル化によるホトリアリスティックな画像生成手法について議論する.すなわち,光源として,強い方向性を与えることのできる点光源,太陽直射光,大気の散乱による2次光源としての天空光を対象とし,被照体としては,一般の固体のほかに,上述の空気分子,エーロゾル,水分子,混濁粒子による光の散乱,吸収および水面における反射,屈折を考慮した光学モデルを考える.このモデルによって,スポットライト下の煙や,ヘッドライトによる光束,晴天,曇天下の風景,霧の効果,水質による水の色の変化,水中照明,宇宙から見た地球など,ホトリアリスティックな画像生成が可能になることを示す.
著者
大滝 純司 水嶋 春朔 北村 聖 加我 君孝 前沢 政次
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

昨年度までの研究活動に引き続き、以下の研究活動を行った。1.一次調査の結果を発表昨年度に実施したFGI調査の分析結果をまとめて、日本医学教育学会で発表した。2.二次調査の計画立案昨年度までの調査結果をもとに、二次調査として、全国規模のアンケート調査(多施設調査)を計画した。(1)調査対象の種類と数の検討研究班内で議論し、最終的に国内の研修病院(10カ所程度)の通院患者を調査対象に定めた。(2)調査対象者選定方法の検討調査対象病院の選定方法(層別など)について、資料を収集し研究班内で検討した。(3)質問紙原案の作成昨年度までの調査結果を参考にしながら、二次調査で用いる質問項目を検討し、質問紙の原案を試作した。(4)倫理審査二次調査に関する倫理面の審査を筑波大学の審査委員会に申請し承認を得た。3.質問紙原案による予備調査の実施試作した質問紙原案を用いて、某病院の内科外来患者を対象に予備調査を実施した。実施した結果を分析して質問紙を改良した。また、調査の運営方法などに関しても、この予備調査の経験をもとに再検討した。4.二次調査の実施調査対象病院の候補を選定し、調査への協力を依頼した。了承が得られた病院の内科外来患者を対象に、改良した質問紙を用い、対象者の同意を得て、二次調査を実施した。全体で10病院の521名から回答が得られた。5.二次調査の集計と分析、報告書の作成二次調査の結果を集計・分析し考察を加え、報告書を作成した。
著者
小西 孝史 前田 義信 田野 英一 牧野 秀夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.170, pp.25-30, 2008-07-20

我々は視覚障害者の歩行を補助する目的で,適応ファジィ推論ニューラルネットワーク(AFINN)を用いて現在位置を音声案内する「GPS-GIS位置案内システム」を開発した.開発した案内システムでは,地理情報システム(Geographic Information System:GIS)はユーザの周囲に存在するランドマークの知名度,正面方向,面積,重心(経度・緯度),ユーザの現在位置(GPSからの経度・緯度)と進行方向を取得する.これらは知名度,相対正面方向,ユークリッド距離,面積,相対進行方向,基準データの6つの要素に変換される,AFINNは以上の6つの要素より,認知距離に対応させるランドマーク重要度を算出する.このランドマーク重要度を用いることにより,現在位置案内を実現する.AHPを用いてユーザの嗜好を反映させた学習データをAFINNに導入することにより,汎用性の高い案内を得ることが可能となった.シミュレーションを用いてAFINNがユーザにとって有効な案内を出力することを統計的に示唆した.また実際に視覚障害者に案内システムを適用し,ユーザの観点から,システムの評価を得るとともに,意見を聴取した.
著者
安岡 劭 中西 嘉巳 藤沢 謙次 林 秀樹 前田 道彦 尾崎 敏夫 北谷 文彦 松崎 圭輔
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.312-320, 1986
被引用文献数
1

気道粘液糖タンパク(粘液)は気道液の粘弾性の中心となる物質で, この作用で粘液一線毛運動に関与している。また, その表面構造は微生物の侵入に対して防御的に働くことも推定されている。気道粘液は主鎖のポリペプタイド部分と側鎖の糖部分から構成されている。フコースとシアル酸はこの気道粘液の側鎖の末端, 従って粘液の表面を占めているため, 粘液におけるシアル酸/フコース比は上述の粘液の物理学的性状や生物活性に関連すると考えられる。本報では, 慢性気道疾患における気道粘液の性状の変動や, 喀痰中のフコースやシアル酸の診断的意義などを解明するため, これら疾患患者の喀痰中のフコースとシアル酸を痰原液と精製気道粘液レベルで分析した。その結果, 粘液痰と膿性痰では, これらの糖の診断的意義が異なることや, 気道粘液の糖側鎖が疾患や薬剤により変動することが示唆された。
著者
野村 誠治 加藤 健次 前野 幸彦
出版者
一般社団法人日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会誌 (ISSN:09168753)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.866-873, 2003-11-20
被引用文献数
1

Chlorine content of bituminous coal was determined and its behavior during carbonization was investigated. The chlorine content in the metallurgical coals used in this experiment was between 100 and 1,500 ppm. Most chlorine in coal and coke was removed by washing with water. CaO addition to coal increased the chlorine residue ratio in coke. The residue ratio of chlorine in coke increased with increasing Ca content in coal. This is considered because chlorine in coal is released as HCl, which is trapped in coke again in the form of CaCl_2 The chlorine residue ratio of coke produced in actual coke oven was higher than that of coke produced in laboratory scale tube furnace. This is considered because released gas from coal has more chances to contact with calcium in the actual coke oven than in the tube furnace. Furthermore the removal of chlorine from NaCl was promoted by co-carbonization of NaCl with coal. This implies that H_2O derived from coal decomposition may help chlorine to be released.
著者
前田 松良
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1301, pp.66-67, 1990-07-20
著者
小沢 昇 清水 益人 尾前 純也 山田 純夫
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
動力・エネルギー技術の最前線講演論文集 : シンポジウム
巻号頁・発行日
vol.2002, no.8, pp.101-104, 2002-06-14

This paper describes the operating condition of 1.5MW gas engine system with pyrolysis gas produced in the waste gasification plant. This system started since Octorber 2001 at Kawasaki-Steel chiba works. The results shows the following four conclusions; (1) Gas engine can operate continuously with pyrolsis gas of which LHV is between approximately 1500 and 2200kcal/m^3_N, enen when the fluctuation of LHV is approximately 3%/30s. (2) Electrical efficiency is 37% at 100% load and 33% at 50% load respectively. (3) The concentration of dioxins in the exhaust gas was approximately 0.001ng-TEQ/m^3_N. (4) The concentration of NO_x in the exhaust gas is less than 100ppm (O_2=0%) without SCR.
著者
岸田 崇志 前田 香織 河野英太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.1552-1561, 2007-04-15
被引用文献数
1

テレビ会議など映像コミュニケーションが普及してきたが,現在のインターネットはファイアウォール,NAT,種々の通信プロトコルの混在などのネットワーク障害物により,テレビ会議端末間のネットワーク透過性が確保できない.また,ベストエフォート型ネットワークでは映像品質の劣化も生じ,必ずしもユーザの要望どおりにテレビ会議ができるとは限らない.そこで,我々はテレビ会議システム利用時の課題を解決する機能をゲートウェイとして集約し,テレビ会議用ゲートウェイ"PTGATE"を開発した.これにより,既存の多くのテレビ会議システムを活用しつつ,映像コミュニケーションの利用場面の拡大を目指す.PTGATE はIP-in-IP を用いたプロトコル変換が実装され,FEC によるエラー訂正,ポート集約,IPv4/IPv6 トンネル,マルチキャスト/ユニキャストトンネルなどの機能を有している.本論文では,PGTATE の開発について述べ,また,基本性能の評価および実証実験を通して,PTGATE の有用性について示す.Video communications such as videoconferences are being deployed. However, most of users cannot always use videoconference systems according to expectation. For example, there are some network obstructions such as firewalls, NAT and heterogeneous communication protocols in the current Internet. Also, QoS is not guaranteed. Then, we developed a protocol transfer gateway "PTGATE" for integration of functions to solve these problems caused by heterogeneous environments. Our purpose is to extend available scenes of videoconferences with the current resources (videoconference systems and networks) by using PTGATE. PTGATE is implemented by IP-in-IP technology and has the functions such as error recovery by using FEC, port aggregation, tunneling of IPv4 and IPv6 and tunneling of multicast and unicast. In this paper, we show development of PTGATE and its usefulness with some practical experiments using actual networks and evaluations.